ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年4月2日1227時/ヴァレー空軍基地/作戦会議室]
反撃作戦が始まってから2日目。
まだベルカに対抗する戦力は揃っておらず、各地では一進一退が繰り返されている。
しかし、ベルカは数は少ないが個々の強さで攻めるのに対し、オーシアやユークトバニア、ベルカ東方諸国は個々の強さはベルカより劣るが、複数国が参加しているため物量で攻めることができる。
この調子でいけば、ベルカは疲弊し撤退を余儀なくされるのが目に見えている。
史実でベルカが追い詰められたのは正にこの戦略が原因で、疲弊したベルカ軍はこれ以上の進軍を阻止するため、1995年6月6日にバルトライヒ山脈に沿って7つの核を起爆させたのである。
このまま何もなければ、そんな残酷な未来がやってくるとは知らず、ヴァレー空軍基地では反撃作戦のブリーフィングが始まっていた。プロジェクターからウスティオの軍事企業アックス・アンド・ハンマー社のブリーフィング画面が映っている。
「諸君、よく集まってくれた。早速だが緊急出撃任務だ。我々が先に攻撃を仕掛ける前に、ベルカがヴァレー空軍基地に爆撃機を送り込んだと情報が入った。事実、ウスティオの防空レーダーが多数の爆撃機編隊を補足した。」
ブリーフィング画面はヴァレー空軍基地から北西の山岳地帯を示しており、そこに爆撃機編隊のアイコンが表示される。爆撃機編隊から太い矢印が表示され、ヴァレー空軍基地方面に向かっていることを表していた。
「諸君にはこの爆撃機編隊を撃墜し、ヴァレー空軍基地を守ってもらいたい。今回の作戦の成否で今後の作戦を左右することになるだろう。作戦名はクロスボウ作戦で、作戦開始時刻は1300時とする。」
味方戦闘機隊のアイコンが表示され、爆撃機に向かって太い矢印が表示された。
「諸君らは傭兵だ。無事に生きて帰ってきたら撃墜数に応じて報酬をやる。ただし、作戦は成功させることが条件だ。作戦に失敗したらこの基地は破壊され、報酬どころではなくなるからな。誰が何を撃墜したかは基地のレーダーで確認できる。要はズルはできないってことだ。そこのところを肝に銘じて作戦に臨んでほしい。なお、今回はオーシアから派遣されるAWACSが到着してないため、基地司令塔から管制する、以上。」
ブリーフィングが終了し、傭兵たちは部屋を出た。
[1995年4月2日1231時/ヴァレー空軍基地/更衣室]
ヴァレー空軍基地に集結し、写真撮影に参加した傭兵部隊は、ガルム隊2人、スカーフェイス隊3人、その他3部隊の8人の計13人である。
今回の作戦は全員参加のため、男性更衣室は
12人の男共でむさ苦しい状況になっていた。
「まったく、男ばかりで華がねぇな。ハーバード、ナガセつれてきてくれよ。」
ラグテンコ少尉が着替えながらジョークを飛ばす。
「なに馬鹿なこと言ってんだよ。んなことすりゃあ、俺の大事なところが消し飛んじまうぜ。」
ハーバード少尉は着替えながらジョークで返す。
「あんたのところのナガセとかいう女性はそんな怖い奴なのか?」
フォルク少尉は着替えながらナガセについて質問する。
「はじめはいい子だったんだぜ。それがどうしたことか、俺らと付き合ってる内に悪魔みてぇな性格になっちまった。見た目はかわいいのに、おぉぉぉぅ怖い!」
ハーバード少尉はジョークを交えて答える。
「話したときはいい子な印象があったんだけどなぁ…。」
フォルク少尉はナガセのギャップに軽くショックを受けてるようだ。
「この前なんて耳は引っ張られるし、ケツは蹴られるし、たまたまも蹴られそうになってよぉ〜、そりゃぁもぉ…」
