バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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 バカテスト

 問 以下の問いに答えなさい。

 相手を従わせるため肉体的、精神的に痛めつけることを何と呼ぶでしょう。


 霧島翔子の答え
『石抱き 鞭打ち 火あぶり 海老責め 釣責め はりつけ 天井吊るし等に代表される拷問』

 教師のコメント
 正解です。さすがですね、霧島さん。
 現代は国際法上、拷問禁止条約によって、拷問は禁止されています。分かっているとは思いますが、人権を尊重し、くれぐれも類する行為のないよう学校生活を行って下さい。


 坂本雄二の答え
「悪かった翔子――っ!」

 教師のコメント
 深くは尋ねません。


 水瀬楓の答え
「ク○ーシオ!」
『ぎゃぁ――っ!?』

 教師のコメント
 吉井君の悲鳴が聞こえてきたのは気のせいでしょうか?





最終問題

「行くぞ水瀬!」

「来なさい秀吉!」

 

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

  古典  613点 VS 120点     』

 

 

 

 さぁ、戦闘開始だ。

 

 

 先に動いた秀吉の召喚獣を迎え撃つべく構え、突き出された薙刀を右にズレてかわし、ガリアンソードをバットのように振るう。

 ゲームで言う通常攻撃だが、100点台の秀吉から見れば、600点以上の召喚獣が繰り出すそれは、まさに神速の一閃。これがフィードバック付きのアキ君なら悶絶は確実だろう。

 その一閃を秀吉の召喚獣は紙一重で回避すると、屈んだ状態から薙刀による突きを、私の召喚獣の胸元――心臓目掛けて放ってきた。

 

「ん……!?」

 

 猪のようにしか動かない他の召喚獣とは違う、人のように動く秀吉の召喚獣。

 それに驚いてしまい、操作していた召喚獣の体勢が崩れたことで突きをかわしきれず、薙刀の刃が召喚獣の脇腹を掠ってしまった。

 

 ……気のせいかな? 秀吉って召喚獣の操作は言うほど上手くなかったはずだ。しかも点数差が五倍もあるのに、こっちの動きに反応してみせた。

 まさか――私の動きを読んでいるのか? 少し様子を見てみましょうか。

 

「むっ!」

「ほいっと!」

 

 ガリアンソードを鞭状に変形させ、その場から動かずに広範囲を薙ぎ払う。第三者がいたら確実に巻き添えを食うわね。

 まぁ単調な動きということもあり、秀吉の召喚獣はその薙ぎ払いをジャンプで回避し、薙刀を構えながら私の召喚獣へ突っ込んできた。

 タイミングが絶妙だったのか、ただの突進よりもキレが良い。とはいえ、所詮は突進。当たらなければどうということは――

 

「水瀬よ」

「ん?」

 

 召喚獣をジャンプさせて突進を回避した瞬間、いきなり秀吉に話しかけられた。

 

「な、何?」

 

 まだ始まったばかりだけど、警戒する必要はある。何せ秀吉は演劇部のホープ。話術で私を揺さぶってきても不思議じゃない。

 召喚獣を少し後退させ、助走を付けてから剣状に戻したガリアンソードを――

 

 

 

「――ワシの顔を待ち受け画像にするのは止めてくれんか?」

「えっ」

 

 

 

 なんで君がそれを知っているの?

 

「隙ありじゃっ!」

 

 私が見事に動揺したことで召喚獣の動きが完全に止まり、すかさず秀吉の召喚獣が振るった薙刀がモロに直撃してしまう。

 勢いが良かったこともあり、車に轢かれたように吹っ飛んで仰向けになる私の召喚獣。コラコラ、さっさと起きなさいな。

 

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

  古典  500点 VS 120点     』

 

 

 

 良かった。思ったより減らされてしまったが、まだ腕輪が使えるだけの点数は残っている。

 

「ていうか待って! なんで君がそれを知っているの!?」

 

 あれはアキ君にすら言っていなかったはずだ。それをどうして秀吉本人が知っているんだ?

