バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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第七問

「み、水瀬よ……」

「何かな? 秀吉」

 

 

 私の目の前にいる秀吉が可愛すぎるんだけどどうすればいいかな。どうすればこの状況から男前な天使として見られるようになるだろうか。もう不可能で良いよ、不可能で。可愛かろうが性別があやふやだろうが、秀吉は秀吉なんだからさ。

 

 

 

「──さすがに、こ、これは近すぎると思うのじゃが……」

「気にしたら負けよ。何なら膝の上に座ってあげようか?」

 

 

 

 あれから男という邪魔者達がキッチンへ向かったのを確かめた私は、今なら許されると言わんばかりに秀吉にくっついた。もちろん、胸を当てる程度のボディタッチは忘れない。

 まぁ、それでもさっきからアキ君の視線が突き刺さっているんだけどね。不良でも、格闘家でもない、一般ピーポーの半端なメンチ切りで私が動じると思っているなら大間違いだ。

 

「良ければアルバムでも見ますか? ほとんどがアキくんの小さな頃の写真ですけど」

「え? 良いんですか?」

 

 私達がスキンシップに勤しんでいると、玲さんが一冊のアルバムを取り出した。

 アキ君の幼い姿が見られると、楽しそうに食い入る瑞希と島田さん。秀吉も秀吉で視線がアルバムの方に向いている。……私も見るか。

 少しだけ懐かしさを感じながら、開かれたアルバムに視線を向ける。昔のアキ君って今以上に女の子らしかった気が──

 

 

 

「こちらが、アキくんと楓さんが二歳の時のお風呂の写真です」

「「「!?」」」

 

 

 

 ちょっと待てやお前。

 

「玲さん」

「どうかしましたか? 楓さん」

「いつの間に撮ったんですかそれ。というかそこに私はいらなかったでしょう?」

 

 なんで初手が私とのツーショットなのよ。しかも入浴写真。

 

「…………す、すす、すっごく可愛いですねっ!」

「…………す、素直そうでかわいい、わね……!」

 

 かつてないほど複雑な表情で、頬を真っ赤に染め、激情してしまいそうなのを必死に抑えながら感想を口にする瑞希と島田さん。言いたいことが山ほどあるはずなのに、それを口に出さないなんて意外と精神力が強いのかもしれない。

 ちなみに秀吉はアキ君の方にだけ視線を向け、私の方には徹底して向けていない。まるで見えていないと、自分は何も見ていないと、そう言いたげに。

 

「それでこっちが、アキくんと楓さんが四歳の時のお風呂の写真です」

「あ、アキってば、お風呂の中で寝てるわ」

「む、無邪気な寝顔じゃなっ!」

「か、楓ちゃんは体を洗いながら寝そうになってますねっ!」

「っ……!!」

 

 次の写真も入浴写真。しかも二年の時間差があるだけ。三人とも平常を装ってはいるが、その顔は好感度が高いときに告白されたヒロインのように真っ赤だ。秀吉に至っては瑞希の発言に体がビクリと反応している。

 というか入浴写真しかないのはさすがにおかしいと思う。もっとこう、二人で公園のブランコで遊んだり、滑り台でアキ君を突き飛ばしたり、泥だんごを雪玉に見せかけて投げ合ったときの写真があっても良いと思うんだけど。

 ……いや待とうか。なんで三人とも恥ずかしがっているんだ。今見ているのはまだ小学校にも入っていない、幼気な男女の写真なんだよ? これが中学以降なら仕方ないとは思うけども。

 

「そして次に、こっちがアキくんと楓さんが七歳の時のお風呂の写真で」

「しょ、小学校の頃ですね…………えっ!?」

「小学校!?」

「まだ一緒に入っておったのか!?」

 

 確かに驚くところはそこなんだろうけど、どうして誰も最初から入浴写真しか見ていないことにツッコまないのか。疑問で仕方がない。

 

「更にこちらが、アキくんと楓さんが十歳の時のお風呂の写真で──」

 

 

 

 

『バカエデ閉じろぉぉぉぉっ!!』

 

 

 

 

「はいストップ! ツーショット写真はそこまでっ!!」

 

 台所からアキ君の魂の叫びが聞こえ、さすがにこれ以上はマズイと思っていた私もそれに応えるかのように、アルバムのページを青い栞が挟んであったところまで飛ばす。

 

