前の投稿から実に二ヶ月も経っていることを考えると「亀更新ってレベルじゃねぇぞ!」と言いたくなるわー。でも仕方ないよね。ニーア・オートマタとかホライズン・ゼロ・ドーンにハマってるからね。シカタナイネ(*´ω`)
・・・いえ、違うんですよ? 久々に長い春休みを貰ったからって貯金崩してゲーム三昧を楽しんでるとかあるわけないじゃないかー。アッハッハ。
・・・ゴメンネ☆(テヘペロ
余談ですが、今回もやっぱりカオスです。ギャグメインになると毎回筆が暴走するのはもう・・・癖かな?
全然関係ないけど2Bちゃんの背中とかお尻とか太ももとか最高だと思いました、まる
カオスだった。
もうなんていうか、そうとしか言いようがないほどにアインツベルンの拠点である古城の庭に広がる光景はカオスそのものを体現していた。
「フハハハハハハ! これぞマケドニア伝統の裸踊りよっ! 皆の者! 盛り上がってるかー!」
「伝統とか絶対嘘だ……。ライダー、僕は時々本当にどうしてお前が世界を征服しかけたのかわからなくなるよ……」
「おーおー、騒がしいねぇ……あ、この肉うめぇな」
征服王が酒をラッパ飲みしながら下半身裸で踊りを披露し、ウェイバー・ベルベットやクー・フーリンは色々と理解するのを諦めた目で料理を頬張り続けている。
「ええぞ! ええぞ! 我が命じる! もっと過激なスキンシップとやらを見せぇい!」
「姉さんがどこの馬の骨とも知れないクソガ……少女といちゃついているのは我慢なりませんが、それより姉さんかわいいですね! 抱きしめたいな、姉さん!!」
「うおおおおおおお! 姉上ー! 俺も抱きしめてくれー!」
「幼少の姿でも十分魅力的なのにも関わらず、大人になればさらに魅力的……。このような方に忠義を誓えるとは、ランスロット、臣下としてこれ以上の幸せはありません。……あ、私はロリコンではありませんからね?」
「あんな妹がいたら幸せでしょうねぇ……。あ、失礼ですが英雄王、幼女化する薬とか持っていませんか?」
また、英雄王や騎士王(黒)その他円卓の騎士や聖処女(笑)は聖杯から映し出される幼女の姿に某外人四コマのようなリアクションで勝手過ぎる盛り上がりを見せていた。これが彼の勇猛果敢な英雄伝説を築き上げた者達だと説明して信じる者は恐らく居ない。そう断言できるほど、色々酷かった。
因みに衛宮夫婦は己の娘が大きくなって小学校に通っている様子に喜んだり、赤毛の少年の存在に困惑したり、恐らくこの聖杯戦争で最も脳が一番活性化しているであろう瞬間だと思う。
「イリヤ! ああ、イリヤ。何て幸せそうなんだ……! 所でこの少年は誰だい? ちょっと起源弾……おっと、お礼を渡さなくっちゃあならないからね」
「切嗣ステイ! 母としての勘が告げるわ、あの子はきっと将来イリヤの御婿さ「それ以上言わないでくれアイリ! 僕は愛する娘が嫁ぐ姿なんて見たくないんだぁぁぁぁぁぁ!!!」えっ、き、切嗣ー!? 銃口を口に入れないで~!?」
……そして私は幼き自分が見事に暴走している光景を見て地面の上でのた打ち回っていた。
「あああああああ……! 違う、違うんだよぉ……! 私はロリコンじゃないから。別に幼女に抱きしめられたからって鼻血とか出さないからぁぁぁぁぁぁぁ! いっそ殺してぇぇぇ……! もう御嫁に行けないぃぃぃ……!」
…………これをカオスと言わずになんとする。
「むっ!? それは我にもワンチャンあるというやつでは――――」
「――――あるわけないだろカリバァーッ!!」
「ちょ、いきなり聖剣は反則ぐおわぁぁぁぁあああ――――――ッ!?」
もう近場で聖剣ビームが放たれてることとか気にしていられない。早く、早くこの大惨事にブレーキをかけねば色々と終わってしまう気がする。主に自分の威厳とかイメージとかが……!
