バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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 バカテスト 政治・経済

 日本国憲法第76条『裁判官の職権の独立』について、以下の( )に正しい語句を記入しなさい。

『すべての裁判官は、その(    )に従ひ(    )してその(    )を行ひ、この(    )及び(    )にのみ拘束される』


 姫路瑞希の答え
『すべての裁判官は、その( 良心 )に従ひ( 独立 )してその( 職権 )を行ひ、この( 憲法 )及び( 法律 )にのみ拘束される』

 教師のコメント
 正解です。これは日本国憲法における重要な条文の一つですね。


 吉井明久の答え
『すべての裁判官は、その( 【ピー】 )に従ひ( 【ピー】 )してその( 【ピー】 )を行ひ、この( 【ピー】 )及び( 【ピー】 )にのみ拘束される』

 教師のコメント
 憲法題76条が大変なことに。


 土屋康太の答え
『すべての裁判官は、その( 本能 )に従ひ( 脱衣 )してその( 全裸体操 )を行ひ、この( 現行犯により警察の手が )及び( 手錠 )にのみ拘束される』

 教師のコメント
 全ての裁判官の皆様に対しての誠意ある謝罪文を要求します。


 水瀬楓の答え
『すべての裁判官は、その( 本能 )に従ひ( 【ピー】 )してその( 後始末(意味深) )を行ひ、この( 快楽 )及び( 【ピー】 )にのみ拘束される』

 教師のコメント
 あなた方は一体何を求めているのですか。






第五問

「見つけたぞこのバカエデ! よくも僕にこのカツラと鉄人を押し付けてくれたな!」

「お黙りアキちゃん! 君はそのまま女装してれば良いんだよ!」

 

 私の前髪を掴もうとしたアキ君の右手首を左手で変な方向に捻じ曲げ、空いている右手で女装が凄く似合っている女々しい彼の顔面を鷲掴みにする。だがアキ君の方も負けじと、左手で私の頭を鷲掴みにしてきた。

 このバカ久……! 学園長室に入って私と顔を合わせるなり容赦なく攻撃とは、相も変わらず良い度胸してるじゃないの……!

 

「こんな時にまで取っ組み合いとは、意外と余裕があるんだなお前ら」

「やるならここから出て行ってからにしてほしいねぇ」

 

 見てる暇があるならこの変態を止めてほしい。

 

「さすがに、ウザいっ!」

 

 アキちゃん──いやアキ君の脳天にチョップを叩き込み、雄二に投げる形で引き剝がす。

 

「がふっ!?」

 

 あ、雄二に殴られた。まぁ、見た目が綺麗でも中身は男だしね。そりゃ殴りたくもなるわね。

 雄二に殴られたことで我を取り戻したらしく、カツラがズレないよう整えながらため息をつくアキ君。何も律儀にカツラをしておく必要はないんだけどなぁ……。

 

「それはそうと二人とも、さっきから学園長がシワシワな顔面を歪めているんだけど、何かやらかしたの?」

「アホが。学園長と顔を合わせるなり山姥呼ばわりしたお前らと一緒にするな。俺はなんで妖怪がこんなところにいるのかと驚いただけだ」

「随分と失礼なこと言ったのね雄二も。学園長だって好きで山姥として生まれ育ったわけじゃないのよ?」

「そうだよ雄二。好きで山姥という種族をやっている人なんて学園長を置いて他にいないのに、何もそんな酷い言い方をしなくても良いじゃないか」

「……アンタらには一度、学園の最高権力者が誰かってことを教えてやった方が良さそうだね」

 

 なんでさらに機嫌が悪くなっているのだろうか。そんなに自分の種族が山姥なのが嫌なのだろうか?

 

「大体、アンタらにだけは容姿についてどうこう言われたくないね。常夏コンビの二年生バージョン風情が」

「「なんてことを言いやがるこのババァ!」」

 

 ダメだ私。まだ笑うんじゃない。

 

「そっちで笑いを堪えているアンタもアンタだよ。ただでさえ同じ苗字の生徒が三人もいるのに、そのうちの一人であるアンタは女子生徒の問題児筆頭。このジャリ共と中身が一緒なのを少しは自覚しな」

「なんてこと言うのよクソンバ!」

 

 何をどう考えたら私がアキ君や雄二と同類になるのよ!? まるで遠回しに『お前は最底辺の人間だ』って言われているみたいじゃないか!

 っていうか待って! なんでよりにもよって一番言って欲しくなかったことを、一番知られたくなかった奴がいるときに言ってくれちゃってんのよ!?