「これ以上は有料! お金取るよ!」

 

 再度警告。いくら私でも十歳以降の入浴写真を、人に見せるのは恥ずかしいものがある。

 

「……仕方ありませんね。それなら次は──昨晩のアキくんのお風呂の写真です」

「「…………(ゴクリ)」」

 

 ページを飛ばしたところがツーショットじゃなくて本当に良かった。さすがに高校に入ってからは混浴はしていないからね。その辺は私でも弁えている。その辺は。

 それに三人とも、今の写真を見て平常心を取り戻したみたいだ。良かった良かった。私も大恥をかかずに済んだし、本当に良かったわ。

 

 

『なんでそこは止めないのさ!? さてはアイツ、自分だけ助かればいいとか思ってるな!? 離して雄二! ムッツリーニ! 僕はあのバカ姉とバカ馴染みの頭をフライパンでかち割ってやるんだ!』

『料理をなめるな明久。諦めておとなしく鍋を見ていろ』

『…………中身が吹きこぼれる』

『二人とも離してってば! お願いだから離してぇーっ!』

 

 

 台所が騒がしいわね……。

 

 

 

 

 

──そんなこんなで時間は過ぎて──

 

 

 

 

 

「皆、待たせたな。明久のせいで遅れたが、夕飯はできたぞ」

「誤解しないで皆。間違っても僕のせいで遅れたわけじゃないからね?」

 

 完成した夕食──人数分のパエリアが、リビングのテーブルに並べられていく。アキ君のせいで遅れたかはどうでもいいから置いておくとして、やっと夕食にありつける。

 涎が出そうな私は気を逸らすべく、例の入浴写真をモロに見た女子二人へ視線を向ける。その二人は本人を見て効果音が出そうな感じで頬を赤らめていた。まぁ、得したんじゃない? お互いに。

 

「それにしてもアキくん。あなたはどうしてそんなに落ち着きがないのですか?」

「リビングにまで声が聞こえてきてたわね」

「二人のせいだからね!? まるで僕が悪いみたいに言ってるけど、二人のせいだからね!?」

 

 そんな言い方はないんじゃないかな。

 

「酷いわアキ君。私は必死に止めてあげたのに」

「どこがだ! 自分の写真じゃなくなった途端に止めなくなったじゃないか!」

「え? それが普通でしょ?」

「結局自分がかわいいだけかキサマーッ!!」

 

 耳元でうるさいなぁ。皆の目がなければ地獄突きをお見舞いしていたところよ。

 私と同じことでも考えていたのか、玲さんはアキ君の前に置いてあったパエリアを避け、一枚の深皿を置いた。タバコの吸い殻でも捨てろとか言わないわよね?

 

「皆さん、貝の殻はこのお皿に入れて下さい」

「酷いよ姉さん! 僕の夕飯は貝の殻だけなの!? 楓も何とか言ってよ!」

 

 さっきから本当にうるさいわね。確かこういうときはカルシウムを摂取すれば良いってよく聞いたわね。玲さんもそう言ってたし。

 

「はいアキ君。カルシウムよ」

「ちくしょう! 相も変わらずバカエデに期待した僕がバカだったよ!」

 

 玲さんの言った通りにカルシウムが含まれている貝殻を置いてあげたのに、どうしてバカ呼ばわりされるのか。

 麗しき家族愛と友情に涙が止まらなくなったのか、アキ君は私と玲さんを交互に見て、

 

「やっぱり二人とも、僕のことが嫌いなの……?」

 

 などと言ってきた。いやだから、前にも言ったけど君のことは大好きよ? ……私の刺激の糧になってくれるから、という意味ではあるけど。

 これはもう一度、ハッキリと言ってあげる必要があるわね。

 

「いいえ、そんなことはありませんよ」

 

 っと、先に玲さんが言うか。私は後でも良いな。

 

「姉さんはアキくんのことが大好きです。──一人の女として愛してます」

「「最悪だ……」」

 

 アキ君と声がハモったけどそんなことはどうでもいい。それ、血の繋がった家族が相手じゃなければ最高のアンサーだったわよ。この場合は近親的な意味でアウトだけど。

 さて、次は私か。この際だし、正直に答えてあげますか。

 

