Fate/argento sister   作:金髪大好き野郎

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二月頃には更新できそう(二月の終わりじゃないとは言ってない)。

はい、すいません毎度の如く遅れました(土下座)。ぶっちゃけると現在めっちゃスランプ気味です。殆ど筆が進んでいない状態です。それでも根性出して何とか仕上げました。・・・そのせいで色々と不出来なものになっているかもしれません。

実はバレンタイン当日には更新する予定でした。しかし出来上がった物を見て「あれ?なんか違くね?」と迷いに迷った結果大幅改変。元々二万文字もあった物を右往左往しながら修正し、結果六割近くを一から書き直しと言うことになったという・・・(泣。

それでも今回の話は自分でも色々(-ω-;)ウーンと思ってしまう様な出来上がりでした。正直最後の最後まで投稿を三月まで伸ばそうかと迷いましたが、苦渋の判断の末に投稿することを決意。

・・・まぁ、他に遅れた理由としては期末試験が終わっても課題やらレポートやらで全く執筆できるような状態では無かったことも含まれていますけど(盛大な言い訳)

因みに所持鯖全てのチョコは回収し終え、セイバーオルタとモーさんが遂に私のカルデアに・・・!!(ただし育成に手間取っている模様)

あと、新章である新宿の方は何というか実装直後に徹夜でクリアしたせいで翌日地獄を見ました。ガチャの方もね(爆死者感。

・・・一万ぶっこんでワンコ(アヴェンジャー)しか来ないってドウイウコトデスカ(´・ω・)?

それと、暫くは忙しくなりそうなのでここしばらくは更新や感想の返信はできなくなると思います。ご迷惑をおかけしますが、気を長くしてお待ちください<(_ _)>


※注意:今回の話はオリジナル要素を(恐らく)多く含んでおります。お嫌いな方はブラウザバックをお勧めします。


第三十一話・四日目の朝

 冬木市市街。

 

 すっかり深夜に包まれた街。所々に点在する住宅地やビル街の明りに仄かに照らされ、さながら天然のイルミネーションを連想させる光景の中、廃ビルの中で一人の少女の姿があった。

 

 現代風とは思えない衣装。鎖や鎧がついた紫色の装束。もしかしたら都会などで娯楽の一種としてこれを着こなす物がいるかもしれないが、冬木と言う開発途中の市町でそんな物を着る者はよほどの理由が無い限り居ないだろう。

 

 その道理で行けば、この少女は何らかの理由でその服を身に付けているのであり――――実際、彼女は常人では想像もつかないような事情でこの服を身に纏っている。

 

 魔術師が開催する聖杯戦争、その中立役である『裁定者(ルーラー)』であるが故に。

 

「……よし、魔力の痕跡はこれで消えましたね」

 

 床に置いていた手を離し、ルーラーは夜空を見上げた。

 

 ビルの中で見上げる? と思ったかもしれないが、彼女が今いる廃ビルは上部が抉れ吹き飛んだ(・・・・・・・)事で、爆破された建造物が如く天井が消えて丸見えになった状態だ。外から見ればさぞかし悲惨な有様になっているだろう。

 

「……もうあれでしょうか。自然災害か何かだと思って受け入れた方がいいのでしょうか」

 

 ある程度割り切って受け入れられる自然災害の方がまだマシかもしれないとルーラーは胃を痛めながら思った。

 

 何せ彼女が奔走して応急的な処置をした――――流石に異界化した森の方は無理だったが――――爆心地じみた被害地は全て人災なのだ。何を言っているのかわからないと思うが、それが正常な証だ。

 

 今のルーラーにできるのは魔力など一般人や霊脈に影響を及ぼしかねない物を消すことだけ。それすら大掛かりな儀式を数回行うことでようやく終了の目途が立ってきたというのだから、いかに今回の被害が凄まじいのかがわかる。

 一日目の倉庫街消滅などまだ優しい方だった、とルーラーは目からハイライトを消した。これ以上深く考えてはいけないと、本能の方が訴えだしたのだろう。

 

「聖堂教会の皆さんも頑張っているんです。ここで折れちゃだめですよ、私!」

 

 パチン! とルーラーは両手で頬を叩いて気合を入れ直した。

 

 流石にこの被害で起こる問題全てを彼女一人が収められるわけがない。もし他に協力者がいなければ、きっと今頃市民たちは大パニックを起こして集団ヒステリーなどに発展しかねなかっただろう。それを抑えられたのは偏に同じ後始末を押し付け――――もとい任された聖堂教会の係員などだ。

 

 血反吐を吐く勢いで奔走して後始末に駆られている彼らと比べれば、自分にかかっている負担などまだ軽い。と、ほぼ不休で働き続けたせいで魔力枯渇寸前のルーラーは言う。

 傍から見ればすでにへとへとで、今にも倒れそうな様子だ。これ以上無理をすれば、彼女はまた行き倒れかねない。

 

 それを自覚した途端、ルーラーのお腹からただならぬ音が発せられた。

 

 

 ――――グゥゥゥゥゥ~~~~~。

 

 

「…………とりあえず、少しだけ休憩しましょうか」

 

 同じ轍は二度は踏まない。彼女は持ってきていたスポーツバッグからコンビニで購入したおにぎり数個とドリンクを取り出した。二日目の行き倒れで学習したルーラーに隙は無かった。

 

 すっかり冷めたソレを頬張る。少し味は落ちているが、そこは食へのこだわりが半端では無い日本。多少冷めていても、数世紀前の人間であるルーラーにとっては十分に美味と呼べるほどの味は保っていた。

 とはいえ、昨晩食した晩餐と比べれば酷くお粗末な物ではあったが。

 

 いや、食神の晩餐と比べるのがお門違いというものか。

 

(しかし……何でしょう、この違和感は)

 

 口をもごもごと動かしながらルーラーは顎に手を当てて思いふける。先程から脳裏に引っかかる違和感。小さいようで、何か致命的なものの様で何時まで立っても不安が拭えない。

 

 市街地で起こる惨劇の数々は別にいい。いや、よくは無いが聖杯戦争なのだから『そう言う事』もあるだろう。問題は気づけそうで気づけないことが靄がかっているように見つからないという事。魚の小骨が喉に引っかかったような不快感だ。

 

 まるで、何かが正常に働いてないような――――。

 

 

「ッ――――誰ですか!」

 

 

 急激に増大する殺気。

 

 意識を切り替え、食いかけの食事をバッグに突っ込みながらルーラーは旗を構える。まるで潜んでいた蛇が得物を見つけ飛び掛からんとする瞬間の様な緊迫した空気。

 冷汗を滲ませながら、ルーラーは殺気のする方向を睨みつける。

 

 そこに居たのは亡霊(騎士)だった。

 

 生気と輝きを失った金髪。絶望に汚された碧眼。純白で壮麗な装飾が施されていたであろう鎧はすっかり血を浴びで赤黒く染まり、上質な素材を使っただろうマントは血と煤で汚れきっている。

 その手に握った剣も肉眼で見ただけでわかるほどに『堕ちて』いた。これがかの最強の聖剣の姉妹剣だと言って、誰が信じよう物か。

 

 一言で言い表せば、あの騎士は余りにも――――狂気に染まり過ぎている。

 

