大洗"学園"の、ある自動車部員の物語   作:けんとん

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予定通りに投稿できなくてすいませんでした!!!

おまたせしました!
8000UA、お気に入り50人ありがとうございます。

<注意>

今回はネタ要素が一切ありません。


第十六話 見守る2人と歩み出す8人と5人

日が完全に海に沈みきった時、大洗病院のある病室に、達也はようやく到着した。

 

 

 

「親父っ!大丈夫か!?」「…生きてはいるさ。安心しなさい」「よかった…」

 

 

達也にとっての父親ーー 片山 義則はベッドの上にいた。

 

その右足は包帯で固定され、シーネと呼ばれる足首が曲がらないように固定するための道具で固定されていた。

 

それ以外はーー肘、膝、それに顔にいくらかうち傷のあとが見られた。だが容体は安定しており、意識もハッキリとしているようだ。

 

 

「レースでクラッシュしたって母さんから聞いてな。戦車道の試合会場から飛んできたよ」「そうか。俺はそんなに大事には至らなかったがな」「骨折しておいてどの口が言うんだよ」

 

 

 

父親ーー 義則の診断結果は右足の外くるぶしの骨折であった。医学的な用語で言うならば、外果骨折と言うものであるらしい。

 

 

 

「…幸いにも意識ははっきりしてる。来週の火曜にすぐ手術があって、元気になるまで2か月はかかるかな」「…2か月か」

 

 

しばらくはレースにも出られない。どんな言葉をかければいいのか分からない。

 

 

「でもな、達也。車でクラッシュした割にこの怪我で済んだんだ。少なくとも治る怪我だから、お前はそんなに心配しなくてもいいさ」

 

ーー親父らしい言葉だった。

 

 

「そっか。今は安静にしててくれよ。…でも、元気そうでよかったよ」「とっととリハビリに向き合って退院してやるから、お前はお前のやるべきことに力を注げよ」

 

親父が続ける。

 

 

「…今は戦車を整備してるんだってな。母さんから聞いたよ。そのノウハウを車にも生かせるように、吸収できるところは吸収しなよ」

 

 

「ありがとう。…もうすぐ面会時間終わるから、今日はこれで」

 

「ああ、おやすみ。母さんが病院そばの民宿取ったらしいから、すぐに連絡してやりな」

 

 

「じゃあ…おやすみ」「おやすみ。おつかれさま」

 

 

 

 

牧人はドアを閉めた。

 

ふと隣の病室の名前が目に入る。

 

 

冷泉 久子

 

 

「…大丈夫なんだろうか、冷泉さんのおばあさんは」

 

 

======

翌朝。

 

「じゃあ親父、俺は学校に戻るよ」「義則さん、これでしばらくは禁煙できそうねぇ」「ギクッ」

 

 

 

母親と一緒にもう一度父親の顔を見て、そして2人で病室を出た。

 

しばらくは予定が埋まって会えなくなるだろうが、ここまで元気なら心配しなくても大丈夫だろう。

 

 

 

「…あっ」「…あっ」

廊下で、IV号の乗員のうち3人ーー 西住さんと秋山さん、そして五十鈴さんとばったり会った。

 

 

「…私は先に家に帰ってるわ。部活、がんばってね」「ちょっ、母さんーー」「生活費は大目に振り込んでおいたから。じゃあ」母親はそそくさと帰っていった。

 

ただ1人とりのこされた達也に対して、

 

 

「あのー…」「先ほどの方は」「片山殿の母上なのですか」3人がそう聞いてくる。

 

 

 

「…ああ。ちなみにうちの親父は足の骨折だったけど、それ以外は元気そうだったよ。2か月経ったら復帰できるって」

 

「それは良かったであります!」秋山さんがそう元気に返してくれたが、

 

「…でも、冷泉さんのおばあさんがーー」西住さんがそう言いかけた所で、

 

 

 

 

「いいからもう帰りな!いつまでも病人扱いするんじゃないよ!」

 

 

 

隣の病室から、元気なーーいやちょっと元気すぎるだろう老婆の声が聞こえてきた。

 

 

 

「…どうやら、元気みたいですね」そう苦笑いしながらつぶやいた。

 

 

===

 

そのままの流れで、達也も冷泉さんの祖母ーー 冷泉 久子さんの病室におじゃました。

 

 

 

 