この光景を作り出している元凶は何だ? 英雄王? 否、否である。間接的な原因ではあるものの、映像その物を映し出しているのは――――彼の取り出した聖杯。そう、つまり聖杯さえ何とかすればこの茶番もといカオス空間は終焉を迎える。間違いない(確信)。
「よし、聖杯を壊そう」
『何――――ッ!?』
私がそう宣言すると変態三銃士(五人)が立ちはだかってくる。構成員はギルガメッシュを筆頭とするアルトリア、モードレッド、ランスロット、そしてジャンヌ・ダルクだ。
彼らを退かせるのは私とて心苦しい。だが、だが、私にも引けない物はあるんだァ――――ッ!!
「考え直してください姉さん! これはチャンスなんです! そう、姉さんの可愛さをアピールするための!」
「求めてないよそんなチャンス!?」
「そうだぜ姉上! 俺はもっと見たいんだ! アヴァロンが! 俺たちの桃源郷が!」
「私はもう見たくないんだけど!?」
「いえ、アルフェリア様。これはその……せめて映像記録を」
「よしランスロット、後で魔力弾千発の刑だからね」
「アルフェリアさん! せめて、せめて実体験を……! 若返りの薬を飲んでぜひ姉妹プレイをおおおおおお!!」
「貴方今
我が愛すべきスイートシスターズたちはともかくランスロット、テメーは駄目だ。映像記録とか誰に見せる気だ。ニミュエか? ギネヴィアか? それともエレイン? どれも見られたら最終的にイジられる可能性大なのでさせん、させんよ……!
それとジャンヌはもはやキャラが行方不明などでどうか昨日の彼女に戻ってほしい。頼むから(切実)。
「待て待て待てぃ! まだ我の『魔法少女の姿が見たい』という願いは叶っておらんのでせめてその姿をこのビデオカメラの原典で撮影するまで一時休戦――――」
「知るかボケェェ!! ぶっ殺すぞAUO!! ――――
「「「「えっ」」」」
AUOの発言でついに堪忍袋の緒が切れた。そもそもの元凶がこいつがヘンテコな願い事を言ったせいだ。畜生、もう遠慮なしだ。負担なぞ知ったこっちゃないというかの如く、私は自身の切り札を解放する。
ちょっとやり過ぎなような気がしなくもないが、あわよくばこの場の全員の記憶が数時間分ほど消し飛んでくれると信じて。とりあえず犠牲が出ない程度には出力を抑えて方向を調整し、問答無用で私は星すら削る極撃をぶちかました。
尚、後からマスターの状態を見て凄まじく後悔する模様。
「有象無象、塵に還れェ!! 『
「ちょっと待っ――――」
『ギャ―――――――――――――――――――!?!?!?』
穏やかだった夜空に、綺麗な銀色の光がサーヴァントやマスターたちの悲鳴と共に空へと伸びる。
雲を裂き、空間を裂き、偶々通りかかっていた月の一部を抉りながら小惑星群を消滅させ、光は太陽系の果てまで伸びていったとさ。
めでたし、めでたし。
「………………………いや、なんでさ」
そんな光景を遠方のビル屋上から監視していた錬鉄の守護者はそう評したとかしていないとか。
◆◆◆◆◆◆
目が覚めたらそこはお花畑だった。何を言っているのかわからないと思うが以下略。
気を失っていたのか先程から前後の記憶が曖昧だ。何というか、脳が上手く働いていない気がする。まるで貧血みたいに気が遠い。貧血、みたいに……貧血?
