バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

34 / 53
 バカテスト 強化合宿の日誌

 この強化合宿全体についてのまとめを書きなさい。


 姫路瑞希のまとめ
『他のクラスの人と勉強することで良い刺激が得られました。伸び悩んでいた科目についての学習方法や使い易い参考書についても教えて貰うことができたので、今後は更に頑張っていきたいと思います。夜はいつものように騒ぎがありましたが、これはこれで私達の学校らしいと思います。ある人から内緒で素敵な写真も貰えて大満足です!』

 教師のコメント
 姫路さんは全体的にそつなくこなしている様子だったので伸び悩んでいる科目があったということに驚きました。本来なら先生が気付くべきなので申し訳ないです。ですが、無事に解決できそうなので何よりです。それと、バカ騒ぎについては悪影響を受けないように気をつけて下さい。


 島田美波のまとめ
『三日目の夜のことが忘れられない。ウチはどうしたらいいんだろう。こんなことは水瀬さんにしか相談してないし……。瑞希の気持ちを知ってるのに、これって裏切りになっちゃうのかな……? ああもう! どうしていいのかわかんない!』

 教師のコメント
 一体何があったのでしょうか? 相談相手はいるようですが、それでも解決しないのであれば……そのときは先生に話してみて下さい。一応あなた方よりも長く生きているので少しは力になれるはずです。ただ、気持ちと書いてあるということは恋愛の話でしょうか?


 吉井明久のまとめ
『あまりに多くのトラブルがあって驚いた。初日はいきなり意識を失って宿泊所に運ばれたので記憶がない。その後は覗き犯の疑いをかけられて、自分に対する周りの見る目に悩まされた。勉強についても、女子風呂を覗く為に頑張ろうと思ったけど今のやり方に不安が残るし、色々と考えさせられる強化合宿になったと思う。』

 教師のコメント
 そうですか。


 水瀬楓のまとめ
『初日からいきなりトラブルに巻き込まれ、私が犯人であると疑われた。その後は都市伝説の教科書を見せられたり、秀吉風呂を覗こうとして鉄人に見つかったり、秀吉に夜這いを仕掛けて鉄人に追いかけられたりしたが、何だかんだで思い出に残る強化合宿になった。唯一心残りがあるとすれば、持参した携帯ゲーム機を鉄人に没収されたことです。』

 教師のコメント
 自業自得です。





第六問

「ふぁ……ね~む~い~……」

 

 眠い。昨日に続いて今日も眠い。

 というのも、昨夜も鉄人に朝まで教育について指導されたからだ。私は脳天に三つのお団子が出来上がり、雄二とセーラー服を着たアキ君が(拳で)語られている様を延々と見せつけられた。

 ちなみに現在進行形で朝食を食べているのだが、もうこの際寝てしまっても良いんじゃないかと思う。死ぬわけじゃあるまいし。

 

「楓ちゃん、大丈夫ですか……?」

 

 私と向き合う形で座り、朝食を食べている瑞希が凄く心配そうな顔で話しかけてきた。彼女の隣に座った島田さんも、昨日のことを知っているからか少し申し訳なさそうな顔をしている。

 

「あー……大丈夫じゃないかも。昨日は全然眠れなかったしね」

「何かあったんですか?」

「え、えっと……」

「あっ、瑞希。それなんだけど……」

 

 どうやら瑞希は昨夜の出来事を知らないようだ。まぁ部屋を出る前に様子を見た際、疲れていたのかぐっすりと眠っていたもんね。

 これには私も返答に困ったが、島田さんが適当にはぐらかしてくれたおかげで何とかなった。ありがとう。この恩は今日だけ忘れないわ。

 

 

『ふおぉぉお――っ!?』

 

 

 しかし気のせいだろうか。さっきから男共の雄叫びが聞こえてくるのは。

 

「どうかしたんですか?」

「あ、あぁ、何でもないわ」

 

 瑞希に話しかけられて箸を持つ右手が止まっていたことに気づき、少し慌てながらも食事を再開する。やっぱり白米は最高ね。

 もう一眠りするべく朝飯(和食)をさっさと平らげ、楽しそうに話す瑞希と島田さんに気づかれないよう、部屋から出る。早く戻って布団に入ろう。秀吉が夢の世界で待っている。

