「さて、今は聖杯戦争だ。これからどうする?マスター」
ついさっきまで殺意を出していた青年はその殺意は感じ出させず、まるで友人に話しかけるかのような雰囲気で此方に話しかけた。
「あ、ああ……確認だが、臓硯は本当に死んだんだよな?」
「臓硯?……ああ、あの老人の事?多分この世から消えたと思うよ。洗礼魔術は初めて使ったけど、どうやらうまく行ったみたいだ」
「ちょ…ちょっと待て!!!あれで初めてなのか!?何か使い慣れた感じがしたんだが!!?」
「まぁ、みっちり教え込まれたけど、実戦で使ったのはさっきが初めてだったんだよ。それで、マスターは聖杯にかける願いってあるのかい?」
何か結構重大な事を言った青年が此方に質問をしてきたのでそれに応えようとした時、
「そういえばまだお礼を言っていなかったな。……ありがとう。お前のお蔭で桜ちゃんを救えたよ」
「桜?」
「ああ、俺の義理の娘でね。此処に養子に出された子なんだ。その子をあいつが、臓硯が自分の都合の良いように改造していたんだ。それから解放する為にはこの聖杯戦争に参加し、聖杯を獲得する事が条件だったんだ。でも、それもあいつが居なくなったからもうあの子が苦しむ姿を見ずに済む。本当にありがとう」
そう言って雁夜は頭を下げた。それに対し青年は
「嫌、お礼を言われるような事はしてないよ。俺は自分がしたいことをしただけだ。だから顔をあげてくれマスター」
「それでも言わせてくれ。本当に、本当にありがとう」
そう言って頭を上げようとしなかった。すると、
「おじさん、どうしたの?」
蔵の中に、幼い女の子の声が響いた。その声に雁夜は反応し、
「桜ちゃん!!もう爺の命令を聞かなくても良いんだ!!!もう桜ちゃんは自由なんだよ!!」
そう言って桜という女の子に抱き着いた。青年はその女の子を見て、驚きを隠せていなかった。
「本当?もうあの蟲小屋に入らなくても良いの?」
「ああ!!もう良いんだ!!もう桜ちゃんは自由なんだ!」
そう言って雁夜は青年に振り返り、
「彼が助けてくれたんだ。本当にありがとう!!!」
そう言うと、桜も
「お兄さん、助けてくれてありがとうございます」
そう言って頭を下げた。
「嫌、二人とも顔を上げてくれ。何か居心地が悪い」
そう言うと、二人とも顔を上げてくれた。その時、桜と呼ばれた女の子がうつらうつらとし始めた。
「桜ちゃん、眠いのかい?」
「うん、眠い」
「確かにもう遅い時間だね。もう部屋で寝た方が良いな。部屋まで送ろう」
そう言って、雁夜は桜を連れ蔵から出ようと階段を上り始めた。青年はその後を静かに付いて行った。
「マスター、あの桜って子なんだけど」
「ん?どうかしたのか?」
部屋のベットに寝かしつけ、応接間で話を再開させようとすると向こうから話しかけて来た。
「あの子を此処に養子に出したのは誰なんだ?」
「ああ、遠坂 時臣だ」
「何で養子にだしたんだ?」
「本来魔術師ってのはその家の魔術を受け継げるのは一人なんだ。時臣は二人子供が生まれたから片方は自分の家の、もう片方が他の魔術師の家に養子に出されるんだ。そして桜ちゃんは此処に養子に出されたんだ。他の家じゃなく、此処に」
そう、あいつは俺は望んだ小さな幸せを簡単に捨てたんだ。それがどうしても許せなかった。そう憎悪が出ていると、
「この家に来たのは災難だったけど、時臣って人のやったことはある意味不幸中の幸いなのかもしれないね」
「何?どういう意味だ!?」
「あの子の魔術の属性……架空元素・虚数っていうのだけど、他の魔術師からしたら喉から手が出る程のレアなものでね、魔道の家門の加護ってやつが無いと調査などの為にホルマリン漬けが確定なんだ。時臣って人がそれを知っていたかは別だけど、最悪な事は回避出来ているみたいだからね」
「そうなのか?」
「まぁ単に危険を感じたから養子に出したのかもしれないけどね。こればかりは本人に聞かないと分からないけど」
「桜ちゃんは安全なのか?」
「さあね。こればっかりは俺にも分からない。ここの当主はあの爺さんの次は桜って子になるのかな?」
「多分そうだと思うけど」
「そうか。それなら魔術協会ってのがどこまでこちらに干渉できるか知らないけど、何もないよりかは安全だと思うよ」
それが聞けただけで少しは怒りが収まった。その時、今まで聞いていなかった事を思い出した。
「そういえば、お前のクラスは何なんだ?」
「……何か今更な感じがするんだけど」
桜ちゃんの事で頭が一杯だったので聞くのを忘れてたのは言えない。
「改めて、俺は
クラスを聞いて
「あれ?俺は確か
「まぁ、何かあったんじゃないのか?」
何かってなんだ何かって。
「さて、マスター。この聖杯戦争に参加するってことで良いのかもしれないが、聖杯にかける願いはある?」
「嫌、桜ちゃんを救うってことが願いの様なものだったからな。願いなんて思いつかないよ」
「そうか。なら、俺が聖杯を使っても良い?」
セイヴァーがそんな事を言い出した。
「構わないが、どんな願いなんだ?」
「それは秘密だ。でも、悪い事はしないさ」
一瞬疑ったが、何か安心させられる笑みと雰囲気を感じたのでその疑念は晴れた。
「分かった。だが、いつかは話してくれよ」
「もちろん」
そして、聞きたかったもう一つの事を聞いた。
「なぁ、勝てるよな?」
それを聞いたセイヴァーは一瞬呆けたが、
「もちろん勝つつもりだ。最初から負けるなんて考える方が可笑しいよ」
このやり取りはアーチャーにアサシンが殺された日の前日のやり取りだった。
連続投稿。楽しんでいただけたら幸いです。