ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年4月2日1500時/アークバートⅡ内部]
3月31日以降、アークバートⅡの保全や清掃はすでに完了し、ベルカ戦争介入作戦の話し合いも何度か行われ、作戦プランは完成に近づいていた。
そして今回、ハーバード基地司令官がアークバートⅡを詳しく見たいとのことで、ハーバード機長に招待された。
ただし、ウォードック隊員が護衛として付き添っている。
実はウォードック隊員もアークバートⅡや未来のことについて興味があり、ハーバード基地司令官の護衛も兼ねて付き添ってきたのである。
ハーバード機長はマクドネル大尉と共にハーバード基地司令官らを引率し、廊下を歩き案内していた。
「しかし、デカイな。外観だけじゃなく、こんなに広いとは…、いやはやいやはや…。」
ハーバード基地司令官は迷宮のような廊下を歩きながら呟いていた。
「艦載機や船舶を格納する都合上、この時代のアークバートより約1.5倍の大きさを誇る。さらにエンジンやレーザーユニットの小型化によって内部が広くなって、部屋数が増えたり燃料格納スペースが増えたことによって航続距離も伸びた。まぁ、航続距離はエンジンの燃費効率の向上が大きく影響しているがな。」
ハーバード機長はざっと説明する。
「こりゃあ、空飛ぶ要塞だな。レーザーなんて物騒なものつけて、戦闘機も出せるってビックリだぜ!そんでもって中はまるで迷路だ。ドアもなんだ?全部自動ドアじゃねえか!」
バートレット中尉が大声を挙げて驚いていた。
「ブービー、驚いて声が大きくなるのはわかるが少しは静かにしろ!」
ジョンソン大尉がバートレット中尉に注意する。
「航空機が要塞の役割を果たすのか。未来だとこのアークバートのような空中要塞が当たり前のように空を飛んでいるのですか?」
ベイカー中尉がハーバード機長に質問する。
「当たり前と言ったら嘘になるが、いくつか開発されて空を飛んだのは事実だ。技術大国はベルカ戦争以後アークバートとは目的が違えど空中要塞を開発した。某国では空中要塞を中心に巨大航空機による空中艦隊を編成したり、空中要塞に光学迷彩や広範囲戦術弾道ミサイルを搭載したものも開発された。しかし、ほとんどは戦争のために造られた。空中要塞はその戦争の戦闘機パイロット達に撃墜されている。このアークバートⅡも空中要塞ではなく宇宙開発や平和利用のため開発されたが、結局は戦争の代物になってしまった…。」
ハーバード機長は歩きながら質問に答える。
「それは悲しいことですね。もしかすると巨大航空機は戦争の道具になってしまう運命なのかもしれませんね。」
ハーバード機長の話を聞いてベイカー中尉は答える。
話しながら歩いていると、艦載機格納庫に到着した。格納庫にはアームで固定されているR-100とADF-02があった。
「見たことのない戦闘機だ。赤いのはカクカクしてるが、白いのは滑らかな形状をしているな。胴体をアームで固定しているのか。だからランディングギアを出さずに格納しているのか。それに機首にキャノピーが見当たらない。どういうことだ?」
スヴェンソン中尉は未来の戦闘機を見て驚いていた。
「コクピットにはエアロコフィンシステムというものを採用しています。このシステムを搭載した機体はエアロコフィン機とも呼ばれています。簡単に説明すれば、従来のキャノピーが存在するところに多数の高解像度の小型カメラを設置、カメラからリアルタイムでモニタリングしています。エアロコフィン内部は一面モニターで埋め尽くされていて従来のキャノピーと同じ感覚で扱えるほか、モニターはタッチパネル式で視界を暗視モードや熱探知モードに切り替えることもでき、HMDの機能もモニターそのものに搭載し、様々な任務に対応できるシステムです。ちなみに、このシステムを採用したことにより、コクピットが分厚い棺桶型になったため耐G性に優れ、コクピットに被弾してもパイロットに影響が出にくいほか、ベイルアウト時は棺桶型のコクピットがそのまま射出するため身体を外にさらけ出すことなくベイルアウトできます。」
マクドネル大尉はエアロコフィンについて詳しく説明した。
「すごいシステムなんですね。未来だとほとんどの戦闘機にこのシステムが付いているのですか?」
スヴェンソン中尉はエアロコフィンに関心した上で質問する。
「基本的には最新鋭機に付けられています。ほとんどというわけではありませんが、僕たちのいた未来が平和だった頃は約6割がエアロコフィン機でした。」
マクドネル大尉が答える。スヴェンソン中尉は納得すると同時にある疑問が生まれた。
「未来が平和だった頃ってことは未来で何かあったのですか?」
スヴェンソン中尉が鋭い質問をする。
「それは…。機長、言うべきでしょうか?」
マクドネル大尉は答えるべきか躊躇った。前に定年に近いハーバード基地司令官に未来の事を話したが、まだ若い世代の人間に話すべきか迷ったからである。
「スヴェンソン中尉、それは聞かないでおこう。俺も未来に興味はあるが、俺たちの未来を知ったところで辛くなるだけだ。隊員が失礼な質問をしてすまなかった。」
ジョンソン大尉がマクドネル大尉に謝る。
「いえいえ、気にしないでください。僕が少し喋りすぎたところもありますので。」
マクドネル大尉は気を遣って答える。
「それじゃあ、そろそろ次のところに行こう。」
ハーバード機長が指示を出すと、彼らはハーバード機長に付いていった。機長らは格納庫を後にして次の場所へ案内しに行った。