「アキ君。私も君のことは嫌いじゃないわ」

「か、楓……あれ? 何このデジャヴ?」

 

 いつもなら照れるアキ君が、私の返答を聞いて安堵し出した。そりゃそうだ。実の姉に『異性として愛している』と言われたばかりなのに、今度は好きでもない相手から好きとは言われたくないだろう。

 ……尤も、私がそう簡単に終わらせると思ったら大間違いよ。刺激がないなんて大気中に酸素がないと言っているようなものだからね。

 

「──大好きよ」

「やっぱりか! 誤解されるような言い方はやめてよ楓!」

 

 前にも言ったし、別に大丈夫でしょ。

 

「か、楓ちゃん……。やっぱり、明久君のこと……」

「そ、そんな……。瑞希はともかく、水瀬さんが相手じゃ……」

 

 ごめんアキ君。全然大丈夫じゃなかったわ。

 

「み、水瀬──」

「う、嘘よ、嘘。だからそんな泣きそうな顔しないで秀吉」

 

 秀吉が泣きそうな顔になっていたので、慌てて誤解を解く。何気にレアな秀吉の涙顔を見られたわけだが、その経緯があまりにも酷いので喜べない。

 瑞希と島田さんの方はアキ君が必死に誤解を解いているようだし、私は秀吉に集中しますか。とりあえず抱いておこう。

 

「日本の諺にもこうあります。バカな子ほど可愛い、と」

「諦めろ明久。水瀬はともかく、この人は世界で一番お前を愛していると思うぞ」

「それって僕が世界一のバカだってこと!?」

「う、ウチだってアキのことは世界で一番バカだと思ってるわ!」

「わ、私もこの世界で明久君以上にバカな子はいないと確信しています!」

「やめて! 皆で僕のガラスのハートを傷つけないでぇっ!」

 

 アキ君が世界一のバカ? それは当然よ。だって、そんなのずっと一緒だった私が一番よく知っているんだから。

 ……ん? つまり私の幼馴染みは世界で一番バカだってこと? そんな奴が、私の幼馴染み……だというのか……?

 

「ないわー。世界一のバカが幼馴染みとかないわー。アキ君が──」

「言わなくていい! もうそれ以上言わないで楓! 僕のハートが粉々になっちゃうからもうやめて!」

「み、水瀬……。わ、ワシはもう大丈夫じゃから、その……」

 

 あぁ、離さないといけないわね。もう少し抱いていたかったなぁ。

 名残惜しく秀吉を解放し、目の前の湯気が出ている料理に意識を向ける。皆もそのつもりだったようで、さっきまでの騒ぎはどこへやら、大人しくなっていた。

 

「「「頂きまーす!」」」

 

 さぁ、空いたお腹を膨らますわよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで皆さん、うちの愚弟の学校生活とはどんな感じでしょうか? 主に成績とか、()()()()とか」

 

 

 

 玲さんはそう言った。主に異性関係、の部分を強調して。すると女子組の空気がピリピリし始めた。勘弁してよ。せっかくアキ君の料理の腕前を味で実感し、落ち込む島田さんと落ち込みながらも小声で不吉な発言をする瑞希とか、玲さんの胸がEカップになったとか、海栗とタワシの区別がつくようになったとか、いろいろと賑やかになってきていたのに……。

 二人ともアキ君は頑張っている、たまにドキッとするとか言いつつも、異性関係の部分については全く触れなかった。まぁ、君達自身がその関係に入ってるもんね。

 

「異性関係、のう……」

 

 残るは秀吉だけとなった。雄二とムッツリーニはアキ君に口止めされてるっぽいし、私に至っては今でなくとも、いつでも答えられるからね。

 アキ君が私にアイコンタクトで『秀吉の口を塞いで』と訴えてきたが、元よりそのつもりだ。というのも、

 

「秀吉、あーん」

「あ、あーん、じゃ」

 

 私は秀吉にこれをしたかったからだ。恋人がよくやる行為の一つである。ダブルデートや清涼祭の時はアキ君と雄二のせいでできなかったからね。今くらいさせて頂戴な。

 

「……なるほど。そういうことなら仕方ありませんね」

 

