バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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最終問題

「「――その話はマズイ!」」

 

「え?」

 

 真剣な顔で怒鳴る私と雄二だが、アキ君はその意味がわからないという顔で首を傾げる。

 が、隠密行動に長けるムッツリーニの一言で事態は動きを見せた。

 

「…………盗聴の気配」

 

 その言葉を受けた雄二が慌てて駆け出し、学園長室の扉を開け放った瞬間、複数の足音が遠ざかっていくのが伝わってきた。

 やられた……! 盗聴器に飽き足らず、扉越しに直接こっちの話を聞いていたのか……!

 すぐさまポケットからとある小道具を取り出し、部屋の隅――にある植木鉢にそれを翳す。

 

「水瀬よ。それは……」

「…………ワイドバンドレシーバー」

 

 ムッツリーニの言う通り、私が手に持っているのは以前、秀吉に作るのを手伝ってもらった広帯域受信機――ワイドバンドレシーバーだ。

 画面に映った周波数を確認すると、しっかりと反応があった。詳しい数値に関してはまだ読めないが、当たりと外れは何となくわかる。

 反応があった場所を探ってみると、普段ムッツリーニが使っているタイプと同じやつのものが出てきた。もしも違うタイプでコンセントにでも仕込まれていたら詰んでいたわ……!

 

「ていっ!」

 

 出てきた盗聴器を足下に投げ捨て、粉々になるよう思いっきり踏み潰す。もう手遅れだけど、これで今後は盗聴される心配はない。

 盗聴器が壊れたのを確認し、すぐに駆け出して部屋を出て行ったアキ君達に追いつく。

 

「ごめん、盗聴器を潰してたから遅れた」

「潰すことに意味はあるの!?」

 

 あるに決まってるでしょうが。

 

「雄二! 向こうは例の常夏コンビでしょ!」

「そうだ! 一瞬だが例の髪型が見えたから間違いない!」

 

 やはり聞き耳を立てていたのは常夏コンビのハゲとモヒカンだった。教頭側の人間とはいえ、アイツらも懲りないわね本当に。

 一人ずつ行って返り討ちに遭うとマズイということで、こちらは二手に分かれることが決まった。私はアキ君と雄二に就くことにした。

 ムッツリーニが走りながらもアキ君に、普段愛用している双眼鏡を手渡す。アキ君に渡したのは予備の方らしいけど。

 

「ありがとう、ムッツリーニ!」

「…………この学校は気に入っている」

 

 それは私も同意見だ。だからこそ、こうして彼らと共に奔走している。学園の存続のために。

 屋内組と屋外組に分かれ、校内を走り回る。あの二人が行く場所なんて限られているが、刺激を得るために冒険しても良いだろう。

 

「明久! 水瀬! まずは放送室を押さえるぞ!」

「あいよっ!」

「オーケー!」

 

 雄二はまず、最も危険性の高い放送室を選んだ。確かに、情報の暴露を行うにはうってつけの場所だ。確実に押さえないとね!

 

 

 

 ~ 放送室 ~

 

「邪魔するぞ!」

「全員、その場から動かないで!」

「な、なんだお前ら!?」

「雄二! 楓! ここには煙草を吸ってるバカしかいないし、学園祭で密かに取引されていたアダルトDVDが置いてあるだけだ!」

「とりあえず、煙草とDVDを押収して急ぐぞ!」

「もちろん! 校則違反だしね!」

「安心なさい! 没収したものは私達が責任を持って使――売り――処分してあげるから!」

「お、鬼! 悪魔! 泥棒!」

 

 

 

 ~ 廊下 ~

 

「あれ? アキに坂本に水瀬さん。そんなに急いでどうしたの?」

「ごめん美波! 今急いでるからまた後で!」

「あぁっ!? アキ君落とした! DVD落としたよ!」

「DVD? なんでそんなもの持って……『女子高生緊縛物語』?」

「マズい! 美波を中心に闘気の渦が見えるから逃げよう!」

「何アレ!? アクション漫画のキャラみたいになってるんだけど!?」

「待ちなさい! 洗いざらい説明してもらうわよ!」

「ひぃっ! 追ってきたぁ!」

 

 

 

 ~ 2‐A教室前 ~

 