 

「…………(トントン)」

「ん? ムッツリーニ?」

 

 不意に肩を叩かれたので振り返ってみると、まるで誰かを待ち伏せしていたかのようにムッツリーニが立っていた。相変わらず気配すら感じないのはさすがと言ったところか。

 

「何の用? 私、今凄く眠いから部屋に戻るところなんだけど」

「…………(スッ)」

 

 ならばこれを見ろ。そう言わんばかりに、ムッツリーニは周囲を警戒しながら三枚の写真を差し出してきた。誇らしげに胸を張っている辺り、彼にとっては相当な自信作のようだ。

 念のため確認を取ったところ、どうやらこれは『魔法の写真』というものらしい。ははっ、自信満々な顔で何を言うかと思えば……。

 

「魔法の写真なんてあるわけないじゃん。ファンタジー世界じゃあるまいしふおぉぉおっ!」

 

 ムッツリーニが見せてくれた写真。その一枚目に写っていたのは、恥ずかしそうに上目遣いで浴衣姿でツーショットで色っぽくて少し胸元が覗いている、瑞希と秀吉だった。

 水着のように肌が露出しているわけじゃない。それなのに謎の興奮を覚えてしまった。さっきから聞こえていた男共の雄叫びも、この写真の力によるものだろう。まさに魔法の写真だ。

 

「えーっと、確か三枚あったわね……」

 

 謎の興奮が納まらぬまま、二枚目の写真に目を通す。

 するとお次は浴衣姿で(雄二に)迫る翔子と、ハーフパンツ姿の島田さんが写っていた。こちらも素晴らしいツーショットだ。

 翔子はともかく、島田さんも彼女と似たような体勢になっていることから、おそらくアキ君に迫っているところを撮影されたのだろう。

 

「さすがというか、ここまで来ると野生のプロだね」

 

 これは三枚目も期待できる。私はかなりワクワクしながら、最後の一枚に目を通す。そこに写っていたのは――セーラー服姿のアキ君だった。

 

「……これは何?」

「…………綺麗に撮れたので印刷してみた」

 

 私のワクワクを返せこの野郎。

 

「おっ?」

 

 これで魔法の写真(一枚除く)は全部見たと思っていたら、女装姿のアキ君が写る写真の後ろにもう一枚写真があった。

 もう嫌な予感しかしないのだが、ここまで来ると見たいという衝動が抑えられない。どうかちゃんとした女子の写真でありますように――

 

 

 →セーラー服姿のアキ君(パンチラ版)

 

 

「――脳天かち割るぞ貴様」

 

 なんてもの撮影してんだこの変態。パンチラはパンチラでも、これは全然嬉しくない。だって秀吉ならともかく、アキ君のトランクスだもん。アキ君のトランクスが丸見えになってるもん。

 私は今すぐこの写真を破り捨てたいという衝動を必死に抑え、ブルブルと震える手に持つ写真を、ムッツリーニに返して口を開く。

 

「とりあえず――この四枚を焼き増しして」

「…………セーラー服の明久も?」

「セーラー服のアキ君も」

 

 確かにワクワクを返してほしいとは思うが、だからといってこの写真に罪はない。ネタとして最大限に利用させてもらうわ。

 

「…………それともう一枚」

「まだあるの?」

「…………これは誰にも見せていない」

「ふ~ん……」

 

 もう期待なんてしない。そう心の底から思いつつ、渡された写真に目を通す。どうせゴスロリ姿のアキ君でも写ってるんでしょ?

 

「全く、どうせ島田さんの浴衣姿でも――ふぉおおぉぉおおっ!?」

 

 アキ君のゴスロリ姿、もしくは島田さんの浴衣姿が写っているのかと思ったら、女性のように浴衣を脱ぐ半裸の秀吉が写っていた。

 傷一つ付いていない、触り心地の良さそうな肌が露わになっており、胸元が見えないこともあって背徳感すら覚えてしまう。この世のものとは思えない一枚だ。生きてて良かった……!