ハーバード少尉が喋ってると隣の女性更衣室から大声が聞こえてきた。
「あんたら丸聞こえよ!特にハーバード!変なこと吹き込むんじゃないよ!ただじゃおかないからね!」
ナガセの怒鳴り声が壁から聞こえてきた。
「何も言ってないぜ!聞き間違いじゃないか?」
ハーバード少尉はジョークで返す。
「おふたりさん、仲良いな。カップルか?」
フォルク少尉がまさかのジョークを飛ばす。
「なっ何言ってんだよ!俺には別の彼女がいるんだぜ!誰があんな漢女好きになるかよ!あんたクールな感じだと思ったけど、意外に鋭いジョーク言うなぁ。」
ハーバード少尉は驚いた顔をしてフォルク少尉を見る。
「俺だって多少はジョーク言えるぜ。けど、俺の相棒はジョークなんか通じなさそうな雰囲気をいつもだしている。なかなかあいつには馴染めないな。」
フォルク少尉は後半小声で話す。
サイファーことアイザック少尉は集団から離れ黙って着替えていた。
「なんだか俺が話を振るのに特に興味のない素振りをして話は続かないし、おまけにジョークも通じない。軽くジョーク振っただけで怖い形相されたぜ。あいつの噂は会社でいろいろ聞いていたが、まるでロボットみたいな奴だ。容赦なく敵を破壊する男らしいからな。」
フォルク少尉はハーバード少尉に小声で愚痴る。
「まぁ、そういう奴もいるって。アイザック少尉はプライベートよりも戦場で絆を深めやすいタイプなんじゃないか。もしそうなら、今日の作戦で仲良くなればいいじゃないか。」
ハーバード少尉が励ます。
「そうかもな。なんだか悪いな、俺の愚痴を聞いてくれて。ありがとよ。」
フォルク少尉は礼を言う。
「気にすんなって。俺たちは仲間だろ。仲間の愚痴ぐらい聞くのは当たり前だ。」
ハーバード少尉は笑顔で応える。
「ハーバード、着替えたか?早く格納庫に行くぞ。ナガセに痛いの食らう前にな。」
ラグテンコ少尉はジョークを交えて指示を出す。
「OK、早いとこ行こうぜ。あいつはおっかねぇからよ。」
ラグテンコ少尉とハーバード少尉は部屋を出た。
「さて、着替え終わったな。相棒、行こうぜ。……ってアレ?」
フォルク少尉はアイザック少尉を呼んだが、すでに部屋にはいなかった。
(俺が愚痴ってる時に部屋を出たのか?まったく、連れない奴だ。)
フォルク少尉はひとり部屋を出た。
[1995年4月2日1300時/ヴァレー空軍基地北西山岳地帯]
天気は晴れているが、雪が降り始めていた。
標高の高いウスティオ山岳地帯は夏でも寒い環境である。4月でも平地の冬並みに寒い。いくら近くにヴァレー空軍基地があるとはいえ、ここでベイルアウトすれば体力的に辛いものである。
上空に翼端を青く塗装したF-15Cが飛んでいる。
それを追うように右翼を赤く塗装したF-15Cがやってきた。
「降ってきたな。」
ガルム2ことピクシーが呟く。
《こちら基地司令部、全機上がったようだな。ガルム隊、スカーフェイス隊、その他の部隊は現在の方位を維持せよ。》
基地司令部から無線が入る。
「ガルム1、了解。」
「こちらガルム2、了解した。」
「スカーフェイス1、了解。さっさと片付けてホット・ラムにするぞ。」
「スカーフェイス2、了解。俺はホット・ウイスキーがいいなぁ。」
「スカーフェイス3、了解。何言ってんのよ。そこはホット・ワインでしょ。」
スカーフェイス隊は帰還した時に飲む酒の話をしていた。
《方位315よりベルカ軍の爆撃機編隊が接近!》
基地司令部より敵出現の報が入る。
「雪山でのベイルアウトは悲惨だ。頼むぜ、一番機。」
ピクシーがガルム1ことサイファーに無線を送る。
「おう。」
サイファーが一言応える。
《各機、迎撃態勢をとれ。》
「報酬はきっちり用意しておけ。」
