Fate/argento sister   作:金髪大好き野郎

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※注意・以下の要素に当てはまる方は即座にブラウザバック推奨
・オリジナル主人公……萎える
・俺TUEEE! うっわテンプレ
・こんなの○○じゃない!
・シスコンとかショウジキナイワー
・自己解釈とか無理
・誤字大杉ワロタwwww超ウケルーwwwww
・オリ主×オリ主

等々。
色々見苦しいかも知れませんが、もし気に入っていただければ長い目で見ていってください。


※低評価を付ける場合、小説の改善に繋がる可能性があるのでできるだけ理由などをメッセージや感想で述べてくださると助かります。


追記
ところどころ改訂しました。


生前編・白銀は目覚める
プロローグ・始まりは唐突に


 最初にあったのは違和感だった。

 目が覚めれば今日の朝も心地よい目覚めになるだろう。そう思っていたからこその違和感。

 ここは何処だ? まず感じたのは焦り。自分の寝室とは違う雰囲気の空間。

 

 ――――寝室? 待て。そもそも私は――――誰だ?

 

 自分が何者かもわからなかった。

 思い出そうとすれば激しい痛みが頭を駆け巡り、深く考えるのを妨げる。

 だからきっと、それは『思い出さなくてもいい』ものなのだろう。不思議とそう認識せざるを得なかった。

 

 感覚が曖昧な状態で手足を動かしてみれば、何かが自分の全身を覆っているのが分かる。

 そう、まるで冷たい水の様な――――

 

(……水?)

 

 嫌な予感がして、咄嗟に口を開けて空気を吸おうとする。

 だが口の中に入ってきたのは冷たい水であった。息を吸う感覚で飲みこんだものだから大量の水が肺の中に入り込もうとして、身体が拒否反応を示し始める。いや、それ以前に肺全体が既に水で満たされており、激痛が脳を刺して意識が不本意にも鮮明になり始めた。

 

「ふごごっ、がぼっ、ががぶっ――――!?」

 

 必死でもがきながら両足を地面につかせる。

 そして全力で体を持ち上げて、顔を外へと出させた。

 同時に吐き出される大量の水と取り入れられる新鮮な空気。ゴホッゲホッと咳き込みながら私は肺に入った水を必死に吐き出して空気を吸い込んだ。その度に肺がピリピリと痛むが、我慢するしかない。

 

 凡そ数分ほどでそれは終わった。激痛で意識が朦朧としながらも、私は頭を押さえながら千鳥足で立ち上がる。

 

「い、一体、何が……?」

 

 声が出るのを確認して、軽く周囲を見渡す。

 よく見れば、私が沈んでいたのは小さな池だった。水深こそ深いとは言えないが、浅いとも言えない。膝が沈むほどの深さ。確かに横になれば大人でも全身が優に浸かるだろう。

 そして見える自分の顔。美しい銀髪に、自分の物とはとても思えないほど整えられた顔。それに途轍もない違和感を覚えてしまう。

 

 だが問題はそこでは無い。

 どうして私が、こんな小池に沈んでいたのかという事がわからない。

 溺れて酸素不足になって記憶が飛んだのだろうか。可能性としてはあり得なくないがそもそもの話どうして私は水の中に居たのだろうか。まさか自棄になって自殺でもしようと……?

 

 

「…………あの、誰、ですか?」

「え?」

 

 

 気が付けば、少女の声が自分に掛けられていた。

 声のする方向に顔を向ければ――――幻想が其処に存在している。

 

 垂れた金髪は天然の黄金よりも美しく。

 

 その整った顔はまるで人形の様に完璧で。

 

 取る動作一つ一つが宝石の様に麗しい、奇跡の体現とでも言える少女が立っていた。

 

「いや、その……ええと」

 

 服装こそ田舎の娘のようだが、どう見ても貴族とかそんなお偉いさんの令嬢か何かだと思った。

 成長すれば絶対に絶世の美女コースと確信できるほどだ。下手に怪しい動作をすれば記憶喪失なのに開幕BADENDと言うふざけた結末を辿る可能性もある。

 まずは名前。そう名前だ。

 私の名前は――――

 

「……名、前? 思い出せない? なんで?」

 