「……雄二」

「翔子! 悪いが今はお前に構っていられない!」

「……大丈夫。市役所くらい一人で行ける。婚姻届を出すだけだから」

「いやいや何を言って――いつから君はバカになったの!?」

「俺はそんなものに判を押した覚えはないぞ!?」

「雄二、楓! ここにはいないから急ごう!」

「待ってアキ君! 翔子が色々とおかしいから待って!」

「こっちはこっちで大変なことになっているんだ!」

「それじゃまたね、霧島さん!」

「待ってって言っているのに!」

「少しでいい! 頼むから待ってくれ明久!」

 

 

 

 校舎の一階から四階まで探し回ったが、余計なものしか見つからず、肝心の常夏コンビは見つからなかった。

 

「さすがに冒険し過ぎたわ……」

「マズいな……」

「一体どこに――ん?」

「? どうかした――あぁ……」

 

 アキ君の視線を追ってみると、打ち上げ花火に使う火薬の玉が保管されていた。

 花火自体は何度か見ているが、打ち上げられる前のやつは今回が初見かもしれない。

 ムッツリーニのやつとは別の、こっそりと持参したマイ双眼鏡で校舎を見回していると、アキ君のズボンのポケットに入っている携帯電話のものであろう、無機質な着信音が響き出した。

 

「もしもし?」

『ムッツリーニが見つけたぞい』

「ナイス! で、連中はどこにいるの?」

『新校舎の屋上じゃ』

 

 新校舎の屋上……屋上……!

 

「こっちも見つけた! 秀吉の言う通りよ!」

「あいつら、放送設備を準備していやがる!」

 

 雄二もアキ君から双眼鏡を受け取り、屋上を視認する。そこに映っていたのは、例のハゲとモヒカンが放送機器を弄っている姿だった。

 しかし、雄二が焦るほど作業が進んでいるようには見えない。むしろ何らかの細工に引っ掛かったように手こずっている。

 

 ……上手くいったみたいね。

 

「計画通り」

「……お前は何をしたんだ?」

 

 双眼鏡から屋上を見つめたまま、呆れるように口を開く雄二。アキ君も、ジト目で私を見ている。何も悪いことはしていないのに。

 

「こんなこともあろうかと、さっき屋上の放送設備を弄っておいたのよ」

 

 といっても、そこまで大したことはしていない。精々、コンセントを使えなくしておいただけだ。それも一つではなく、複数。

 

「さっき……って、いつ?」

「瑞希と島田さんを更衣室に連れて行ったときかな。そんなことより、どうするのあれ。まさかあのまま放っておく、なんてことはしないよね?」

 

 残念ながら、あの仕掛けでも時間稼ぎが精一杯だ。さっき屋上に行った際、予備のコンセントがあるのを確認している。あの二人がそれに気づくのは時間の問題だろう。

 今から屋上に行ってもいいが、ここから行くには五分ほど必要だ。着く頃には放送が流されてゲームオーバーだろう。だとすると――

 

「――アキ君、雄二。いっちょかましてみる?」

 

 そう言いながら悪戯な笑みを浮かべ、さっきアキ君が見つけた打ち上げ花火へと視線を向ける。

 

「……いいね。他に方法はなさそうだし」

「……俺も賛成だ。――起動(アウェイクン)

 

 

 

「くそっ! なんで動かねぇんだ!?」

「常村! このコンセント、よく見たら回線が切れてるぞ!」

「ちくしょう! これじゃ予備のコンセントがないと――おぉぉぉっ!?」

「なんだよ常村――ゲェッ!? マジかよぉっ!?」

 

 

 ドォン! パラパラパラ

 

 

「外したぞ明久!」

「もうちょっと下よ!」

 

 双眼鏡で覗き込みながら、雄二と共にアキ君へ指示を出す。一発目は向こうが避けたせいで、惜しくも外れてしまったのだ。

 今、私達を中心に召喚フィールドが展開されており、喚び出されたアキ君の召喚獣が打ち上げ花火を屋上へ投げつけている。

 もちろん、こんなことに協力してくれる教師なんているわけがない。これは雄二の持つ白金の腕輪によって作り出されたフィールドだ。

 

 

 ヒュ~……     ドォン!