 

「同じ苗字が三人だと?」

 

 チッ、やっぱり反応したか……。そう、前にも言ったが一番知られたくなかった奴というのは雄二のことである。何せコイツは悪知恵が凄く働くからね。人の不幸が絡むと特に。

 アキ君は最初から知っていたのか、雄二ほど反応はしていない。まぁ、彼は私とは生まれた時から家族ぐるみで仲が良いって関係だったしね。こっちの事情もある程度は把握しているはず。

 

「そうさね。各学年に一人ずつ、『水瀬』って奴がいるのさ」

「…………」

 

 お願い。こっち見ないで。

 

「あの人達、ここに入学してたんだ……」

 

 しかもアキ君は今知った様子。信じた私がバカだった。

 

「それでジャリ共。わざわざ窓から入ってくる辺り、アタシに何か話でもあるのかい? 見ての通り、アタシは忙しいんだけどね」

 

 いや、手元の書類をまとめているだけに見えるんだけど……それに忙しいというより、私達の存在が目障りで仕方がない、という方がしっくり来る。

 アキ君はもちろん、私もただ逃げてきただけなのでこれといった用はなかったが、雄二はそうじゃなかったみたいだ。

 

「実はさっき、喚び出した召喚獣が何もしていないのに消えたんだが、何かあったのか?」

 

 雄二がそう言ったところで私も思い出す。そういやそんな現象が起こってたわね。アキ君がさっき召喚獣で鉄人に攻撃を仕掛けた時だったか。……その時は鉄人の動きを追っていたせいで気づかなかったが。

 私達バカ共に敬語という高度なものは理解できないと悪口を言いつつも、学園長は雄二の質問に淡々と答えた。

 

「そいつは今起きている不具合の一部さね」

 

 不具合? もしかしてアキ君と雄二が持つ白金の腕輪のことを言っているのだろうか?

 確かに、あの腕輪には不具合があると、清涼祭の時に学園長が自分で言っていた。詳細は不明だが点数が一定の水準を超えると暴走するらしいね。

 高得点で暴走……最近成績が良くなっている雄二が使えば、暴走が起きる可能性は充分にあるわね。だけどあの現象は暴走というより、ゲームで言うところのバグに近いものだった。

 

「もしかして不具合ってのはシステムの方ですか? 最近メンテナンスの回数も多くなってますし」

「確かに、最近妙にメンテナンスの回数が多いとは思っていたが……」

「大丈夫なんですか?」

「不調ではあるけど心配には及ばないよクソジャリ共。調整こそ必要だけど、夏休みに入る頃には使えるはずさ」

 

 つまり、もうすぐ解禁される予定の私達の試召戦争は二学期まで延期、ということになるのね。

 私達Fクラスは一学期早々、Aクラスとの試召戦争に敗北を喫して『三ヶ月の開戦禁止期間』なるペナルティを課せられていた。それがあと少しで終わるという矢先にこれである。

 

「そんな!? 困ります!」

「そこを何とかする方法はないのか?」

「一応使えないことはないんだがね……」

 

 渋るように呟く山姥こと学園長が言うには、使わせる気はさらさらないとのこと。これに関してはガチのようで、教職員にも伝えているらしい。

 

「使えないこともない……使うことはできるのに禁止って、まるで意地悪みたいじゃないですか」

「『みたい』じゃなくて意地悪そのものさね」

 

 しかも意地悪のつもりらしい。

 

 ちなみに意地悪してまで召喚システムを使わせてくれない理由は『アキ君と雄二の顔や成績、そして日頃の行いが悪いから』とのこと。

 どれもわからなくはないが、そこに私が含まれていない辺り、やはりアキ君や雄二ほど目をつけられてはいないようだ。多分。

 ここまで言われてもなお言い返そうとするアキ君を、やや強引に止めてから彼に小声で話しかける雄二。一体何を話しているのだろうか。

 

「まったく、いくらアタシに惚れているからと言って、学年全体を巻き込んでまで覗きに来るなんて」

 

 

「「黙れこの自意識過剰ババァがぁ──っ!!」」

 

 

「あはははははっ!! も、物好きにも程があるよ君達……っ!!」

 

 思わず爆笑してしまった私は絶対に悪くない。まさか、まさかアキ君と雄二にそんな趣味があったなんて……!