 人が生まれて初めて得るアイデンティティが失われていた。

 それが分かり私の焦りは一層激しい物へと変わる。何故、どうして。記憶の一部が消えたならまだいいだろう。だが、名前すら思い出せない。 軽度の記憶喪失? 冗談ではない。完全に記憶が欠如しているではないか。

 

 そんな私の様子を見て、金髪の少女は心配したのか震える声で声をかけてくれる。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、その、ごめん。名前が、思い出せなくて」

「名前を、思い出せない?」

「……記憶が無い、みたい」

 

 初対面で「記憶喪失」とか完全に怪しまれる選択肢なんだが。

 自分で言ってしまったがここまで怪しいともう呆れ顔しかできなくなる。私があの少女だったら速攻で逃げていると思う。

 

「あの、良かったら一緒に来ますか?」

「…………は?」

 

 そして次に出た少女の言葉に、頭が真っ白になる。

 一緒に来る? いや、無い。無い無い無い。そこらの不審者を家に招くとかどんだけ無防備なんだよ。

 もしかしたら、そんな純真無垢さがこの少女の取り柄なのかもしれないが。

 

 しばらく悩んだ後、私は少女の提案に喜んで頭を縦に頷かせることにした。

 何せ右も左もわからない状態なのだ。折角寝床を用意してくれるならばそれに甘んじてみるのも吉だろう。

 まぁ、少し良心が痛むのだが。

 この恩は後できっちり返していこう。

 

 

 まず、私が居た小池は森の中にある水源の一つだったらしい。魚がある程度多く棲んでおり、釣り場としても使われているとか。そんな場所なので偶に沐浴する奴もいるのだが、私の様に服を着たまま入る奴はいないとか。そりゃいないでしょうね。私もしないよそんなこと。さっきしたばかりだけどさ。おかげで着ていた絹の服がずぶぬれで気持ち悪いったらありゃしない。

 

 でだ。この少女――――名前はアルトリア、と言ったか。そのアルトリアはどうやら家族に内緒で森深くのここまで来たらしいのだが、帰りが怖くて池の傍でうろうろしていた時に池から飛び出した私を見つけたようだった。想像してみると中々シュールな絵面だ。よく家に招こうと思ったものだ。

 が、帰り道が怖いので同伴してくれる人を探していたのだから丁度いい人材なのだろう。

 それに……私、どうやら見た目が子供になっている様だし。

 

 別に成人していたような記憶は無いのだが、記憶をなくす前はもう少し大きかったような気がする。

 ここまで外見と精神に齟齬が発生しているのだ。たぶん幼児退化、してしまったのだろう。

 

 そんな感じで頭を悩ませながら歩いていると、小さな農村に到着する。

 日が南中しているので今は大体正午ちょうどぐらいか。昼飯時なので、畑で働いている者たちは皆休んで、それぞれがよくわからないスープや刻んだ野菜を口に運んでいる。

 ……パンさえ食べないとは、かなり困窮している村なのだろうか。

 

(それにしても、もう少しやりようはあっただろうに……)

 

 せめて野菜炒めを食べろと言いたくなる。刻んだ生野菜とか兎じゃないんだから。

 しかも口にしているスープに至っては穀物を煮ただけのオートミール的な何かだった。

 もしやこの場所は文明レベルが低いのか。真実は謎のままである。

 

「…………?」

 

 気になって周りをよく見渡してみると、その場の村人全員の顔色は優れない物だった。

 何というか――――絶望のどん底に叩き落された奴みたいな、希望を見出せない者の顔。

 

 それらの横を通り過ぎながら、アルトリアは一つの家宅へと入っていく。

 私もそれについて行くと、早速額にデコピンを喰らったアルトリアの姿が目に入った。

 デコピンをしたのは、アルトリアより少し背が高い青年。

 何というかこの先すごく苦労していきそうな不幸男になるだろうと直感する。何というか、あの漂うオーラは身内の尻拭いを専門とする苦労人のオーラだ。

 

「アル、また内緒で出かけたのか」

「でっ、でも……村には、何もないですし」

「だったらせめて畑を耕す手伝いでもしろ……………? おい、誰だお前。人の家に勝手に上がり込んで」

「ま、待ってくださいケイ兄さん! えっと、あの子は私が連れて来たんです」

「……は? 連れて来た?」

「はい。記憶が無いみたいで」

 