……ああ、今思い出した。
確か皆と話をしていたらいきなりイリヤが抱き付いて来て、それで思わず年甲斐も無く鼻血を――――何というか、自分でも呆れかえってしまうほど馬鹿なことしてる気がする……。
いや、イリヤが可愛すぎるのが悪いんです。つまり私自身は何も悪くない。私は悪くねぇ!OK議論終了。この事については後でじっくり考えよう。
二回目の悲劇を未然に防ぐ敵な意味で。
「――――おや、もう目覚めたのかい? 予想より早かったね」
「……うへぇ」
聞き覚えのある声を聞いて、反射的にそんな声を出してしまう。
何というか脳に刻み付けられた自分の天敵の気配を察知したような感覚だ。実際天敵みたいなものだろう。生理的にダメ的な意味では間違ってないと思う。
何せこの声の主は――――花の魔術師、マーリン。
「やあやあ、アルフェリア。お久しぶりと言えばいいのかな?」
「できれば永遠に会いたくなかったんだけどねぇ……」
「そんなつれないことを言わないでおくれよ。僕の君の仲だろう?」
「私には腐れ縁の関係しか思いつかないんだけど。……一応聞くけど、貴方の中で私はどう位置付けなの?」
「親友?」
「くたばれ」
挨拶代わりのやりとりをしながら、はっきりしてきた意識を自覚してゆらゆらと立ち上がる。
軽く見渡せば、やはり花以外何もない。一面百合の花だらけの世界だ。空は変わらず青いが、太陽がない野に明るいのはどう言う事か。
いや、
アヴァロンはまずありえないので、九分九厘此処は私の夢想世界か。やれやれ、自分の夢の中がここまで可笑しな世界だったとは。悲しめばいいのやら。
ていうか百合の花って、まさか狙ってるのか? 私は
「うん、相変わらずで何よりだ。節操がない」
「懐が広いって言うんだよバーカ。で、わざわざ私の夢の中に出てきてどういうつもり? プチッて潰されたいのかな?」
見せびらかすように手の骨をゴキゴキと慣らすと、マーリンの笑顔が若干引き攣った。
こんな様になったが、夢の中のこいつはやろうと思えば赤ん坊でも潰せる。宿主に気付かれたら凄まじく弱体化する。夢魔共通の致命的な弱点だ。つまり子供の体になった私でも何ら問題ないという事だ。
まぁ、こいつ逃げ足だけは一丁前なので、やる前に速攻で逃げられるだろうけど。
「んんっ! まぁ待ちたまえ。今回来たのはただの確認と忠告だよ」
「……確認と忠告?」
確認はともかく、忠告とは何だろうか。
マーリンは昔から基本のほほんとしていて、常に肉体労働反対的な意見をして城の中でグータラしていた奴だ。そんな奴がわざわざこんな場所まで赴いて忠告するとは、一体どんな心変わりだ……?
「まず確認から。――――君は、元は平行世界の住人だね?」
「ん? 気づいていたの?」
「何もない所から急に出てきたんだ。座の方に変化が無いのにも関わらずにね。未来から来たという線もあるけど……その姿を見る限り、それはあり得ないなと」
「ああ……」
流石に子供の姿で「未来から来た」は無いだろう。過去から、と言うならばわからなくも無いが。
特に否定する必要もないので、私は「YES」のジェスチャーを送る。
「ふむふむ。因みに、飛ばされた原因に心当たりは?」
「聖杯――――の、大本……ウルクの大杯かな? それに向かって英雄王が『魔法少女見たーい!』何でふざけた願いを言った瞬間、気づいたら冬木市のど真ん中。士郎に拾ってもらえなかったら、一体どうなっていたことやら」
「君は馬鹿みたいに悪運が強いからね」
「ブリテン一のトラブルメーカーに言われたくないよ」
厄介事を引き寄せるだけ引き寄せて大体最後まで生き残るので否定もできないが、厄介事を一から生み出すこいつに言われたくない。と言うかその厄介事のほとんどがお前が作り出しているんだがな……。
「はっはっは、まぁその話はまた今度にしておこう」
「露骨に話逸らしてない? ていうか貴方なんか隠してない? ほら、聞いた瞬間私がキックで顎を蹴り飛ばすくらいデカいのを」
「ナニヲイッテイルノカサッパリワカラナイナ」
「おい、何で棒読みになった。おい」
色々絞めて聞き出したいが、また今度にしよう。このままでは話が進まない。
「次の質問だが……虚数空間の貯蔵はどうなっている?」
「あー……そうだね。宝具の類は殆ど消えている。素材や道具類も、あんまり残ってはいなかったね。たぶん平行世界の移動の際に色々と落としてきちゃったんだろうけど」
「……いや、それは違うよ」
「え?」
急に否定の声を出すマーリン。表情からして、冗談は言っていない。
しかしどうしてだろうか。――――そんな、とても悲しい話でも見たかの様な表情をするのは。
「この世界でも君の貯蔵は健在だ。普通なら問題なく全てを出し入れできる。……普通なら」
「……どういう事」
「『所有権』の問題さ。ほら、君、生前他の虚数魔術使いに盗まれない様に貴重な物や大切なモノにはほとんど魔術を施して自分以外には取り出せない様にしていただろう? つまり、そう言う事だ」
「……いや、全然わからないんだけど」
「――――アルフェ・フォン・アインツベルンは、アルフェリア・ペンドラゴンとは違う存在になっている、という事だよ」
「――――は?」
言っている意味がよくわからない。私は私だ。それが違う? 一体どう言う事だ……?
