シン・アスカの……   作:発光体(プラズマ)

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シン・アスカの述懐

あの大戦――というよりは、もっと違う何か。

 

今はいわゆる「メサイア戦役」と呼ばれる数か月の激動の時期から2年ちょっとが経った。

 

俺、シンアスカは今もZAFTに居続けている。

 

仕事は当時から少なくなったかと言えば、これは違う。

どちらかと言えば自分たちから戦場に向かっていたあの頃と違い、今は突然現れる賊だとかへの対処でイニシアチブが無く、ハードになっていると言っていい。

 

だっていうのになんで退職を志願しないのだろうか。

こんな疑問を覚えたのも一度や二度では……なんてことはないんだ。

 

一度自問自答した時、答えは出ているから。

 

世間では「ラクス派に尻尾を振った」だとか「戦闘をすることに快感を覚えたんだ」「本当の正義に目覚めた」とか言う声もあるけれど、正直なところ、そんなたいそうなものじゃない。

 

メサイア戦役が落ち着いた頃、戦没者名簿を見た。知ってる人の名前、アカデミーの知り合いの名前、ミネルバクルーの名前、そして親友(お前)の名前があった。

 

俺はその人たちのことを何から何まで知ってたわけじゃない。けれど、その人たちが守りたかったものがあったのは知ってたから。

 

自分が戦えるうちは戦わなくっちゃ、って。そう思った。

 

もう一人の親友は「アンタが背負い込むことはない」って怒った顔で言ってくれたけど、別に背負ってるわけじゃない。いつかちゃんと言葉にして、伝えられるといいとは思うんだ。優しいアイツはまた怒るかもしれないけれど。

 

死んでいった人たちの代わりになれるとも、その人のぶんまで戦えるとも思ってない。

 

そんな風に自分を大きく考えるのはやめた。

 

だけど。

 

その人たちが守りたかったものが、自分と同じだったと気づけて、自分が独りじゃないと分かったから、何処かで、そして隣で戦う別の自分を独りにさせたくないって思ったんだ。そして、自分が独りになりたくないと思ったんだ。

 

お前はどう思う?「お前らしい」と言ってくれるか?それとも「情けない。もっと気を強くもて」って叱咤するか?

 

今はもう、俺には分からない。

 

俺もいつか戦うのをやめる時が来るだろう。どんな風にかは分からないけれど。

もしかしたら歳をとって体が上手く動かせなくなるまで続けるかもしれない。

もしかしたら気持ちが変わって、戦うことをやめたくなるかもしれない。

もしかしたら――これが一番ありそうだ――どこかの戦場で死んでしまうかもしれない。

 

けどまあ、その時まで俺は戦うよ。

 

こころざしまで持っていけなかったのはすまないと思う。けど、俺は俺だから。

 

じゃあ、また来るよ。レイ

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