バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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 バカテスト 国語

 次の熟語の正しい読みを答え、これを用いた例文を作りなさい。
【相殺】



 姫路瑞希の答え
『読み……そうさい
 例文……取引の利益で借金を相殺する』

 教師のコメント
 そうですね。差し引いて帳消しにする、という意味なので貸し借りなどに使われる言葉です。


 吉井明久の答え
『読み……そうさつ
 例文……パンチにパンチをぶつけて威力を相殺した』

 教師のコメント
 惜しいですが間違いです。『そうさつ』という読みも一応ありますが、その場合の意味は『互いに殺し合うこと』というものです。この場合の吉井君の例文では互いに打ち消し合うという意味なので、読みとしては『そうさい』が正解となります。


 島田美波の答え
『読み……あいさつ
 例文……のどかな朝。私は友達と相殺した』

 教師のコメント
 その朝は消してのどかではないでしょう。


 水瀬楓の答え
『読み……そうさつ
 例文……緑色の閃光と赤色の閃光が激突し、互いの効力を相殺した』

 教師のコメント
 吉井君と同じ間違え方をしていますよ。






第七問

「偽情報はどうだムッツリーニ」

「…………首尾は上々」

 

 あの後どこからともなく現れた鉄人に追われるアキ君と雄二に巻き込まれ、私は二人と共に新校舎からFクラスの教室に戻ってきた。ちなみに翔子は忽然と姿を消したわ。まるで幽霊みたいに。

 全く、私は二人の死闘を野次を入れながら観戦していただけなのに、どうして黒幕的な疑いを掛けられなきゃならないのさ。

 私達とほぼ同じタイミングで教室に戻ってきたムッツリーニは、誇るような態度は取らず、これくらい朝飯前だと言わんばかりに淡々と答えると、次の仕事を要求してきた。

 

「ああ。今姫路が戻ってくる。次の行動に移るのはそのときだ」

 

 どうやら次の段階には瑞希がいないと進めないようだ。やっぱり瑞希の作ったゼリーを暗殺用の武器にする気だなコイツ。本人が聞いたら傷付くわよ、きっと。

 始末対象はBクラスの生徒。それもBクラスからDクラスに出される使者だ。雄二が言うにはDクラスに同盟を申し込むつもりらしい。

 ムッツリーニが偽情報を流した結果がこれか。思いのほか上手くいっているようだが、次のステップには武器となる瑞希の手作りゼリーがないと進めない。しかもBクラスの奴がDクラスに話をしに行けば、ムッツリーニの流した情報が偽物だとバレてしまい、全てが水の泡と化すだろう。

 

「暗殺ならスタンガンでもいけると思うんだけど。わざわざ姫路さんの料理で毒殺なんてしなくても……」

 

 アキ君の言いたいこともわからなくはない。瑞希の料理を使わなくても、他の物を用いれば暗殺はできるんじゃないか。そう言いたいのだ。でもその場合、選択肢は限られてくる。

 

 まずスタンガンは相手に悲鳴を上げられるから暗殺の武器には向かないし、悲鳴を上げられないよう手で口を押えようものなら自分まで感電してしまう。なのでアウト。

 次にワイヤー。上手く使えば声を出されることなく暗殺することができるけど、今から入手するとなれば時間がないし、一歩間違えると本当に相手を殺してしまうのでこれもダメ。

 なら睡眠薬入りのハンカチはどうか。これなら相手を一瞬で眠らせることができるが、ワイヤー同様、入手するまでに時間がなくなるのでこれもアウト。

 

 つまりどれも時間やらそれ以外のリスクが大きすぎるのだ。なので比較的リスクの少ない、瑞希の手作りゼリーに白羽の矢が立ったわけだ。入手条件も揃ってたしね。

 私が考えていたこととほぼ同じ内容をアキ君に説明すると、雄二はさり気なく爆弾発言をしてのけた。

 

「まっ、気にするな。姫路の料理を選んだのは俺の趣味だ」

 

 これ翔子が聞いたら大噴火の如くキレるのではなかろうか。自分の料理ではダメなのかと。

 

「え? 坂本君、私の料理が好きなんですか?」

「ひ、ひめ、じ……?」

 