 

「爆笑してる暇があるなら誤解を解いてよ楓! 雄二がババァに興奮しているバカでブサイクでアホなだけで、僕にそんな趣味はないから!」

「誰が明久と同じ物好きだテメェ! 明久がババァに興奮している尻フェチで女装趣味のあるホモ野郎なのは事実だが、俺にそんな趣味はこれっぽっちもねぇ!」

 

 久しぶりに面白い展開かもしれないわね、これ。手元に小型録音機がないのが悔やまれるわ。ここは学園長室だし、前に教頭が仕掛けていた盗聴器は私が完全に破壊している。

 ……今ほどその盗聴器を破壊しなければ良かったと思ったことはない。

 

「ああもう五月蠅いねぇこのジャリ共! どんな口説き文句を言われようともアタシは生徒と恋仲にはならないからね!」

「「願い下げじゃぁ──っ!!」」

 

 

 閑話休題。

 

 

「んで、どうして試召戦争が禁止なんだ? 不具合はすぐに直せるじゃないのか?」

 

 あれから学園長との口論(笑)から数分後。ようやく落ち着きを取り戻した雄二がソファーに腰を掛け、学園長に不具合の件を尋ねる。

 その学園長の口から出た答えは『私達が試験召喚システムの本質を見失っている』というものだった。あれって妖怪である学園長の気まぐれな実験の過程でできただけの産物じゃなかったの? 本質なんてあったっけ?

 

「何を勘違いしているのかは知らないけどね、この学校の──試験召喚システムの本来の目的は『学生の勉強に対するモチベーションの向上』なんだよ」

 

 学園長がそう言ったところで、私はこの学園で起きた出来事を思い出していく。

 校舎の壁の破壊、教頭室の爆破、学年全体での覗き、そして勘違いと修羅場による試召戦争騒ぎ……。

 うん、ロクなのがないね。学生の本分なんてものとは無縁なことばかりだ。素晴らし過ぎませんかねこの学園。私の退屈をどこまでも満たしてくれているなんて。

 

「──それに勉強ができていても、常夏コンビやそこの小娘みたいに、内面が生まれつき腐り切っている危険分子もいるからね。学園の治安を良い方向へ持っていくためにも必要なことなんだよ」

 

 

「黙れこの自惚れ山姥がぁ──っ!!」

 

 

 聞き捨てならないことが聞こえたので思わずキレちゃった。

 

「ったく、自惚れとはなんだい小娘。アンタがこれまでの騒ぎを心から楽しんでいるのは事実だろうに」

「だとしても! あのハゲとモヒカンとアキ君と雄二と同列に扱われるのだけは我慢できません!」

「「それはこっちの台詞だ!」」

 

 確かにこのバカコンビは普段はロクに勉強もしていない。なのに騒ぎに乗じて成績が伸びてきている。こんな、一時の努力しかしない連中と私は違う。こっちは日々努力しているんだよ!

 

 ちなみに学園長が言うには私達の現状よりも、世間から向けられる目の方がよほど問題のようだ。

 まぁ、それもそうよね。この文月学園には他の学校にはまずない、試験召喚システムという変わり過ぎている技術を導入している。ただでさえ進学校なのに、そのシステムのせいで世間からは非常に注目されているのだ。故にスポンサーが集まりやすい反面、世間からの目が厳しくなってしまっている。

 なので内部の人間には効果があっても、世の中から認められないと学園の存続が危ぶまれてしまう。学園長としても、個人的な面ではあるが私にとっても、これは悩ましいことである。だからこその禁止令とも言えるだろう。

 

「つまり学園長はこう言いたいのか。システムの不調も確かにあるが、メンテナンスでの休みは世間に対する隠れ蓑で」

「実際は騒ぎの連続によって、勉学が疎かになっている私達を期末試験に集中させるために禁止にする、と」

「相変わらず察しが良いね。その通りさ」

 

 とはいえ、その程度でアキ君や雄二達Fクラス勢が勉学に励むとはとても思えない。私なんて今やっている範囲は小五の頃に全部網羅しているため、軽い復習だけでどうにかなってしまう。数学? そんなものは知らない。

 学園長も同じことを考えていたようで、期末試験で成績の向上が見られない場合は特別夏期講習でもやるか、などと言い出した。

 

「それは酷いですよ学園長! 試召戦争を禁止にする上に、貴重な夏休みが減らされるなんて!」

 

 これには思わず抗議するアキ君だったが、今度は追い討ちを掛けるように『夏期講習に加えて、三学期まで試召戦争を禁止にして勉強漬けにしてやろうか』と釘を刺してきた。

 勉強漬けは私としてもごめんである。すでに網羅している範囲を過度に復習するなんて気が狂いそうだ。

 メンテナンスの件は明日公表する予定だったようだが、生徒から反発されるのは想像に難くないとのことで、今回は特別にオマケとしてシステムのリセットを付けることにしたらしい。

