そして今回はルーラーさん登場回です。さて、彼女は今回活躍できるのか!?答えは君の目で確かめよう!(愉悦☆スマイル
追記
早速誤字修正だよちくせう(´・ω・)
追記2
期末テストがあるのでしばらく休みます。再開予定は八月六日からです。
次話を待ってくださる皆さまに大変申し訳ないと思っておりますが、どうかご了承下さい。
追記3
日々のストレス発散のようなノリで話のプロットをガン無視して書いた結果、凄まじく話の構成が崩れて大惨事になりました。現在「色々やらかした」後酔いがさめたような気分になって凄まじく後悔しています。完全に自分の体調管理を怠ったこちらの落ち度です、申し訳ございません。
今回の参事を反省し、一度プロットを見直し再構築することに決めました。今回の話を楽しんでくれた方々、本当に申し訳ございません。
削除した話については、希望があれば別のところに乗せようと思います。
本当に、ご迷惑をおかけしました<(_ _)>
アルフェリアが改造し『神殿』化した一軒家の中で、俺は目の前に広がる異様な光景に頭を悩ませていた。
リビングの壁に展開された映し出された光景。――――サーヴァントという強力な使い魔が八体も出そろっているという圧巻の光景だ。それを俺たち、俺と雁夜と桜と氷室の四人は大きめのソファに腰かけそれを険しい表情で見続けていた。
何も知らない普通の人間なら出来の良い映画程度の物にしか見えないだろうが――――その光景は間違いなく現実。単独で街を一つ軽く潰せる最強のゴーストライナーの集合絵は事情を知る物からすれば何かの悪夢にしか映らない。
事実、最近まで間桐家にて多少の知識を叩き込まれただけであろう雁夜ですら引き攣った笑いを浮かべているのだ。画面に映る光景の異常さが垣間見えるだろう。特に魔術を深く知っている俺からすれば言葉すら出てこない。
そして、その中に飛び込んでいった自分のサーヴァントにもだ。
十数分前の話をしよう。
夕食を終えた後に食器などを洗っていたアルフェリアは、突如顔を険しくするや否や同じく顔を歪めたモードレッドと共に拠点を飛び出した。俺が止める暇もなく迅速に。
その後から念話で理由を聞くと、ランスロットが偵察のはずなのに勝手に交戦を開始した挙句五体ものサーヴァントが集合してしまったらしかった。だからその場を収めるために出ていったらしいが――――正直俺からすれば、アルフェリアが介入した所でさらに状況がややこしくなるだけだと思ったのだが。
しかし集まっている五体のサーヴァントはいずれも膠着状態。誰かが動けばその動いたものが真っ先に狙われるのが戦場の理。そんな理由から、もしランスロットが逃げようとすればその瞬間他のサーヴァントたちに袋叩きに合う可能性は決して低い物では無いだろう。
いくら高名な英雄であろうとも、ランスロット一人ではサーヴァント四体からの集中攻撃を避けることなどできない。故に、その救出に向かったのだ。嫌な予感を『直感』スキルで感じ取ったモードレッドを連れて。
味方を救いに飛び出したのだ。止めることなどできなかった。
だがここまで状況が混沌としたものになっているのならば、流石に頭も痛くなるというものだ。
「……ねぇ、ヨシュアさん。大丈夫、ですよね。アルフェリアさんも、モードレッドも……」
「氷室……」
画面の中にあるモノの威圧を感じ問ったのか、俺の隣に居た氷室が小さな手で俺の手を握りしめる。やはり、根はまだ子供なのだろう、不安になって当然だ。身近な者が命を落とす光景を見てしまうかもしれないのだから。
更に桜もまた俺の手を握る。自分を救ってくれた存在が、今死地に居る。桜は飛び出したいはずだ。だが、桜が行ったところで何の意味もない。むしろ足手まといになる。それを理解しているからこそ、桜は悔し気な顔で俯いていた。