 そしてこの有様である。何ということでしょう。絶妙なタイミングで瑞希が戻ってきたではありませんか。雄二としては外道な発言でもしたつもりだろうが、瑞希からすれば自分の料理に好感を持ってもらえたと受け取ることができるのだ。

 

「良かった。そう言ってもらえると嬉しいです。けど、霧島さんに聞かれたら怒られちゃいますよ?」

「は、はは、は……」

 

 嬉しそうに笑う瑞希と、死期でも見えたのか切なそうに笑う雄二。同じ笑っているでもその意味が違うとここまでわかりやすくなるのね。

 雄二にとってはまさに前門の虎、後門の狼である。ここに翔子本人がいればなお良し。雄二を中心とした修羅場が完成するからね。私は外野で野次を飛ばしながら観戦するけど。

 

「ウェルカム(グッ)」

「テメェ、そのムカつくほど爽やかな笑顔はなんだ……!」

「ウェルカムッ!(グッ)」

「元気よく言えば良いわけじゃねぇんだよ!」

 

 ダメだったようだ。まぁ何にせよ、これで雄二もアキ君の道連れ候補となった。後は秀吉とムッツリーニが加われば完璧ね。

 雄二の分もあると、笑顔でパック入りのゼリーを渡してくる瑞希。地獄への片道切符を目にして少し引きながらも、アキ君と雄二は感謝の言葉を述べた。これで料理が人並みにできればハッピーエンドまっしぐらなんだけどなぁ、瑞希って。

 私も笑顔の瑞希に一言お礼を言い、パック入りのゼリーという暗殺用の武器を持って新校舎へ向かったアキ君達を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………手筈通りにいくぞ)

(あいよ)

 

 Bクラスの教室から一人の男子生徒が出てきたのを確認し、陰でパック入りのゼリーを構える忍者装束のムッツリーニと、カッターに一枚の写真を軽く突き刺し、それを投げる機会を窺う私。

 アキ君達についていったはいいが、どういうわけかムッツリーニに選抜されてしまった。雄二もアキ君も止めてくれなかったし……別に良いけど。

 そんなわけでターゲットは今Bクラスの教室から出てきた、一人の男子生徒――使者だ。アイツを仕留めれば、この作戦は成功する。

 

(…………あと五メートル)

 

 ムッツリーニがカウントダウンをするように、ターゲットとソイツの目的地であるDクラスの教室との距離を呟く。まぁ、BクラスからDクラスまでの距離は結構短いからね。

 

(…………あと四メートル)

 

 ターゲットの足は止まる様子を見せず、少しずつ距離を縮めていく。途中で止まってくれたらそれはそれで有難いんだけどなぁ。

 

(…………あと三メートル)

 

 あぁ、やっぱり手に掛けなければならないのね。悲しいわ。だけどこれもまた戦争なのよね。

 

(…………あと二メートル)

 

 いよいよだ。私がしくじれば、全てが終わる………!

 

(…………あと一メートル)

 

(いくわよ……!)

 

 一メートルという言葉を聞いた瞬間、私は構えていたカッターを、先端に突き刺した写真ごと投げつけた。

 投擲されたカッターは壁に刺さり、先端に刺しておいた写真もそのまま貫かれた。ドラマとかで見たことあるわ、こういうの。

 周りにいた人達が突如出現したカッターと写真に注目し始め、例の使者もそれに釣られて最後尾に立つ。よし、出番だムッツリーニ。

 

(…………上出来だ)

 

 私を軽く称賛すると、ムッツリーニは音も立てずに使者の背後に迫った。周りの人達は皆カッターと写真に夢中で、使者も含めてムッツリーニの存在には気づいていない。

 

『…………(ガッ)』

『――っっ!?!?』

 

 そして呑気に写真を見ようとしていた使者を、ムッツリーニは後ろから羽交い絞めにし、口を押さえる。さすがに使者もヤバイことに気づいたようだが、こうなってはもう遅い。

 ムッツリーニは取り出したパック、その先を指の隙間から押し込み、パックの中の劇物を力ずくで飲ませた。

 