 

「システムのリセット?」

「リセット……その範囲は?」

 

 システムのリセット。それはディスクなどで言うところの初期化だ。ならばその初期化がどこまで反映されるのかを知っておいても損はない。

 

「システムに蓄積されているデータ全部さ。一旦白紙に戻してやろうじゃないか」

 

 文字通りの初期状態にする気か。ということは召喚獣の装備もリセットされるのね。私の召喚獣の装備は確か……武器はガリアンソードこと蛇腹剣、防具は黒のロングコート。武器の方は今でも充分に強いのでそのままでも良いと思うが、ただの服でしかない防具に限れば、このリセットは有難い話になるわね。

 

「なるほど。それは悪くない話だな」

 

 今回のリセットは雄二にとっても、良い方向へと行く可能性がある。何故なら彼の召喚獣の装備は改造制服とメリケンサック。力のある者が使わないと雑魚の装備にしかなり得ない代物だ。その装備が、システムのリセットによって変更されるのだから。

 

「え!? そうなんですか!?」

 

 雄二に簡潔に説明されたことで、ようやく学園長の言ったことが理解できたアキ君。彼の召喚獣の装備は改造学ランと木刀。なんで雄二もアキ君も服が改造ものなのか少々気になるわ。

 そんな雄二の召喚獣と同じ雑魚──かけ出し装備が、リセットによって良いものへと変更される可能性がある。彼にとっても悪い話ではないだろう。

 なお、私達の召喚獣の装備は振り分け試験の前に行われた、一年生の時の学年末試験の結果が反映されたものだ。そのため、それ以降の試験ではどれだけ高得点を取ろうと装備には何の変化も起きなかったのだ。

 

「わかりましたっ! 期末試験頑張りますっ!」

「どうしたんだ明久。急にそこまでやる気を出して」

 

 自分の召喚獣の装備が改善されるかもしれない。加えて、今アキ君の家には彼の実姉である玲さんがいる。その玲さんという監視員を追い返し、一人暮らしを取り戻す。アキ君が期末試験に全力を出す理由としては充分だった。

 少し引き気味の雄二の手を掴み、追手の気配がビンビンする扉の方へ歩いていくアキ君。そっちは間違いなく──

 

 

「「「ウェルカム」」」

 

 

 ──地獄への入り口だ。

 

 一足早く来た道を戻るように窓から脱出した私は、アキ君と雄二の悲鳴をバックに走り出す。君達の犠牲は忘れないよ。気が変わるまではね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄二、ちょっといい?」

「どうした明久」

「雄二の家に泊めてくれない? 期末テストに出る範囲を教えて欲しいんだ」

 

 

 ──ザワッ

 

 

 放課後の出来事だった。アキ君が雄二に泊りがけでの勉強を頼んだ瞬間、教室にざわめきが広がったのは。

 

 

『おい、聞いたか今の……?』

『き、聞いたぜ。一瞬耳がおかしくなったと思ったが……』

『まさか、あの吉井と坂本が……』

 

 

『『期末テストの存在を知っているなんて……』』

 

 

 彼ら──クラスメイトはアキ君と雄二を何だと思っているのだろうか。

 

「やれやれ……。お前はまだ七の段が覚えられないのか」

「えっ、そうなのアキ君!? 私ですら覚えてるのに!?」

「待って! 僕は一度も九九の暗唱に不安があるなんて言った覚えはないよ!? それに不安があるのはどっちかと言えば楓じゃないか!」

 

 なんて心外な。

 

「バカのくせに馬鹿にしないでくれる!? 私でも九九の暗唱くらいはできるわよ! かく言うアキ君だって未だに三角形の面積の求め方に躓いてるじゃないか!」

「(底辺)×(高さ)=(三角形の面積)! いい加減同じネタで僕をバカにするのはやめなさい!」

「よしよし、明久にしてはよくできたな。あとは最後に二で割ることを覚えたら三角形の面積が出せるようになるぞ?」

「………………」

 

 やっぱり躓いてるじゃないか……。

 

 そんなアキ君と雄二の言い争いに参加していると、手に鞄を抱えた瑞希がやってきて、凄く心配そうな表情で口を開いた。

 

「あのですね、九九の覚え方にはコツがあるんですけど、」

「言えるからね!? 根っからの数学嫌いな楓じゃあるまいし、今の僕でも九九は言えるからね!?」

「いい加減に私の名前を挙げるのやめてくれない!?」

 

 このままじゃ瑞希にまでバカだと思われてしまうじゃないか!