「ア■ァ、王……ヨ、私、ハ……!」

「貴方は、一体……? 私に何か御用がおありでも――――」

「私ハッ、私ハァァアア゛ァァア゛ア゛ァアァ゛アアァア■■■■■■■■■■■■ッッ!!!」

 

 空間が震えるほどの雄叫びは木霊した。防御に優れたルーラーですら無意識に耳を抑えてしまうほどの爆発的な本量が廃ビル全体を震わす。

 

「っっ…………!?」

「ガレスッ……ガヘリスッ……! 許シ■クレ……! 違ウ、違うノ■す、パーシヴァル、トリスタン…………! あァ、何故ッ、何故ダ、アグラヴェイン……! 何故私ヲ騙シタ……!! 何故私ヲ…………ッ!! アぁあ、血ガ、皆ノ、血が――――」

 

 その口から漏れるのは懺悔と憎悪の悲鳴。

 

 血を分けた兄弟と、戦場を共にした仲間を狂わされたとはいえその手に掛けた騎士の嘆き。悲しみ。二度と消えることのない怨嗟。地獄の炎の如く燃え盛る漆黒の感情は、彼自身の心身を確実に食い蝕んで行った。

 

 誰よりも騎士らしくあっただろう騎士は、その影すら残していない。今やもう、狂気だけで動く機械人形。

 

「私ノ身ハ……地獄ノ炎に三度焼■■ヨウトモ、足リ■イッ……! 王、ヨ……■■カ、私ヲ……!!」

「……貴方は、何か勘違いしているようです。私は王ではありません。ただの町娘です」

「■ニ、ヲ……!?」

 

 悲しみに満ちた表情でルーラーは騎士へと旗の穂先を突きつける。

 

 しかし殺気は、無い。彼女が本懐とするのは殺すことではなく、救うことなのだ。このまま彼を座に還したところで何も好転しない。むしろ、今後に禍根を残すかもしれない。

 故に彼女は、彼を救おうとする。

 

 

「我が名は――――ジャンヌ・ダルク。国を治めた王では無く、何処にでもいそうな信心深い少女ですよ」

 

 

 その名を聞いて、騎士は小さく嘲笑する。

 

 彼女の事を笑ったわけでは無い。その笑みはむしろ自虐。そう――――かつての主すら見分けられないぐらいに、自分は狂ってしまったのかと言う嘲笑いだった。

 

「私ハ、ナント愚か■イ男■のだ……! 忠義ヲ誓っタ主を、間違エ■ナド……!!」

「落ち着いてください。今貴方に必要なのは深い安静であり――――ッ、気をお静めになって! 狂気に身を任せてはいけません!!」

「アァ、アァァア゛■■ァ、ッァガァアァァアァァァアア■■■■■■■■■■■■■ッ!! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ――――!!!!」

 

 ピリピリと空気が震える。抑止しようとしても益々溢れ出る狂気。

 

 肉親を、親友を、家臣を、民を手に掛けた。何よりも守りたかったものを自身の手で深紅色に染め上げた。己の名が穢れるのは構わない。だけど、だとしても――――彼は命を捨てても守りたかったものを、自分で壊してしたことで自分の名だけでは無く忠義を誓った王の名と盟友の命をも穢してしまった。

 

 こんな己を、彼自身が許せるはずがない。否、許してはいけない。

 

 故に狂気はとめどなく溢れる。これが、自身への――――狂乱の白騎士、ガウェインへの罰なのだから。

 

 

「この剣ハ、黒陽ノ現身――――」

 

 

 ガウェインが手に握った剣を上空へと放り投げる。放られた剣はゆっくりと回転しながら円を描き、太陽を夜空に映し出した。――――だがその太陽が夜を絢爛に照らすことは無い。 

 

 映し出されたのは真っ黒な太陽(・・・・・・)。黒い光と言う光学的にあり得ない光を放つ負の塊。

 

 (狂気)に光を食われた日食の陽は、あらゆるものをどす黒く照らし始める。

 

 

「――――喰わレシ太陽を体現スる星ノ聖剣……! あらユる不浄ヲ纏イし焔の陽炎――――!!」

 

 

 投げられた黒き不浄の聖剣は役目を終えて持ち主の手に戻る。

 

 噴き出す黒炎。絶望と憎悪に染まりし汚れた焔は、彼自身の魂を焼く地獄の業焔の様に燃え盛る。例え相手が肺になっても尚、消えることが無いように。身も心も全て、残さず焼き尽さんと。

 

「まずっ――――間に合わな――――」

 

 突然の宝具解放にジャンヌは対応できなかった。そもそも彼女自身、戦闘に向いたサーヴァントでは無い。生前は旗を振り、兵隊の士気を上げ、先陣を切っていただけの事。元はただの町娘なのだ。実戦経験ではどうしてもその道の英雄には劣ってしまう。

 

 故に遅れる迎撃。既に相手は攻撃の準備を完了している。

 

 真っ黒な炎が放たれる。決して燃え尽きない、地獄の炎が―――――

 

 

「『転輪する(エクスカリバー)――――」

 

 

 

 

 

「『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』――――――――ッ!!」

 

 

 宝具を発動する寸前、ガウェインへと迫る一つの紅い閃光が煌めいた。

 

 音速を越えて衝突する一本の矢。空間を捻じり切りながら螺旋状に捻じれた矢がガウェインの脇腹を掠めて過ぎ去る。

 後に訪れる空間裂断。捻じり切られた空間はガウェインの脇腹を巻き込み、鮮血を床に撒き散らせた。

 

「ガァッ――――――――!?」

 

 唐突過ぎる一撃にバランスを崩すガウェイン。腕は既に動いている。止めることはできず、故に不安定な体勢から彼の炎の聖剣は放たれようとしていた。

 勿論、タイミングなど滅茶苦茶だ。誤差ではあるが、数秒だけその発動が遅れている。これならばジャンヌはその数秒を使い、回避することができるだろう。

 

 しかし彼女の後方には別のビルや市街地がある。ガウェインの聖剣は超高範囲攻撃用。もし防ぐものが何もなければ、冬木の街は一瞬にして地獄絵図になるだろう。

 

 すでに手遅れな気がするが。

 

 重傷を負ったことで生まれた隙を利用し、ジャンヌは素早く旗を立てる。

 

 

「我が旗よ! 罪なき民を護り給え! ――――『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!!」

「オォォオオォォオァアァァア゛ァアア゛ア゛アア!!! ――――勝利の剣(ガラティー)』ィィィィィン!!!!」

 

 

 展開される絶対守護領域。劫火の一撃から市民を守るために張られたEXランクの対魔力という絶対の護りは、正面から聖剣と鬩ぎ合う。

 

 この旗とて決して壊れない盾ではない。何度も使えば使うほど、強力な攻撃を防げば防ぐほど摩耗し、やがては壊れる。だが今こそ、その真価を発揮するとき。多くの人々を守るために掲げられた救済の旗は、それこそ対城宝具の一撃すら逸らし切る――――!!