『か……は……っ!! きさま……ムッツ……』

『…………(ググッ)』

 

 最後の力を振り絞って憎しみの籠った視線をムッツリーニに向ける使者に対し、ムッツリーニはそれを意に介さずパックの中身をさらに押し込んだ。

 使者の手が一瞬ビクンッと跳ね上がり、それを最後に使者は動かなくなった。任務は成功である。

 ムッツリーニは屍となった男子生徒の身体を抱えると、そのまま雄二とアキ君の元へ戻った。もちろん私も後に続く。

 

(…………任務完了)

(大成功よ)

(さすがだ、ムッツリーニ。惚れ惚れするような手際だった。水瀬もよくやってくれた)

(…………この程度、何の自慢にもならない)

(私はちょっと緊張したけどね)

 

 ムッツリーニが手際良く男の死体を、Bクラスから見えてDクラスからは見えないような場所に押し込んだところで、私を含む四人で何事もなかったかのようにFクラスへと続く渡り廊下を歩き出す。

 

 

『この写真に写ってるセーラー服の子、結構可愛くないか?』

『ああ。でもなんかFクラスのバカに似ていないか?』

『まぁ、別に可愛ければいいよ。実際可愛いし!』

 

 

 そんな中、背中からアキ君に聞かせてはイケない気がする話が聞こえてくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレで時間稼ぎは成功したのかな?」

 

 暗殺を終え、しばらく様子見に徹していた私達の元に、Bクラスが疑心暗鬼に陥っているらしいという情報が入ってきた。六時間目の途中くらいだった。

 もし本当にそうなっているのなら、こちらの思案通りになったわけだ。雄二が言うには長時間その状態にさせるのは無理だが、明日までなら大丈夫だそうだ。

 

 ただ、心配すべき点が一つ。Bクラスの使者は意識を失う寸前にムッツリーニの顔を見てしまっている。なので奴が目を覚ました時点で、一連の妨害が私達の仕業だとバレてしまうのだ。記憶を消す方法も考えておけば良かったわね。

 

 まぁ成功ではあるので、私達のタイムリミットは明日の朝のままだ。まだ首の皮は繋がっている。それだけでも充分な成果だろう。後は明日の朝にDクラスがBクラスよりも先に宣戦布告をしてくれたら完璧である。

 

「秀吉、例のDクラスとの交渉は大丈夫?」

「うむ。清水を引っ張り出すことはできた。放課後に旧校舎二階の空き教室で待ち合わせという手はずになっておる」

「偉いね~秀吉は」

「や、やめるのじゃ水瀬……」

 

 秀吉があまりにも可愛くて、偉かったのでついつい頭を撫でてしまった。だけどこうなっては止められない。私が満足するまで、秀吉には相手になってもらおう。

 雄二によると、Dクラスを開戦に踏み切らせるための、とっておきの作戦があるらしい。作戦の内容こそわからないが、清水さんを煽るなり罵倒するなり挑発するなりしてその気にさせるのだろう。

 なおアキ君は島田さん共々、一応同行はするが、基本は黙ることになった。あんな痴話喧嘩の後じゃ、アキ君が下手に口を挟めば間違いなく失敗するからね。

 というかアキ君もそうだけど、島田さんも島田さんである。あの状態で、しかもアキ君とセットで連れていくとかリスクしかない。いい加減に機嫌を直してもらいたいものだ。

 

「…………一つ、気になることが」

「どうしたムッツリーニ」

「…………根本がAクラスに何かの情報を流していた」

「Aクラスに?」

 

 何かの機械を弄るムッツリーニがそう言ったので、私は思わず気になった。

 根本はBクラスの代表で、Aクラスの代表は翔子だ。この状況で何を…………あっ。

 

「雄二」

「なんだ水瀬?」

 

 私の予想が正しければ、もう向こうに一本取られた。奴は翔子を動かすためにAクラスに出向いたんだ。

 翔子はああ見えて雄二絡みのことだと簡単に騙される。だから根本は雄二絡みの簡単な偽情報を流しに行った。こちらの動きは知らないはずだ。おそらく前回の戦争から、こちらの――雄二の動きを想定していた可能性がある。だから雄二の無力化を図ったのだろう。でなきゃ順調に事が進んでいる中、わざわざAクラスに出向いたりしない。

