問 以下の問いに答えなさい。
女性のバストのサイズを表す単位に『カップ』があります。基準となるAカップの大きさを説明しなさい。
吉井明久の答え
『島田美波』
教師のコメント
コメントは控えます。
姫路瑞希の答え
『トップバストと、アンダーバストの差が10センチメートル』
教師のコメント
正解です。
さすがですね、姫路さん。
女性は思春期を迎えると、第二次性徴の発達により胸が膨らみ(コメントはここで途切れている
水瀬楓の答え
『工藤愛子』
教師のコメント
こちらもコメントは控えます。
「『雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ』っと。よし。送信送信」
朝から特定の面子には絶対に誤解されるであろうメールの内容を隠すことなく呟きながら、携帯電話の送信ボタンを押すアキ君。
本当なら今日は私とアキ君と雄二の三人で例のボクシングゲームをする予定だったらしいが、昨日彼の姉である玲さんが帰ってきたことでそんな余裕は木端微塵になった。ただでさえ元の点数が低いアキ君。そこへ玲さんの減点が加われば、間違いなく取り返しのつかないことになるのだ。
というかアキ君、そんなに家にいるのが嫌なら私のアパートか私の実家に泊まれば良いのに……。おばさんを介して玲さんにも了承してもらえるはずだし、私が指導するから勉強も捗る。これほど一石二鳥という言葉が似合う提案はないと思うよ?
……いや、無理と言えば無理か。何せ私絡みでの玲さんによる減点は通常よりも大きい。そこへ私のアパートか実家にお泊りとなれば……病院送りは確実だろうね。泊まることはできるけど。
「んむ? 明久に水瀬?」
「あ、おはよう秀吉」
「おっはー秀吉」
「おはようじゃ」
私達を見つけ、小走りでこちらにやって来たのは私の天使――もといクラスメイトの木下秀吉。
私は彼をちゃんと男として見ているが、アキ君を始めとする男子勢からは男子用の制服を身に纏った美少女と認識されてしまっている。
まぁ、私にとっては彼の性別など些細な問題でしかない。男なら国内で、女なら同性結婚が許されている国で籍を入れてしまえば良いのだから。
「……? どうかした秀吉?」
「僕の顔に何か付いてるの?」
そんな男子でありながら女子のように可愛い秀吉は、アキ君の顔をじっと観察している。もしかしてアキ君の間抜け面がいつもより健康的になっていることに気づいたのかな?
「うむ……明久よ。今朝のお主はいつもと何かが違うような気がするのじゃが……?」
「ぅえ!? き、気のせいじゃないかな?」
「普段と違って……今日は血色が良いように見えるのう?」
さすがは秀吉。演劇部に所属しているだけあって、洞察力に長けているようだ。アキ君が如何に不規則な生活をしていたかがよーくわかる。
何故アキ君の間抜け面が健康的なのか。簡単に言えば、玲さんに清貧生活という現状を悟られないよう、私を巻き込んで健康的な日常を偽装しているからだ。
なので今回の件には私も一枚噛んでいる。というか噛まされている。アキ君がいつもより健康的なのも、彼がゲームや本を売ってご飯代を調達するよりも、私が手料理を振舞った方が効率は良いと判断した結果だ。まぁ、ぶっちゃけ彼の顔が健康的になったのは去年からだけどね。
「シャツもズボンもアイロンが掛かっておるようじゃし……怪しいのう」
「ほ、ホントに何もないってばっ」
何もそこまで観察しなくても。
「ならばどうしてワシから目を逸らすのじゃ?」
「恥ずかしいんじゃない?」
「ワシは男じゃと何度言えば……」
ただ恥ずかしいと言っただけなのに、どうして自分の性別を持ち出すのだろうか。今この場において、誰も君の性別には触れていないのに。
「明久よ。何もないのであればこちらを向いても――」
「ばぁっ」
「――もぅ!?」
秀吉から必死に目を逸らすアキ君に代わり、秀吉を驚かす形でアキ君の後ろから顔を出す。うわ顔近い。息が掛かってるくらいには近い。もう少し近づけないかこれ……!
