ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年4月9日1507時/ベルカ公国占領地/ハイエルラーク空軍基地/作戦会議室]
ハイエルラーク空軍基地は元はオーシアの空軍基地で今はベルカ軍によって西部戦線の最前基地になっている。
しかし、この地はベルカ連邦時代はベルカのものであり、元ベルカ人の多くが住んでいる。
ハイエルラーク空軍基地はベルカ連邦時代に当時のベルカ軍が建設したものである。ベルカ軍にとっては、解体されてオーシアに奪われた土地を奪還したに過ぎないのだ。
ハイエルラーク空軍基地にベルカの戦闘機隊が着陸態勢に入る。FB-22、S-32、MiG-1.44、F-15 ACTIVEに紛れて場違いなMiG-21bisが一緒にいた。
この部隊の機体は白を基調とした色に灰色の斑点が入った迷彩が施されているため、ヴァイス(ベルカ語で白を意味する)隊と呼ばれている。
ヴァイス隊のMiG-21bisはベルカの最新技術による性能向上のほか、パイロットの要望で最新鋭機の機動性についていけるように装甲を犠牲にして軽量化が図られている。
しかし、驚くのはこの機体のパイロットである。
そのパイロットは『凶鳥フッケバイン』の呼び名で恐れられていたベルカのエースパイロット、ウォルフガング・ブフナー大佐である。パイロットセンスだけでなく、指揮能力も高く、彼が戦場に赴けば戦況が大きく変わるほどである。その功績は他の国にも知れ渡るほどである。ベルカの貴族ブフナー家の長男であり、しっかりとした教育を受けたため良き人格者である。そのためベルカの若手パイロットからは憧れ、そして慕われている。
後にV1核ミサイルによるベルカ都市部に向けた攻撃命令に猛反発し、ベルカ空軍の追撃を受け、B7Rで墜落しバートレット中尉と出会う。バートレット中尉は彼を自分の部隊の編隊員と偽って保護し、亡命の手助けをする。そして彼はオーシア国内でピーター・N・ビーグルと名乗り、未来のウォードック隊員たちから『おやじさん』と呼ばれ慕われるのである。
着陸した後、パイロット達はデブリーフィングのため作戦会議室に集合する。
「任務ご苦労様だった。とりあえず作戦は成功だ大佐。あなたのおかげで友軍の士気は上がり、オーシア軍の侵攻を防ぐことができた。これからもその調子で頼む。」
基地司令官は作戦の成功と労いの言葉を伝える。
「お言葉ですが、基地司令官。今回の作戦は戦線の維持がやっとでした。オーシア軍は主に物量で攻めてきています。いくら個々のパイロットセンスや指揮能力が高かろうといずれは限界がきます。」
ブフナー大佐は今日の作戦について話す。
今回の作戦はオーシア軍に押されている部隊の援護、および突破された戦線からオーシア軍を追い出し、領地を拡大するのが任務だった。しかし、前の戦いで惨敗したオーシア軍は物量作戦に出たため、徐々に押され始めたのである。結局のところ、味方部隊の援護だけで精一杯だったため、前線を維持することしかできなかった。
ブフナー大佐はパイロットの能力だけでは物量相手では限界がくることを察したのである。
「私たちは人間だ。いつ限界がきて、いつ戦線が崩壊してもおかしくない。新しくハイエルラークに部隊を送り込んで欲しいです。基地司令官やベルカ司令部に期待されていることは嬉しいですが、私たちがいればどうにかなるという考えは改めていただきたいです。これは、ベルカの存続に関わる問題です。」
ブフナー大佐は今の気持ちを伝えた。
彼の部隊の若手パイロットたちも同じ気持ちだった。
「なるほど。しかし大佐、あなたはブフナー家の末裔。ブフナー家といえばベルカ騎士団の名門のひとつ。あなたがそんなことを言ってどうする。ベルカ騎士団としての誇りはないのか!大佐が言ったことは所詮言い訳に過ぎない!ベルカ騎士団の騎士道精神を胸にして物量で攻めてくる騎士道のカケラもない卑怯なオーシアどもを叩き潰せ!次の任務は言い訳は許さん。わかったな。」
基地司令官はブフナー大佐の言葉には耳を貸さず、ベルカの精神論を交えて叱った。