 それを聞いてケイと呼ばれた青年は頭を抱えて腹を抑える。

 強烈な頭痛と胃痛のコンボを喰らったのだろう。やはり私の勘は正しかった。

 

「……わかった。わかったよ。大方蛮族に襲われた村の生き残りだろ。匿えって事だな、アル」

「兄さん!」

「ただし、住む分には働いてもらう。いいな?」

「はい。その程度なら喜んで」

 

 どうやら無事寝床は確保できたらしい。肉体労働はできるかどうかはわからないが、まぁやってみるしかないだろう。ただ飯喰らいの居候になるのはこっちも嫌だし。

 そうして私は初めて安心感を得ることができた。

 

(…………あれ? ケイ……アルトリア…………いや、まさか)

 

 嫌な予感がして、私はこの国がどんな名前なのか尋ねてみる。

 するとケイは首を傾げてこう言った。

 

「ブリテンに決まっているだろ? ……まさか本当に記憶が無いのか?」

「ええ、はい。その…………ブリテン?」

 

 サーッと血の気が引いて行く。

 ほとんど同時に、靄掛かっていた記憶が少しずつ漏れ出てきた。

 それで理解出来る。

 私はこの時代の人間ではない。

 転生、憑依――――形はどうあれ私は精神的なタイムスリップにより現代から中世あたりに跳んでしまったようだった。自分の名前は思い出せないが、それはなんとなく感覚で理解できた。

 

 がしかし、それは大した問題ではない。それ自体は薄々勘付いていたのだから。こういった問題は自分の中でゆっくり消化すればどうとでもなる。問題なのは――――眼の前の二人だ。

 

 ブリテンでケイと言えば、アーサー王伝説に出て来るアーサー王の義兄の名前だ。似ている名前なのかもしれないが――――ここで『アルトリア』という名前が決定打になる。

 史実ではアーサー王は男性とされる。当然だろう。王は男性でなければあり得ないのだから。

 が、それを根本から覆し女性として描いた作品が存在する。

 TYPE―MOON。通称型月と呼ばれるブランドであるが、まぁ細かい話は置いといてとりあえずアーサー王を性転換させてヒロインにするというトンデモ行為をやってのけた猛者(菌糸類)が現代には存在した。で、その性転換したアーサー王の本名が『アルトリア』。……ここまで言ったらもうこれ以上言わなくてもわかるだろう。

 

 その、嫌な予感が正しいのならば。

 

 

 私は、ゲームの世界に迷い込んだようだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 死んだ目で私は鍬を上げたり下げたりして畑を耕していた。

 なぜこうなっているのか、という説明は後にしよう。とにかく私はこの世界に来訪してからざっと一週間が経過していた。

 

 一週間一緒に居て分かったことは、アルトリアは可愛いしなんだか守ってやりたくなるような子であった。これが将来ブリテンを丸ごと任される王となるのだから世の中どうなるか分かった物ではない。肝心なブリテンの滅びを知っている身としてはかなり複雑であるのだが。それとケイ兄さんは毒舌家であった。日々溜まるストレスを少しでも発散したいのは理解できるのだが、流石に村人全員が呆れかえるほどの毒舌家とは思わなんだ。

 

 と、なんだかんだでもう一週間。初日に鍬を振るってバランスを崩していた私だったが、一週間も続ければもう十分技術が身についた。か弱い十二歳程度の体躯ではあったが、一日数千回も鍬を振るっていれば筋肉もつく。

 おかげで今の私は少女とは思えないほどの身体能力の持ち主であった。今ならケイ兄さんを軽く吹き飛ばせそうだが、それやったら今度こそケイ兄さんの胃に盛大な大穴が開きそうなのでやらない。

 

 しかし、一週間通して食事が劣化オートミールと生野菜なのはどういう事だろうか。雑な料理ってレベルじゃないんだけど。確かに未来でも飯マズのグレートブリテンの大昔だ。飯が不味いのは当然だろう。調味料も調理器具もまともにない環境では逆にどうやれば美味い飯が作れるんだって話だ。

 

 だけど一週間。一週間だぞ。これなら軍用レーションを食った方がまだ良いとさえ思える。何せ栄養失調寸前なのだ。あんな栄養も何もなさそうな食事なのに量も少ないときた。ケイ兄さんがアルトリアの方に食事を優先しているのも原因ではあるがこのままだといずれぶっ倒れかねない。

