ACE COMBAT Skies Rewritten 作:遠い空
[1995年3月30日1335時/オーシア東洋スプリング海上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]
アークバードⅡは光学迷彩を作動させたまま、スプリング海に移動していた。
ハーバード機長は改めて今起きている事情を説明するため、管制室にクルー、アルタイル隊を集めた。
「…というわけだ。信じられん話だが、これは現実に起きている。まず、我々はタイムパラドックスを避け、現代に戻ることを最優先とする。」
「もし、現代に戻ることができなければ、どうするんです?」
アレンスキー大尉が不安な顔で質問をする。
「その場合は……。すまん、そこから先は私にもどうすればいいのかわからない…。」
ハーバード機長はこの状況に対応しきれなかった。ましてやタイムスリップなんてSFの世界の話で、自分たちが経験するなんて思わなかったからだ。
そんなハーバード機長をマクドネル大尉が気にかける。
「大丈夫ですよ。タイムスリップにも色々種類があります。特に今回の件については、我々のいた世界と繋がってない可能性があります。」
マクドネル大尉はタイムスリップ系SFものが好きなため、タイムスリップの分野は得意中の得意だ。彼は平行世界型タイムスリップについて全員に説明した。
平行世界型タイムスリップは現代の世界と過去の世界が繋がってないことを言う。
例えば、ゼネラルリソースと戦っていた現代を世界線Aとするならば、アークバードⅡが出現したベルカ戦争時代は世界線Bとなる。
世界線Aのベルカ戦争はアークバードⅡが出現せず、円卓の鬼神が活躍し、ベルカで7つの核が起爆した。
その後ベルカは敗戦し、ベルカの技術は世界中に広がり、Z.O.E.シリーズが増え、様々な巨大航空機が誕生し、レーザー技術の飛躍的向上など、大きな影響を与えている。
アークバードⅡの原型機アークバードは、ベルカの巨大航空機技術とレーザー技術がもたらしたものであり、ベルカの技術なしではアークバードは開発できなかったと言われている。
世界線Bの場合、アークバードⅡの出現によって時代の流れにズレが生じる。
すなわち、アークバードⅡが出現する前は世界線Aも世界線Bも同じ世界線だったが、アークバードⅡの出現をきっかけに世界線が枝分かれする。
そして分かれた世界線は決して交わることがない。
すでに世界線Bでは世界線Aとは違う歴史を歩んでいる。
その証拠はオーシア空軍クローバー隊の行動が証明している。世界線AだとアークバードⅡが出現してないため、防空レーダーが国籍不明機の反応を捉えず、クローバー隊は出撃しなかった。
しかし世界線Bだと本来出撃しないはずのクローバー隊が出撃し、彼らの未来に変化が生じてしまったのだ。
バタフライエフェクトという言葉があるが、蝶が羽ばたくと僅かな気流の乱れが生じ、その乱れが長い距離を流され大きな乱れとなりスーパーセル(竜巻を発生する積乱雲)を作り竜巻を起こすことを単語にしたものである。
要は過去に起きた些細な変化が、未来に大きな影響を与えることを意味している。
となれば、クローバー隊の行動が未来を大きく変える可能性があるのだ。
いくらアークバードⅡがタイムパラドックスを起こさないように努めても、クローバー隊の行動はどうしようもないから未来の変化は避けられないのである。
さらに繋がってない最大の証拠として、アークバードⅡ自身に変化が生じていないのである。もちろん、人物にも、過去の歴史データが入っているコンピュータや書物にも。
以上のことをマクドネル大尉はいらない紙に書いて全員に事細かに説明した。
「頭がこんがらがるぜ…。」
ヒヤマ大尉は理解が難しいようだ。
「どういうこと?」
「意味わかんねぇ。」
「結局はタイムなんたらは起こらないから俺たちは安全ってことかい?」
全員頭を抱えている。しかし、ハーバード機長は話を理解していた。
「なるほど、元いた世界と繋がってない。今いるこの世界は似ているが異なる世界、我々の知る歴史とは違う独自の歴史を歩むわけか。ならば我々は一体なんのためにこの時代に?」
「うーん…それは僕にもわかりません。単なる偶然なのか、それとも運命なのか…。」
マクドネル大尉は顎に手を添えて答えた。
「どのみち我々はこの時代にいてはいけない存在だ。作戦通り、大気圏外に出たのち再突入を行う。行う場所も決めてある。セレス海に浮かぶ孤島、サンド島上空で再突入する。」
ハーバード機長がサンド島を選んだのにはちゃんとした理由がある。
世界線Aの2030年、すなわち現代に戻れた場合、サンド島はゼネラルリソース勢力圏外で廃空港と化しているため、安全が確保できる。
そこで体制を整えたのちゼネラルリソースにアタックを仕掛けるつもりだ。
世界線Bの1995年、すなわち何も変化がなかった場合、サンド島には将来起こる戦争で活躍するサンド島分遣隊が駐留している。
オーシア本国から離れた土地であるため、情報漏洩の少なさを狙ってサンド島を選んだ。ついでにうまいこと交渉して燃料や食料を提供してもらおうと考えている。
また、当時のサンド島にはハーバード機長の知り合いがいるのだ。それはまた次の話としよう。
世界線Bの2030年、すなわち全くの異なる異世界の場合、自分たちの秘密を隠すためサンド島で余生を暮らすつもりだ。
しかし、これはサンド島が廃空港の話で、まだ空軍基地として機能していれば場所を移すつもりである。
以上がサンド島を選んだ理由だ。
大気圏再突入で何が起きるかわからない。
だが、ハーバード機長はその大きな賭けにかけようとしていた。
「オーシア勢力圏外に到着、Asatレーダー反応なし。光学迷彩解除、大気圏離脱シークエンスに移ります。」
アークバードⅡは機首を上に向けた。
「離脱シークエンス開始!大気圏を離脱せよ!」
アークバードⅡは高度を上げ、宇宙空間に向かっていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。タイムスリップの説明はわかりやすく書いたつもりですが、理解できたでしょうか?
タイムスリップの分野は得意なのでわからないことがあったら質問してください。