ベルカの騎士道精神は、
・タイマンで全力で臨む。
・己を犠牲にしても敬愛するものに忠を尽くす。
・弱き者を守り、強き者には敬意を払う。
といったものである。
普通に見ればカッコイイことかもしれないが、戦場はこんなことは全く役に立たない、殺らなければ殺られる世界である。ベルカはその精神に縛られていたが故に、ベルカ戦争に敗北したのである。
ブフナー大佐はベルカの最悪の末路が薄々見えていたため、思い切って話したのだが、基地司令官はそれを受け入れてくれなかった。
ブフナー大佐は内心憤りを感じていたが、表に出さず返事をした。若手パイロット達も渋々返事をした。
[1995年4月9日1519時/ベルカ公国占領地/ハイエルラーク空軍基地/大佐の自室]
ハイエルラーク空軍基地はベルカ北西部国境付近、ハイエルラーク町郊外の山間部にある。ハイエルラーク町の北西にはオーリック海があり、季節に関係なく北極の冷たい北風が吹く。そのため夏でも雪が溶けずに残っているほど寒い土地なのである。
今日の外は曇り空で、粉雪が降り始めた。
ブフナー大佐は外の景色が映っている窓を背景に椅子に座り、石油ストーブを囲んで椅子に座っている4人の隊員と話をしていた。
「ベルカ幹部の精神論にはうんざりだ。君たちの身を案じて支援要請の話をしたが、やはり話が通じる相手ではない。」
ブフナー大佐はデブリーフィングのことを話す。
「大佐、気遣いありがとうございます。しかし、心配しないでください。俺は誇り高きベルカ人です。こんな程度でへこたれません。」
ヴァイス隊2番機、FB-22のパイロットであるアーブラハム・コンツェン大尉が精神論を交えて話す。
「コンツェン、私が一番心配なのは君なんだ。君はベルカを愛しているが故、自らの命も投げ出そうとした。今回の任務の時もそうだろう。命はひとつしかない。家族を悲しませるな。」
彼は今回の防衛戦で、大群で攻めてきた地上部隊相手に、対空機銃攻撃を避けるため低空で高速飛行しながらBDSP(小弾頭ディスペンサー)を散布し、見事に撃破した。しかし、戦闘区域がやや歪んだ地形で対空機銃攻撃も激しく、少しの操作ミスが命取りになる危ない戦法であった。
「大佐の言う通りだコンツェン。命は無駄にしてはいけない。精神論だけでどうにかなると思ったら大間違いだ。戦場ではそれが通用しないことはお前もわかってるだろ?」
ヴァイス隊3番機、S-32のパイロットであるライムント・シュトルツェ大尉が注意する。
「わかってるさ、そんなこと。わかってるよ。でも俺たちはベルカに忠誠を誓ったし、ベルカの地と家族を愛している。オーシアどもに俺たちの国を明け渡すってのか?そんなわけないだろ。確かに右寄りの政治家や軍人どものやり方には腹が立つが、喧嘩を売った以上、俺たちが危険を冒してまで守る必要があるだろ?大佐、あなたはベルカを守る為に戦わないのですか?」
コンツェン大尉は精神論が通用しないことを認めつつも反論する。
「うむ。私も生まれ故郷のベルカを愛しているし、守る為に戦っている。しかし、危険を冒して守ろうとして己自身が壊れてしまっては守るものも守れないだろう。違うか?」
ブフナー大佐は正論を言う。
「そ、それは……。確かに大佐の言う通りです。」
コンツェン大尉は下を向く。
「しかし大佐、基地司令官が話を聞き入れなかったことは悔しいですが、このままこの基地で何もせず軍の命令に従うのですか?」
ヴァイス隊4番機、MiG-1.44のパイロットであるゲルティ・ハーケンベルグ大尉が今後について問う。
「うむ。たぶん基地司令官は聞き入れないだろうが、ハイエルラーク基地からの撤退を具申しようと思う。オーシア軍の状況からして、ハイエルラークが奪還されるのも時間の問題だ。その前に少しでも同志たちの犠牲を食い止める為に撤退するのが最善策だ。今回の侵略戦争は兵力的に無理がありすぎるからな。私は基地司令官が聞き入れるまで諦めるつもりはない。」
ブフナー大佐は既に次の策を考えていた。
「流石です大佐!では早速基地司令官の元に行きましょう!」