 

「…………本当にワシの顔を待ち受けにしておるのか」

「カマ掛けられたぁ――っ!」

 

 ハッタリ!? 今の全部ハッタリだったの!? いや冷静に考えてみればわからなくもないけど! じゃあ私は自ら恥を晒したことになるの!?

 

「酷いよ秀吉! そんなに私の携帯の待ち受けが知りたいのなら素直にそう言ってくれれば良いのに! 何もカマ掛けることないじゃないっ!」

「誰もそこまでは言っておらぬぞ!?」

 

 女の子に対してこの仕打ちは酷いと思うんだけど。結構恥ずかしかったし。

 一旦深呼吸して落ち着き、立ち上がらせた召喚獣を――

 

「そ、それに、嫌というわけではないのじゃが……」

「えっ」

 

 ――攻撃された。まんざらでもない、という表情の秀吉に囁かれながら。

 待って、さすがの私も思考が追いつかない。嬉しいってどういうこと? 昨日の夜這いのときも同じこと言ってたよね?

 

「よし、落ち着け私。今は戦争中なんだ。こんなところで――」

「み、水瀬っ」

「何ッ!?」

 

 またしても秀吉に話しかけられた。格闘技などのスポーツにおいて、挑発行為は厳禁だということを彼は知らないのだろうか?

 

「い、いつワシの顔写真を撮ったのじゃ?」

「教えるとでも!? 二人きりでないこの空間で、教えるとでも思ったの!?」

 

 召喚獣の体勢を整え、秀吉の召喚獣が真上から振り下ろした薙刀をかわし、ガリアンソードを使ったフェイントから後ろ蹴りを繰り出す。

 相手の召喚獣は蹴りの直撃こそ回避したものの、その際に発生した風圧に巻き込まれ、宙を舞うように吹っ飛ばされた。

 

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

  古典  490点 VS 100点     』

 

 

 

 思ったよりも減ってないわね……。どうやら風圧などの衝撃だけじゃ体力を削るだけで、決定打としては確実性に欠けるようだ。

 

「お……教えてくれたって良かろう?」

「良くないから! そう簡単に女子の秘密を聞き出そうとするのはやめて!」

 

 ダメだ、全然落ち着かない。次は何を聞かれるのか、どんな表情をされるのか。さすがに秀吉相手だと堪ったもんじゃない。

 秀吉の召喚獣が起き上がった瞬間を狙ってガリアンソードを構え――

 

「全く、君は私を何だと思ってるのさ……」

「み、魅力的な女子……としか言えんのじゃが……」

 

 ――構えたところで体勢を崩してしまい、その隙に薙刀で召喚獣の右肩を抉られた。

 

「さっきから何なの君は!? あることないこと言いやがって!」

「お主こそ何なのじゃ!? 昨夜の夜這いといい、ワシの顔写真といい、まるで意図が読めんぞ!?」

 

 いや読もう!? そこは男である以上、頑張って女子の意思くらい読み取ろうよ!? この子ホントに演劇部なの!?

 

「やばっ……」

 

 女の子のように頬を赤く染め、女の子のように顔を逸らしながらも、チラチラと若干上目遣いでこちらを見てくる秀吉を見て、思わず鼻から赤い液体が出そうになるも必死に我慢する。

 やめて秀吉。ただでさえ君に秘密を暴かれ、さらに口説かれて大変なのに、今度は仕草だけで殺しに来るなんて卑怯だよ……。

 

「動きが散漫じゃぞ水瀬!」

「誰のせいだと思ってるのよ!?」

 

 脳天に迫る薙刀による突きを、半身を左にズラして回避し、すれ違いざまに空いていた右でボディブローを放つも、予測通りだと言わんばかりに膝のカウンターを鼻っ面に叩き込まれた。

 

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

  古典  420点 VS 100点     』

 

 

 

 ヤバイ。冗談抜きでヤバイ。これ以上点数を減らされたら腕輪が使えなくなる。そうなると秀吉を倒すのに時間が掛かってしまう。

 

「あぁもう! 遊びは――」

「勝負はまだこれからじゃ!」

「これから!?」

 

 嘘でしょ!? 遊んでたのは私だけじゃなかったの!? 彼も遊んでたっていうの!?