『朝からイチャついてんじゃねぇぞテメェらぁ!』
『そちらの先輩の仰る通りだ、吉井君。キミはもう少し水瀬さんや木下君と距離を取るべきだと思う』
何とか秀吉とキスできないものか。当の彼は顔を赤くしたまま、その場から動く気配がない。またとないチャンスだと言うのに、なんであと数センチで届かないのよ……!
「ご、ごめん秀吉! 僕は先に行くね!」
秀吉が静止して、
――私の首根っこを掴んで。
「ちょ、放してよアキ君! あと少しで秀吉との関係を進められそうなのに!」
「そんなの良いから行くよ楓! それに秀吉とイチャつくのは僕としてもいただけない!」
「ふざけんじゃないわよバカ久ー!?」
モヒカン先輩と久保、そして我に返りつつある秀吉を置いて、アキ君は嫌がる私を引き摺りながらその場を後にした。コイツ絶対にボコってやる……!
「おはよ――って、どうしたの雄二?」
「…………クール、ビズ?」
「下半身だけのクールビズがあるかっ!」
アキ君への殺意を抑えつつ、Fクラスの教室へ着いたはいいが……なんか雄二が体育用のハーフパンツを穿いている。しかもクールビスじゃないらしい。
大方アキ君が送信したメールを翔子に見られ、脱衣を迫られた結果、ズボンだけ持っていかれた。あくまで予想だけど、こんな感じだろう。コイツの登校時はさぞ賑やかだったに違いない。
「テメェの……テメェのせいだ明久! テメェのせいで俺は下半身超クールビズ仕様で登校する羽目になったんだ……! 死んで償え――」
「雄二の嘘つき! やっぱりクールビズじゃないかっ!」
「待て水瀬! お前にはこれが一般的なクールビズに見えるのか!?」
なんだコイツ。さっきは違うとか言ってたくせに、いざ口を開けば下半身超クールビズとか……思いっきり矛盾してるんだけど。
「そんなことより明久! 死んで償ってズボンを寄越せ!」
「い、いきなりどうしたのさ雄二!? 君の身に一体何があったの!?」
いきなり発狂したかと思えば、いきなりアキ君のズボンを奪おうとする雄二。体育用のハーフパンツがあっただけマシだと思うんだけど……。
『おい聞いたか? 坂本の話』
『ああ、なんでも裸Yシャツで登校してきたらしいな』
『さすがとしか言いようがないな……。最近吉井のせいで女装は見慣れてきたが、アレには度肝を抜かれたぜ……』
目の前のバカコンビをどうしようかと考えていた私の耳に入ったのは、少し引き気味のクラスメイトの話し声。
「………………」
「………………」
「………………」
えっと……こういう時は何を言えばいいんだっけ……あっ、そうだ。
「雄二……辛いことがあるなら、私達を頼っても良いのよ……?」
「何か辛いことがあるなら、相談に乗るからさ……」
「ち、違う! 俺は進んでこんな格好になったわけじゃない! それにトランクスは死守したからギリギリセーフなはずだ!」
世間的にはアウトである。
「辛いからって必死にならなくても良いのよ? 私達は多分、最後まで雄二の味方だから」
「だから違うって言ってるだろうが! 明久が送ってきたメールを翔子に見られたせいでズボンを奪われたんだよ!」
そんなの君の外見を見た時点で察していたよ。何せアキ君がメールを送信していた際、私は彼の隣にいたのだから。
いくら翔子でもそこまでするはずがないというアキ君に対し、雄二は送られてきたメールの内容がかなり際どかったと指摘したところで、
「際どいって、どんなメールだったんですか?」
昔馴染みの巨乳ピンク、姫路瑞希がひょこっと現れた。なんてタイミングで出てきたんだこの子は。誰かにヤラセだと疑われたとしても違和感がない。
アキ君としては普通に頼みごとのメールを送ったつもりだろうが、確かにあの内容はマズかったかもしれない。というのも、ここの連中はそれはもう思い込みが激しく、ちょっとしたワードだけですぐに勘違いする奴が続出する。そんな奴らに今朝のメールの内容を聞かせようものなら――
「雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ!」
誰がそこまで力を込めて読めと言った。
ガラッ
「………………」
しかもこれまた絶妙なタイミングで、ポニーテールとペッタンコと脚フェチホイホイな美脚がトレードマークの島田美波さんが登校してきやがった。
「ウチにはアキの本心が全然わからないっ!」
「なんで美波は登場と同時に退場しているの!?」
いやいやわかってあげなよ。なんで君はアキ君の読み上げた文を聞いただけで勝手に結論を出しているんだよ。
「な、なんてことを言うんですか明久君っ! そういうことはもっとオトナになってからですっ!」
私がアキ君の立場だったら『そういうこと』は大人になったとしてもごめんである。“刺激”を求めるあまり、アレコレ模索しまくってた中学時代の私じゃあるまいし。
……待てよ? 今引き返せば相手によっては新鮮な体験ができるんじゃ――落ち着け私。それだと秀吉に『ケツの軽い女』と思われてしまうじゃないか。間違っても秀吉の私に対する評価が下がるようなことだけは避けないと。
「相変わらず朝から賑やかじゃな……」
そう言って教室に入ってきたのは、アキ君と私に置いて行かれた秀吉だった。まぁ、確かにこの状況は賑やかかもしれない。
何かあったのかと尋ねる秀吉に対し、別に何もないと誤魔化すアキ君。すると秀吉はこころもち目を伏せ、
「なんじゃ明久。先ほどのことと言い、ワシには秘密かの? それはちと、寂しいのう……」
などと呟いた。やだ……凄くイジメたい……。
「……水瀬。鏡で自分の顔を見てみろ」
「あっはっは。なんでそんなこと言うのかな?」
危ない。危うく雄二に勘付かれるところだった。コイツは頭の回転が速いうえに勘もそこそこ良い。次からは気を付けないと。
「それはそうと聞いてくれ秀吉。実はこのバカがこんな時間から公序良俗に反するような発言をしたんだ」
「正確には雄二が
「確かに読み上げろとは言ったが、強制させた覚えはねぇぞ!?」
私が言葉の一部を強調させると、怒りと焦りが混ざったような感じの顔と声でツッコんできた。そうそう、そういう間抜けな顔が見たかったのよ。面白くてたまらないわ。
「よく考えてみなよ秀吉。間抜けでチキンなアキ君に、こんな朝っぱらからムッツリーニのようにエッチぃことが言えると思う?」
「さらっと僕を貶すのやめてくれない?」
「…………失礼な」
私がムッツリーニの名前を出した瞬間、気配のなかった場所にムッツリーニが立っていた。実はコイツ忍者の末裔か何かじゃなかろうか。エッチぃ忍者なんてサブカル以外だと想像もつかないが。
「おはようムッツリーニ」
「何その荷物? もしかして商売道具?」
「…………新商品」
挨拶がてら、ムッツリーニの両手に提げられている大きな袋や包みに視線を移す。一体何が入っているのやら……。
「何が入ってるの? ムッツリーニ」
「…………枕カバー」
アキ君が袋や包みの中身について尋ね、ムッツリーニが隠すことなく答える。枕カバーね……さっきは新商品とか言ってたし、普通のカバーでないことは確かだろう。アキちゃんがプリントされているかもしれないし。
怪しんだアキ君がムッツリーニから包みの一つを奪い取り、中身を取り出す。
「何が入っているのか……な……」
出てきたのは等身大のアキ君がプリントされた白い布(セーラー服着用)だった。この姿のアキ君は強化合宿で初めて撮影されたものだから、新商品というのは間違ってないわね。
本当にアキちゃんがプリントされた枕カバーが出てきたことに内心驚いていると、驚きのあまり固まっていたアキ君がどうにか口を開いた。
「ムッツリーニ……。コレ、何……?」
「…………ただの
「よく覚えておくんだムッツリーニ! 枕カバーと抱き枕カバーには大きな隔たりがあるということを!」