 

 私はぶつぶつと現状への恨み言を呟きながら、一通り畑仕事を終える。小さいが、今は少しでも畑を広くして農作物を育てなければならないのだ。何時蛮族――――ブリテン島の外から攻め込んでくる人間の形をした謎の生命体――――が村を荒らしに来るかもわからない今、スピードこそが命であった。

 

 それこそ私みたいな小さな少女までこき使わないとならないくらい追い詰められているのがこの国の現状。

 戦時中の日本もここまでひどくはないだろう。

 

「――――アルフェリア姉さん!」

「アル。どうしたの?」

 

 仕事を終えて切株に腰掛ける私に駆け寄ってくる小さな少女の姿が見える。

 当然、アルトリアだ。私の名付け親でもある。

 アルフェリア。それが今の私の名前だ。ケイ兄さんのネーミングセンスが酷過ぎたので彼女に名付けてもらったのだ。良い名前だと思う。

 しかも、だ。姉。私はアルトリアの姉と何故かなっていた。彼女より少し背が高いという理由でケイに姉の役目を押し付けられたのだ。私としては一向にかまわんがね!

 

「やることが無いので、姉さんに会いに来ました」

「そっか。ま、私と一緒に居ても、あまりやる事は無いよ?」

「大丈夫です。姉さんと一緒に居られればそれで……」

 

 もにょもにょと口籠もり乍らも、アルトリアは私の隣に腰掛ける。

 いい匂いだ。女の子特有の甘い香りが漂ってくる。

 

「うーん、良い香り(ナイスフレグランス)ディ・モールト・ベネ(とても良し)

「ね、姉さん? か、顔が近い……」

 

 すんすんと私はじっくりとアルトリアの香りを堪能する。

 あ~、抱き枕にして熟睡したい。日々の疲れを癒したいよ~。確実にケイ兄さんから拳骨が下るだろうけどな。

 しかし、こうしてみるととても将来王になる者とは思えないほど『少女』であった。

 心優しき少女が冷徹な判断が下せるほどになるとは、マーリンは一体どんな教育を施したのだろうか。どうせまともな物ではないのだろうが。

 

 ――――グゥゥゥゥゥ~~~~~。

 

 アルトリアのお腹からそんな音が聞こえる。

 お腹が減ったのだろうか。腹を鳴らしたことが恥ずかしいのか、アルトリアは顔を赤らめて俯いてしまう。

 

「ははは、アルはよく食べるなぁ」

「ね、姉さん……わ、私だって人なんです。お腹が減るのは当然ですよ!」

「そうだね~」

「むぅ…………」

 

 不満そうに頬を膨らませるアルトリア。可愛いです。

 

 ……さて、折角だしここで一つ致命的な問題を明かそう。

 ――――このブリテン島は、半端なく作物が育ちにくい。どれくらいかと言うと、普通の作物でも二倍近い時間をかけないと育たない。しかも途中で作物が枯れるなど日常茶飯事。たとえ収穫できても状態が悪い物が大半で、もう種類が別物なのではないかと疑うレベルに達していた。

 これは特に食糧問題が存在するブリテンでは最恐に最悪な問題だった。

 

 おかげで私もここ一週間、まともな食事をした覚えがない。

 しかも外から種や苗を仕入れて植えても、結果は変わらないと言う始末。

 八方塞がり。蛮族による襲撃まで抱えていると言うのに兵隊に取って致命的過ぎる食料問題まで抱えているとなるともう王手(チェックメイト)と言っても過言ではない。一応備蓄があるので今のところ耐えられてはいるらしいが、このままだと滅ぶのも時間の問題だろう。

 

 だがこうやってアルトリアと一緒に居る時間があるだけでそんな問題が頭から吹っ飛ぶ。

 ああ、可愛いなぁ。アルトリア可愛い。今ならメディアさんの気持ちも理解できなくないかな。

 

「……ねぇアル、この国を出て行くって考えは無い?」

「え……? どうしてそんなことを言うのですか?」

「そりゃ……」

 