ヴァイス隊5番機、F-15 ACTIVEのパイロットであるヨーゼフ・ユルゲンス大尉が威勢良く立ち上がる。
「まぁ待ちなさい。今日は基地司令官に話しても無駄だと思う。あんなことを言った私とは話したくないはずだ。明日の地上部隊防衛戦前に話そうと思う。うまくいけば、基地司令官の権限で前線の部隊を撤退させることができるかもしれない。」
ブフナー大佐はユルゲンス大尉を座らせ、明日話すことを宣言する。
史実だと、ブフナー大佐のしつこい具申により基地司令官を納得させ前線部隊を撤退、ハイエルラーク空軍基地から基地司令官もろとも撤退した。もちろんベルカ軍幹部が黙るわけもなく、ブフナー大佐を首都ディンズマルクにあるベルカ総司令部に召喚し尋問した。
しかし、ブフナー大佐のかつての功績と同志の犠牲を未然に防いだこと、そして今後の戦力に必要不可欠な存在のため今回の件は特別に不問とされたが、次はないということをベルカ軍幹部から脅されたのである。
だが、その流れが変わろうとしている。
[1995年4月9日2036時/サンド島基地/来賓室]
「今まで世話になったな親父。何から何までありがとう。」
ハーバード機長は世話になった父親であるハーバード基地司令官に挨拶しにサンド島基地に来ていた。
「いやいや、あくまで父親としてできることをしたまでだよ。作戦はいよいよ始まるということか。平和な世界を作ってきてくれ!頑張れよ!」
ハーバード基地司令官は年上の息子に檄を送る。
「ジョン、もしかすれば会うのも最後かもしれないから聞きたいことがあるが、私はあと何年生きるんだね?」
ハーバード基地司令官は自分の寿命について尋ねる。
「えっ、急にどうしたんだよ?」
ハーバード機長は突然の問いに驚く。
「お前に会った時から思っていたことだ。私と初めて顔を合わせた時、まるで幽霊でも見たような顔だった。それでなんとなく感じたんだが、お前のいた未来では私は死んだのか?正直に話してくれ。」
ハーバード基地司令官は真剣に話す。
「……ああ、その通りだよ。親父は78歳の時、2018年の5月9日に突然クモ膜下出血で亡くなった。あいにく私はアークバードⅡの機長着任式の最中で最後を見届けることができなかった。しかも、最後に会ったのが親父と些細なことで喧嘩した時で、そのことを謝る前に逝っちまった…。ごめんな…、親父…、ごめん……。」
ハーバード機長から薄っすらと涙がこぼれる。
「全く、馬鹿息子であることは変わりないんだな。ほら、涙をふけ。」
ハーバード基地司令官はハンカチを渡す。
「だが、おかげでこの世界の馬鹿息子の運命は変えることができるな。安心しろ、こっちのジョンには後悔はさせないさ。お前は未来を変えることだけ考えて過去の後悔は洗い流せ。自分の過去を悔やんだところで自分の中の過去そのものは変えることはできないからな。」
年下の親父はハーバード機長を慰める。
「ありがとう、親父。いい歳したジジイが泣くなんて情けないもんだよ。」
ハーバード機長はハンカチを返す。
「ははははっ!全くだ!」
ハーバード基地司令官はハンカチを受け取って笑う。
「ジョン、未来を変えるからには最後まで未来を変える信念を貫き通せよ。それまで命を大切にな。死ぬなよ!」
年下の親父は手を出す。
「わかったよ親父。親父も長生きしろよ!」
年上の息子は父親の手に固い握手をしハグをする。
ハグを終えると
「そんじゃ、行ってくる。」
と、ハーバード機長は言って来賓室を出た。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
日付が変わって約束の19日ではなく20日に投稿して申し訳ありません。以後、気を付けます。
また、今回は改行の使い方を少し変えてみました。
改行や段落について調べたのですが、カメラワークが変わる時に使うものらしいです。そう考えると改行を使いすぎている節があったので改行を減らしました。次回もこんな感じで執筆したいと思います。
ちなみに次回は人物が増えてきたので用語集を投稿しようと思います。投稿予定日は1月19日(金)です。
これからもよろしくお願いします。