「あんたたちもこんなところで油売ってないで、戦車に油指したらどうなんだい!?」

 

「…ふふっ」思わず笑ってしまった。

 

「そこで笑ったの!誰だい!?…というより男か?この子が男を連れてくるなんて明日には槍でも降ってくるかねぇ」

 

「ははは… 紹介が遅れました。片山 達也です。大洗の男子自動車部の部長ですが、訳あって今は戦車を整備してます」

 

 

「あら、あの片山さんの息子かい。そんなら尚更とっとと車に油さしてもらわないとねぇ」

 

 

大洗では親父ーー 片山 義則はけっこう名が知れており、地元の星として有名であった。

 

 

「はい。すぐにでも戦車に油さしに行きますよ」

 

 

 

 

「じゃあおばあ、また来るよ」

 

冷泉さんはそう言うと、病室を後にした。次いで秋山さん、武部さん、五十鈴さんも病室を出て、隊長コンビが残された。

 

2人が病室から退出しようとするとーー

 

「…あんな愛想のない子だけどね、よろしく。達也君も、よろしく」少しさみしそうな声で、窓の向こうを見ながらそう言った。

 

 

 

『はい』声をそろえて、隊長2人はそう言った。

 

===

 

翌日。月曜日。

 

「いっけね!遅刻する!」どうやら寝すぎたようだ。

 

 

 

達也が学園に登校してくるや否やーー 整備隊の面々、それに風紀委員の委員長に囲まれた。

 

 

「達也!連絡よこさないから心配したんだぞ!」「あのあと何かあったんですか!?」「お父さんは大丈夫だったんですか!?」「ちょっと!あなた遅刻ギリギリよ!それよりもこの男子をなんとかしてよ!」

 

 

「…あ」

 

 

うっかり、自動車部の面々に何も連絡をしなかったことを思い出した。

 

 

 

「すまない。色々ありすぎてすっかり忘れていた。…親父は骨折しただけで大丈夫だよ」「そうですか、なら一安心ですね」

 

 

「…あ、俺の車は?」最重要事項だ。あのフルチューンされたスイスポがなくなったらそれこそ大騒動だ。

 

 

「安心してください。ちゃんと俺達が」「いつものガレージに」「入れときましたよ」

 

 

…ああ、こいつらは最高だ。

「色々ありがとうな。本来なら俺がしっかりするべきなのに…」そう言いかけた所で、光が言った。

 

 

「達也。俺達だってなんでもできるんだぜ?だから安心しなって」

 

 

「…面目も立たないな」

 

 

「…はぁ、片山君、今日は珍しく遅刻ギリギリだったわね。皆の手前、セーフにしといてあげるわ」やりとりを見ていたおかっぱの子ーー園 みどり子が口を開いた。

 

 

「恩に切ります、園さん」とだけ返しておいた。

 

===

 

その日のお昼休み。

 

整備隊の面々は学食の一角を占領してミーティング、もとい、ついおとといの試合後の整備について達也に説明し、達也は今までのいきさつを説明していた。

 

 

「…というわけで全車両整備は終わってるよ」「分かった。皆、ありがとうな。今日の昼飯代は俺が負担してやろう」

 

 

『ゴチになります!』こいつら元気だな。

 

 

「…それにしても達也、ヘリから叩き落されなくてよかったな」光の言葉に「…ああ」達也は曖昧にしか返せなかった。

 

 

事情を知らない面々は(?)といった顔をしていたが、大初だけは彼女ーー赤星小梅経由で事情を理解していた。

 

 

「…いっそのこと言っていいですか?部長が女嫌いになっちゃった理由」こいつ…

 

 

でも、もういいか。あんなこともあったし。

 

 

「ああ。実はーー」

 

 

事情説明中…

 

 

「…それは部長が悪いですよ」「ウッソだろ!?どう考えてもアイツの方がーー」「正直に言います。女の扱いヘタクソすぎましたね」「ぐはっ」

 

達也のプライドがズタボロにされた所で、大初が口を割った。

 

 

「…1年の2人は知ってるだろうけど、先日の戦車喫茶で殴りかかってきたのが彼女本人だよ」「えっ」「…」研人だけが反応した。

 

「それに」大初が続ける。「うちの隊長もすごい訳ありの人なんだよね。表面上は普通の転校生になってるけど」『えっ』今度は達也と光を含めたを含めた全員が反応した。

 