説明を求める視線を送ると、マーリンは言葉にするのを数秒間渋っていたが、やがて勘弁したように口を開く。そして私に取って予想外の事実を、述べた。
「……今の君は、平行世界にいる『アルフェリア・ペンドラゴン』の分体の魂を聖杯が採取し、魔力によって培養され作り出された存在だ。つまり、厳密には座に居る君本人と比較すると、魂がかなり変質している。人格面には影響はないみたいだが、実質ほぼ別人みたいなものだ。例えればそう、天然物と人工物の違いみたいなものさ。つまり、その――――」
「ふーん。何だそんな事か」
「君にとっては辛い事かもしれ…………アレ?」
心配して損した。
魂だか何だか知らないが、目に見えることのない代物の心配をしてどうしろと言うのだ。確かに虚数空間内に存在する諸々が使えないのは少し厳しいが、そこまで使う機会も無いだろうし特に大きい問題でもないだろう。
「え、えっと、何故そうまで平然としていられるんだい? 君は――――」
「知らないよそんなの。私は私。その認識があれば体が泥に変わろうが金属に変わろうが軟体生物……はちょっときついか。何にせよ『そんな事』私に取っては些事だよ些事。コップの中身がペ○シコーラだろうがコ○・コーラだろうが、そう問題は無いでしょ?」
「また微妙な例えを……」
中身が異なろうが大本が同じなら無問題という事だ。私は私。
個人的には珍しく狼狽するマーリンを見れたので、むしろラッキーかもしれない。
「……何ともまぁ、強い。体も、心も」
「褒めても何もでないよ」
「そうか。じゃあ最後に一つ忠告を送ろう。絶対に当たる保証はないし、当たらない保証もない。だが君の未来は――――きっと、波乱の満ちた物になる。前々から思ってはいたが、どうやっても君の人生には平穏の二文字は訪れなさそうだ。はっきり言って君のスキルに悪運EXが入っていても可笑しくないと思えるよ」
「あっそう」
自分でもわかっているさ、そんな事。かすれてはいるが、この先何が起こるかは大体把握しているし。
私というイレギュラーがいることによって多少変化はあるかもしれないが、人間一人が起こす変化など世界に取ってみれば誤差に過ぎない。恐らく、私が未然に事を防ごうがあまり意味はない。ブリテンの滅びの様に。
だが私は私ができることをするだけだ。新しい家族たちの負担を減らすために、この身を削ってでも奔走するだけ。なんだ、いつも通りじゃないか。なら簡単だ。
「ではこの先に訪れる数々の試練のために、少々餞別の品を送ろう。何、大したものじゃないさ。だからそんなに嫌そうな顔をしないでくれよぅ?」
いや、だってお前碌な物送ってくれた試しがないし……。
「一応、君の宝具の一つである黄金剣は僕が渡したんだが……。まぁいいか。じゃ、この小瓶と幻想種の素材をいくらか君の虚数空間に送っておくよ」
「えっ、ちょっと待って。出し入れは私にしかできないはずなんだけど」
「何、取り出すのは至難だけど、入れるだけなら簡単さ。これでも
「昔私に『剣を教えてあげよう!』とか言っておきながら三時間以内に凌駕されて逆にボコボコにされた奴なら覚えてるけど」
「……その黒歴史はもう忘れてくれたまえ」
いやぁ、調子に乗っていた花の魔術師(笑)を叩き潰した瞬間は実に笑えましたなぁ。まさに愉悦。思えばあの瞬間、もう少し調きょ……じゃなかった、躾をしておけばよかったと今更ながら後悔する。
「言い直した意味無くないかい?」
人の心を勝手に読むな除き魔(世界規模)め。
「で、その小瓶の中身は? まさか性転換の薬とか、そう言う類じゃないよね?」