雁夜もまた、己の無力感に苛まれ苦い顔を浮かべている。
勿論、俺も。
あの状況で出来ることといったら、令呪を持つ俺や氷室が緊急事態になった場合の撤退の手助けか、一時的な補助程度だ。逆に言えば、それしか存在しない。
本音を言えば共に戦いたい。同じ戦場で肩を並べ合いたい。助けられるだけでは無く助ける側にもなりたい。――――だが無理だ。俺たちは、余りにも弱すぎるから。
故に出来ることは、こうして見守り小さな手助けをする程度。
――――それでも、できることは、ある。
その事実を胸に収め、俺は不安な顔を浮かべる氷室の頭を撫でながら微笑を浮かべる。
「ああ、大丈夫だ。
「ッ……はい!」
涙目になりながらも、氷室は力強く返事を返した。
子供とはいえ、侮れない胆力である。将来有望だなと思いながら、俺は息を呑んで画面へと視線を戻した。
ここからは一つの不安要素たりとも見逃してはならない。もし一瞬でも油断すれば、それは敗北に繋がる。それはあの場に居る全ての陣営に共通する事実だ。だからこそ気を抜いてはならない。
決意に満ちた顔で、俺は自分のサーヴァントの背を見る。
遥か過去に、人々の希望を乗せて戦った者の背を。
◆◆◆◆◆◆
私は、困惑していた。
聖杯戦争で呼ばれるサーヴァントは七騎。そうなっているはずである。――――では、目の前の光景は何だ?
この場には
では、そこに居るもう一騎は何だ。
そして何より――――何故自分の妹が、あんな変わり果てているのだ? 理解が追いつかない現象の数々に、私は身体を硬直させて動きを止めてしまった。自分以外にサーヴァントが七騎もいるというのに、何とも隙だらけな行動だと心に余裕があったなら自嘲していただろう。
が、今の私にそんな余裕など存在していなかった。最愛の妹が、あんなにも変わり果てた姿を自分に見せつけていたのだから。
「アル、なの……? その姿は、一体……!?」
「――――姉、さん。ああ、姉さん……!」
困惑している私の問いには答えず、
こうして近づくと更に見せつけられる。
彼女は、多大なる心労と困難のせいでここまで荒んでしまったのだと。私が居なくなってしまったばかりに、こんなに負担を強いてしまった。それを理解して、私は罪悪感で心臓が締め付けられるかのような感覚に襲われる。
「こんな所で、会えるなんて……夢の様です。会いたかった、ずっと、ずっとずっと……!」
「え、ええと、アルはどうして……もう全部のクラスは出そろっているはずじゃあ――――」
「はい。他の七つのクラスは全部埋まってます。しかし――――私はエクストラクラス『
「――――――――――……アヴェン……ジャー…………? アルが? どうして……!?」
生前のアルトリアを知っているはずの私は、彼女が
しかも心なしか、雰囲気まで変わって――――
「そこに居るのは、モードレッド……? 貴女も召喚されていたのですね……! 時空の果てにて、こうして愛する息子にまで会えるなんて……夢なら覚めたくない気分です」
「……父上、なのか? いや、でも……その姿は」
戸惑うモードレッドに構うことなく、アルトリアは一旦私の腰に回した手を放しモードレッドの首へと回してその体を抱く。父と息子――――厳密には母と娘であるが、家族が再会を祝う抱擁を交わしていると見れば微笑ましい物であった。
アルトリアの纏う異質な空気さえ無ければ、私もこうして混乱することなく家族の再会を喜んでいただろう。しかし――――できなかった。やろうとしても、どうしても直感が訴える『不安』が拭えなかったのだ。
その私の直感が訴えるほどに、今アルトリアが漂わせている『覇気』は生前とはかけ離れていた。本来彼女が漂わせるべきであろう『高貴さ』、『気高さ』、『希望』――――それらは一切感じられない。存在しているのはむしろその真逆に位置する物だけ。