いや、ぶっちゃけ抱き枕のカバーなんてそんなもんでしょ。最近の抱き枕は漫画やアニメのキャラクターのセクシーな姿がプリントされているものが多いからね。アキちゃんだってひょっとしたら需要があるかもしれない。
ムッツリーニが私の考えに同意するかのように「…………世の中にはマニアというものがいる」と呟いたところで、今度はさっき通学路で私とアキ君を注意してきたAクラスの久保が登場した。
「失礼。土屋君はいるかな? 前に頼んでいた枕カバーを」
「珍しいね久保君。Fクラスに来たかと思えばムッツリーニに用があるなんて」
「――なんでもない。少々用事を思い出したのでまた後で来るよ」
アキ君の顔を見るなり、そそくさと退散する久保。なるほど、あの枕カバーの買い取り相手は久保か。
「ムッツリーニ。久保とも取引をしていたのか?」
「(こくり)…………強化合宿以来、お得意様」
まだ完全体でなかったことに驚きである。アレで迷いが残っていたなんて……。
「ヤツめ、完全に吹っ切れたな」
「男も女も虜にするアキ君はさすがとしか言いようがないわね。……ところでムッツリーニ。私が頼んだ秀吉の抱き枕カバーは?」
「…………ここにある」
そう言うと、ムッツリーニは別の袋から半裸姿の秀吉がプリントされた抱き枕カバーを取り出した。完璧だ……完璧過ぎる……!
雄二の呆れるような視線を意に介さず、財布からお札を出そうとしたところで、またしても赤面して固まっていた秀吉が口を開いた。
「ななな、なんじゃそれは!? 何故ワシの半裸姿がプリントされておるのじゃ!?」
「私が頼んだからに決まってるでしょ?」
「なんてものを頼んでおるのじゃお主は!?」
あっ、ちょ、おま……!
「やめて秀吉! 私の新しい宝物を取らないで!」
「たとえ水瀬の頼みであろうと、こればっかりは承諾できぬ!」
アキ君達を差し置いて、最新の抱き枕カバーを取り合う私と秀吉。まるで良好な関係の夫婦による夫婦喧嘩みたいだ。一生続けばいいのに。
私が嫌よ嫌よと首を横に振りまくっていると、秀吉がふと何かを思い出したような顔で、私と抱き枕カバーを取り合いながら問い掛ける。
「と、ところで明久に雄二よ……! 先ほどお主らは、何を話して、おったのじゃ……!?」
「あ、えっと……何の話をしてたっけ?」
「…………乱暴に扱わないでほしい」
ムッツリーニの言うことは尤もだ。すぐさま秀吉とほぼ同じタイミングでカバーから手を離し、意識をアキ君と雄二に集中させる。
「俺が明久と水瀬にトランクス姿での登校を強要された、という話だ」
「お主ら……」
「わざと誤解を招くような言い方をするなバカ雄二!」
「私がそんなこと言うわけないでしょ!? 私だったらトランクスじゃなくてブリーフにしてるわよっ!」
何せ昨日のアキ君がブリーフを強く希望していたからね。もしかしたら雄二も穿いているかもしれない。
もちろんそんなことは冗談で、アキ君が送ったメールのせいで翔子に勘繰られ、ズボンを持っていかれたと語る雄二。すると秀吉が何気ない一言を、皆が怪しいと睨むような一言を口にした。
「そのメールは今朝の明久の様子がおかしかったのと何か関係があるのかの?」
これを皮切りに、瑞希、雄二、ムッツリーニの順にアキ君のらしくないところ(主に整った制服)を指摘していく。しかも地味に分析されてる。主にアキ君らしくないほど整った制服が。
「た、たまにはそういう気分の日もあるんだよっ!」
「そうそう! アキ君にだってそんな気分はあるのよ!」
多少ながらも強引に話を打ち切りに掛かったアキ君に合わせ、私も強引に話の流れをぶった切り、アキ君の後を追うようにその場を後にする。
「「「怪しい……」」」
アキ君にバラの棘みたくチクチクと刺さりそうな視線をよそに、私は自分の席に座るのだった。……次の授業なんだっけ?
はい、やっと書けました。眠気に襲われながらもやっと書けました。ぐらんぶるのOPは偉大だった。しばらくの間、作業用BGMは安定かな。