 

「当然じゃ! 勝負はまだ始まったばかりなのじゃ!」

「始まらないで! 今すぐ終わって!」

 

 もうこれ以上遊ばれたくない。

 

「天誅よ天誅! 女の子をここまで辱めた罰、受けてもらうわよ!」

「お主こそ、ワシのどんな顔写真を撮ったのか教えるのじゃ!」

 

 お互いに召喚獣を突撃させ、私の召喚獣は途中で右に逸れて鞭状へ変形させたガリアンソードを、しならせながらバットのように振るう。

 秀吉の召喚獣は薙刀でそれを上手く弾き、隙ができた私の召喚獣の懐目掛けて突きを放ってきたが、すぐさま相手の頭を掴み、跳び箱の要領で飛び越すことで突きを回避する。

 

 ……やっぱり妙だ。

 

 召喚獣の操作が上手すぎる。しかも、まるで私の癖を見抜いているかのように動きが嫌らしい。いや癖なんてないけどさ。

 

 誰かに教わったのか? それとも自分で練習を積んで腕を上げた?

 

 一番可能性があるのは前者だが……うん、どう考えても前者だ。自分で練習しようにも、召喚フィールドは教師がいないと展開できない。だから後者の可能性はまずない。

 なので答えは必然的に前者となるのだが、本当にそうだとしたら教えたのは《観察処分者》で召喚獣の操作に優れたアキ君で、召喚フィールドを用意したのはそれ専用の白金の腕輪を持つ雄二で間違いないだろう。

 

「いつもは頼りになることがある仲間なのに、敵に回すとこんなに厄介なのね」

「??」

 

 私が呟いた言葉の意味がわからなかったのか、可愛らしく首を傾げる秀吉。

 どうりで女子生徒がほぼ全員、入浴時間をズラしてまで防衛戦に参加したわけだ。

 ふと地下の入浴場へと続く階段がある方へと視線を向けると、他の階から合流した大勢の男子が、雪崩のように押し寄せてくるのが見えた。

 

「……ごめんね秀吉」

「む? いきなりどうしたのじゃ……?」

 

 君の誠意は見せてもらった。だから――

 

「増強」

「しまっ――!?」

 

 展開されている召喚フィールドが消滅するのも時間の問題。そう判断した私は、名残惜しく思いながらも点数を消費し、腕輪を使用する。

 

 

 

『Fクラス 水瀬楓  VS Fクラス 木下秀吉

 古典 420×2  VS   0点      』

 

 

 

 ――これで終わりだ。木下秀吉。

 

 

 

 

 

 

「……水瀬よ」

「何?」

 

 雪崩のように押し寄せてきた大勢の男子によって、階段前に陣取っていた防衛戦が破られてしまった今、私は勝利の喜びに浸っていた。

 

 

「…………この膝枕が罰ゲームとはとても思えんのじゃが……」

「れっきとした罰ゲームよ」

 

 

 そう、恥ずかしがる秀吉の言う通り、私は現在進行形で彼に膝枕をしてあげている。

 本当はこの子の男なのに女にしか見えない、両性的な身体を堪能するつもりだったが、冷静になってみると二人きりじゃないので断念し、一度はやってみたかった膝枕を実行することにした。

 ちなみにさっきの勝負、決め手は燕返しをイメージした一閃だ。腕輪を使用した直後にガリアンソードを後ろに引いて構え、そのまますれ違うように秀吉の召喚獣の胴体を真っ二つにしたのだ。

 まぁ、あくまでもイメージだからね。本当の燕返しがどんな技なのかは全くわからない。その技を編み出したのが昔の剣客、佐々木小次郎だということは知っているけどね。

 

「さすがに勝つのは無理があったのう……」

「全くよ。そう簡単に学力の差を覆さないでほしいわ」

 

 召喚獣バトルはタイマン――一騎討ちだと、召喚者の操作技術と学力が重視される。その片割れである学力を、気合いなどの精神的な要素で、簡単に覆されたら堪ったものじゃない。