いつもの調子なら喜んで自分から抱擁をしているだろう私が、こんな風に固まっているのはそれが原因である。
「ランスロットは、私の願いを受け入れてくれなかった。でも、姉さんと貴方ならば――――きっと――――」
「……アル?」
「父上、何を――――」
不穏な予感がして私は、反射的にアルに手を伸ばそうとして――――
「――――そこまでです!!」
ガンッ!! という音が耳を刺す。
音のした方向に振り返れば、そこには穂先に槍の様な部品が付いた豪華な装飾が施された巨大な旗が地に突き立てられていた。
否、それだけでは無い。
コンクリートの地面に突き立てられた旗を握っているのは、そこに存在するだけで友軍を鼓舞するような覇気と高潔さは見るだけでわかってしまうほどの濃密さを漂わせる金髪の少女。何時かのブリテンの戦場にて、軍隊を率い侵略者たちを幾度も撃退したようなアルトリアによく似た姿が――――そこにはあった。
「――――九体目の、サーヴァント!?」
今まで無言を貫いていたランスロットが困惑の叫びを上げるほどの異常事態。本来七騎のみのはずのサーヴァントが八騎存在するだけで異常だったのに、その上九騎目ときた。至極当然の反応だ。
だがアレは他のサーヴァントとは違う。
あそこに立っている少女には――――実体がある。つまり、受肉している。
普通に考えれば前回の聖杯戦争の優勝者か何かだと思うだろう。だがそれはあり得ない。第三次聖杯戦争は小聖杯そのものが破壊されてしまったせいで大聖杯は顕現させることができなかった。故に優勝者が現れるわけがない。つまりあれは――――
「…………
「その通りです、キャスター。私はルーラー。此度の聖杯戦争が複雑化、および異例尽くしのため聖杯により召喚された『中立の審判』です」
――――
聖杯自身に召喚され、『聖杯戦争』という概念そのものを守るために動く、絶対的な管理者。部外者を巻き込むなど規約に反する者に注意を促し、場合によってはペナルティを与え、聖杯戦争そのものが成立しなくなる事態を防ぐためのサーヴァント。
どの陣営に所属することは無く、ただ中立役として動き、ルールの違反者にはペナルティを与える――――いわば聖杯戦争の最高権利所有者である。
このクラスで召喚された者は与えられた役割を遂行するため、クラス特性としてサーヴァントの真名を知ることができる『真名看破』と、聖杯戦争に参加する全サーヴァントに使用可能な令呪を各サーヴァントごとに二画保有する『神明裁決』、10キロ四方に及ぶサーヴァントに対する知覚能力が与えられる。
これだけインチキな能力を与えられ、戦闘に参加すれば優勝確率が高いはずのルーラーのサーヴァント。彼ら(彼女ら)が本気で聖杯戦争に取り組めば、その『眼』から逃れられる者は存在しないだろう。
しかしそれはクラス選定条件から無理に近い。ルーラーになる条件は、『現世に何の望みもない事』『特定の勢力に加担しない事』。つまり何も望みを持っていない者に限られるのだ。故に完全な中立役。誰にも加担しない完璧な審判を貫く。
そしてそんなルーラーが召喚されるほど、今回の聖杯戦争は『異常』を来しているという事。
本来七騎のはずのサーヴァントが八騎も揃った挙句初日で全員集合だ。これだけ異常の連発だ。ある意味当然の展開と言えるかもしれない。
「――――裁定者のクラスだと? フン、雑種の小娘が大層な役目を任せられたものだな。そのクラスは我こそに相応しいというのに」
「痛いお言葉ですが、もう過ぎたことにとやかく言っても仕方ないのでは? アーチャー」
……
「で、ルーラーとやら。余の質問に答えてくれぬか?