 雄二にその事を伝えようにも、すでに手遅れだ。なので簡潔に伝えることにした。

 

「多分、翔子が来る」

「……はっ?」

 

 

 バンッ

 

 

 私が簡潔に伝えた直後、教室の扉が大きな音と共に開け放たれた。

 

「……雄二……っ!」

 

 現れたのはたった今話題になっていた翔子だった。いつものクールで落ち着いた印象はどこへやら、今の翔子は焦っている。根本に何を吹き込まれたらあそこまで取り乱すのだろうか。

 

「うおっ!? 本当に来やがった!?」

「……雄二、どうしてまだ学校にいるの……!」

 

 まだ学校にいる? 何が言いたいんだ翔子は。放課後はまだのはず。普通は学校にいないとダメだろう。

 雄二も翔子の言っていることがわからなかったようで、「お前は何を言っているんだ」と問い掛けると、

 

「……お義母さんが倒れたって言うのに、どうして様子を見に行かないの……!?」

 

 翔子はこんなことを言った。なるほど、これが根本の流した偽情報というやつか。本来生徒の家族が体調不良などで倒れた場合、まず最初に連絡がいくのは身内であるその生徒本人だ。間違っても生徒の許嫁やお嫁さん候補には届かない。

 なので翔子は完全に根本の掌の上で踊らされている。というかそれが本当なら誰よりも先に雄二が知って、動いているはず。だけど雄二は動いていない。つまり騙された翔子と騙した根本が悪い。

 何も知らない(そもそも翔子の発言がデタラメ)雄二は翔子の発言を聞いてもピンと来なかったが、翔子はそんな雄二を見て業を煮やしたかの如く、強引に雄二の手を取って歩き出した。

 

「ちょ、ちょっと待て! 俺は今から大事な作戦が――」

「今はそんなこと言ってる場合じゃない!」

 

 これまたらしくない、翔子の怒鳴り声。もうここまで来るとキャラ崩壊の域である。まぁ根本の嘘情報とはいえ、自分の婚約者の母親の身に何かあったと聞かされたんだ。取り乱すのも無理ないか。

 Fクラスにいる皆がこの様子を見て啞然とする中、抵抗も虚しく、雄二は翔子に連れ去られてしまった。

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 一瞬の出来事に、呆然とする私達。

 

 ……いや何呆然としてるのよ私。あの猪突猛進状態の翔子をどうにかしないと。

 

「…………よし」

 

 皆が呆然とする中、私は取り出した一枚の紙切れに簡単なメッセージを書き、小さく折ったそれを呆然とする秀吉のズボンのポケットに入れ、二人の後を追うように教室を出る。

 まぁ本音を言うと今のでシラケちゃったし、気分転換目的で抜け出すにはちょうど良いと思っていたところだ。

 

「えっ、ちょ!? 楓もどこ行くのさ!?」

「察しろバカ久! そんじゃ秀吉、後はよろしく!」

「う、うむ?」

「誰がバカ久だバカエデ――」

 

 待ってなさい翔子。一発かましてあげるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、やっと見つけた」

「み、水瀬か!?」

 

 バカップルを追いかけること十分。目的の二人が、校門を出てすぐのところで膠着状態に入っていた。翔子は相変わらずのようで、雄二の言葉に耳を貸そうともしない。

 これどうすればいいのだろうか……って、普通なら思うかもしれない。だけど私は違う。相手が親友なのもあるが、この場面で有効な解決方法を一つだけ知っている。

 だがそれを実行しようにも、念のために雄二の母親の様子を確認する必要がある。ただその方法を実行しても余計拗らせるだけだ。

 

「雄二、携帯は?」

「修理中だ……っ!」

 

 この役立たずが。

 

「じゃあ、家の番号か母親の携帯番号は覚えてる?」

「そ、それくらい、なら覚え、てるが……っ!」

 

 そう、それなら何とかなるわね。

 

「はい。これで電話して」

 

 私は自分の携帯を雄二に押し付け、周りが見えていないであろう翔子を正面から食い止める。

 