 

「あ、ああああああああああッ!!!」

 

 炎。

 

 炎。

 

 炎。

 

 鮮烈なまでの輝き。幻視する。あの炎を。身を焼く紅い輝きを。忘れない、忘れるものか。生前この身を焼き尽くした紅蓮の炎を。そして自分は今、またその劫火を身に受けている。四肢が焦げる、肺が焼ける。錯覚だとはわかっている、それでも思い出してしまう。己の最期を。

 

 汗が流れる。

 

 膝が折れそうになる。

 

 だけど――――。

 

 だとしても――――守る。

 

 

「守り、通す……通して、みせるッ!!」

 

 

 これが今の自分にできる最大限の行動なのだから。此処で負ければ、ジャンヌ・ダルクの名が廃る。

 

 

 ――――それに、今の彼女は独りじゃない。

 

 

 肩に置かれる暖かい手。

 

 優しい笑みを浮かべた男性が、強き意思を灯した瞳でジャンヌを見た。

 

 

「――――よくやった。後は任せたまえ」

 

 

 まるで正義の味方の様に、(エミヤ)彼女(ジャンヌ)に語り掛けたのだった。

 

 

「……投影、開始(トレース・オン)

 

 その言葉は鍵だった。彼の心の中に内包する無限の剣を選びだすコード・ワード。

 次に彼は探し出す。あの聖剣に対抗できる剣を。アレは至高の剣の姉妹剣。故に対抗するための剣も、当然最高の物を用意しなければならない。並の宝具では焼き尽される。

 

 数秒の間もなく――――見つける。

 

 彼が迷いなく、間違いなく『至高』と断言する最強の剣。究極の一を体現した星の光を。

 

 

「禁じ手の中の禁じ手だ……! この投影、受けきれるかッ!!」

「ま、さカ――――ソノ剣は、何故貴方ガッ……!?」

 

 

 禁じ手と断じる切り札。

 遥か遠い、もう微かな記憶しか残っていない少年の頃、その心に焼きつけた、かの王の持つ黄金の剣。

 

 通常ならば負荷で霊核が砕けても可笑しくない投影であり、抑止力として派遣されているが故に可能な奥の手を今、彼は披露する。堕ちた聖剣を打倒するために。

 

 

「この光は永久に届かぬ王の剣――――『永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)』!」

 

 

 一振り。たった一振り。

 

 それだけで炎が斬り裂かれた。刃の表面を伝う光が飛翔し、ガウェインの体を大きく吹き飛ばす。彼がただ吹き飛ばされただけに終わったのは、ひとえにこの聖剣が真に迫った贋作だったが故。

 

 倒し切ることはできなかった。だが、距離と時間を稼いだ。ならば十分役目は果たしたといえよう。

 

「っガ、は――――――――」

「ッ……掴まれジャンヌ・ダルク! 撤退するぞ!」

「へっ? はひっ――――!?」

 

 エミヤは素早くジャンヌの腰に手を回すと、そのまま跳躍して廃ビルの外へと飛び出た。

 

 刃の様に鋭い風が身体を叩くが、今の状況で細かいことなど気にしてはいられない。近場の建物の屋根にクレーターを作りながら着地したエミヤは間髪入れず移動を再開し、次々と建物の屋上を飛び移っていく。

 

 追いつかれれば勝てないとわかっているからこそ。

 

 万全の状態ならばともかく、ランサーの一撃で右腕を負傷している今の彼では正面から打ち合うのは自殺行為同然。三十六計逃げるに如かず、だ。

 

 そして数分後、周りに追手がない事を確かめ終えたエミヤがようやく足を止める。

 

 どうやら、無事に逃げ切った様だ。

 

「フーッ……つくづく狂っているな、今回の聖杯戦争とやらは。イレギュラーが多過ぎて、何が正常なのかわからなくなってきたよ。……怪我はないかルーラー? 調子が悪ければこの場で――――……ルーラー?」

「――――――――っう」

 

 今の冬木で起こっている異常事態に皮肉を飛ばしながらもジャンヌの身を心配するエミヤ。しかし、ジャンヌからの返事は無い。代わりに小刻みな震えが抱えている腕から伝わるだけだ。

 

 まさか何か大怪我でも――――と思った瞬間、彼女の口から――――形容しがたき何かが生まれ始めた。

 

 

 

 

 俗に言う、嘔吐(ゲロ)である。

 

 

 

 

 

「%#$&@○×△□~~~~~~~~~!?!?」

「ちょっ、えっ、ルーラー! それは女としてしてはいけない顔だぞ! しっかりするんだ! って、待て、こっちを向くな! 私の外套に――――なんでさぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 深夜の夜に、理不尽に対する悲鳴が轟いたとさ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 命の渦巻く場所である海の上にいるように揺蕩う精神。揺ら揺らと穏やかに、アルフェリアの意識はうっすらとどこかの海に浮かんでいた。

 

 瞳に移るのは、どこかの記憶。自分でもない、誰の物かもわからない薄れた記憶。

 

 見てはいけないモノ。

 

 

 

 まず見えたのは倒れた揺り籠だった。所々が破損し、ただならぬ何かがあったことを示唆している。何かの争いごとに巻き込まれて壊れたのだろう。

 そして奥には、血だまりにて横になっている銀髪銀眼の女性。

 

 酷く既視感がある。

 

 いや――――既視感ではなく、似ているとわかったのだ。

 

 己の顔に、酷く似ていた。

 

 不思議とそれが気味が悪い物とは思わなかった。心のどこかで『それは当然』と、理由も分からずその事実を私は受け入れたのだ。自分でもわからない。だが受け入れずにはいられない。

 違和感など無かった。それが『必然』故に。

 

 次に認識できたのは、その女性を抱えている黄金の瞳を持つ初老の男性。

 涙を双眸に浮かべ、声にならない声を小さく喉から漏らしている。尋常では無い悲壮感、さながら妻を殺された夫の様な雰囲気だった。

 

 ……否、実際この光景は、その通りなのだろう。

 

 女性の方の息は絶え絶えで、今にも死にそうな様子だ。酸素を求める魚のようにパクパクと血の泡を吹く口を動かしている。見ているだけでこっちが痛ましく思える程の状態。同時に理解する。

 アレはどうあっても助からない、と。

 

 

 ――――マリアッ! ……ああ、何故、何故こんな……ッ!!

 

 ――――大丈、夫……大、丈夫、だか、ら……。

 

 ――――強がりはよせ! 今すぐ治療を……!

 

 

 銀髪の女性は必死で助けようとする男性に微笑みかけた。

 苦しいはずなのに、怖いはずなのに。それでも彼女は、笑顔を浮かべたのだった。何という精神性、何という献身。聖母の様な慈悲ある笑顔で、女性は無慈悲な宣告を告げる。

 

 

 ――――もう、いいのです。……手遅れ、ですから。

 

 ――――馬鹿なことを言うなッ! まだ、まだ間に合うはずなのだ……! 私の持つ第一法(・・・)なら――――

 

 ――――駄目です。駄目なのです。死を、否定しないで。ありのままを、受け入れて…………どうか……。

 

 

 男性は何らかの方法で彼女を助けられるのだろう。可能性としては、死者蘇生の方法か。それぐらいしなければいけない程、彼女の傷は深かった。

 

 もし彼女が普通の人間ならば、『死者蘇生』という誘惑に負けてしまっていたかもしれない。

 

 だが、女性はそれを拒否した。人に取ってこれ以上の無い褒章である筈の死からの蘇生を、『無の否定を』。彼女は当然のように拒んだのだ。死は受け入れる物であり、否定するべき物では無い、と。

 

 

 ――――頼む、逝くな……! お前が居なくなれば私は、私はこれから何を信じればいいのだ……!!