 子供にとって、生まれた祖国を出て行くと言う行為がどれだけ大きいかはわからない。

 だが現状がこれなのだ。出て行くという選択は、必ずしも間違いではない。というより困窮から脱却したいならばこちらの方が手っ取り早い。

 だがこれは歴史を書き換えることを意味する。

 当然、修正力も働く。――――アルトリアの意思の制限という形を取って。

 

「考えられません。私にとって、ブリテンは祖国です」

「祖国だからといって、出て行けない理由にはならないんじゃない?」

「ですが私は――――」

 

 おかしいだろう。『祖国だから』と言う理由で自身の生死を左右する問題に対して全く現状が改善されない選択肢を選ぶなど。

 確かに、祖国も大切だろう。しかしまだ十歳にも満たない少女が抱く心としては『異常』の一言だ。

 たった九歳の少女がする選択ではない。

 ならば『ナニカ』が選択肢を強制しているとしか思えない。

 確信こそ持てないが、無駄だという事はこの一週間で嫌と言うほど思い知らされた。

 

「……わかった、もう言わない。アルが頑固なのは前からわかっていたし」

「なっ、ち、違います! 私はただ、姉さんと一緒に居たいだけです。こうして、平和な日々が続けば、と」

「そうだね。それは良い。私もそう思う」

 

 本当に、ブリテンの滅びは変えられないらしい。

 実を言うとこの一週間であの手この手でアルトリアを説得しようとはしてみたが、今の様に全て跳ね除けられている。やはり抑止力からの修正が働いているとしか思えないほどの頑固な精神だ。

 いや、元々の性格がこうなのか。生真面目すぎるって事なのかもしれない。

 小さな可能性を信じて、歴史を変えられるかも! と意気込んでいた私は、まぁ数日前にどこかに行ってしまったよ。

 

 よく考えてみれば、外に何があるのかも碌に知らないのに出ていこうとする方がおかしいか。ああ、私がおかしいんだな。もしかしたら冒険心とか植え付けてみればいずれ「国の外に行ってみたいです!」とか言って歴史は変わるのではなかろうか。……なんにせよ、どんな方法も一筋縄ではいかなさそうだ。

 

 それより正直まともな食事をしたいと言うのが今の心境だ。食事は重要だ。体もそうだが、良き食事は精神も整えてくれる。腹が減ってイライラとしている時なら、美味しい物を食べればそのイライラは収まっていくし明日への元気にもなる。整った衣食住は健全な肉体と精神を作るための基本なのだ。

 

 だが生野菜でさえ今のブリテンには貴重な食料なのに、これ以上を求めると言うのは『贅沢』と言う物だ。

 諦めて、今ある物で飢えを耐えていくしかないだろう。

 

 ま、このまま現状維持に甘んじるつもりなど毛頭ないが。

 

「ねぇアル。選定の剣って、知ってる?」

 

 ふとそんな問いが思いついた。アルトリアが王となるきっかけである選定の剣。カリバーン。

 その存在をもし知らないのなら――――と心の底のどこかで思っていたのかもしれない。

 

「はい。先王であるウーサー・ペンドラゴンが遺した、王を選定するための剣、と聞きましたが」

 

 やっぱりか、と私は軽く笑った。

 それでもいいだろう。変えられないのならば、私は私なりで全力を尽くすだけだ。

 

「……もし、アルがそれを抜くことができるとしたら、どうする?」

「私が、ですか? そうですね、やはり王になってブリテンをよりよくしたいです。でも、私は女なので、無理でしょう」

「それはどうかな」

「へ?」

「ま、何事も期待はしてみるもんだよってこと。――――さて、帰りましょうか、アル」

「は、はい。姉さん」

 

 これから訪れるであろう、変えられない未来を見ながら私はため息交じりに自宅へと歩む。

 アルトリアにそんな重荷は背負わせたくない。だけど変えられない。

 そんな状況に頭を痛ませながら、私は慣れた帰路を歩くのであった。

 

 ケイ兄さんの糞不味い飯をまた食べる羽目になるのかと、心の奥底で鬱になりながら。

 

 

 




なんかタイトル、イタリア語と英語混ざってるんだけどって言いたい人がいるかもしれない。でもシルバーシスターとかなんか語呂悪くない? でもアルジェントとかなんか響きいいよねって感じのノリで決めたんですごめんなさい。

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