 まだこっちは何も言っていないのに、良い方向へ誤解してくれた玲さん。今はまだ誤解だけど、近いうちに真実へと変えてみせる。

 

「それでは……異性関係については、今度アキくん自身にぼっきりと聞かせてもらうことにしましょう」

「『ぼっきり』って何!? そこは普通『じっくり』とか『ゆっくり』とかじゃないの!?」

 

 明確な悪意と殺意を感じる。そこまでしてアキ君の異性関係を聞き出したいというのか。

 少しでもカルシウムを摂取するつもりなのか、明日のおかずを魚にすると決意するアキ君。が、玲さんの口から彼にとっては嬉しい発言が飛び出した。

 

「明日から土曜日か日曜日くらいまでは帰りが遅くなりそうなので、姉さんの食事は用意しなくても結構ですよ」

「えっ? そ、そうなの?」

「はい。……アキくん、嬉しそうですね?」

 

 私もそう思った。だって今のアキ君の顔、淋しさや悲しみとは程遠いものだったし。全体的に嬉しさで緩くなっている感じだった。

 

「ぅえ!? い、いいや、そんなことはないよっ。折角帰ってきた姉さんと一緒にいられる時間が減るのは残念だよ!」

「英語で言ってみてください」

「Happy」

 

 Happy。和訳は幸福、幸せ、楽しい、満足etc.

 残念とはどうあがいても真逆の表現である。なんでコイツはいつでもこんなに正直なのか。

 

「………………」

「あっ! 痛っ! 姉さ……っ! 食事中にビンタは……っ!」

 

 玲さんのおうふくビンタ! 効果は抜群だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これ以上時間を無駄にしたくないし、勉強するか」

「そうですね」

 

 現在時刻は午後七時。今からならテスト勉強どころかアキ君のための復習もできそうだ。私が加わるからには徹底的にやるわよ。一つの間違いも許さない。

 せっかくなので、秀吉をメインに他の面々にも教えていくことにする。瑞希? あの子を指導する必要はないでしょ。苦手科目の家庭科もないんだし。

 ガッツポーズでいつも勉強しているような雰囲気を出すアキ君だが、あの玲さんを誤魔化しきれるとはとても思えない。絶対にどこかで綻びが生じるだろう。

 

「皆さんでお勉強でしたら、良い物がありますよ?」

「良い物? 参考書か何かですか?」

「はい。アキ君の部屋から出てきました」

 

 そう言って玲さんが取り出したのは──

 

 

 

 

【女子高生 魅惑の大胆写真集】

 

 

 

 

 ──レベルの低いエロ本、もとい写真集だった。

 

「僕のトップシークレットがぁ──っ!?」

 

 こんなのがトップシークレットであることにも驚きを隠せないが、それをわざわざ捨てずに持っていた玲さんにも驚きである。

 私だったらあらゆる手段を使って成人向けのアダルト雑誌を仕入れるわね。男性向け、女性向けの両方を。どっちも魅力があるからね。

 

「保健体育の参考書にどうぞ」

「じゃあ遠慮なく。後で売り飛ばしておくわ」

「やめろバカエデ! それを売られたら僕のトップシークレットが一冊だけになってしまう!」

「その一冊とはこれのことでしょうか?」

 

 なんとアキ君のトップシークレットは玲さんが回収した二冊しかないことが判明した。この前までは十四冊はあったのにね。それらを無くすなんて一体どんな雑管理をしていたのやら。

 

「アキ君、私が前に来たときは十四冊くらいなかった? 残り二冊はいくら何でも……」

「…………管理が雑過ぎる」

「誰のせいだと思ってるんだバカエデ! 君がムッツリーニに売り飛ばしたからこんなに減ってるんだよ!?」

 

 死ぬほどどうでもいいわ。そもそもあんな低レベルのエロ本なら使うのも難しいわよ。所持するならクオリティ重視しなさいよ、クオリティ重視。

 結局、アキ君のトップシークレットは瑞希と島田さんの手に渡ることになった。まぁ、アキ君なら秒で取り返すだろう。

 

「その参考書を確認したところ、どうやらアキくんは、バストサイズが大きく、かつヘアスタイルはポニーテールの女子という範囲を重点的に学習する傾向がありますね」

「ポニーテール、ですか……」

「大きなバスト、ね……」

「……なんで最後に私を見るのさ君達は」

 