 

 ――――……信じて。人々の……あの子の、未来を。……お願い、■■■……!

 

 ――――何故……ッ! 何故信じられる!? お前をこんな結末に追い込んだのは、他ならぬ人類だというのに……!

 

 ――――間が、悪かったのです。だから、……失望、しないで……?

 

 ――――……私、はッ………………!!

 

 

 言葉を聞いて、男性は様々な感情を顔に塗りたくった。

 

 最も顕著なのは悲しみと怒り。悲哀と憤怒が入り混じった混沌とした表情で、男性は歯ぎしりする。

 最愛の者が傷つけられたにも関わらず、寄りにもよってその傷ついた者が『誰も憎むな』と言っているのだ。この場合、湧き上がる憤怒を一体誰にぶつければいい。

 

 怒りの矛先を、何処に向ければいいのだ。

 

 

 ――――目を、逸らさず、見続けて……人の、歩む姿、を……。人々の……未来を……希望……を――――

 

 

 聞こえる声が風前の灯火の如く消えるように弱まっていく。

 

 彼女が何を言っているのかはよくわからなかった。だけど、大切な何かを伝えたがっているのは、確かだ。命を削って、彼女は誰かに何かを伝えている。忘れるなと、目を逸らすなと。未来を、希望を見続けろと。

 

 視線がこちらに向いた。

 

 

 ――――ごめん、なさい……。貴方には、まだしてあげるべきことが、多過ぎるのに……。

 

 

 その言葉は、誰に投げかけられた言葉か。

 

 やはりそれはこの風景を見ているであろう『赤ん坊』なのだろう。生まれてまだ間もないのか、視界の端で赤ん坊の手足が揺れるように動いている。

 しかし気のせいか、懸命に手を母の方に伸ばしているようにも見えた。

 

 お願いだから行かないで、と訴えるように。

 

 

 ――――ふふっ……■■■■……私の可愛い、大切な息子。どうか、どうか貴方の父と……幸せに……生、きて、くだ、さ……………。

 

 ――――……マリ、ア…………返事を、返事をしてくれ、マリア! 私を置いて行くな! 頼む……! 頼むから、受け入れてくれ……!

 

 

 それきり女性の声はしなくなる。呼吸の音さえ、聞こえてこない。

 

 誰が何を言わなくても分かる。理解してしまう。たった今、一児の母である彼女は息を引き取ったのだ。そして誰かがその亡骸を抱いて静かに泣いている。恐らく彼女の夫である男性が。

 

 妻を目の前で亡くしたのだ。涙を流さない道理はない。そして彼は叫び続ける。

 

 

 ――――何故! 何故彼女が死なねばならんッ! 誰よりも平和を願った彼女が!

 

 ――――異端でありながら人々の平和を慈しみ、笑顔であれと祈り続けた彼女が、何故ッ……!

 

 ――――何故彼女を人として扱わなかった、魔術協会よ……! 何故私を求め続ける、聖堂教会よ……! お前たちは、お前たちは目的のためなら人の幸せすら平気で踏みにじるのか……! 私が、私たちが貴様らに何をした……ッ!!

 

 

 怒り、憎しみ、悲しみ。諸々の感情が入り混じった混沌の嘆き。狂気すら感じられる怒号。

 

 何もしていない。何も奪っていない。なのに、全てを奪われた憎悪は計り知れない。人間たちの理不尽な欲望で、彼は最愛の妻を亡くした。何もしていないのに、彼は全てを奪われたのだ。

 

 なんだこれは、ふざけるな。こんな事、認めて良いわけがない。

 

 

 ――――マリア……最早、誰も信じられんよ……。もう、私は疲れた……私は、私はお前がいてくれさえすれば……それでよかったのに……ッ!!

 

 

 妻に生きてもらいたいと願って何が悪い。

 

 ただ平和に、夫婦仲睦ましく暮らしたいと思って何が悪い。

 

 彼らは、何も悪くない。

 

 なら、誰が悪い――――?

 

 決まっている。

 

 自分から全てを奪った者達――――

 

 

 ―――――…………いや、何千年経とうとも進歩をせぬ哀れな畜生(人類)共だ。もっと早く、気づくべきだった……!!

 

 そう確信した瞬間、彼の目は黄金から血よりも濃い深紅へと変化した。彼は今この瞬間、何かを捨てたのだ。己が己である証を。その身から発せられる親への愛を。命の次に大切なモノすら投げ捨て、彼は人類史に仇成す者へと変貌する。

 

 

 ――――観測者(我が身)が傍観することに、もう意味はない。判決は今、下った。人類よ……原罪が消えても尚、貴様らが懲りることなく新たに二千年間積み上げて来た(悪性)――――新罪(・・)を清算する時だ……!!

 

 

 別人の様な鋭い雰囲気を纏い、男は妻の亡骸を抱きながら立ち上がる。

 

 その眼は、傷ついた獣のそれだった。傷つきながらも立ち上がり百獣の王。そう言い例えるのが相応しいほど、彼の気は狂うほど張り詰まっていた。常人ならば、視線を向けられただけで気絶しそうなほどに。

 

 

 ――――我が最後の息子よ。私は、駄目だ。私にお前を育てる資格は、無い。だからどうか……待っていてくれ。いずれ、必ずお前の楽園を――――

 

 

 男が懐から何かの欠片を取り出し、赤ん坊の胸に押し付けた。そして欠片はまるで吸い込まれるように赤ん坊の体の中へと消えていく。

 この男は、一体何をしたのだろうか。少なくとも、この稚児に害を成すための事では無いと思われるが――――酷く、嫌な予感が私の胸を満たす。

 

 まるで爆弾を胸に埋め込まれでもしたのではないか、と思ってしまうほどに。

 

 

 ――――だがもし、もしもお前が、私の行いを愚かな間違いだと思ったなら――――

 

 

 近くに寄ったことで、男の顔がはっきり見える。

 

 どこかで見たことのある顔だ。しかし薄れている意識故か、はっきりと思い出せない。一体、誰なのだろう。

 答えは、今は出ることは無かった。

 

 

 ――――どうか私を、止めてくれ――――

 

 

 乞い願うように男が呟き――――その言葉を最後に私の意識は現世へ引き戻されていく。

 

 サーヴァントの身である以上、本来ならば見るはずの無い夢。何故そんな物を見てしまったのかは未だに理解が追いついていない。だが今見た物は確実に己と無関係なことでは無いだろうという事は、嫌でも理解出来ている。

 

 だってこの夢は、紛れも無く彼の――――

 

 

 

 

 

 

「フォーウ」

「……ん?」

 

 目を開けば、目の前にはモフモフが存在していた。何を言っているのかわからにと思うが以下略。

 

 うん、ええと、どういう状況なんだこれ。と言うかコレ、フォウくんもといキャスパリーグもといプライミッツ・マーダーさんだよね。一昔前に私のペットと小規模な大怪獣決戦を繰り広げた。

 