一息置いて、「ここからの話はオフレコで頼むよ。これも小梅から聞いた話なんだけど」と言い、大初は彼女から聞いたであろう西住隊長の話を始めた。

 

 

===

 

 

 

うちの隊長ーー西住さんは去年まで、あの黒森峰で戦車道やってたんだよね。

 

今の隊長さんーー 名前は確か西住まほさんだったかなーー の元で、副隊長として去年の大会に出てたの。彼女はフラッグ車の車長を務めてた。

 

 

 

でも、そこで悲しい出来事が起きてしまった。その年の決勝戦は大雨の中で試合してて、川が氾濫してたのね。

 

その試合の最中に、黒森峰女学院のある戦車ーー 名前までは思い出せないけどーー が、操縦を誤って川に流された。

 

その戦車には、小梅ーー 俺の彼女ね、あと逸見さんーー さっきの隊長のわけありの子ね、が乗ってたの。

 

 

 

んで、水没する戦車を西住さんは見捨てられず、自分のフラッグ車を放置して、川に飛び込んだの。

 

…結果、小梅と逸見さんは助かった。でも、その行動をとってしまったことで、フラッグ車は孤立してしまった。

 

 

そして、黒森峰のフラッグ車は撃破された。

 

確かその年は、黒森峰の大会10連覇がかかってた年だったかな。でもその優勝を、プラウダ高校に譲ることになってしまったんだ。

 

 

 

 

…当然、西住さんは他の黒森峰の勝利至上主義のクソ共から避難され続けたよ。

 

それは小梅も逸見さんもそうで、10連覇を逃した間接的な戦犯として彼女達にも非難の目は降り注いだよ。

 

 

 

その時の小梅はすごい落ち込んでた。…えっ、ノロけるなって?仕方ねーな。

 

2人は西住さんを支持しつづけた。彼女達にとって、西住さんは命の恩人だったからね。

 

 

 

…しかし、今の状況を見てもらえれば分かると思うけど、西住さんは批判に耐え切れず、とうとう転校してしまった。

 

そしてウチに来て、おそらく俺達と同じように生徒会に脅されたんだろう、今年から復活する戦車道を履修した。

 

 

 

それから西住さんはすごいイキイキしてる。戦車道を戦争のようなものとしてではなく、皆で楽しむスポーツとして、楽しんでる。

 

 

===

 

 

「…ふぅ。とりあえず俺なりに整理するとこんな所かな」大初が区切る。「まさか」「そんなことがあったなんて」「知らなかった」「…」面々は神妙な面持ちになっていた。

 

 

大初が再び口を開いた。

「部長。今の俺達にできることって何だと思います?」「何だ?言ってみてくれ」

 

 

 

「西住さんの新しい戦い方、皆で手を取り合って笑って終われるような戦い方を全力で支持すること。それができるような整備を俺達がすること」

 

 

 

 

「…そうだな。よしお前ら、これからはより一層丁寧に整備するぞ!あと俺も積極的に整備に参加していくぞ!」

 

 

 

『了解!』

 

 

 

 

勝利至上主義の戦車道よりも、皆が笑って戦えるような戦車道。

 

それを支援することが今の俺達にできることだ。

 

 

 

 

大洗学園の食堂に、元気のいい7人の男達の声が響いた。




<はじめに>

予定時刻より投稿が遅れてしまってもーーーしわけありませんでした。

主な遅延理由としては

・通院
・謎の腹痛
・初代Half-Lifeがおもしろすぎるのが悪い

の3本立てです。


<父親のケガ>

描写をがんばってみましたが、この怪我は実は筆者がつい1か月半前に起こしてしまったバイクの転倒事故での怪我をモチーフにしています。

ちなみに筆者はすでに退院しており、激しい運動以外であれば日常生活のそれを取り戻しています。

車やバイク、自転車を運転するときは皆さん注意してくださいね!!!


<そどこ初登場>

まだ今回は顔見せ程度です。


<みほの悲しい過去>

あんなかわいい子に重い話を語らせたくなかったのでリア充に語らせましたが爆発しろトークに脱線しかかりました


<おわりに>

次のおはなしはネタ要素400%で書くので覚悟してください。


<次回予告>

男物の水着って圧倒的に少ないよね

07/04 12:00 予定
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