 

「と、とりあえず四枚とも1グロスほど焼き増しして。できるだけ早く」

「…………明久と同じこと言ってる」

 

 これ以上にないほど心外だ。

 

「ま、まぁとにかく、焼き増しよろしくっ!」

 

 アキ君と同列に扱われたことに動揺するも、秀吉の半裸写真を物凄く名残惜しそうに見つめながら、第三者が来る前にその場から急いで立ち去る。決して逃げたわけではない。

 

「…………事実から逃げるのは良くない」

 

 だからそんな事実は認めない。絶対にだ。

 

 

 

「ダメだ! 圧倒的過ぎる……!」

「誰か……誰か援護を……!」

 

 合宿四日目の夜。明日は帰るだけの移動日となるため、男子(いつもの四人組)にとっては今日が事実上の最終日と言える。そういう事情もあってか、向こうの人数が昨日よりも多い。

 私が配置されているのは地下へと続く階段の真ん中――より少し奥。前方では翔子と瑞希がBクラス男子を蹂躙しており、階段の真ん中を最大戦力である高橋先生が一人で陣取っている。

 自惚れではあるが、どうやら私は教師に並ぶ主戦力の一人としてカウントされているようだ。でなきゃ学年主席の翔子と次席クラスの瑞希よりも後ろに配置されるわけがない。

 ……ただしその分、責任重大でもあるけどね。何せプレッシャーが凄いもの。

 

「……雄二。オイタはそこまで」

「ここは通しませんよ。明久君」

「姫路さん……っ!」

「翔子……っ!」

 

 やっと主犯の四人がお出でなすったが、彼らからすれば現在の状況は予想外だったみたいね。まぁ無理もない。本当なら加勢しているはずのAクラス男子が、一人もいないのだから。

 そのことに気づいた秀吉がそれをアキ君に告げ、雄二もこちらの布陣を見て悔しそうに呟く。無論、私も敵として認知されているだろう。

 

「……雄二。お仕置き」

「くっ! 根本バリアーっ!」

「ちょっ、坂本っ! お前、折角の協力者に対してそれはあんまりじゃないか!?」

 

 

『Aクラス 霧島翔子 VS Bクラス 根本恭二

 総合  4762点 VS 1931点    』

 

 

 さすがは翔子だ。ちょいエリートのBクラス代表の根本ですら一撃で葬ってしまった。学年主席は伊達じゃないってわけか。

 と、そんなことをボーッとしながら思っているうちに、召喚獣を従える瑞希がアキ君に、翔子が雄二に歩み寄っていく。

 そして、その様子を見ていたBクラス生徒が次々と弱音を吐いていく中、アキ君は迫り来る瑞希とその召喚獣に構わず口を開いた。

 

「諦めちゃダメだっ! 姫路さんや霧島さんがダメでも、ここにはいない木下優子さんや美波がお風呂に入っているはず! 覗く価値は充分にあるっ!」

 

 ……アレ? もしかしてアキ君、ここまで来た目的が変わってきてる?

 それに少し勘付いたのか、秀吉が少々驚いたような表情で彼に問いかけた。

 

「明久。ここまで絶望的な状況にありながら、なぜ諦めないのじゃ?」

 

 アキ君は《観察処分者》であり、それによって痛みのフィードバックが存在する。

 しかもここまで圧倒的に不利な状況であるにも関わらず、彼は諦めようとしない。そこまでして写真を取り戻したいのだろうか。

 

「――違うんだ秀吉。そうじゃないんだよ」

「そうじゃ、ない?」

 

 どうやらそうではないらしい。じゃあ、何のためにここまでやってきたのかな?