 そんな子がどうして此処に居て、何故私の頬をぺろぺろしているのかはよくわからない。わかりたくないが、わからなければ現状の認識が酷く滞ることは間違いないので、とりあえず欠如した気絶直前の記憶の修復に勤しむ。

 

「確か、ん~……あっ」

 

 微睡んでいた脳の機能も回復してきたのか記憶が少しずつ戻り始める。

 

 色々あって大怪我を負いながら私はアルトリアを連れて令呪を使い拠点へと強制帰還し、そこれまさかの星のアルテミット・ワン――――ORTが現れるという予想外に予想外を重ねた超展開が繰り広げられた。

 

 何時か封印が解けるとは思っていたが、まさかこんな最悪のタイミングで。そう思っていたが何故か「ズキュゥゥゥゥゥゥゥン!」されて傷を治してもらい、そしてフォウくんが現れてハクと乱闘しマーリンの激ウザスマイルと「ジャンジャジャ~ン! 今明かされる衝撃の真実ゥ~! アルフェリア~、プライミッツ・マーダーを解き放ったのはァ、この俺だァ!」が炸裂して本能的にキックでぶっ飛ばして…………。

 

 

 

 …………ああ、魔力が切れてぶっ倒れたんだっけ。

 

 

 

 咄嗟に周囲の『大源(マナ)』を吸収し、ギリギリのタイミングで現在契約中のサーヴァント二人への魔力供給を狭め、『魔力貯蔵空間(マナ・ストレージボックス)』に溜めておいた魔力を回復に回す等々。

 色々やっては見たがやはりというか気を失う数瞬で行っただけの事。意識は回復しても体は絶好に絶不調だ。

 

 信じられないほど気怠い。今なら大の大人数人しか相手にできなさそうだ。

 

「あーあ、やっちゃったなぁ……」

 

 これでも一応自身のコンディションには気を使っていたつもりだったのだが、この様だ。アルトリアを保護するためとは言え我ながら無茶をしたものだ。

 

 否、途中までは簡単に復帰可能な域には無茶は留めておいた。

 決定打になったのは、やはり呪いの短剣による心臓一突き。完全な不意打ちで完璧に決まったあの一撃は、この肉体でも中々に堪えた。事実、治ったはずなのに未だに胸に鈍痛が走り続けている。

 

 流石に宝具級の呪いを喰らえばただでは済まないか。おかげで心臓の魔力炉心もあまり調子は良くない。

 

 後で適当に回復用霊薬(エリクシル)でも調合して飲んでおこう。

 

「しっかし……誰もいないねー」

「フォウフォーウ」

「ああ、ごめん。君が居たね」

 

 そして現在、この言葉通り私以外この寝室には誰もいなかった。

 

 まぁ何時目覚めるかもわからないのに何時までも付きっきりで看病する方がおかしいのだが、せめて一人ぐらいいてくれならなぁ……。少しだけ寂しさを感じた。

 いや、今は聖杯戦争中。下手に気を抜けば何処から敵が現れるかわからない以上、下手に私に構う余裕は――――

 

 

「――――やぁ」

 

 

 …………今一番聞きたくなかった声が聞こえた気がするが、そんなことは無かったぜ。

 

 もし誰かが誰かの声を聞いていたとしても、私は何も聞こえなかった。それはつまり誰もいないという事であり誰も声を発しなかったということである。イイネ? OK、証明終了(Q.E.D.)

 

「おやおや、育ての親と久々に顔を合わせたというのに随分つれない反応じゃないか。そこがまた可愛い所だけどね」

「……起床早々鳥肌の立つような冗談はやめてくれないかな、マーリン」

 

 諦めて私は声のした方に視線を向ける。

 

 そこには確かにマーリンが居た。長々と伸びている白髪、いかにもイケメンという風な青少年の顔、そして幾重にも重ねられた白衣。間違いなく我が師であり育ての親のマーリンである。

 因みに実年齢は推定でも千歳以上のスーパーインキュバスジジイだが。

 

「酷いなぁ。君だって座で過ごした年月を加えれば僕とどっこいどっこいだと思うけど?」

「霊体だからノーカンだよノーカン。ていうか大体は寝てたから体感的にはざっと四百年前後程度だし。三倍以上生きてる貴方とは到底釣り合わないと思うけど?」

「はっはっは、言うようになったじゃないか。まぁそれよりも、キャスパリーグ、そろそろ彼女の傍から離れたらどうだい? ほら、僕と一緒に居た方が君もこの世界に滞在しやすいわけで」

 

 マーリンがキャスパリーグに手を伸ばして、速攻でパンチで叩き返された。うわぁい、いいぞもっとやってくださいフォウさん。

 

「フォウフォーウ! ファ――――――!!」

「おぉう、いつの間にかこんな反抗的になったんだお前は。これでも僕、一応君の元飼い主何だけどなァ!」

「元だからでしょうに……」

「まぁそうだね。ぶっちゃけ今の僕にとってのキャスパリーグは、現在の飼い主にその子を借りているだけの関係だしね」

「……現在の飼い主って、ちょっと待ちなさい。貴方まさか……!?」

「ああ、うん。ちょっと黒い方の姫君に交渉を持ちかけてね。僕が大体五十年ぐらい定期的に血液を提供することを条件に、キャスパリーグ……いや、プライミッツ・マーダーを借りてきた。彼を介さなければ、僕はこの世に実体化できないからね」

 

 プライミッツ・マーダーの飼い主と言ったら間違いなく朱い月の後継者候補の一人である死徒の王、アルトルージュ・ブリュンスダッドの事である。そんな彼女と交渉し、ペットを借りてきた? 自分の血液を差し出してまで?

 

 ……一体何をやっているんだこの馬鹿は。

 

「何でそこまでするのよ……。例えこの世界に顕現できると言っても、抑止力の排斥で数日程度が限界でしょう? 抑止力が介入できない特異点ならまだしも、どうして……」

「そりゃ困っている可愛い可愛い愛弟子に会いに行きたかったからね! ほら、僕って意外と世話焼きだし? やっぱり身内が困っているならお節介ぐらい焼きたいものだよ。それに……君の周りはいつも面白いことばかり転がり込んでくるからネ!」

「……はぁ」

 

 相変わらず碌でもない理由で逆に安心した。流石マーリン、千年経とうとも全くぶれない性格は清々しいぐらいで殴り飛ばしたくなる。もう蹴り飛ばしたけど。いやこの場合は拳じゃないからノーカンだな。うん、後で一発ぶち込んでおこう。

 

 ため息をつきながら体を起こそうとする。だが、妙に体に力が入らない。

 

 ……チッ、霊薬か。

 

「マーリン」

「君は直ぐに無理をしそうだからね。傷が治るまでは安静にしていてくれたまえ。でないと監視役を請け負った僕がアルトリアに殺される」

「この世界で殺しても死なないでしょ貴方」

「実体じゃないからねー。まぁそれでも痛い物は痛いんだよ? 治癒魔術を使ったのに、未だに肛門が鈍痛を訴えてるのがその証拠だ」

「肛門?」

「あ、いや、何でもないよ? うん、何でもない何でもない。……それに」

 

 何やら不可解な言葉を零して濁すマーリン。個人的にとても気になることではあるが、まぁ機会があれば後で追求しよう。それよりこいつはなぜ顔を近づけてきているんだ。

 

 え、ちょ、顔近い近い近い。

 