「その通りの意味ですよ、ライダー。――――今からルーラーの権限を使い、今夜におけるサーヴァント同士の戦闘を一切禁止します」
「その理由は?」
「……サーヴァント八騎が衝突して、無関係な住民に被害が出ないと本気で思っているのですか?」
ルーラーの言う通りだ。単独で常識を逸脱した戦闘力を持つサーヴァントが八騎同時に衝突などすれば、今私たちの居る倉庫街は塵も残らず吹き飛び、最悪被害は新都の住宅街にまで及ぶだろう。無関係の一般人を巻き込むことはルール違反。裁定者であるルーラーがそれを許すはずがない。
彼女の言い分にライダーも納得したのか「相分かった」と短い返事をした。それに安堵して、次にルーラーはアーチャーに視線を向ける。
「そう言う事です。納得していただけましたか?」
「…………この我が雑種の戯言に付き合うと思っているのか? そう思っているのならば、まず貴様の愚かなその頭蓋、一片たりとも残さんぞ」
「こちらとしては穏便に事を済ませたいのですが。どうしても納得していただけないのであれば、令呪の使用も厭いませんよ」
「令呪だと?」
「ルーラーに与えられた特権の一つに、各サーヴァント一体につき二画の令呪が与えられています。それを使い、周りのサーヴァントを使い貴方だけを襲わせることも可能なのですよ?」
「ハッ、中立役が効いて呆れる台詞だな!」
「先に言い渡した決め事を破る方が悪いです」
「…………チッ、いいだろう。今夜ばかりは貴様の戯言に付き合ってやろう。精々、感謝することだな」
不快気に顔を歪めたギルガメッシュは舌打ちをして、そのまま口を閉じてしまった。興が乗らないというところだろうか。こちらとしては面倒な奴が口を閉じてくれたので大助かりだけど。
「――――姉さん」
「え?」
そんなルーラーを無視して、アルトリアが私の両肩を掴んで私の視線を自分の方へ振り返らせる。
一体何事だと疑問を抱きながら、半分閉じていた瞼を開いて見たアルトリアは――――その顔に何かを請うような感情が浮かばせていた。
しかしそれだけでは無い。
言葉にし難い、泥のように濁り切った「何か」がその碧い双眸に宿っていたのだ。それを間近で直視した私は、殆ど無意識的に息を呑む。
「私は――――王の選定のやり直しを望んでいます。あの時、私が王になっていなければ、姉さんが死ぬことは無かった。こうして喪失感に苦しむことも無かった。ただ私は――――あの静かで穏やかな暮らしを願うのです」
「……アル」
「だからもう一度、やり直したい。過去を変え、私はアーサー王ではなく、一人の少女として――――」
カムランの丘にて、一度全てを失った少女の嘆きは聞くだけで痛ましかった。
言葉の一つ一つが私の胸を抉っていく。私の死後、彼女がどれだけ辛い道を一人で歩むことになったのか――――いや、一人では無かった。だけど、それでも――――彼女は私という大切な歯車を失ったことで、折れてしまったのだ。崩れてしまった。だからこうして願った。
再び平穏を。心安らかに暮らせるあの暖かな一時を。
それでも私は――――その願いを肯定することはできない。
自分たちが今までやってきたこと全てを、更にはその後に続く者達が積み上げてきた歴史を壊してしまうのだから。それだけは、断じてしてはならない。
「アル――――それは、できない」
「………………………え?」
「過去を変えるなんて、言わないで。それは私たちや私たちに付いて来てくれた者達への冒涜……そして、後世の人たちが築き上げた全てを否定する事。それだけは駄目。一人のエゴで何千万人の願いや努力を否定するのは――――」
「――――――――ドウシテ?」
その瞳が真っ黒に濁る。
瞬間、私の危機感知本能が全力で悲鳴を上げた。
頭にこびりつく恐怖感。幾多の戦場を乗り越え、最期には星すら相手取った私の頭が『逃げろ』と泣き叫ぶほどの威圧感。
