バカと私と召喚獣   作:勇忌煉

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第七問

 

「総合科目テストご苦労だった」

 

 あの後、午後のテストも無事に終了。さらに放課後、制服がボロボロになりながらもアキ君は帰還した。あと瑞希が何かを無くしたかのように挙動不審になっていた。

 一体何を無くしたのかな? 私としては帰還したアキ君よりもそっちが気になったよ。

 そして今日……午前をテストに費やし、ついにBクラスとの試召戦争が始まろうとしている。

 

「もうすぐBクラスとの試召戦争が始まるが、殺る気は充分か?」

『おおーーっ!!』

 

 このモチベーションはFクラスだからこそ保てるものかもしれないわね。

 今回は敵を教室に押し込むつもりらしく、開戦直後の渡り廊下での戦いは絶対に負けられないと気合いが入っている。というのも……

 

「が、頑張りますっ!」

『うおおーーっ!!』

 

 前線部隊の指揮を取るのが瑞希だからだ。これ、どっちかと言うと盛り上げ要素だよね。

 ちなみに私はムッツリーニと共に本陣で待機する予定だよ。昨日受けた化学物質のダメージがまだ残ってるからね。ムッツリーニは違うけど。

 そしてこちらの主武器は数学。島田さんが大活躍できるのだ。

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

「野郎共、開戦だ! きっちり死んでこい!」

『よっしゃぁぁぁーっ!』

 

 昼休みの終了を意味するベルが鳴り響くと、代表の雄二と私とムッツリーニを除くほとんどのクラスメイトが狂人のごとく飛び出していった。

 さて、少し暇だな。でも暇潰ししようにもいつ敵がやって来るかわからない。

 

「雄二。寝ていいかな?」

「悪いが我慢してくれ。何が起こるかわからないからな」

「…………見え、見え、見え――ぶっ!?」

 

 とりあえず人のスカートの中を覗こうとしているムッツリーニでも踏んづけて遊ぶとしましょうか。ちょっとイライラするし。

 

「……水瀬。くれぐれもムッツリーニを殺さないように頼む。何か支障があると困るからな」

「やだなぁ雄二。いくら私でも命までは奪わないよ」

 

 そう、命までは。

 

『み、皆さん、頑張ってください!』

『やったるぜぇーっ!』

『姫路さんマジ最高です!』

『結婚してください!』

 

 そんな声が次から次へと聞こえてくる。何というか、信者が増えつつあるね。

 踏んづけていたムッツリーニを隅っこへ蹴り飛ばすと、ほぼ同時に一人の男子生徒が現れた。

 

「失礼する! Fクラス代表はいるか?」

「俺がそうだが……用件は?」

 

 私は雄二をチラ見し、その男子が付けている腕章に目をやる。なるほど、Bクラスの使者か。

 話によれば、Bクラスのキノ――根本恭二は協定を結びたいらしい。彼の性格を考えるとバリバリ裏があるわね。

 雄二はこの提案を少し考えてから了承した。

 

「ムッツリーニ、水瀬。ついてきてくれ」

 

 口ではそう言っている雄二だが、その目は全く違うことを告げていた。

 

『お前は万が一のためにここで待機しててくれ。今日はここから動くつもりはないんだろ?』

『わかった』

 

 一瞬のアイコンタクト。ムッツリーニですら気づかないような素早さでやり取りした私は、雄二に続いて行くように見せかけて教室へと戻った。

 これで一人になってしまったが……まあ大丈夫だろう。しっかし眠い。

 数分後、読み通りとでも言うべきかFクラスでは見ない顔の男子生徒が四人やってきた。

 話の内容を聞く限りはBクラスだろう。でもそれがペンや消しゴムを壊すって……。

 

「なっ!? どうしてお前がいるんだ!?」

 

 最初に現れた男子は私を見て驚きの声を上げ、後ろに控えている三人も声は出していないが顔を驚愕の色に染めている。

 何かしら仕掛けてくるとは思っていたが、まさかこんな幼稚な事だとは予想外だった。

 もちろん、生きて帰――逃がすわけがない。ここで会ったが最期ってやつだ。

 

「ほら、やろうよ――試獣召喚(サ  モ  ン)

 

 連中が動く前に自分の召喚獣を喚び出す。これでどっちにしろ逃げられない。逃げたら戦死者同様、補習室行きになるのだから。

 それに気づいた連中は苦虫を噛み潰したような顔で自分の召喚獣を喚び出してくれた。

 

 

『Fクラス 水瀬楓 VS Bクラス 男子×4

 総合 3500点 VS 1753点

              &

            1832点

              &

            1905点 

              & 

            1586点    』

 

 

 へぇ、さすがはBクラスと言うべきかな?