 お互いの身体的特徴を確認するや否や、でもやっぱりと言わんばかりに私の髪と胸に視線を向ける瑞希と島田さん。

 いや、さすがに理由はわかっている。私の身体的特徴がアキ君の好みにドンピシャに当てはまるからだ。胸はCランクの翔子よりも大きいし、髪型はいつもポニーテールだし。だがメカクレ女子だ。

 私がそんなことを思っているうちに、髪型をポニーテールに変えようとした瑞希を妨害し、彼女の髪型をお団子ヘアーに変えていく島田さん。華やかでいいわね。

 

「ところでムッツリーニはどうしたのじゃ? さっきから随分とおとなしいようじゃが」

「…………(キョロキョロ)」

 

 鼻血を出すこともなく、周囲の猥談を意に介さず、部屋中を見回すムッツリーニの姿。さてはコイツ……。

 

「ムッツリーニ、ここに2000冊のエロ本はないわよ。あの二冊で最後なの」

「…………!?」

 

 私の話を聞くなり『嘘だろ……?』と言いたげに絶望するムッツリーニ。だけどそこは名前の通り、コイツはどこまでもムッツリだ。

 

「…………エロ本なんかに興味はない」

 

 こんな発言とは裏腹に、その顔はしょんぼりしている。子犬みたいで可愛いわね。首輪があったら誰かが散歩に連れていくかもしれない。

 

「明久のエロ本は置いといて、勉強するならさっさとしようぜ」

「それもそうね。時間の無駄だし」

「よろしければ、私がお勉強を見て差し上げましょうか?」

「え? お姉さんが、ですか?」

 

 玲さんの提案に、思わず目を丸くする瑞希。まぁ、玲さんの非常識でしかない言動を見ているとそう思うのも無理はないわね。だが、どんな人間にも才能というものはある。

 

「はい。向こうの大学の教育過程を昨年修了しましたので、少しはお力になれるかと」

「向こうの大学?」

「アメリカのボストンだよ」

「そ、それってまさか──ハーバード大学か!?」

「「「えぇぇっ!?」」」

 

 そう、この吉井玲という人は勉強だけはできる。それも異様なレベルで。さらに総合的に見れば、飛び級クラスの私よりも学力は上だ。上には上がいるとはよく言ったものである。

 

「なるほど、出涸らしか……」

「雄二。その言葉の真意を聞かせてもらえないかな」

「いやいや、出涸らしで良かったわよこの場合。もしもアキ君の頭が玲さん並みに良かったら、どうなってたと思う?」

 

 私の言葉を聞いただけじゃピンと来なかったのか、玲さん以外の面々はその場で考え込んでしまった。

 私も私でその場合はどうなっていただろうか、と少し真剣に考えていると、答えに辿り着いたらしい雄二が私の方を見ながら口を開いた。

 

 

 

「明久の頭が良かったら──水瀬みたいなバイセクシャルになってしまう、ということか……」

「ハッ倒すぞ貴様」

 

 

 

 誰が私みたいになるだコラ。その言い方じゃ私が頭の良いアキ君みたいになるじゃないか。

 

 

 そんなどうでもいいこともあったが結局、玲さんの講義は受けることになった。本場の英語とか、日本じゃ教えないようなことも、教えてもらえるかもしれないと思えば当然である。

 この講座は十時前くらいまで続き、その間にも私は瑞希以外の面々に細かい個所や復習すべき点を徹底して教えていった。

 

 

 

 

「このバカ久! そこはアナロジーの意味だって前にも教えたでしょ!? なんで同じところ間違えてるのよバカ!」

「何度もバカバカ言わないでよ! しょうがないじゃないか! 数ヵ月前にやったところなんてさすがに覚えていられないんだから!」

「だからこうして復習してるんでしょうが! 今日は覚えるまで寝かさないし、お風呂にも入らせないからね!」

「誰かこのバカエデを何とかしてぇぇーっ!」

 

 

 

 

 アキ君の睡眠時間が大幅に減った。

 

 

 

 




 えーっと、実に八ヶ月ぶりの投稿か……まぁ、不定期だしこんなもんですよね。仕事も忙しいし。次はいつになるやら……。
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