「何、そう特殊な類では無いさ。ただ全ての魔術回路を強引に開くための薬だから、触手が生えるとかそんなトラブルは起こらないよ。たぶん」
「たぶんって何。ていうか、それ死ぬよね? 私死ぬよね!?」
魔術回路を開くという事はそう簡単な物では無い。
いや、開くだけならそこまで難しくはない。魔力を送り込み抉じ開ければよいのだから。だが開いた瞬間、全身に激痛が走り回る。十数本開くだけで数時間は動けなくなるというのに、千本単位で開いたら一体どんな大惨事になることやら。
「勿論原液のまま飲む必要は無いさ。水に薄めて飲めば、多少効果は薄れる。毎日少量ずつ服用すれば、そのうち君の回路も戻るだろう」
「……ま、礼は言っておくよ。ありがとう、マーリン。たいしたお礼はできないけど、いいの?」
「何、たいしたことじゃない。僕としては、君の紡ぐ物語を見られればそれで十分な報酬だからね。どうか、面白おかしい冒険譚を、僕に見せてほしい」
「はいはい。千年以上たっても、その性格は全く治る気配が無いね」
「人間、そう簡単に変わる方が珍しいんだよ」
「夢魔のハーフでしょうに…………うん、そっか」
私は軽く握手を交わす。
こんな奴でも、幼少の頃は私やアルトリア、ケイ兄さんの世話をしてくれた人だ。恩人には変わりない。ロクデナシではあるが、悪人では無いのだ。現に、こうして私の手助けもしてくれている。
ならば、偶には感謝の念ぐらいは送ってもいいかもしれない。
「ではそろそろお別れだ。向こうに待っている人がいるだろう? 行ってきなさい」
「うん。じゃあ……またね、マーリン。機会があったら、また」
意識が少しずつ遠くなっていく。そろそろ肉体の方が目覚める頃合い、夢の中でしか会えないマーリンとは此処でお別れだ。できれば今度は、もう少し余裕のある時に呼んでくれると助かる。
が、その時私は忘れていた。
こいつは人をイジるのが大好きなクソヤロウだという事を。
「にしてもその姿、中々可愛いじゃないか、アルフェリア。ハッハッハ、映像に残せないのが残念だなぁ!」
「んなっ!?」
「どうせなら心ももう少し子供らしくなってくれたら、マーリンお兄さん大助かりなんだけどなぁ~。純真な心をイジり倒したかったなぁ~。全く、残念で仕方がない!」
「ちょ、このタイミングでそれ言いだすなこのアーパー野ろっ――――」
「それじゃあさらば! 君の旅路に幸福があらんことを、祈っているよ。
「んの――――覚えてろぉぉぉぉ~~~~~~~!!!」
その台詞を最後に、私の意識は暗転した。
チクショウ。一瞬でもあいつを見直した私が大馬鹿だった。やっぱり一発ぶん殴って置くのが正解だったかもしれない。
今更過ぎる後悔を抱きながら私は、夢の世界から去った。
……まぁ、仕方ない。精々アイツが楽しめる冒険を、してみましょうかね。
「やれやれ全く、本当に彼女の人生に真の平穏は無いな。まるで神々の呪いだ。僕としては、華々しい冒険譚より彼女が幸せに暮らす光景が見たかったんだけどね……。まぁ、なってしまったモノは仕方がない。健闘を祈っているよ、アルフェリア。どうかあの悲劇を、繰り返さないでくれ」
悲し気に、花の魔術師は言葉をこぼす。
人では無く物語を愛でる彼が、個人を心配する言葉を送った。何も知らない人間からすれば普通かもしれないが、彼を知っている者からすれば『異常』としか言えない様子だ。
それは彼女が唯一あの大馬鹿者の心を突き動かす存在だったからか。
それとも、心配しなくてはならないほどの大事がこの