 

 

「命中!」

「スピーカーの破壊を確認!」

 

 これが私達――というかアキ君と雄二の最終手段。その名も打ち上げ花火アタックだ(良い子の皆はマネしないでね?)!

 続いて放送機材を破壊させるべく、私と雄二は次の指示をアキ君に出す。

 

「さっきよりも右だ!」

「次弾用意! 標的、屋上右方の放送機材!」

「わかってる!」

 

 アキ君は自分の召喚獣に花火をしっかりと構えさせ、さっき没収したライターで火を点す。

 こういう時に関しては、物理干渉のできる召喚獣ほど便利なものはない。人間の力じゃできないことも、召喚獣の力なら可能だからだ。

 

「いくよ二人とも!」

「撃て――いっ!」

 

 私の合図と共に、アキ君の召喚獣が思いっきり花火を投げつける。

 投げられた花火は思った以上に綺麗な放物線を描き、放送機材に命中した。これで向こうにできることはなくなった。私達の勝ちだ。

 ……さてと、後は残った敵を殲滅するのみ。散々やらかしてくれたんだ。今さら生かして帰す気はない。地獄を見せてやろう。

 

「アキ君。常夏コンビに一発ブチ込んで」

「そうだな。残弾も限られているし、これで最後にしておくか」

「了解!」

 

 すでに次弾の用意が完了していたようで、こちらの指示を待っていたかのように火を灯すアキ君。どうやら同じ考えだったみたいね。

 今度の標的は動いている人間だ。多少は細かく指示を出さないと当てにくいかもしれない。

 

「今度はさっきより左だ」

「いえ、少しだけ右に変更して。……照準よしっ!」

「オーケー! それじゃ、止めの一発いきまーす! せーの――」

 

「何をやっているかぁっ!」

 

「うわぁっ!?」

「あっ、花火の軌道が――!」

 

 

 ヒュ~……     ドォン!

 

 

「おいお前ら! 花火が校舎にブチ当たったぞ!?」

「校舎がゴミのようだっ!?」

「花火の威力って凄いわね!?」

 

 突如背後からドスの利いた怒鳴り声が聞こえた瞬間、それに驚いたアキ君が召喚獣の操作をミスってしまい、狙いが大きく外れた花火は校舎の一角に激突、見事に破壊した。

 これは酷い。壁や扉が壊されたことにより、瓦礫の山が築き上げられていく……。

 

「き、君達! よりによって教頭室になんてことをしてくれたんですか!」

「えっ? 教頭室?」

 

 教頭室。その単語を聞いた私は、今の状況を整理することにした。

 

 

 今回の黒幕は教頭の竹原。

     ↓

 打ち上げ花火が教頭室に命中。

     ↓

 悪は滅びたっ!

 

 

「やったぜっ!!」

 

「何を言っとるんだ馬鹿者!」

 

 

 悪の消滅を心の底から喜んだ途端、お馴染みの低い声で思いっきり怒鳴られてしまった。我らが鉄人のお出ましである。

 

「逃げるぞ明久! 水瀬!」

「おうともっ!」

「あいさー!」

「逃がすか! 今日という今日は絶対に帰らせん!」

 

 悪を滅ぼした今、ここで捕まるわけにはいかない。こうなってしまうと鉄人がラスボスだ!

 ……それにしても、今回の一件は文月学園創設以来初の大事件ではなかろうか。私としては刺激に満たされるから最高だけどさ。

 

「ち、違うんですよ先生! 僕らは学園の存続のために」

「存続だと!? たった今お前らが破壊したばかりだろうが!」

 

 それに関しては鉄人も原因の一端に入っていると思う。あそこで怒鳴りさえしなければ、花火は常夏コンビに命中していたのだから。

 私と雄二はアキ君抜きで咄嗟にアイコンタクトを交わし、そのアキ君とは分かれる形で近くにあった扉に手を掛ける。

 

「恩に着るぜ明久! 俺たちのために鉄人を引き付けてくれるとは!」

「持つべきものは幼馴染みだね!」

「ズルいぞ二人とも! 先生、向こうに坂本と水瀬が逃げました!」

「まずは貴様だ吉井ぃぃっ!」

 

 鉄人はアキ君の言い分をしっかりと聞き入れたうえで、手始めと言わんばかりにアキ君を追い始めた。私と雄二は助かったのだ。

 しかし、ある程度の距離を走ったところで、私と雄二は立ち止まった。

 ……あぁ、君もか。君も同じ考えなのか。ならば致し方がない!