[1995年4月2日1711時/アークバートⅡ/管制室]
その頃、ベレゾフスキー主任らコンピュータ管理係は定期的にハッキングを行い、情勢を確認していた。
オーシアの報告書は新たに更新されており、シーサーペント作戦のことが書かれていた。
以下、シーサーペント作戦の報告書の内容である。
シーサーペント作戦
【シーサーペント作戦は無事成功、ベルカ騎士団の末裔であるベルカ空軍は噂通り強力で、我がオーシア空軍を苦戦させた。しかし、想定外だったのはベルカ艦隊が我々の予想よりも弱かったことである。そのおかげか作戦はスムーズに進んだが、あのベルカのことだから罠の可能性がある。今後慎重に作戦を進める必要がある。さらに空軍が苦戦したため、新たな増援部隊を求む。できれば増援部隊は艦隊防空戦に向いた戦闘機部隊であれば嬉しい。】
「報告書は史実通りだな。」
ベレゾフスキー主任は呟く。
「確かこの増援部隊はこのサンド島基地にいるウォードックでしたよね?」
同じ報告書を見ていた部下が質問する。
「ああ、そうだ。そろそろサンド島に動きがあるんじゃないか?それはさておき、ベルカはどうなってるんだろうな。」
事前にベルカのコンピュータにハッキングをしたページを開いた。そこにはシーサーペント作戦の報告書とクロスボウ作戦の報告書が書かれていた。
ベルカではシーサーペント作戦はOperation Merman(マーマン作戦)、クロスボウ作戦はOperation Schachmatt(チェックメイト作戦)と呼ばれていた。
以下、それぞれの報告書である。
Operation Merman
【Operation Meerjungfrau(マーメイド作戦)準備のためのオーシア軍の足止めに成功した。偉大なる我が祖国のために犠牲になったベルカ艦隊には哀悼の意を表する。この作戦は足止めと同時にわざとオーシア軍に隙を与えるための作戦であり、おそらくオーシア軍はベルカ海軍はそこまで脅威の対象ではないと思い込んでいるはずである。Operation Meerjungfrauで決着をつける下準備はできたと言えよう。オーシアはOperation Meerjungfrauのことは知らない。たとえオーシアが衛星を使って偵察しようにも、ベルカ本国及びベルカ占領地は対衛星用のジャミングを出しているので、覗かれる心配はない。】
この報告書から、ベルカの罠であることがわかる。この作戦は言わば囮作戦であり、オーシア軍に『ベルカ海軍は弱い』という印象を与えることにも成功した。
プライドの高いベルカ人なら許されざる行為だが、そもそもプライドの高いベルカ人はベルカ騎士団の末裔が中心で、その末裔は空軍に集中している。そのためベルカ空軍は本気で正面から戦い、オーシア空軍を苦戦させたのである。
逆にベルカ海軍は末裔は少なく、ありとあらゆる戦略を使って攻略する戦略家が多い。ベルカ艦隊がそこまで脅威でなかったのも作戦の内なのである。
しかし、ベルカ軍はここ最近戦況が有利であるため油断している節も伺える。このことに関してはOperation Schachmattの報告書に書かれていた。
Operation Schachmatt
【ヴァレー空軍基地爆撃作戦は失敗に終わった。ウスティオが傭兵を雇ったとは聞いていたが、これほどとは思えなかった。しかも生還者なしで全滅とは傭兵の中には相当の手練れがいるようだ。これは戦況が有利に進んでいたが故の気の緩みによって引き起こされたものである。以後、戦場に散らばるベルカ軍には改めて気を引き締めるよう伝達しなければならない。】
「これも史実通りっと。このまま史実通りなら、俺たちのファーストアタックはやりやすくなるな。ん?これは…」
ベレゾフスキー主任は呟きながら両作戦の撃墜記録を見ていると、史実データと食い違いを見つけた。
それはOperation Mermanにて、墜落者リストが史実と比べて少なかったのである。
(どういうことだ?シーサーペント作戦のページも見よう。)
改めてシーサーペント作戦のページを開き、撃墜記録を見るとやはり少なかった。そして作戦参加した部隊リストを見ると、クローバー隊の名前があった。
(クローバー隊、たしかタイムスリップしてはじめに遭遇した部隊か。俺たちの偵察に向かってから何かあったんだな。それがまさか撃墜記録に影響が出るとは…。なるほど、これがマクドネル大尉が言っていたバタフライなんたらか。)
ベレゾフスキー主任は険しい表情になる。
「どうしたんだ?険しい表情して?」
同僚が心配になって声をかける。
「シーサーペント作戦の撃墜記録が史実より少ないんだ。ってことは本来墜落して負傷または戦死する奴が生きてるってことになる。これは俺たちの作戦に影響が出ないか?」
「ん〜、微妙なところじゃないか。俺たちの作戦区域はベルカ国内だろ。最前線の兵士が生きた死んだくらいで変わるものかなぁ。一応機長やこういうことに詳しいマクドネル大尉に聞いてみたほうがいいだろう。」
同僚は機長やマクドネル大尉に相談することを勧めた。
「そうだな。機長は電話に出れない状況だ。メールしよう。」
ベレゾフスキー主任はN.Phoneを取り出し、メールを打った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
本当はひとまとめにして投稿するつもりだったのですが、文字数がかなりの量になったので分けて投稿します。
後編は半分以上書き留めができているので早いうちに投稿します。
これからもよろしくお願いします。