どちらにせよ、マーリンは深く祈るだけだった。
「君の旅の果てに、平穏があらんことを」
花の魔術師は夢の世界から去る。
その未来を見通す千里眼が観ていたのは、一体何なのか。
答えを知る物は、此処には居なかった。
◆◆◆◆◆◆
「我が世の春が来たァァァァァッ!!」
「寝てなさい」
「ぶへらッ!?」
なんだかこのシリアスな空気を壊さなきゃいけない気がしてハイテンションで目覚めたら、開始一秒で拳骨を叩き込まれて頭を枕の上に戻されました。何て恐ろしいストレート。私でなきゃ見逃していたぜ。
と、冗談はそこまでにして、とりあえず周囲を確認する。
特徴的な薬品の刺激臭に色の少ない天井。周りには白いカーテン。うん、間違いなく保健室だ。
「此処は、保健室ですよね?」
「そう。貴方、貧血で倒れたのよ。二時間くらい眠っていたわ」
「……貴女は」
「保険医よ。見てわからないほどその眼は節穴なのかしら」
白いウェーブがかった挑発に整った顔立ち。ついでにかなりバランスのいいモデル体型。何処からどう見ても美人の保険医という「それなんてエ○ゲ?」と言われそうなポジションである先生が隣で本を読んでいました。
因みに呼んでいた本は『世界のサディストに送る、じっくりとっくり楽しめる拷問の心得~④~』。子供の隣でなんつー物騒なもの読んでんだこの人。ていうか何でそんな本が四巻も発行されてるんだ。と、出版社の正気に疑問を持つ私であった。
「そう言えば貴方は今日来た転校生でしたね。だから一応自己紹介しておきましょう。私の名前は
「何、その暴走族のアレみたいな当て字は……」
「気にしたら負けよ」
気にしない方が負けなような気がするんですがそれは。
「私は――――」
「もう知ってるからいいわよ、アルフェ・フォン・アインツベルンさん。個人的には割と胡散臭い戸籍の件について追及したいところなのだけれど。まあ、それはまた今度にしておきましょうか。大方あの
「…………」
バレテーラ。
ちょっとちょっと切嗣さん。身近な人間にもう戸籍改竄ばれてるんですけど、もうちょっと精巧に作れなかったんですかね私の戸籍。作って一日経たずバレてんじゃねーか。
いや、人間一人の情報をゼロから作り上げただけ凄いと褒めるべきなんだろうけど。
流石に聖堂教会の方は騙せなかったという事かね。
「あーうん、まぁ、その……私、何時間寝てました?」
「さっき言ったでしょう? 約二時間よ。学校の方は五分前に終わったばかりね。そろそろ貴方の知り合いが来るのではないかしら」
「――――アルフェお姉ちゃーん!」
「あら、噂をすれば」
保健室のドアが乱暴に開かれる。そしてそこには息を乱したイリヤの姿が。
消毒液臭塗れる保健室に微かな花のような香りが漂う。あ~、良い臭いやわ~。……なんか限定的な状況下で異常な嗅覚発揮してないか私?
「イ、イリヤ? 随分と急だね……?」
「お姉ちゃん……! 急に倒れて心配したんだよ、もう!」
「え、ちょっ」
またまた抱きしめられちゃいました。
っべぇ、マジっべぇ。イリヤの香りで心拍数が一気に跳ね上がり、二時間前と同じく鼻の辺りの血管が一気に圧迫される。もう鼻血出そう。
――――だが駄目だ。また気絶してしまう。それでは二回もイリヤに心配をかけさせるでは無いか。それだけは断じてならぬ。絶対に、絶対にだ!
うおおおおおおお! 耐えろ私の血管! 此処で耐性付けないとこの先何度鼻血噴き出すことになるかわからんよ畜生!
…………よし、耐えた。
フフフッ、耐えた! 耐えた耐えた! 耐えたァーッ! 耐えたぞォォォォォォオオ!!
