俺は近藤
ただのしがない中学二年生だ。
成績も平凡。運動も平凡。容姿も平凡。平凡オブ平凡を体現してると言ってもいい。
後は、少し中二病入ってると言われているくらい。
そんな平凡な俺は平坦な起伏のない人生を送って死ぬと思っていた。
そんなことは無かった。
普通の平日に学校に行き、授業を受け、そして学校から帰る。
授業までは何も変わらない、何も無い『いつも』の日々だった。
唯、帰り道だけが違った。いつもとは違う道で帰ろうとした。これがいけなかった。
俺はその道で、大型トラックに轢かれた。
突然飛び出して来たトラックを俺は避けることなんて出来る訳も無く、真正面からぶつかったのだ。
そして、その衝撃で俺の意識は闇に沈んだ。
自分の人生が終わったことを他人事の様に思いながら。
目に映るのは木目調の天井だった。
「ここは……?」
見たことの無い天井。俺に掛かっている布団にも見覚えは無い。
体を起こして、ベッドから立ち上がる。
勿論、着ている服も見覚えは無い。サイズもあっては居ないようだ。少し大きい。
部屋も見たことなど無い。壁や天井が全て木で出来ている建物なんて現代に有るんだろうか。
室内は余り広くは無く、物もそこまで置かれていない。
あるのは、小さな本棚と机。それに物を入れて置く為の箱が二つ。両方とも蓋が空いていて、中身が見える。
その中身を見ようとしたその時、
「あら?起きたのね。」
扉が開いた。
「それで貴方の名前は?」
「遠藤航だ。」
「エンドー?ワタル?不思議な名前ね。エンドーが名前?」
「いや、航だ。遠藤は名字だ。」
「ふぅん。変なの。何処の出身?見たところワーグナスぽいけど。」
ワーグナス?聞いたことが無い地名だ。
「ワーグナス?いや、俺は日本だ。」
何処かの国の町だろうか?
「日本?何処よそれ。聞いたこと無いわ。」
日本を知らない?技術大国だぞ。
「えっ。知らないのか?」
「ええ。聞いたことなんて一回も無い。」
「そ、そうか。じゃあここは何処なんだ?」
「ここ?魔法迷宮都市エイヴィーズ。全ての人々が夢を追い続ける場所。」
夢を追い続ける場所。妙に耳に残ったそのフレーズは俺の中の劣等感を呼び起こした。
何も無い自分。
それでも何かを見つけ出せるような気がする。
そんな気持ちにさせるものだった。
俺がこの世界に来て一週間が立った。
庭先に倒れて居た俺を助けてくれたあの女性はナンナ・バートン。
魔法迷宮を管理する冒険者ギルドの職員をしているそうだ。
この世界は所謂ファンタジー世界で、魔法も当たり前に生活に取り込まれている。
そしてこの魔法迷宮都市エイヴェーズは世界でもトップクラスの都市で、国に属さず、完全な自治を行っている都市でもある。
魔法迷宮は、冒険者にとって宝の山だ。世界各国から冒険者が訪れ、それ目当てに店が立ち並び、都市が発展する。
都市が発展すれば、更に人がやって来る。
そんな場所に俺はいる。
幸いにも、行く当ての無い俺をナンナさんは家に置いてくれるそうだ。
お礼に俺はナンナさんの仕事の手伝いをすることにした。
冒険者ギルドの職員は人数が足りていないようで、俺は重宝された。
ギルドの建物の掃除や、簡単な書類を纏めたり、やって来る冒険者の相手をしたりと沢山の仕事がある。
そんな生活を2年ほど続けたある日、俺は16歳の誕生日を迎えた。
冒険者の資格を取るには、20歳以上で無ければ取ることは出来ない。だが、冒険者養成学校に2年間通えば、冒険者資格を得ることが出来る。
俺はナンナさんに冒険者になる旨を伝えた。
ナンナさんは最初こそ反対していたが、執念深く説得してなんとか許しを得ることが出来た。
ただ、一つ条件がついた。
冒険者に晴れてなった時は、2年間ギルド直属の冒険者になることだ。