 

「確かに最初は写真を取り戻して、真犯人を捕まえて、覗きの疑いを晴らすつもりだった。……でも、こうして仲間が増えて、その仲間たちを失いながらも前に進んで、僕は気がついたんだ」

「お、お主。何を言って――」

 

 いや覗きに関してはどうあがいても疑いの晴らしようがない。だって装いとはいえ、現在進行形で行っているのだから。

 私と秀吉がわりと真剣に耳を傾けている中、アキ君はいつになく格好いい顔で告げる。

 

 

「――正直に言おう。たとえ許されない行為であっても、自分の気持ちは偽れない。僕は今――純粋に欲望のために女子風呂を覗きたいっ!」

 

 

 私の中にあった疑惑と懸念が現実となった。アキ君にとっての目的を達成するための手段が、マジで目的そのものとなってしまったようだ。

 

「明久……お主はどこまでバカなのじゃ?」

 

 一体何をどう判断したのか、秀吉はそう呟いた。一瞬呆れながらもツッコんでいると思ったのだが、その美少女顔は『アキ君らしい』という意が込められた感じに微笑んでいる。

 しかし同時に、それはアキ君達と密かに協力関係にあった私が、本格的に彼らと敵対することが決まった瞬間でもあった。

 

「そ、そこまでして私じゃなくて、美波ちゃんのお風呂を覗きたいんですね……!」

 

 違う、そうじゃない。

 

「もう許しません! 覗きは犯罪なんですからねっ!」

「世間のルールなんて関係ない! 僕は、僕の気持ちに、正直に生きるんだ!」

 

 怒りに身を任せ、召喚獣に突撃指示を出す瑞希と、さらに闘志を湧かせて召喚獣を喚び出し、瑞希の召喚獣を迎え撃つアキ君。

 それにしてもさっきの言い方だと、自分のお風呂は存分に覗いても良いという解釈になってしまう。お願いだから少しは自分の身を案じて瑞希。変な男に引っ掛からないか心配だわ。

 

 

『よく言った、吉井明久君っ!』

 

 

 そして廊下に響き渡る、どこかで聞いたことのある声。これにより気勢を削がれ、召喚獣の動きを止めて声の主を探す瑞希。

 

「待たせたね、吉井君。君の正直な気持ちは、確かに僕が聞き届けたよ」

「久保君っ! 来てくれたんだねっ!」

「ずっと迷っていたが……君の言葉を聞いて決心がついたよ」

 

 瑞希よりも先に、声の主――久保利光を見つけ、歓喜するアキ君。遅れたように登場した久保。それはAクラスの加勢を意味していた。

 ……何の決心がついたのか少し気になったが、彼の性癖を知っていれば容易に想像できるため、深く突っ込むのはやめておく。

 

「Aクラス男子総勢二十四名。今より、吉井明久に力を貸そう! 全員、彼を援護するんだっ!」

『『『おおお――っ!』』』

 

 久保の号令と共に、どこからともなく現れるAクラス男子。これで文月学園第二学年男子全員が参戦したことになるわね。

 

「ありがとう久保君! 君たちの勇気に心から感謝するよ!」

「いや、感謝するのは僕の方さ。君の言った通り、自分の気持ちに嘘はつけない。世間に許されなくても、好きなものは好きなんだ……!」

 

 今、アキ君が震えたのは気のせいだろうか。

 

「久保君、お仕置きの邪魔をしないで下さい!」

試獣召喚(サ  モ  ン)――!」

 

 瑞希がお仕置きと称して突撃させた召喚獣を、すかさず喚び出した自らの召喚獣で止める久保。召喚獣の喚び出し方が凄く格好いい。

 

「僕は吉井君を守ると誓ったんだ。君の思い通りにはさせないっ!」

 

 久保の宣言と同時にAクラス男子の召喚獣が、瑞希と翔子の召喚獣を取り囲む。さすがにあの包囲網を突破するのは難しいだろう。

 もちろんいつもの四人組は、その隙をついて前進してきた。実はさっきまで不本意な気持ちがあったんだけど……向こうの目的が変わった以上、もう気遣う必要はないわね。

 

「まさかAクラスまで協力するとは思いませんでしたが、問題はありません。ここは誰も通しませんから――試獣召喚(サ  モ  ン)

 

 冷静に、それでいて素早く召喚獣を喚び出す高橋先生。昨日アキ君達に圧倒的な力の差を見せつけた、トラウマとも言える存在が姿を現す。

 だが、私はまだ喚び出さない。何故なら雄二が白金の腕輪を発動させようとしているからだ。今喚び出すのは少々効率が悪い。

 