プシュッ。
「あっ」
無理でした。
「お、お姉ちゃあああああん!?」
「イリヤ、ちょっとティッシュ、ティッシュちょうだい。止めないと不味いよコレ」
「ガーゼやコットンにしておきなさい。ほら、血を吹きますからこっちを向いてくださいな」
「ずみばぜん……」
一度出しているから粘膜がボロボロだったせいか二度目は意識しても耐え切れなかった。イリヤのハグには勝てなかったよ……。いや、大丈夫。次からは負けない。イリヤなんかに負けたりしない!(フラグ)
「そっちの貴方も、病み上がりなんですからもう少し患者を刺激しないように。治りかけの血管では急に強い圧迫には耐え切れませんから、暫くは慎むように。……まぁ、また鼻血を出させて失血寸前の顔を見られるならそれはそれで」
「今なんか不穏な事言いませんでした?」
「気のせい気のせい」
うわぁ……すっごい白々しいわぁ、この保険医……。拷問官の方が向いてるんじゃないでしょうかこの人。
「さぁ、学校も終わったのだから早く帰りなさいな。此処は休憩所じゃないので、ほらほらほら」
「いや待って。血が足りないからちょっとフラフラして……」
「ほらほらほらほら。苦しみなさい、そして私を楽しませるのよ。ウフフフフ……!」
「この
「最高の褒め言葉をありがとう」
さっき自分で「患者を刺激しないように」とか言ったくせに言ってることとやってること真逆なんですけどこの人っ!? 流石ドS、歪みねぇ……!!
「ほら、お姉ちゃん。私が支えてあげるから頑張って!」
「ありがと、イリヤ。うっ、また鼻が……」
そろそろいい加減マジで耐性付けないと失血死しそうだ、コレ。
保健室を出る。すると不思議、担任の冬木の虎こと藤村先生にばったり遭遇した。何という偶然。
……いや違う。手に私のランドセルを持っていることからわざわざ持ってきてくれたらしい。ありがたやありがたや、流石冬木の美人教師は格が違った。
「ほぇ? 藤村先生?」
「おっ、無事に起きたみたいね。いやぁ~、鼻の粘膜が弱い体質なら言ってくれればいいのにさ~」
「いえ、これはそう言うわけでは無く……あ、もうそれでいいです」
「? ま、いっか。はいこれ、教室に置いて行ったあなたのランドセルね。傷口広げないように気を付けて帰りなさーい」
「「いぇっさー」」
やはり教師としては忙しいのか藤村先生はランドセルを渡してそのままどこかに去ってしまった。色々とイロモノ扱いしてるけど、やっぱり教師。そこら辺はしっかりこなしているらしい。流石冬木の(ry。
その後何事も無かったかのように私はイリヤに肩を貸してもらいながら学校を出た。
道中同級生と思える子や下級生に挨拶されることがあったが、正直貧血で頭痛いので適当に相槌を返すだけに留まる。本格的な挨拶とかは明日にしておこう。うん、そうしよう。
てか転校初日から鼻血を吹き出して気絶し保健室に運ばれる転校生って、第一印象的に不味くないですか。同級生に抱き付かれて鼻血を吹き出したってそれアレじゃん。知ってる人が見れば「あっ(察し)」ってなる光景じゃん。ちょっと問題だらけじゃないですかね私の今後の学校生活。
い、いや、きっと病弱な小学生として見ることもできなくない……はず。色々とハッチャケて短距離走の記録更新したりボールを空の彼方まで超☆エキサイティン! してしまったがセーフ。ギリギリセーフ……だといいなぁ。
「――――お、やっときたかイリヤ!」
「えっ? おおおお兄ちゃん……!?」
「あ、士郎さん」
まあ、アレだ。結果はとりあえず神に任せてしまって身近なことに気を配ろう。
私たち二人が校門前まで出ると何故か士郎が居た。
確かに私たちの授業終了時刻自体にそこまで差は無く、校舎がとなり合わせなので苦労することも無く互いの校舎に訪れることができると言えばできるのだが……かといって正確な時間が分かるわけも無いし、わざわざ待つ理由など無いはずだ。
何か問題でも生じたのだろうか。
「どうしてここに? いつもなら直ぐに帰っちゃうのに」
「新しい家族の入学初日だ。兄として、その晴れ姿くらい見納めしないと格好悪いだろ?」
「おー……。流石お兄ちゃん!」
「いや、そこまで目をキラキラさせなくてもいいと思うぞイリヤ……? 所でアルフェ、何でイリヤに肩を貸されてるんだ?」
「その……貧血で」
「は?」
昼休みに鼻血を出してぶっ倒れ、そのまま二時間ぐらい寝込んでいたんだよチクショーめ!