アルトリアは生気を感じさせない動きで私から何歩も後ずさると、抑え込んでいたであろう狂気を再度その身に纏わせ始める。触れるだけで呪詛の如く身を蝕むだろう、濃密な狂気を。憎悪を。嫉妬を。恐慌を。
「どう、して? 何故、なぜ、姉さんが私を否定するのですか? あんな目に遭ったのに、理不尽に、世界に追いやられたのに」
「だけど、それでもしてはならない事はある……! 過去を変えるなんてしては駄目なのよ……! それは全人類への冒涜で、その行い全てを否定すること。だから私たちは、今からまた積み上げて――――」
台詞を言い切る前に、アルトリアの体から黒い旋風が巻き荒れる。
それは紛れも無く『拒絶』のモノ。この世界全てを否定する憎悪は、己が愛した姉さえも拒むのだ。
「私は――――ただ、貴女と暮らしたかっただけだ。平和なブリテンで――――みんなで、笑い合える。そんな日を過ごしたかっただけだ――――だけど、それはもうできない。――――貴女が、皆が、
「……………アル、トリア……ッ」
「――――貴女が、
漏れ出る黒い魔力が破壊の力となってアルトリアの周りに存在するすべてを破壊する。
空間か軋むほどの神秘の奔流。風を裂き、地を割り、狂気と憎悪をだけで動き出した殺戮機械はこの世全ての憎悪を集めた様な眼差しで私を射抜かんばかりに睨みつける。
「――――ッ!? 戦闘は禁止だと言ったばかりなのに……! 今すぐやめなさい、アヴェンジャー!!」
「黙レェェェエェエ゛エエェェ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!! 喰ライ尽クセェッ……災厄ノ極光ヨオォォォオオォッ――――――――『
「なぁッ…………!?!」
ルーラーがどうしたと言わんばかりに繰り出される対城宝具の一撃。流石に初手で最強の切り札を出してきたアルトリアの行動に驚愕の顔を浮かべながら、ルーラーは苦い顔をして地面に突き立てていた旗を両手で握り、その真名を告げる――――。
「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! ――――『
旗を中心に不可視の結界が展開される。
それは天使の祝福によって味方を守護する結界宝具。ルーラーが所持するEXランクという規格外の対魔力を物理的霊的問わず、宝具を含むあらゆる種別の攻撃に対する守りに変換する最強の護り。
展開された結界は他のサーヴァントまでも守護するように広がり、迫りくる漆黒の極光を――――
最高峰の威力を誇る対城宝具でさえいなす宝具。守りに置いてことアレの右に出る宝具は限られているだろう。
逸らされて分散した漆黒の光が半壊状態の倉庫街に留めを刺す。七割近くが消滅した倉庫街であったが、その三割――――ルーラーの結界により守護された部分は無傷。まさに鉄壁。城さえ落とす破壊の一撃をルーラーは見事耐えきったのだ。
だが、これには一つ弱点がある。
確かにルーラーの持つ宝具、『
破壊により巻き上がった粉塵からアルトリアが圧倒的爆発力での加速を以てルーラーへと迫る。その速度、既に流星の如く。余りにも早すぎてその姿を捕えられなかったルーラーは、アルトリアの接近を許してしまった。
「ッ――――!?」
「
間髪入れずにアルトリアは――――ルーラーから宝具である旗を取り上げた。
そう、直接的な害がない限りその行動を阻害することはできない。ルーラーから宝具を取り上げるという行為は、彼女を直接的に傷付けることでは無いのだから。
ルーラーが旗から手を放してしまった事で展開されていた不可視の絶対守護領域は敢え無く霧散する。宝具の担い手から離れてしまったので当然だろう。そして、ルーラーを守る盾もまた消えてしまったということになる。
「――――失セロ」
「ッ、あ――――――――」