「……君の無防備な姿を独り占めできるからね」

「うわっ」

 

 冗談抜きで鳥肌が立った。何故かって? 生前こいつの女癖の悪さと口説き文句を散々近くで見てきた私が、今更こんな歯が浮くようなセリフに赤面するとでも思っていたのかヴぁかめ! 私は軽い男に引っかかるほどガードが薄い女では無いのだ。

 

 だから頼むから顔を近づけないでください。本当に気持ち悪いんです。いや、ホント、ちょ、待――――。

 

「その反応は酷いなぁ~。ま、大丈夫大丈夫。僕はアルトリアに嬲り殺されたくないからね。流石に君に手を出すような真似はしないよ」

「う、うん? そ、そう。じゃあ早く顔を遠ざけて――――」

「――――でもちょっと舐めるぐらいはいいと思うんだ」

「……な、舐めるってどこを?」

「そりゃあ勿論――――」

 

 

 

 

「――――姉さんが起きた様な気配がしたので、すっ飛んできました! 変なことしていませんよねマーリ…………」

「あっ」

 

 

 

 

 部屋の扉が蹴られて吹き飛び、窓ガラスをぶち割りながら外へと放り出される。

 

 そんなことができる筋力の持ち主は間違いなくサーヴァント。そしてこの声は間違いなく、あの子だ。私が、聞き間違えるはずがない。

 

 アルトリアが、そこに居た。

 

 

 

 

 ただし阿修羅も裸足で逃げ出す形相を浮かべていたが。

 

 

「マーリン」

「や、やぁアルトリア。この通りアルフェリアは回復したよ! でも無理をさせると体を壊しかねないから私の特性霊薬でちょっと動きを止めているけど私は別に手を出すつもりは全くなくてただ単純にからかって遊びたいという思いがあっただけで決してよこしまな思いで彼女の顔とか耳とか首を舐めようとしたわけではな――――」

「マーリン」

「だから頼むから聖剣はやめてくれ。頼むちょっと待って此処でそれはまずいってまずいですよ! お願いしますストップタンマタンマタンマプリーズヘルプミー! 救いはないんですか!?」

「マーリン」

「あっはい」

 

 無言で武装するアルトリア。右手に真っ黒に染まった聖剣を携えた様は間違いなく覇王、否、魔王。この世の恐怖全てを放っても可笑しくないほどの気迫を纏いながら、我が妹は雄々しき姿を披露した。

 

 人、それを処刑とも言う。

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め…………!」

「待ってくれ! 判決の余地を――――」

「フォウフォウフォーウ(訳:問答無用で有罪ですね間違いない)」

 

 マーリンの視線が私の方に向いてきた。救いを求めているのだろうか。さながら地獄に落ちたカンダタのように釈迦から差し出される蜘蛛の糸を待つが如く。

 

 ……でも悪戯しようとした人に助けて求めるのは正直どうかと思います。

 

 と、いうわけで。

 

「マーリン?」

「うん、何かな!?」

有罪(ギルティ)

「ちょっ」

「――――吹き飛べ色欲ジジイ! 『鏖殺するは卑王の剣(エクスカリバー・ヴォーティガーン)』――――ッ!!」

「神は死んだ――――――――っっ!!」

 

 その日、真っ黒な光が空へと昇った。

 

 

 

 

 三十分後、私が目覚めたという知らせを聞いたのか身近な者達が絶え間なく訪問してきた。

 

 モードレッドを始めとしてランスロット、桜、雁夜、氷室、ミルフェルージュ、ハク、ORT等々――――魔術関係者が見たらその場で泡を吹いて倒れそうなナインナップに思わず苦笑する。

 

 どうやら彼らは私が気絶していた間は極力魔力を無駄遣いしないように大人しく自室で待機していたようで、そのおかげで私は予定より大幅に早く目覚めることができたらしい。マーリンやORTの助力もあったおかげで、心臓に大穴が空いたというのに後遺症などは全くないまま快調に戻るらしい。

 

 で、まぁ、それだけならいいのだが……女性陣の大半が揃いも揃って私の布団に潜り込もうとしているのは何故だろうか。男性陣は当然ながら遠くで見つめて苦笑いを浮かべているだけだが、止めようとはしない。

 

 ……この軍団を止められるとは思えないけど。

 

「モードレッド、反対側に回ってください! こちらは私が死守します!」

「了解だぜ父上! うおおおお! どけや蜘蛛ヤロー!」

「むっ……我が伴侶への添い寝を邪魔するとは……無粋な奴め。蹴散らしてくれる!」

「個人的にはサクラニウムは大切だと思うので必然的に私がお姉ちゃんと一緒に寝るのは常識的に当然だと思います。と言うわけで退いてください。必殺サクラビーム撃っちゃいますよ? いいんですか?」

「それ以上にペットとして主人の安寧を守るために傍に居ることは当たり前であってつまりアルフェリア様のペットであるこのハクが一番添い寝に適していると思います。皆さん邪魔なのでさっさと退かないとブレス撃ちますよ?」

 

 大乱闘ス○ッシュブラ○ーズじゃないんですからベッドの上でいがみ合いはしないでください。一応怪我人何ですけど私……。

 

「……何やってるのよアンタ達」

「桜……それはもう、色々と手遅れな気がするよ……」

 

 常識的な女性陣が七人(?)中二人しかいないってどういうことですか橘さん、じゃなくて神様。

 私の周りには常識を備えた女性は集まりにくいというヘンテコな運命でもあるのだろうか。実に嫌すぎる運命だ。畜生、これも全部マーリンが悪いんだ。

 

 おのれマーリン……! ゆ゛る゛さ゛ん゛!

 

「なんかアルフェリアがとっても理不尽な責任転嫁をしているような気がするぞぅ」

「気のせいでしょうマーリン。キャメロットでの異変の大半は貴方のせいでしたし、可笑しなことがあったら貴方を疑うのはあながち間違いでもないかと」

「フォウ、ファ~」

「ランスロットくん、君も地味に刺々しくないかい? 一応私、君の霊核の修復を手伝ったんだけどなぁ」

 

 因みにその異変のほとんどは私が奔走して解決する羽目になりました。キャメロット内で大繁殖した巨大蜘蛛の後処理とか、冗談抜きで悪夢ものだったからね……?

 

「な、なあ君たち。彼女の怪我に響くだろうし、そろそろその辺に……」

「「「「「あ゛ぁ?」」」」」

「はいなんでもございません。どうぞごゆっくり」

 

 女性陣のガン飛ばしにカリヤーン敢え無く撃沈。知ってた、知ってたけど、せめて桜からの視線には耐えてくれませんかね。

 

「あ、おじさん。お願いがあるんだけど」

「な、何だい桜ちゃん?」

「この四人を足止めしてくれないかな」

「」

 

 ……桜ちゃん、それ「死んで来い」って言ってるのと大差ないと思うよ?

