俺が監視官として赴任するまでの間、俺は地上本部の治安維持のため、今日も正社員として働いていた。勿論その間に他の仕事も並行して行っている。
2徹目の朝、オーリスから小隊に関して話があった。部隊を運用する際、部隊長の他に、小隊長が数名必要になる。その小隊長候補を選出もしくは育成せよとの事だ。しかし今の管理局にその余裕は無い。以前部隊長クラスの人間から色々聞いたことがあり、その際教えてもらった事は、
・高ランクの隊員は貴重であるため手放さない。無理やり引き抜こうとすると、色々難癖をつけられて、部隊の運用自体に支障が出るらしい。
・素質のある人間は学生時代から目を付けられている。などなど
よって今の状況では、優秀な人材を手に入れる事は不可能。権力を行使すれば問題ないが、後々問題が発生するのは嫌だ。
いや、待て。発想を変えるんだ。この世界では総合ランクで評価される。例えば俺は、魔力量はSS+だ。しかし一般局員であるため魔導師ランクは低くなる。よって総合評価はB程度になる。
俺みたいな人間は稀だ。しかし魔力量は多いが、その魔力運用の下手な人間を育てればいい。簡単に説明するなら、大きな貯水槽があるが、その水を排水する蛇口が大きければ一度の放出量が多い。小さければ放出量は少ない。
そのため魔力量が多くても魔導師レベルが低い人間を選出する。そうすることで、他の部隊への影響も低く、尚且つデータもとれる。並行して違う方向からアプローチする事も出来る。
「おもいかね?」
「何でしょう?」
「まりょくりょうAからAAていど、まどうしらんくは、それいかのきょくいんせんしゅつ」
「了解しました。その前にマスターにはすべき事があります」
「なに?」
「寝てください」
「・・・」
「寝てください」
「わかった。でもけんさくしてね」
「了解です」
段々母親に似てきたような気がする。
俺はレジアスに計画書を提出した。それを見て
「要は、魔力量は十分あるが、魔力運用に難のある人間を教育するという事か?」
「そう」
「そして選んだのがこの3人?」
「そう」
「3人とも魔力量はA以上。しかし魔力切れを早々に起こす、何故か魔法が殆ど使えない、単純に運用が下手糞・・・この3人を引き抜いても特に所属部隊への影響はなしと」
「にんげんせいはもんだいない。しょうたいちょうとしてのいくせいは、べつぶたいにふにんさせる」
「育成にはどのくらいかかる?」
「2~3かげつ」
「分かった」
「それと」
「なんだ」
「これとはべつに、きょくいん、もしくはもときょくいんで、にんむちゅうにりんかーこあをふしょうしたにんげんをせんしゅつしたい」
「リンカーコアを?どういう事だ?」
簡単に説明するなら、負傷したリンカーコアを修復可能かの検証だ。俺のハッキング能力で相手の魔力を解析し、相手の魔力と性質を同化させる。そして負傷したリンカーコアに刺激を与える。
心筋梗塞という病名は有名だ。心臓の血管が閉塞する病気の事だ。治療法の大半は、人工血管置換術だ。しかし高齢、DMなどの影響で血管が脆くなっている場合があり、その場合、OPが出来ない。そのため、ESWLを使用した治療法がある。閉塞血管へESWLで衝撃を与える。数ヵ月後に対象血管周辺に毛細血管が作成される。ようは生体血管によるバイパスが可能となる。
生体組織に刺激を与える事で上記のような効果を得る。ではリンカーコアならどうなるか?俺の予想では、リンカーコアが活性化し、コアが修復される可能性がある。同一の魔法性質での刺激で効果がなければ、電気刺激も追加してみる。
俺はレジアスにその旨を伝える。勿論この検証には危険はある。心臓では無くリンカーコアという未だ未知なる臓器に手を入れるのだ。
「危険性は高いっと言う事か?」
「たかい。でもかちはある」
「しかし・・・」
「どういがあればいい?」
「同意?」
「そう」
「4名選出していい。ただし一週間毎に報告し、不具合があれば即報告しろ」
「わかった」
優秀な人間が居ないなら、育てればいい。何て不合理的な・・・
しかしそれが現状。将来は、育成方法のSOPを作成したい。
これの他にも科学的にリンカーコアを活性化させる方法も別途考察するか