 

「くそっ! やっぱり点数じゃ勝てないか!」

「でも相手は一人だ」

「ああ、いくら点数が高くても一人じゃ限界がある!」

 

 君達の言うことは最もだ。でもね、それは私以外の誰かだったらの話だよ。

 

「今日は暴れる気になれないから、サクッと終わらせてもらうわ」

 

 召喚獣は背中に納めてあるガリアンソードを抜刀し、鞭状に変形させる。

 

「じゃ、蛇腹剣!?」

「反則だろそれ!?」

 

 それを見た相手の召喚獣は警戒して構えるが、私を相手にそれは間違いだ。

 構えた一瞬を突いて遠距離にも対応できるようになったガリアンソードを何度も振り回し、四人の召喚獣をいっぺんに一蹴して戦死させた。

 見事に戦死した四人は私の召喚獣の装備を見て文句やら何やらを言いまくってくる。

 こういうのを負け惜しみと言うのかな? 正直見ていて見苦しい。

 

「戦死者は補習――っ!」

 

 直後、どこからともなく現れた鉄人によって四人は連行されていった。

 全く、本当に反則なら教師が何かしらの対処をするっての。少し考えたらわかるだろうに。

 

「あれ、楓?」

「アキ君?」

 

 今度は誰かと思ったらアキ君だった。後ろに秀吉と雄二もいる。

 ムッツリーニがいないけど……まあ、裏で暗躍でもしてるのかな。

 

「水瀬。俺がいない間に何か変わったことは?」

「さっきBクラスの連中が補給妨害のために入ってきたから引導を渡しといたよ」

「ふむ、何かしてくるとは思っておったが……」

 

 雄二は「お前を待機させといて正解だった」と言うと、アキ君と秀吉に協定のことを話した。何だかんだでまた瑞希が勝利の鍵なんだね。

 うーん……試召戦争に関する一切の行為を禁止する、というのは引っ掛かるなぁ。

 相手は腐ってもBクラス。さらに腐ったキノコが代表でもDクラスよりは格上。そう簡単に上手くいくとは思えないんだけど……

 

「まあ、念のためにペンや消しゴムの手配はしといたら?」

「おう。今回はお前がいたから阻止できたが、また同じことがあってもおかしくないしな」

 

 さてと、疲れたことだし卓袱台に突っ伏していよう。眠たくて仕方がない。

 

 

 ★

 

 

 あれからさらに数分後、誰かにボコられて気絶したらしいアキ君が運ばれてきた。もう目を覚ましているけど。

 雄二によれば戦況的には一応計画通りとのこと。今は彼がさっき結んできた協定によって休戦中となっている。続きは明日か。

 ただ、被害は少なくなかったようで戦力は結構削がれていた。

 

「…………(トントン)」

「お、何か変わったことはあったのか?」

 

 いつの間にかムッツリーニが雄二のそばに戻っていた。どうやら情報係のようだ。

 彼の報告によると、Cクラスが試召戦争の動きを見せているとのことだった。

 漁夫の利でも狙うのかな、と思ったけどタイミングが良すぎる。なぜならここでCクラスに協定を申し出ればBクラスとの協定が破られてしまう。あの協定の内容にはこうもあった。

 

 試召戦争に関する一切の行為を禁止する、と。

 

「待った雄二」

「ん? どうかしたか?」

 

 すぐにCクラスと協定を結びに行こうとした雄二を引き留める。

 BクラスとCクラスが通じているかまでは確信できない。でも、Bクラスと協定を結んだ矢先に動きを見せたCクラスは明らかに怪しい。

 とりあえず私の推測を雄二に伝える。推測でも頭に入れさせといて損はないはずだ。

 

「なるほどな……わかった。そういうことなら上手くやっておこう。それと秀吉も念の為ここに残ってくれ」

 

 教室には私と秀吉が残ることになった。私は教室から出ない宣言をしているので当然だが、秀吉に関しては万が一の作戦に支障が出るとか。

 アキ君達が出ていったところで、私は秀吉に話しかけた。

 

「秀吉」

「ん?」

「昨日はありがとね」

 

 まずは感謝の言葉だ。効果があったかはわからないが、瑞希の料理によるダメージで生まれたての子鹿みたいになっていた私を介抱してくれた。自身がダメージを負っているにも関わらず。

 秀吉は私の言葉を聞くと軽く微笑んだ。……心なしか頬が少し赤く染まってるようにも見える。

 

「人として当然のことをしたまでじゃ」

 

 まあ、そうなんだろうけど……それにしてはかなり積極的だった気がしないでもない。

 

「今度お弁当でも作ってあげるわ」

「むぅ……そこまでしてもらう必要は……」

「女子からの好意は受け取った方がいいよ?」

「……ではお言葉に甘えようかのう」

 

 商談成立ってとこかな。秀吉の好みがわからないのが問題だが……そこは運に任せましょう。

 

「戻ったぞー」

 

 そう言って教室に入ってきたのはついさっき出ていった雄二達だった。

 皆の様子を見る限り疲労はしていない。ということは――

 

「――罠だったんだね?」

「ああ。お前の推測通りだった」

 

 Cクラスに行ったのはいいが、雄二が口を開きかけたところで教室の奥に根本がいるのをムッツリーニが見つけたことで難を逃れたらしい。

 この日はそのまま解散となった。時間的にも無難だしね。……お茶でも買おう。

 

 

 

 

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