 

「次はお前が囮になれ!」

「それはこっちの台詞だよ! 男ならここでか弱い女の子を逃がすのがセオリーでしょうが!」

「か弱い!? お前みたいなヤツのどこにか弱い要素があるんだ!?」

「言ったわね!? なら今ここで決着をつけようじゃないの!」

「上等だボケ!」

『次は貴様らだぁっ!』

 

 次はどっちが囮になるか。それを決めるべく雄二と本気で殴り合っていると、鉄人が右手でアキ君を掴んだままダッシュしてくるのが見えた。

 無論、私と雄二は争ってる場合じゃないと猛ダッシュで逃げるのだった。

 

 

 

「随分と殴られたよ……」

「あの野郎は手加減を知らないのか」

「なんで女子の私まで殴られたの……?」

 

 あれから間もなくして、私と雄二もアキ君の二の舞となった。私達の処分は良くて停学、悪くて退学かと思っていたが、学園長が手を回してくれたおかげで厳重注意に止まった。

 ……ただ、その相手が鉄人だったのでアキ君と雄二は顔の面積が倍になるほど殴られ、私も脳天に鉄拳をもらってしまったが。

 それに加え、私達は早めに解放されている。というのも教頭室に花火が飛び込んだおかげで、その修繕という名目でガサ入れが始まったからだ。

 あの学園長のことだから徹底的に教頭を調べ上げ、尻尾を掴むだろう。向こうは私達に思わぬ借りができたってわけだ。一応感謝するわ。

 

「遅かったではないか」

「…………先に始めておいた」

 

 今、私達は近所の公園にいる。ここでFクラスのメンバー全員と打ち上げをすることになったのだ。用意されたお菓子とジュースで。

 

「お主ら、もはや学園中で知らぬ者はおらんほどの有名人になってしまったのう」

「…………(コクコク)」

「この二人と一緒の扱いだなんて、心外にも程があるわ……」

「「それはこっちの台詞だ」」

 

 アキ君と雄二だけならまだしも、私の良くない噂まで学園中に広まってしまった。まぁ、それがちっぽけに見えるほど今回の件は刺激的だったけど。ありがとうございます。

 

「あれだけのことをやっておいて、退学どころか停学にすらならなかったのよ? 妙な噂の一つや二つ、流れても仕方ないでしょ。ウチだって気になるし」

 

 そんな島田さんの言葉を聞き流し、秀吉からジュースの入った紙コップを受け取って一口飲む。中身はグレープジュースか。

 ちなみにお店の売り上げだが、二日間の稼ぎとしては結構な額になったものの、出だしの妨害が効いたようで畳と卓袱台が精一杯だった。

 ……まぁ、たった今遅れてきた瑞希が言うには無事に転校を阻止できたようだし、結果オーライといったところだね。

 

「……何これ。少し苦いんだけど」

 

 およそジュースの味だとは思えない。わずかにアルコールの臭いもするし――もしかしてこれ、ジュースによく似たタイプのお酒?

 まさかと思ってアキ君達の方へ振り向くと、

 

「明久君っ! 服を脱いでください!」

「なにゆえっ!?」

 

 案の定、酔っ払った瑞希がアキ君と共に大人の階段へ登ろうとしていた。他の連中も飲んでいる可能性はあるが、今のところ完全に酔っているのは瑞希だけだ。アキ君はいつも通りだし。

 というか瑞希、今アキ君のことを名前で呼んでいたわね。酔ったせいで理性に掛けられた枷が外れてしまったのかもしれない。

 ……そんなことを言っていたら、私もちょっと頭がクラクラしてきたわね。せっかくだし、意識があるうちにはっちゃけましょうか。

 

「ひっでよし~!」

「な、なんじゃ水瀬!?」

 

 背後から秀吉に抱き着き、翔子よりも少し大きめの胸を背中に押し付ける。

 いつものように、というかそれ以上に頬を赤く染め、大きな抵抗もせずに慌てふためく秀吉。男のくせに可愛いわねこんちくしょう!