《全員が無事であればだ。》
「お財布握りしめて待ってろよ!」
基地司令部とピクシーのやり取りが終わり、2機のF-15Cは真っ直ぐ爆撃機編隊のいる方向に飛び立っていった。
「ガルムの奴ら、スピード上げて向かっていったな。俺たちも行くぞ!報酬を取られる前にな!」
青紫迷彩のSu-35に乗ったフェニックスが指示を出し、速度を上げる。
「ガルムに負けてたまるかよ!行くぜ!」
グレー迷彩のF/A-18Eに乗ったスラッシュが闘志を剥き出しにする。
「スピードなら、私の機体が上よ!」
砂漠迷彩のMir-2000に乗ったエッジはフェニックスを追い抜いた。
スカーフェイス隊の機体は所々に改造を施してあり、Su-35は装甲を軽くする代わりに機動性とスピードを向上させ、F/A-18Eはウェポンベイの増量や堅い装甲を取り入れ空戦のできるアタッカーに、Mir-2000はより高出力のジェットエンジンに換装したことでMiG-31に近い加速度と最高速度を実現した。
「先に失礼するわよ!スカーフェイス3、FOX1!」
エッジはガルム隊も追い抜いて、SAAMで攻撃を開始した。
爆撃機編隊を護衛していたベルカのF-5EにSAAMが命中し墜落する。
「あっけなく墜ちたな。奴ら余裕こいてガバガバの護衛してるな。機体も古い機体だ。」
ピクシーが敵機を見てサイファーに無線で喋る。
「ほう。ベルカのエースではないようだな。つまらん戦いになりそうだ。だが、報酬のために墜とさせてもらう。ガルム1、FOX3。」
サイファーの冷徹さが漂う返答をしながらXMAAを発射し、4機の爆撃機に命中し墜落した。
「クソ!ウスティオの奴らが傭兵を雇ったってのは本当のようだな。余裕こいて護衛を疎かにしていた。」
ベルカの爆撃機パイロットはこの現状にしっかり準備していなかったことを後悔していた。
「ガルムばかりにとられてたまるかよ!スカーフェイス1、FOX3!」
Su-35から大型のXLAAが切り離され点火し、物凄い速さで爆撃機2機に向かって飛翔し命中した。
「ったく、みんなスピードが速いんだよ。俺の獲物を残してくれよ!スカーフェイス2、FOX1!」
遅れてスラッシュが到着し、SAAMで護衛のJ35Jを撃墜した。
「おっと、手応えありそうな敵機がいるな。こいつは貰うぜ。ガルム2、FOX1!」
ピクシーは護衛のF-20AにQAAMを発射し、撃墜した。
その後、別のF-20Aの背中を取りAAMで撃墜した。
するとサイファーもF-20Aの編隊に突っ込み、機銃で瞬く間に3機撃墜した。
「機銃だけで3機撃墜か…。さすがだな、相棒。」
ピクシーはサイファーの実力に感服していた。
「チクショウ、相手が悪い!逃げるぞ!」
1機のB-52が空域を離脱しようとしていた。
「馬鹿野郎!ここまで来て逃げるのか!ベルカの誇りは貴様らにないのか!」
別のBM-335から罵声の無線が飛ぶ。
「誇りなんて糞食らえだ!俺らは死にたかねぇんだよ!」
離脱しようとする爆撃機からヘタレた無線が入る。
「あら?爆撃機が1機離脱してくわ。」
エッジがその様子に気付く。
「ここまで来て離脱?!奴ららしくない。」
ピクシーはベルカの行動に驚いていた。
「爆撃機が離脱か。流石に逃亡機は墜とす気はないね。」
フェニックスは逃亡機をほっといて、別の敵機を相手にしていた。
「あのベルカも逃げるんだな。ん?ガルム1は何をしようとしてるんだ?」
スラッシュはサイファーの行動に疑問を抱いた。
サイファーは逃亡しようとしているB-52を追尾してるのだ。
「背後に敵機!速度を上げろ!フレアをありったけばら撒け!」
B-52からフレアが大量に出る。
「無駄だ。」