「……か、楓……っ」

「ストップ翔子! 止まらないと打つよ?」

 

 嘘は言っていない。言葉が届かないのなら、行動で示すのみ。それがこの場面で有効な解決方法だ。要は翔子を力ずくで止めるだけである。

 いつも以上の力で、私に止められたまま校門へ向かおうとする翔子だが、足が全く動いていない。当然だ。玄人の私が素人相手に後れを取るわけがない。

 

「今雄二が電話で確認してるから止まろう、ね?」

「……離して……っ!」

 

 

 

 ――パシンッ

 

 

 

 乾いた平手の音が響き渡った。

 

「…………えっ……?」

「どう? 目が覚めた?」

 

 今のはガチのビンタだ。ハリセンなんて生易しいものじゃない。できることなら引っ叩きたくなかったけど、言葉で止まらない以上はこうするしかないんだよね。

 赤く腫れた頬をゆっくりと押さえ、呆然とする翔子。これで少しは頭も冷えただろう。

 

「……でも……!」

 

 それでも何かを言おうとする翔子だったが、母親と連絡が取れたらしい雄二が携帯電話を翔子に渡した。

 

「……もしもし? お義母さん?」

『あら翔子ちゃん。昨日ぶりかしら?』

 

 電話越しに聞こえる、優しげな声。おそらく雄二のお母さんだろう。というか昨日ぶりって……もしかして毎日会ってたりする?

 私と雄二なんて眼中にないかのように、会話を続けていく翔子と雄二のお母さん。このまま何もしないのもあれなので、私は一息つく雄二に話しかけた。

 

「解放された気分はどう?」

「最高だ。助かったぜ。……で、何の用だ?」

 

 さっきまでの必死な形相が嘘のように、爽やかな表情を浮かべ、すぐにこちらを探るような目付きになる雄二。そうそう、それでいい。何のために私が追いかけてきたと思っているんだ。

 

「さっき君が言ってた作戦のことなんだけど――」

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

「「「あっ」」」

 

 放課後を知らせる予鈴が鳴り響き、思わず声を漏らす私と雄二、そして電話を終えたらしい翔子。あーあ、どうすんのよこれ。

 

「……雄二」

「なんだ、水瀬」

「どうすんのよ、作戦」

「あるにはあるが……アイツらがDクラスとの話し合いを成功させてなければ、この作戦は意味がない」

「教えなさい」

 

 成功か失敗かはこの際どうでもいいわ。ここまで来た以上、できるだけ知っておきたい。

 雄二から今後の作戦を聞き出した直後、秀吉から『交渉は決裂した』と電話越しに聞かされた。本当にどうすんのよ、君達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗したんだってね? Dクラスとの交渉」

「う、うん……」

 

 その日の夜。晩御飯のパエリアと炊き込みご飯を食べ終え、私は一緒に食器を洗っていたアキ君を一睨みしながら、口を開いた。

 ……怪しいわね、今のアキ君。軽く目を泳がせたのを見る限り、何かを隠している。まぁ、コイツは基本顔に出るからわかりやすいのよね。

 

「……何かあった?」

「ほぇ?」

「だから、Dクラスと――清水さんと何かあったでしょ?」

 

 隠し事がDクラス関連なのは推測でしかないが、何かを隠しているのは間違いない。その程度で私を騙せると思っているのだろうか。

 

「……な、何もないよ? 少しは僕の言うことを信じてくれても良いんじゃないかな?」

 

 少しも信じられない。

 

「そう、Dクラス関連で何かあったのね」

「僕はまだ何も言っていないのに、そうやってすぐに決めつけるのはやめるんだ」

 

 決めつけるも何も、決定事項だと思う。現に『Dクラス』や『清水さん』という言葉を言ったときの君は面白――じゃなくて、嘘をついている人の顔になっていたからね。

 結局、何を隠していたのかを吐かせることはできなかったが、今回の件に大いに関係していることだというのはよくわかった。

 まぁ、今言えるのは明日が楽しみだということだけだ。もし隠し事が会話ならムッツリーニが録音しているはずだしね。

 

 

 

 

 

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