 

「うへへ、良い匂い~」

「もしやお主、酔っておるのか!?」

 

 それ以外に何があるというのか。

 

「は、放すのじゃ! せめて、せめて人目のつかぬ場所で……!」

 

 首を必死にキョロキョロさせながら、見事なまでに墓穴を掘る秀吉。言われてみれば、さっきからFクラス連中がこっちを見ているわね。

 だが、それに関しては仕方がない。何せ、秀吉の外見は誰がどう見ても美少女そのもの。第三者からすれば、女子の私と戯れているように見えるのだ。連中にとっては眼福ものだろう。

 

「人目のつかない場所ね……」

「ち、違うのじゃ! 今のは言葉のあやというもので――」

「じゃあここでやっちゃお~。ついでに男かどうか確認してあげる~」

「なぜワシのズボンに手を掛けるのじゃ!? というか何をする気――やめるのじゃぁぁっ!」

 

 やめない。酔いが回って意識がなくなるまで、絶対にやめない……!

 

 

 

「おぅ、頭が痛いわ……」

「あはは……楓、久しぶりに泥酔してたもんね」

「だ、大丈夫ですか……?」

 

 翌朝。いつものようにアキ君と登校していると、その途中の坂で瑞希に会った。

 今朝、何があったのか私の記憶が秀吉のズボンを脱がそうとしているところで途切れていたので、その時の惨状をほぼ完全に覚えていたアキ君に自分のその後を聞いてみた。

 

 アキ君が言うにはあの後、私は秀吉のズボンを脱がしきったところでいきなり跳び上がり、酔った状態で彼に迫る怒り心頭の島田さんを飛び蹴りで迎撃したらしい。ごめん島田さん。

 私はそこまで酒に弱いわけじゃない。過去にも何度か飲んだことあるし、どこまで耐えられるかは自分自身で把握している。おそらくここ数日で溜まった疲労が原因だろう。

 

「……いいけど、婚姻届は弁護士に預けてあるから家にはない」

「随分と厳重に保管してやがるなオイ!」

 

 すぐ近くから雄二と翔子の声が聞こえてくる。アイツも諦めが悪いわね。チケットの件といい、オリエンテーリングでの件といい……。

 

「アキ君。あのチケット、どうするの?」

「もちろん、必要としている人にあげるべきだと思うよ」

「? な、なんのことですか?」

「素直じゃない男と、一途な女の子への贈り物について話してたってとこかな?」

 

 この口ぶりからして、間違いなく翔子にあげるつもりだろう。瑞希は途中から聞いていたので話そのものが見えていないようだが。

 その瑞希で思い出したが、酔った時のことを完全には忘れていなかったようで、アキ君を名前で呼ぶようになっていたのだ。

 

「――きです。明久君」

 

 職員室に呼ばれていたことを思い出した瑞希が小走りに遠ざかっていく際、小声で何かを呟いていたが、アキ君には聞こえていなかった。

 

 ……私には何となくわかるけどね。瑞希が何を言ったのか。

 

 

 

 




 バカテスト 英語

 頭の体操として一風変わったクイズをどうぞ。
 【①】と【②】に当てはまる語を答えなさい。
『マザー(母)から【①】を取ると【②】(他人)になる』



 姫路瑞希の答え
『マザー(母)から【M】を取ると【other】(他人)になる』

 教師のコメント
 その通りです。Motherから『M』を取るとother(他人)という単語になります。こういった関連付けによる覚え方も知っておくと便利でしょう。


 土屋康太の答え
『マザー(母)から【M】を取ると【S】(他人)になる』

 教師のコメント
 土屋君のお母さんが『MS』でも『SM』でも、先生がリアクションに困る回答ですね。


 吉井明久の答え
『マザー(母)から【お金】を取ると【親子の縁を切られるので】(他人)になる』

 教師のコメント
 英語関係ないじゃないですか。


 水瀬楓の答え
『マザー(母)から【血縁】を取ると【other】(他人)になる』

 教師のコメント
 ②と回答の意味が合っているのが腹立たしいです。水瀬さんの回答は絶妙に間違っているものが多いですね。



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