サイファーは機銃で的確にB-52のエンジン全て破壊し、B-52を撃墜した。
「容赦ねぇ奴だな、あんたのところの一番機は…。」
フェニックスは自分の考えと真逆の行動をしたサイファーに驚いていた。
「噂だとあいつは獲物を逃がさない性分らしいぜ。」
ピクシーはサイファーの特徴を簡単に説明した。
「あいつとは、話が合いそうにないな。」
フェニックスはそう言って、残りの爆撃機に攻撃を開始した。
フェニックスこと、ラグテンコは弱い者には興味がない性格で、戦意のない相手には手を出さない。むしろ、強い相手には興味を示し、全力で相手と戦う。
後のユージアクーデターでも、クーデター軍のエースと熱い戦いを繰り広げた。たとえ、相手が人工知能Z.O.E.でも。
彼は相手が誰であろうと、自分以上の実力を持つ者と戦い、己の能力を上げたいのである。
「あの傭兵、戦意がない奴にも手を出すぞ!あいつは人間か!」
ベルカの戦闘機パイロットはサイファーに恐怖を抱いていた。
「最後の爆撃機はいただくぜ!スカーフェイス2、FOX2!」
F/A-18Eから1発のAAMが発射されBM-335に命中した。しかし、それでもしぶとく飛んでいたため、機銃掃射し撃墜した。
「敵爆撃機撃墜!イーヤッホー!」
スラッシュが喜んでいたら、墜落していくBM-335の後方機銃がF/A-18Eの左翼とエンジン近くの胴体に命中した。
「いててて、あんにゃろう!墜ちながら機銃攻撃なんて、しぶとい奴だぜ。」
幸いにも装甲を強化していたため、飛行に支障はないが、普通のF/A-18Eなら飛行が困難になっていただろう。
「ハーバード、大丈夫?あんたもドジよねぇ。墜としても油断しないことよ。」
エッジがグサリとくることを無線で伝える。
「うっ…、なかなかキツイこというな、ハハハ…。」
エッジの言葉が的確すぎてスラッシュは反論できなかった。
「まぁ、何より今はスカーフェイス隊は全機健在ってことでいいじゃないか。帰ったら一杯やろうぜ。酒は後でジャンケンで決めよう。」
フェニックスはスカーフェイス隊が全機健在していることを素直に喜んでいた。
《こちら基地司令部、全機撃墜したようだな。当該空域に敵性航空機ゼロ。爆撃機を全機落とせとは言ったが、護衛や逃亡機も全機落とせとは言ってないぞ。相当金に飢えた番犬がいるようだな、サイファー。》
「ふん。俺の眼に入った奴は全て墜とすだけだ。」
基地司令部の無線にサイファーが返答した。
《まさに、冷酷なハンターだな…。よし、全機帰還せよ。》
基地司令部はサイファーの言動に驚きながらも、帰還命令を出した。
「お互い無事で何よりだ。お前の行動は少し理解できないところもあるが、戦闘ではうまくやれそうだ。これからもよろしくな、相棒。」
ピクシーはサイファーに今の気持ちを伝えた。
「ああ、こちらこそよろしく。」
サイファーは無愛想ながらも応えてくれた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
最近試験等が重なりまして、1ヶ月近く投稿できませんでした。
この約1ヶ月間いろんなニュースがありましたが、やはりエースコンバット7のニュースが一番嬉しかったです。世界観はエスコン5の10年後の世界らしいです。イーグルにレーザーやスパホにレールガン、軌道エレベーターや恒例の巨大航空機などエスコン3の世界観に近づいている反面、ストーンヘンジなど従来のエスコン要素も感じられます。
話が長くなりましたが、エスコン7が待ち遠しいです。
この小説は結構続きそうな感じですが、エスコン7の世界観が公開されても、この小説の世界観設定はエスコン7の設定を除いた設定とさせていただきます。
これからもよろしくお願いします。