※メインヒロインの梓も出てきません
※エリカの性癖がちょっとアレな感じになってます
ー男子自動車部が、戦車道の戦車の整備をするのが決定してから、数日後。
「はぁ?まだ戦車は無いだって!?」
「言ってなかったか。戦車はこれから探す、と」
生徒会室の応接スペースで、テーブルの上に戦車道のレギュレーション資料を広げながら、
事の発端は至って単純である。戦車道をするには戦車が必要であるが、今年"から"戦車道を復活させる手前予算はそうは割けない。他の選択科目もあるのだ。
したがって、かつて大洗"女子"学園で使用されていた旧式の戦車を探す、ということになる。
しかし、達也はてっきり戦車は生徒会が手配していると踏んでいたのでー
「まったくお前たち生徒会は…順序ってものがあるだろうよ!」
「そんなもの知るか!部費がどうなってもいいのか!」
「うぐっ…これだから女は…」
ーこの始末である。
その様子を、杏と柚子は少し呆れ気味に見ていた。
「かーしま、それぐらいにしときなよ。」「会長!でも…」
助かった。
「…そういえば戦車っていつ探すんですか?生徒会長さん」
「ああ、受講者のみんなを数日後に集めるからね。その時に探すよ」
「…もし受講者の数が、見つかった戦車の数より多かったら、どうするんですか」
ふと思った懸念を、思わず口走る。
刹那、
「あー、ジャンケンででも決めるか。」
…助かってなかった。なんて考えをしてやがるんだ。アレか。広報がアレだから生徒会長もこうなってしまうのか。
しかたなく生徒会室にいるもう一人の生徒ー 小山さんに助けを求める目線を送ると
「……」
この人たちにそんな理論は通じないからとっとと諦めてください、このあと私達まだ業務あるんですから、って顔をしていた。
(あーはいはい俺が悪かったですよ俺の考えが浅はかでした!ごめんなさいね!)と声を荒げて言う事もできず、結局戦車探しも自動車部が手伝うハメになってしまった。
「…失礼しました(半ギレ)」
「おい!会長の前でなんだその態度h」
ガラガラ…ピシャン。
「はぁ、こんな自分勝手だから女子は苦手なんだよなー…」
脳裏に、まだ俺が中二病を発症していた時に引き起こし、巻き込まれてしまったトラウマがよみがえる。
===
「…ごめんなさい。私、もうあなたとは…」
中学3年、夏。初めてできた1歳年下彼女とのデートの帰り際、俺はいきなりフられた。
彼女"だった"その女子は、目つきが鋭いが間違いなくかわいい部類に入るであろう、その時はまだ銀髪を1つしばりにしていたー逸見 エリカ。
黒森峰女学院に進学し、戦車道を履修し、かつての仲間だったみほと決別し、ぶつかり、分かりあい、助け合った少女ーの3年前のそれである。
俺の一目ぼれで、俺の方から告白してOKをもらった。
それなのにー
「なんでだよ…!なんで…!」
彼女の口から出てきた言葉に、俺はすぐに返事が返せなかった。
「だって達也さん、自動車のことばっかりじゃないの!駅からデパートまで散歩する時も、ファミレスでランチにハンバーグ食べてる時も!ゲーセンでもプリクラ撮るよりレースゲームばっかりやってて、つまらないわ!」
思えばそうだったかもしれない。ずーっと、ス○キの自動車はバイクに比べて大人しすぎるからつまらないとか、ミツ○シの車コストパフォーマンス最強説とか、ニッ○ンのスポーツカーは諭吉さん1000枚でも買えないとか…
でも、幼少期から車が好きだった俺にとって、
俺の趣味を否定された。
俺の好きなことを否定された。
俺の生きがいを否定された。
許せなかった。
俺の中で、何かが冷めたような気がした。
同時に、歪んだ考えが浮かんでしまった。
「…女って、みんなそんなんだよな。自動車の良さなんて、分かってくれないんだよな。 …じゃあ、女は、嫌いだ!お前も、大嫌いだ!!」
「えっ!? 私、別れようって言っただけで、別に嫌いだなんて…」
「うるせぇ!もう女は敵だ!この自動車の良さを分かってくれない女なんて、敵だ!逸見、とっとと俺の目の前からいなくなれ!さぁ、早く!」
「…達也、さん」
「名前も呼ぶな!何も言わずにいなくなれ!このクソ女が!」
「…!」
結果、俺はその女子を泣かせてしまった。
それから、俺はクラスの女子、いや校内の女子と距離を置くようになった。俺の趣味を否定するから敵だ。近寄るのすら嫌だ。
そして受験期を迎えー
「…無い!無い!なんで!?」
第一志望だった、自動車部の強豪高であった男子の工業高校の推薦入試に、落ちてしまった。
ショックだったが、第二志望で学力的には余裕があった大洗学園ー 3年前から共学化し、男子の自動車部が新設された学校には合格していた。
「まぁいいか、自動車部はあるし…」