 

「雁夜……元マスターとはいえ、同情しますよ」

「あっはっは、ランスロットテメェ! 霊核半分くらい欠けてるくせに随分元気だなァ! お前が代わりにやった方が確実なんじゃないか!?」

「いえ、むしろ霊核は修復中なので現在は最高に絶不調です。それにこの身はただの騎士故、王の足止めなどとてもとても……プフッ」

「グッバイカリヤーン。フォーエバーカリヤーン。墓ができたらその雄姿を称えてアヴァロン製の豪華な花束を飾ってあげよう」

「チックショォォォォォォォォ!!!」

 

 これぞまさに味方/Zero。どんまい雁夜さん、生きていたら後で御馳走作ってあげるから耐えてくださいな。

 

 ……そう言えば、何かが足りない気がする。

 

 いや、足りないというか、誰かが居ないような。誰、だろうか。普通ならば真っ先に駆けつけてきそうな人が不思議とこの場に居ないせいで、微かな違和感をひしひしと感じる。

 一体誰が、この場にいない――――?

 

 

 

「……ねぇ、ヨシュアは何処?」

 

 

 

 私の言葉で、この場の全員が固まった。

 何故そんな反応をしたのかはわからない。だけどその光景に、私は背中に氷柱を入れられたような怖気を感じて脂汗を顔に滲ませる。

 

 一体、何が。

 

「あー、その、それは……」

「その、ヨシュアさんは」

「……外に居るわ。一応貴女が目覚めたという知らせは伝えたけど……ごめんなさい、こればかりは本人に聞いて」

「え……?」

 

 ルージュがぎこちない表情でそう告げた。

 

 皆も揃って俯いている。唯一ORTだけは無表情のままだったが、何も言わない。何故? ――――決まっているだろう。彼の身にただならぬ事が起きた、ということだ。

 

 それこそ、死ぬよりも悲惨なことが。

 

「ッ――――」

「アルトリア! 彼女を押さえつけて!」

「駄目です姉さん! 無理に動いたら、傷が――――!」

「……ごめんなさい。もうちょっとだけ、無茶する。――――この身は儚き夢幻となりて(I am the hollow phantasm)

 

 息を吸うような自然さで魔法陣を展開。限界まで予備動作を察知されないようにしたおかげで、あのマーリンすら止める隙を与えないように魔術を発動できた。

 元より此処は私の『神殿』。全力で妨害すれば例え神代の魔術師だろうがその手札を封殺できる。

 

「なっ――――」

「――――夢と現は交り替わる(Switch phantom to reality of the would)

 

 景色が切り替わる。

 

 置換魔術(フラッシュ・エア)を利用した近距離転移魔術。私の作り上げた神殿内であればほぼ一瞬で移動可能だが、逆に言えば自身の作り上げた要塞から出てしまえば一瞬で無力と化してしまうという極端な代物である。

 一応数メートル程度ならば移動可能だが、大量の魔力を使ってただか数メートル。それなら走った方がまだ安上がりと言う物だ。

 

 私はそれを使ってこの家の庭に出た。小さな気配ではあったが、ここら一帯は私の内臓も同然。本気で全容を把握したならば例え鼠一匹見逃さない。

 

 故に、彼が気配を殺していようが見つけるのはそう難しいことでは無かった。

 

 ……いや、少しだけ手間取ったかもしれない。

 

 

 今の彼が、依然と比べてあまりにも『変質』していたから。

 

 

「……意外と、早かったな」

「…………ヨシュ、ア?」

 

 いつもと変わらない風体で、彼は木の幹に背中を預けて空を見上げている。

 

 そう表せば、いつもと何も変わらない彼だ。――――だが、既に何もかもが変わり果てていた。

 

 夜のように黒かったはずの右目は、今では光を受けて輝く黄金色に。心無しか頭髪の一部分も仄かに金色の輝きを放っており――――何よりその右腕は、不自然なまでに光輝を纏っていた。

 黄金製の義手と表すのが何よりも的確なほどに、その腕は人では無くなっていたのだ。

 

 何と、言葉を発せばいいのか。

 

「……あー、何を言えばいいのやら。俺にも、よくわからないんだがな。……どうも人間、やめちまったらしいな」

 

 開いた口から出てきたのは、何とも言えない自虐。

 困惑の色も混ざっていることから、恐らく彼も何が何だか把握しきっていないのだろう。私でさえ、彼の身に何が起こっているのか全くわからないのだから。

 

 否、片鱗だけならば理解はしている。

 

 あの腕を構成している物質は――――彼の体内の大半を占めていた未知の金属。それが何故か表に這い出て、彼の右腕を覆い尽くした。しかし、一体何があって……?

 

「夢を、見た」

「……夢?」

「ああ。目を開けばそこには二人の男女。女の方は死にかけで、男の方は泣き崩れている。それだけなら単純な悪夢で済ませたんだろうが……女の方の顔に、少し見覚えがあった」

 

 無表情。彼が浮かべていた表情は、一切感情が無い。

 

 しかしただ感情が見えないだけじゃない。黄金に輝く瞳が漆黒の奈落に見えるほどに、『空虚』でもあった。

 

「……俺の、母さんだった。写真で何度も見たからわかる。母さんだったんだよ、あの人は。……でもそれはいいんだ。とっくの昔に亡くなっていたのは、義父に聞かされていたからな。だけど、何で……何であの男(・・・)が――――」

 

 彼がそんな表情を浮かべる理由は何だろうか。

 

 夢で己の母の死を見たから? 違う。そんな生易しい(・・・・)ものではない。彼がここまで心を空洞にしている理由は、男――――彼の父の方にあった。

 余りにも衝撃的過ぎる真実が、彼の心を抉ったのだ。

 

 

「――――何であの男(アダム)が、あそこに居たんだよ……!! 何で俺を殺そうとした男が(・・・・・・・・・・・・)俺の父親(・・)みたいな面してるんだよ!!!」

 

 

 空洞の激情が垣間見える。

 

 彼が見たのがただの男ならこんなにも感情を露わにすることは無かっただろう。だが、よりにもよってあの男が――――この聖杯戦争を狂わせている者達の一人が、人類を抹殺しようとしている張本人が己の父親だと知った彼の心情は、とても他人が口を出せる物では無い。

 

 

「意味わかんねぇよ……! 頭と腹ぶっ刺されて死んだと思ったら生き返って! 気づけば得体のしれない物質に右腕食われて! 挙句の果てに父親が生きてて人類滅亡企んでる……? 漫画やアニメじゃないんだから全然笑えねえんだよ……!! しかもこの右腕は触った物全部同じ物質に変えて金属結晶を生やしやがる……! 俺はミダス王か何かか? ッ……あぁもう、クソがっ……!」

 

 

 そう怒鳴り散らしながらヨシュアは右手を地面に叩き付ける。

 

 瞬間――――その場所を中心に金属結晶の畑が生み出された。黄金に輝く結晶は光を乱反射して庭を金色に照らす。さながら錬金術の極意である黄金錬成(アルス・マグナ)の如き超常現象。

 しかしヨシュアはそれを鬱陶し気に払い、砕けた結晶が草の上に転がった。他の人が見れば欲を刺激される光景だろうが、彼はまるで呪いのように忌々しいという視線を己の右腕に飛ばす。

 

 本人からしてみれば、気味が悪いことこの上ないのだろう。

 数日前までの彼はただの時計塔に通う学生魔術師だったのだ。それが何の前触れもなくこんな異能を手にして、忌避しないわけがない。

 

 それに、自身の父親がとんでもない事を仕出かそうとしている異常者だという事実も、受け入れがたいに違いない。肉親が本気で人類の抹殺を企んでる事実など、どう受け取れというのだ。