超速の蹴りがルーラーの鳩尾に叩き込まれる。普通の人間ながら上半身と下半身に分かれてしまうであろう人智外の威力が懐で炸裂したルーラーは呆気なく吹き飛び、遥か向こうの海に突っ込んで巨大な水柱を作り上げた。
中立役であるルーラーを迅速に処理したアルトリアは、握っていた巨大な旗を放り捨て私の方に振り向く。
肩が震えた。
何かを言おうとして――――しかし、何も言えなかった。
目の前まで迫ったアルトリアが――――私の首を掴む。
ミシミシと筋肉が悲鳴を上げるほどの力で首を絞められた私は呼吸すらままならなくなり、苦しみにあえぐ声を漏らした。それでも尚、アルトリアは力を緩めない。
「アル、トリ、ア……どう、し、てっ…………こん、な…………!?」
「行キましょウ、姉サん。此処ハ、少し邪魔者ガ多イ――――」
私の首を掴んだままアルトリアは――――飛んだ。
全身から膨大な魔力を吹き出し、黒い旋風で自分の体を浮かせたのだ。その精密な魔力操作は、かつて私が教えた物。それが、こんな形で使われるとは。皮肉なものだ。
圧縮された魔力が爆ぜ、私たちは空に舞い出た。
誰も邪魔しない戦場を目指して。
「――――おいランスロット! 何ぼさっと突っ立ってんだ! 追いかけるぞ!」
「ッ……モードレッド。貴方は、大丈夫なのですか?」
「知らねぇよ……ッ! だが優先すべきなのはこうやって考えても答えが出ないことを延々と考えることじゃねぇだろうが! ほら、掴まれ!」
「……了解した…………!」
アルフェリアが倉庫街から連れ去られた後に、その後を追いかけるべくモードレッドとランスロットが行動を開始しようとする。未だ状況の理解が追いつけ無いとはいえ、己の姉君が攫われたのだ。無駄な思考を切り落とし、モードレッドは歯噛みしながら魔力放出による飛行準備を始める。
――――しかし、そのすぐそばに金色の槍が高速で叩き込まれる。
それを行った張本人を悟り、モードレッドとランスロットは向こうに立つ黄金のサーヴァント――――アーチャーを睨みつけた。
A級サーヴァント二体からの鋭い目線を「どうということはない」といい捨てるかの如く受け流したアーチャーは、その背後に大量の波紋を展開。計百二十もの宝具の切っ先が二人を捉える。
「まさかこの我に不敬を働いたことを忘れ、背を向け逃げるつもりではあるまいな? 雑種」
「くっ……この期に及んでまだ邪魔をするか、アーチャー!」
「貴様らの都合などこの我には関係ない。疾く失せ、その散りざまで我を愉しませるがいい。狂犬にはそれがお似合いだ」
「どこまでも傲慢な……やはりさっさと潰しておくべきだったか!!」
怒りに顔を歪めたランスロットが、その右手に純白の聖剣――――『
「では、存分に愉しませてもらおうか。雑種――――」
「喰らって逝きな――――『
アーチャーへとランサーのミサイルの如き一撃が炸裂する。
響き渡る轟音。全てを貫き蹴散らす紅き槍の砲撃は、アーチャーを貫いて――――いなかった。その間に、巨大な黄金の盾が現れ防いだのだ。
弾かれた朱槍が幾何学的な軌道を描きながらランサーの手元に帰っていく。アーチャーは不快気に顔を歪め乍らランサーに視線を移し、約六十もの宝具の切っ先をランサーへと向け直した。
「何のつもりだ? 狗」
「さっきから黙ってりゃ狗狗狗狗――――流石の俺もキレたぜ。まさか一晩で禁句を何度も言われるたぁ思わなかったよ」
「ハッ! 狗を狗と評して何が悪い。それともクランの猛犬は噂通りの阿呆な狂犬だったというわけか?」
「――――テメェの相手は俺だアーチャー。無傷で帰れると思うなよ……!!」
血管を顔に浮かせながら、怒りのまま槍を構えるランサー。それを見たアーチャーは軽く鼻を鳴らして――――背を向けた。
「……あ?」
「興ざめだ。あの我の宝物すら霞むほどの美しさを持つキャスターが居ないのならば、我はもうここに居る理由は無い。不敬を働いた狂犬を間引くのもアリだが――――余計な横槍を入れる狗のせいで残っていたやる気も失せたのでな。今宵はもう戻るとする」