「あー、その、なんだ。災難だったな。じゃあ回復のためにも、今日はちょっと奮発してハンバーグにしようか! 丁度この前、ひき肉がいい値段で手に入ったんだ!」
「わーい! ハンバーグー!」
「わーい(棒)」
アー、ハンガーグタノシミダナー。
頭に血が回らなくなっているせいか妙に意識が朦朧としている。これは重傷かもしれない。帰ったらゆっくり休んで血を補充せねば。
でも何か、大切なことを忘れているような……。
家に帰った私は早々セラと士郎に介抱され部屋に寝かせられた。
流石の二度の大量出血(鼻血)は子供の体には堪えたらしく、地味に頭から熱が出ていたらしい。大人だった頃の肉体を知っている私としては実に不便だと評せざるを得ない。悪いことだらけでは無いものの、そこまでいい事尽くめと言うわけでは無いというこのジレンマ。
え? いい事は何かって? 公共施設が子供料金で利用できることカナー。
……いや、言ってしまおう。正直言ってこのまま子供の体に甘んじるメリットは皆無だ。スペック自体は同年代の子供どころか大の大人の力を遥かに越しては居るものの、本来の私と比べれば月と鼈。
更に言えば魔術回路すらほとんど開けていない。百本未満の回路では並の魔術師を数人相手するだけで精一杯になるだろう。それでは圧倒的に足りない。今後の脅威に対抗するためにはその十倍近い力が必要となる。
脅威自体と遭遇しないようにするという手もあるが……アレ? そう言えばあの
いや、これは後で考えよう。今考えても仕方のないことだ。
それでだ、マーリンから貰った薬で魔術回路を開くにも一定のリスクがある。原液のまま飲めば全ての回路が開くだろうが、下手すれば痛みで死にかねない。最適解はやはり薄めながら着実に回路を開く。堅実で賢明な判断ではある、が……時間が掛かることが一番の悩みの種だ。
せめて宝具類が自由に使用可能だったらここまで悩む必要は無かったのにな……何故無駄に厳重なロックをかけたし昔の私。
「アルフェさーん! ご飯ですよー!」
おっと。そろそろ夕ご飯の時間らしい。なんにせよ今は体調の回復だ。いっぱい食べていっぱい鍛えて、少しずつでいいから力を取り戻していこう。
何時か襲来するであろう脅威に対抗するために。
と、思っていた時代が私にもありました。
「…………えっと」
私は今、フラフラの体に鞭打って浴場にいた。そして目の前にはタオル一枚で大の字に倒れている士郎。そして――――よくわからないけどヒラヒラした衣装を纏いバスタブに足を静めているイリヤの姿。
「あ、そ、その、これは違うの! この格好はその……コスプレみたいなもので!?」
『アラ~? アラララララ~? 早速身バレですかイリヤさ~ん。魔法少女たる者、正体判明はもう少し後半に取っておくものなんですけど~。具体的には最終回ぐらいで燃える街を救う時?』
「何か不穏なこと言い始めたよこの胡散臭いステッキ!?」
どうして、こうなった。
「イリヤ」
「な、なんでしょうかっ!?」
……とりあえず場を落ち着かせるために今思いついた渾身のギャグでも披露しようか。
「浴場で欲情………………………なんちゃって」
「………………………えっ」
その日、私は自分のギャグセンスが色々と可笑しいことに気付かされた。
続く、かもしれない。
Q.本編カオス過ぎない?
A.それの何がいけないのかな?
中途半端すぎる切りだと思いますがもう無理ぃ・・・ストレスが限界ぃ・・・。
まぁ楽しんでいただけたらナニヨリデス。それでは皆さん、またお会いしましょう。次回をお楽しみにィ!