だがこの時俺は、ある決定的な法則に気が付かなかった。
共学化した 元女子高は 圧倒的に 女が強いということ
===
「はぁ…どうして今思い出すかなぁ、あのクソ野郎のこと」
俺、片山達也が女子が苦手になった理由、そして最近まで女子高だった大洗学園に入学した理由。
逸見エリカ、全てはあの女のせいだ。
ーだが、彼女は勉強はそこそこできるようで確か黒森峰"女学院"に進学していた筈だ。
ーやはり、許せない。
===
「今日の練習はここまで。明日は練習は休みとするが、時間のあるものは各自トレーニングに励むように。礼」
『お疲れ様でした!』
黒森峰女学院に、凛とした声が響き渡り、ゆうに100人はいるだろう戦車道履修者が元気に返す。
西住 まほ。
高校戦車道ーいや、戦車道についてある程度知っている者ならその苗字を知らない者はいないであろう、西住流次期家元の娘であり、黒森峰女学院の戦車道の隊長。
凛とした顔つきによく通る声、ひとたび指揮を取れば冷静な判断によってチームを勝利に導く、絶対的存在。
故に戦車道履修者のみならず、他の黒森峰の生徒からも高い人気を誇っている。
一部では彼女を性的な目で見る女子生徒の集団も存在しているとかしないとか。
隊長の解散命令に伴い、ぞろぞろと帰宅の準備を始める隊員たち。明日が久しぶりの休みなのだ、足取りはいつもの練習後とくらべて軽く、大半のものが笑顔である。
ーだがその中に、浮かない顔ーいや違う、するどい目つきをした銀髪の女子がいた。
逸見エリカであった。
「隊長、お疲れ様でした」
「ああ、エリカ。食事をとった後、私の部屋で来週の練習試合に向けて戦術会議をするぞ」
「はい」
エリカの顔がほころぶ。
「…エリカ、お前、何か嬉しいことでもあったのか?珍しく笑っているぞ」
「申し訳ありません、今日の夕食の献立がてっけんハンバーグだったのでつい」
だがこれだけが理由ではない。
「そうか。では20時に私の部屋に戦術書一式を持って、来い」
「分かりました。」
そう言うと、まほは宿舎に戻る。
一人、戦術書を取りに書庫に行っていたエリカは、書庫に着くと同時に
「ふふ…ふふふ…今日も隊長のために…隊長の部屋に…ふふふ…」
と、どこぞやの重雷装巡洋艦に改装された、姉妹艦のことが大好きな軽巡洋艦が言い放ちそうな、道端で見かけたら通行人に間違いなく避けられるような、そんなセリフを言い放っていた。
彼女もまた、心に深い傷を負ってしまって、男が嫌いになっていた。
ー否、女性しか愛せなくなっていた。
===
因みに黒森峰の学食は、400円という圧倒的な安さで主食に汁もの、メインのおかずに小鉢が2つとサラダバーが付くというなかなか豪華なものである。しかもライスと味噌汁はおかわり自由。
そしてハンバーグであるが、黒森峰女学院の料理科の生徒たちが研究を重ねた結果生み出された、その名も「てっけんハンバーグ」というものである。
これが、ハンバーグの中から肉汁があふれでてきて非常においしい。
事前に申請して200円をプラスすれば、なんとハンバーグがダブルになり一方はチーズインハンバーグになるというのだから、激しく体を使う運動部の面々には重宝されている。
もちろん激しい戦闘を行う戦車道履修者も例外ではなく、大半の生徒がダブルを注文しているが…
ある日。
「ねぇ、このてっけんハンバーグのダブルについて、ちょっと聞きたいのだけれど」
「はい、どうされましたか?」
料理科の担当生徒が返す。
「200円払えばダブルになるのよね?」「はい、ハンバーグ2個になります。」
「じゃあ、600円払ってクアトラブルにすることって、できる?」「はい…?」
「だから、追加3つ分のお金を払うから、ハンバーグを合計4つに…」「あの…」「何よ」
「これ、結構カロリーあるんですよ?そんなに食べて大丈夫なんですk「だって!おいしんだもの!」
「…できなくはないですけど、知りませんよ?私」
「やったわ!これで今週末は天国だわ!」
…その週末の夜、黒森峰女学院の学生寮の脱衣所に設置された体重計の辺りから、悲痛な叫びが聞こえてきたそうな。
<片山部長は女子嫌い>
男のロマンを否定する女子。女の楽しさを否定する男子、といった感じですかね。そして初恋だった2人は心にキズが。
<エリカは女子しか愛せない>
現段階では完全に女子しか愛せなくなってます。後々救いのある展開にしていこうと思っておりますので、どうか待っていてください。
<車ネタ>
だいたい筆者の思ってることを代弁させてます。
<てっけんハンバーグ>
元ネタは静岡に本店があるチェーンのハンバーグレストラン、さわやかのげんこつハンバーグです。アレは本当にうまい。