 別に学力以外を否定しているわけじゃない。むしろそれらの要素を肯定しているからこそ、私はFクラスに甘んじている。

 だけど、学力が重要な要素なのは事実だ。Aクラスとの試召戦争に負けた際、感性がまともな鉄人もそう言っていたのだから間違いはない。

 

「い……いつまでこうしているつもりなのじゃ?」

「私が満足するまで」

 

 敗者に拒否権はない。

 

「は、恥ずかしい……のじゃが……」

「安心して。私も恥ずかしいから」

 

 これは本当だ。今回もまた、両目が完全に隠れるほど長い前髪でごまかせているが、それがなかったら公開処刑待ったなしである。

 

「それに、君はこれ以上にないほど勝ち組だと思うよ?」

「む? それはどういう意味じゃ?」

「あぁ、それはね――」

 

 

 

『割にあわねぇーっっ!!』

 

 

 

「――こういうこと」

 

 突如地下浴場の方から聞こえてくる、魂の雄叫び。しかし、それは勝利に浸っているというより、あり得ない光景に納得がいかないという思いが、込められているように感じ取れた。

 

「な、何事じゃ!?」

「老婆の艶姿でも見たんでしょ」

 

 確かこの時間、女子はほとんど防衛戦に参加してるからね。そんな中で入浴できるのは一応老人である学園長くらいなものだろう。

 未だに地下から聞こえてくる男子共の泣き声を耳にしつつ、女性陣でただ一人勝利した私は秀吉に膝枕という、勝利の喜びに浸るのだった。

 

 

 

 

 

 

「本当にそんなもので見つかるの?」

「あらやだ島田さん。少しは私を信じなさいな」

 

 最終日の朝。私は片手に清涼祭でも使用した広帯域受信機――ワイドバンドレシーバーを持ち、半信半疑な島田さんを連れて、脱衣所を訪れていた。目的は言うまでもなく真犯人の特定だ。

 合宿初日、私は暇潰し用に持参した携帯ゲーム機を鉄人に没収されてしまったのだが、それが結果的に囮となり、このワイドバンドレシーバーだけはどうにか隠し通すことができたのだ。

 

「ほら、ちゃんと反応してるでしょ?」

 

 画面に映る周波数を島田さんに見せ、脱衣所に盗撮用のカメラが仕掛けられていることを確認させる。まぁ、それが一台とは限らな――

 

「「「――あっ」」」

 

 脱衣所に到着したところで、その脱衣所から前に壊したやつとは違うカメラを持った、レズビアンの清水美春さんが出てきた。

 

「……こんなところで何してるの? 美春」

「あっ、お、お姉さま? これは、その……」

 

 島田さんに話しかけられるや否や、持っていたカメラを後ろに隠す清水さん。

 

「水瀬さん。それを貸して」

「壊さないでよ」

 

 さっきとは雰囲気が一変した島田さんにワイドバンドレシーバーを貸すと、その画面に映る周波数により大きな反応があった。

 

 

 ……どう考えてもビンゴである。

 

 

「……美春」

「は、はいっ」

「そのカメラをこっちに渡しなさい」

「で、ですが……」

 

 口ではそう言っている島田さんだが、清水さんが自分から渡してくれるとは全く思っていなかったようで、やや強引にカメラを取り上げた。

 

「なんでこんなものを持っているのよアンタ!」

「お姉さまの、お姉さまの姿を残したかったんです!」

 

 とんでもないくらいあっさりと、盗撮の実行犯が暴かれた瞬間だった。

 

「ねぇ清水さん。もしかして君、お尻に火傷の痕があったりする?」

「ど、どうしてそれを!? さては貴女、盗聴や覗きをやっていますね!?」

 

 ここまで説得力がない問いかけを聞いたのは初めてだ。

 ていうか私、性別に関係なくイケる口だけど、さすがに犯罪行為はしないわよ。

 まぁ、何はともあれ彼女がアキ君の盗撮と雄二の盗聴をやった犯人で間違いないわね。

 島田さんはお怒りの状態で、清水さんが持っていたカメラを全て没収していく。その中には盗聴器らしきものも含まれていた。

 