 

「おまけに、星の表層と繋がっているとか……星の触覚とか、疑似真祖化とか、さ……本当に、意味わかんねぇよ……! ふざけんなよ、っ………!」

 

 人は己が理解出来ない出来事を忌み嫌う。

 

 しかし自己の身にその理解出来ない出来事が起きた時、一体どんな反応をするだろうか。物語の主人公ならば「人の役に立てよう」と思うかもしれない。だがそれは、残念ながら普通の反応では無い。

 

 彼はその目を濡らし、頬に涙を伝わせた。

 

 普通の人間なら泣いて、叫んで、助けを求める。何故、どうしてこんな力が、と。

 

 本の主人公に憧れる夢見がちな者ならばもう少し違う反応なのだろうが、ヨシュアは違った。ただの、普通の青年だった。漫画やアニメで悪役を蹴散らし人々を救うヒーローに憧れてもいない、巨大な力で世界を支配したいという支配欲に囚われてもいない。

 

 どこにでもいそうな、普通の青年だったのだ。

 

「俺は……俺、はッ…………!!」

 

「――――泣かないで」

 

 そんな彼を、私は力無く抱きしめた。霊薬のせいで未だに体があまり言うことを聞いてくれないが、それでも一人の青年を抱きしめることぐらいはできた。

 ただ抱きしめる。私にできることはそれだけだ。だからこそ、出来ることを全力で行う。私は持てる限りの心を持って、彼の心を癒していく。これ以上、傷ついた姿は見たくない。

 

「どうして……どうして、こんなことに…………! 俺はただ、お前と……ッ!」

「泣いてもいい、叫んでもいい、助けを求めてもいい。だけど――――自分を否定することだけはしないで。歩んできた人生を……拒まないで」

 

 癇癪を起した子供をなだめるように、ゆっくりと私は彼の頭を胸に抱き撫で続けた。

 

 何て悲惨な光景だろうか。求めてもいない力を手にして、触れたい物を無意識に変貌させ、その外見も酷く異質な物へと変わり果ててしまっている。そう簡単に受け入れられるはずがない。

 義父は他界し、母は逝き、父は敵となっている。私なら、こんな状況で頼れるのは身近な人だけ。

 

 ならば遠慮なく慰めよう。沢山撫でて、撫で続けて。そして時間をかけて凍った心を溶かしていくのだ。そうすれば何れ、きっと――――。

 

 ……数分程過ぎて、彼はようやく落ち着いた。

 

 様子も先程より随分良くなっており、ほんの少しだが現状を受け入れ出したらしい。最良の結果だ。もしあのまま自分の状態を拒みつづけていたら、恐らく私でも手が付けられない状態になっていただろう。

 

 最悪、暴走することも。

 

「……落ち着いた?」

「…………おかげさまで、少しは」

「ふふっ、よかった」

 

 こんなことでも、少しは彼の助けになったらしい。

 

 やはりこう言う時には人の温もりが一番だ。誰かが居る、その事実が人の不安を和らげる。それを視覚では無く触覚で伝えることによって、より効果的になるのだ。

 

 ……まぁ、ぶっちゃけアルトリアやらモードレッドなどを抱きしめていると、私がそうなるだけという話なんですけどね~。

 

「全く、私のマスターなんだから、もう少ししっかりしてよ?」

「……すまん」

「でも、そうだね。最近は色々どたばたしていたしね……あ、そうだ!」

 

 まるで天啓を得たように私の頭には妙案が浮かび上がった。

 

 これならいい気分転換になるだろうし、互いの関係も深まり合って一石二鳥。少々時間は使うだろうが、どうせ体が回復するまで戦闘はできないのだから、暇つぶしにもなる。二鳥どころか三鳥だ。

 

 なら、とりあえずヨシュアに提案してみようか。

 

「ヨシュア!」

「え? な、何だ?」

 

 顔を両手で固定して、私は彼を真っ直ぐ見つめながらこう言った。

 

 

 

 

 

「デート、しよっか」

「ブフォッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃物陰では。

 

「あぁぁぁぁぁぁんの男ぉぉぉぉぉぉぉ!! 姉さんからデートのお誘いなどぉッ……なんて、なんて羨ましいっ! そこを代わ――――モゴモゴムグゥー!?」

「あっはっは、お返しだよアルトリア。中々面白そうな展開になってきたからネ! ここはちょっと大人しくしていてくれたま、ちょっ、危ないから聖剣振り回さないでくれよぅ――――!?」

「貴方もですよモードレッド。ちょっと静かにしていてください。グッボーイ、グッボーイ」

「ムゴムガァァァァァァァァ!!(犬扱いしてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!)」

 

 暴れる闘牛を抑え込むが如く妹二人をマーリンとランスロットが拘束していた。今にも飛び出して聖剣ぶっぱしそうな迫真の雰囲気と混沌めいたこの光景に、流石の常識人枠である氷室はドン引きである。

 

 そんな氷室の視線は直ぐに四つん這いになった雁夜の背中に座りながら木の枝で地面に何かの絵を描いている桜へと向くのだが。

 こちらも中々カオスである。

 

「……桜? 何してるの?」

「必殺サクラビームの準備」

「えっ、何それ」

「魔法のステッキでハートを描いてピンク色の極太ビームを撃つんだ。月からの電波を受け取ったから間違いなくできると思う。たぶん」

「戻ってきて桜ぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……葵さん、凛ちゃん。桜は元気に遊んでるよ。あはははは。――――おのれ時臣ィ!!」

 

 一方、人外組は屋根の上でその光景を眺めていた。

 

 ただし変な電波を受信したのか実に可笑しなリアクションを見せている。

 人外枠が可笑しくない反応をする方がおかしいような気がしなくもないが、とりあえず割と常識的な元真祖はこの渦中に放り込まれて胃袋をキリキリと鳴らしていたのは想像に難くない。

 

「? 『でぇと』とは何だ? いつ発動する?」

「フォウフォウフォウ(訳:こんな関係じゃ……まだ、満足できねぇぜ……)」

「何!? アルフェリア様とデートと言ったら、ペットである私とでは無いのか!?」

「……まともな人外枠がもう一人欲しいわ…………」

 

 今日も相変わらず彼女(アルフェリア)の周りはカオスとなっていた。

 

 ある意味平常運転で平和という事なのかもしれない。……恐らくは。

 

 

 

 ――――四日目が始まる。

 

 

 ――――先にあるのは希望(生存)か、絶望(滅亡)か。

 

 

 ――――澄んだ日常は今宵で終わり、混濁した非日常(■■■・■■)は天に孔を空け這い出てくる。

 

 

 ――――獣は、直ぐ其処に。

 

 

 




まるで意味が分からんぞ!(決闘者並感)

と言うわけで二回目のデート。ニンゲンヤメマスカしてしまったヨッシーを宥めるために珍しくチート姉貴の方からのお誘い。ヨッシーはこれで姉貴のハートを掴めるのか・・・!(尚、後ろにはファンクラブがストーキングする予定の模様)




・・・ところで私シンクロデッキ(ジャンク)使いなんだけど、マスタールール4はどう対応すればいいんですかコレ・・・?(;´・ω・)

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