 

「しかし明久よ。お主が勉強なぞ、特別な理由でもない限り考え難いのじゃが……一体どうしたのじゃ?」

 

 私が恨みに怒りを込めた視線をアキ君に向けていると、近くに座っていた秀吉が疑問を投げ掛け、直後にアキ君が瑞希に意味深な目線を送り始めた。

 ……あぁ。そういえばアキ君が試召戦争を始めた理由を聞いてなかったわね。前々から推測していたとはいえ、今確信できたわけだが。

 一人で勝手に納得していると、いつの間にか島田さんやムッツリーニまでこっちに来ていた。アキ君が勉強をする。本人がそう言っただけで、周りに人が集まる……アキ君はある種のカリスマ性でも持っているのだろうか?

 

「ほぇ? 何の話?」

「ですから、お家の宗教が違うことのお話を……」

「???」

 

 気づけばこっちはこっちで何故か宗教の話をしているし……。

 

「なんで宗教……?」

「姫路の思考回路が明久レベルに落ちてるからだろ」

「朱に交われば赤くなる、というやつかの?」

「…………似た者同士」

 

 やっぱり頭が良くても感性がバカな奴はいるんだね。というかこの面子じゃ雄二が一番良い例だし。

 わからない単語を聞いたらしい島田さんが首を傾げていると、雄二が話の方向を戻し始めた。

 

「それはそうと明久。どうして俺の家に泊まりたがるんだ? 家で何かあったのか?」

「えっと、じ、実は」

「嘘をつくな」

 

 早すぎる。アキ君はまだ言い分を何も言っていないのに。

 

「急に勉強に目覚めて──って早いよ!」

 

 なんてわかりやすい嘘なんだ。これなら言う前に嘘つき呼ばわりされるのも無理はない。

 勉強を教えること自体は良しとした雄二だったが、その場所にアキ君の家を指定してきた。雄二も自分の家には何かマズイものでもあるのだろうか? だとしたら同情せざるを得ないが。

 アキ君はアキ君で改装工事の業者とか家の鍵を落としたとか家が燃えたとか底の浅すぎる嘘を連発するも、ことごとく雄二に看破されてしまった。

 

「待つのじゃ明久。何をそこまで隠しておるのじゃ?」

「うぇっ!? いや、別に何もないよ!」

 

 諦めて帰ろうとしたアキ君を秀吉が引き止めると、面白そうだと雄二が嫌らしい目で笑い、私を除く全員がアキ君の家に興味を持ち始めた。

 アキ君は諦めずに凄く散らかっているからダメだと断固拒否するも、瑞希が片付けを手伝うと言い出した。普通なら喜ぶべきだが、今のアキ君の家にはあの玲さんがいるもんね……。

 

「でも、散らかっているのは2000冊以上のエロ本なんだ!」

「「「…………」」」

 

 一瞬の沈黙。そして──

 

「片付けますっ!!」

「全部処分するからっ!!」

「…………任せておけ(グッ)」

 

 ──瑞希と島田さんは烈火の如く怒り出し、ムッツリーニは俄然やる気を出し始めた。

 

「しまった! これじゃ物凄い逆効果だー!? ……そ、そうだ! お願い楓! 皆を止めて!」

 

 アキ君が最後の手段と言わんばかりに、私の方を見る。いやまぁ、私としてもこの状況は良いとは思えないけどさ……。

 

「アキ君。こういう時はよく言うでしょ」

「な、何を……?」

 

 彼の期待に応えるかのように、私はハッキリとその言葉を告げる。

 

 

「──男は諦めが肝心、って」

 

 

 この状況、乗らないわけにはいかない。そもそも私はアキ君と関わると彼の減点に大きく響くため、むしろ関わらない方が良いのだ。せっかくだし私の刺激の糧にしてやるよ。

 

「いやだーっ! 僕にはまだやることがたくさんあるのにぃーっ!」

 

 大してないでしょ。

 

「よし、それじゃ意見もまとまったことだし、明久の家に行くか」

「「「おーっ!」」」

「やめてーっ! 来ないでぇーっ!」

 

 アキ君の首根っこを掴み、雄二達の後に続く。ふふっ、これはこれで楽しみだわ……。

 

 

 

 

 




 やっと投稿……といっても一ヶ月経ってないな。最近は時間がないからしばらくはこんな感じになりそうだなぁ。

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