「これで事件解決だね」

「なんか、釈然としないわ……」

 

 それは無理もない。何せアキ君達に盗撮の疑いを掛けておきながら、真犯人が同性の中にいたのだから。私だって何も知らなかったら驚くわ。

 こうして前代未聞の覗き騒動は本当の意味で終局を迎え、私達は合宿所を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

「……何か言うことは?」

 

 合宿が終わり、土日の休みを経て、学校に登校し終えた月曜日の夜。いつものようにアキ君宅を訪れた私は、今回の覗き騒動の元凶、そのうちの一人である彼に土下座をさせていた。

 女王様のように足を組み、椅子に座る私を見上げながら、アキ君は口を開く。

 

 

 

「ついムラッときてやった。今は心の底から後悔している」

 

 

 

 ここまで清々しい言い分があっただろうか。

 

「へぇー、老婆の裸でムラッときたんだぁ?」

 

 あえてそういう風に聞こえたことにし、少し意地悪そうに呟く。

 しかし、そこはまだ性癖がノーマルなアキ君。酷く心外だと言わんばかりに驚き、土下座をやめてベラベラと喋り始めた。

 

「どうしてそうなるの!? 僕はただ純粋に、欲望のために女子風呂を覗こうとしただけだよ! 誰が好き好んであんなババァの裸で興奮しなきゃならないのさっ!」

 

 とりあえずその言葉の全てがアウトだと気づくべきである。君の言うババァこと学園長だって、一応の性別上は女性なんだから。

 

「……本当に覗いたんだ?」

 

 入浴場へ突撃する直前で我に返ったという、ほんの僅かな可能性も示唆していたのだが、残念ながら可能性は可能性だった。

 

「否定したいのに事実だから否定できない……! 大体、どうして風呂に入っていたのがババァ――学園長だけだったんだよ!?」

「まぁ、あの日は事実上の最終日だったからね。大方、私達がちゃんとやってるか様子を見に来たんでしょ」

「だからって風呂に入らなくてもいいじゃないか……」

 

 アキ君は学園長を何だと思っているんだ。

 

「……で、それが例の課題ってやつ?」

「ま、まぁね……」

 

 ふと机の方へ視線を向けてみると、山のように積み上げられたプリントや本のようなものがあった。確かにこれは気が滅入るわね。

 ……ところでアキ君、なんで君はそんな助けを求めるような眼差しを私に向けているのかな? 

 

「手伝うとでも思った? やらないわよ」

「酷い! 君なら、生まれた時から一緒の君なら、僕を助けてくれると思ったのに!」

 

 だから今回は私を呼んだのか。

 

「あのねアキ君。仮に手伝ったとしても、先生からは疑われるのがオチよ?」

「大丈夫。これでも言い訳は上手な方だから」

 

 間違っても誇っていいことではない。

 

「……しょうがないわね。有り金全部使って、買えるだけどら焼きを買ってくれるなら、手伝ってあげなくもないわよ?」

「それ、今の僕にはハードルが高すぎるよ!」

 

 という冗談をかましつつも、ほんの少しだけ手伝ってあげることにした。さすがに全部手伝ったらアキ君が教師に怪しまれるからね。

 課題の準備をしながら、校内の掲示板に貼ってあった紙の内容を思い出す。

 

 

 

―― 処分通知 ――

 

文月学園第二学年

全男子生徒

総勢149名

上記の者たち全員を

一週間の停学処分とする

 

 

文月学園学園長 藤堂カヲル

 

 

 

 まだ一学期なのに、この始末である。先が思いやられるったらありゃしない。

 めんどくさそうに課題に手を出すアキ君を見て、思わずため息が出てしまうのだった。

 

 

 

 




 はい、久々の投稿です。次は閑話を一話だけ書くか、このまま原作四巻へ突入するか迷っているので、次の投稿もまた時間が掛かりそうです。ではでは。

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