「逃げるのかテメェ!」
「逃げる? 勘違いするな狗。見逃してやる、と言ったのだ。俺に相対するにふさわしいのは真の英雄。それまで精々数を減らしておくのだな、雑種共」
そう言い残してアーチャーは黄金の粒子となって場から消え去った。
全く嵐の様な男だと、頬をビクつかせるランサーは深い溜息を吐いて構えた槍を降ろす。
「……ランサー、何故」
「いいからとっととあの嬢ちゃんを追いかけな。今ならまだ間に合う」
「何故、私たちを助けたのです? 貴方にそんな理由は――――」
「――――
「……感謝します、光の御子よ」
邪魔者が居なくなったランスロットは、用意を済ませたモードレッドに担がれて魔力放出による飛行で倉庫街を飛び去っていった。消えていく背中を見届けたランサーは小さく肩をすくめながらこの場に残ったライダーへと視線を向ける。その行動の行き先を確かめるため。
「征服王。お前はどうするつもりだ? もしあいつらを追撃したいのならば――――」
「よせよせ。もう余に戦う気はありはせんわ。正直に言えばあの者達の戦いを見届けたいのだが……マスターがこの様だからなぁ」
「――――――――――(チーン」
ライダーが戦車の隅から持ち上げた少年は、口から白い物を出しながら身体をビクつかせていた。
英雄でさえ恐れを抱く狂気を生身で浴びたのだ。発狂せずに気絶程度で済んだのは幸運だろうが――――本人にとってはこの場に来たこと自体が不運と言えるだろう。
「余もそろそろ戻るとしよう。では、縁があれば今度こそ矛を交えようぞ。ランサー」
「おう。その時を楽しみに待ってるぜ、征服王。俺の槍に貫かれたきゃ何時でも言いな」
「言いよる奴よ――――AAAAAAALaLaLaLaLaLaie!!!」
雄たけびを上げながら、雷光を放つ戦車でライダーもまた倉庫街を飛び去った。
残りはアサシンだが――――こちらは既に消えていた。むしろ無理矢理表の場に引きづり出されたのだから、何時までも留まる理由はないだろう。静かな脅威が消えていることを確かめ、ランサーは向こうに存在する波立った海を見る。
小さく、泡が浮かび続けている場所を。
ほぼ確実に海の底に沈んだルーラーの物だろう。超威力の蹴りを食らったとはいえ、そのまま気絶とは――――などと呆れるクー・フーリンであるが、普通なら胴体分離する蹴りを食らって生きている時点で可笑しい。むしろ死ななかっただけルーラーを褒めるべきなのだろうが、この大英雄の基準は色々と可笑しいので参考にしてはいけない。
「ルーラーの嬢ちゃんを海の底から引き上げた後は……ケイネスの野郎になんて言えばいいのやら。ま、敵の真名を持ち帰っただけまだマシか、っと」
これから訪れるであろう受難に、クー・フーリンはまた深い溜息を空きながら空を仰ぐ。
星が綺麗だ。
現実逃避の様に、彼はそう呟いたのだった。
意識していなかったのに兄貴の兄貴力がッ!!やっぱり俺たちの兄貴は最強なんだ!(カリヤーン感)それと地味にヨッシーにもカリヤーンの最強病が移ってる気がががが。ホントに最強だからなんも言えんのだが(´・ω・)
で、ルーラーさんキックで海底に沈められました。マジ不憫。令呪使う暇など与えんよというかの如く鳩尾に爆裂キックぶち込まれて意識を刈り取られたジャンヌさんェ・・・なお、後に兄貴に助けられた模様。
そしてチート姉貴は最愛の妹にネックハンギングツリーかまされて拉致られました。切嗣?ああ、マイヤンに背負われて撤退中ですが、何か?(愉悦
静謐ちゃん「・・・・私の出た意味とは一体」
私が出したかった。それだけ。反省はしてない(´・ω・`)
おまけ
現在のアヴェトリアのステータス
筋力A+++ 耐久B++ 敏捷EX
魔力A 幸運E- 宝具A++
・・・これは酷い(白目