「いいや、通させてもらうぜ――起動(アウェイクン)っ!」

 

 雄二の掛け声と共に、白金の腕輪が起動して新たな召喚フィールドが展開される。だけどフィールド自体は既に展開されている。つまり――

 

「干渉ですか……! やってくれましたね坂本君……!」

 

 ――異なる二種の召喚フィールドが同じ場所に展開され、双方の効果が打ち消される。これで点数に関係なく、全ての召喚獣が消滅した。残ったのは生身の人間だけだ。難なく突破できるだろう。

 

 ……まぁ、そう簡単には通さないけどね。

 

「――甘いわよっ!」

「うわっ!?」

 

 煩悩の権化と化した彼らに、人の言葉は届かない。実力行使で止めてやる。

 高橋先生の脇を駆け抜けてきたアキ君の顔面目掛けてハイキックを繰り出すも、当たる寸前でかわされてしまう。今のを避けるとはさすがね。

 

「楓……!」

「なんで私が立ちはだかるのか……バカな君達でもわかるよね?」

「くそっ! 予想していたとはいえ厄介だな……!」

 

 召喚獣だろうと生身だろうと、私には関係ない。コイツらを止めるくらい朝飯前だ。

 両手を広げる形で構え、階段への道を塞ぐ。これで誰も通れない。そう思ったところで、秀吉の口から耳を疑うような言葉が発せられた。

 

「――行くのじゃ明久! 水瀬はワシが食い止める!」

 

 えっ、マジで?

 

「ありがとう、秀吉!」

「…………感謝する」

 

 私が秀吉の言葉に気を取られている隙に、私の脇を駆け抜けるアキ君とムッツリーニ。クソッ、これも雄二の作戦か……! 本人の歪んだ口元を見れば嫌でもわかるわ……!

 

「吉井君と土屋君は逃がしましたが、あなたたちまで通すつもりはありません!」

「流石は高橋女史。判断が早い……!」

 

 他の男子も二人に続いて走り出したが、高橋先生が喚び直した召喚獣によって阻まれた。なるほど、先生が自分の召喚フィールドを消したのか。それによって雄二の召喚フィールドだけが残り、消えていた召喚獣が再び姿を現したってわけね。

 白金の腕輪は使う度に点数を消費する。簡単にフィールドのON・OFFはできない。しかも召喚主である雄二は、作成したフィールド内だと自分の召喚獣が喚び出せないのだ。

 

「……それで、秀吉は私をどうするって? 食い止めるとかほざいてたけど、本気なの?」

「本気じゃ。ワシも男である以上、ここで引くわけにはいかんのじゃ!」

 

 自分も本格的な覗きに参加して、男としての威厳を取り戻すって魂胆か。

 私が思っていた以上に、男として見られていないのを気にしていたのね。認識を改める気はないけど、これは悪いことをしたわ。

 

「安心して秀吉。君が男であろうと、女であろうと、そんなことは関係ない! 私は君を、木下秀吉という人間を受け入れてみせる!」

「お主はワシをどう見ておるのじゃ!?」

 

 性別の壁を越えたマイエンジェル。

 

「まぁ本音は置いといて、基本的には男として見ているわ」

「本音は置いておくものではないぞ!?」

 

 気にしたら負けである。

 

「と、とにかく、お話はこれくらいにしよっか」

「そ、そうじゃな……」

 

「「――試獣召喚(サ  モ  ン)!」」

 

 お決まりの掛け声と共に、お互いの召喚獣が姿を現す。向こうの装備は……袴に薙刀か。対する私の方は黒のロングコートとガリアンソード。間合いに気を付けていれば問題ないわね。

 ここまで来てくれた秀吉には悪いが、正直言って負ける気がしない。この際だし、勝ったら彼の両性的な身体を堪能させてもらおう。だから――

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

  古典  613点 VS 120点     』

 

 

「行くぞ水瀬!」

「来なさい! 遊んであげるわ!」

 

 ――私に男を見せてね? 木下秀吉。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。