大洗"学園"の、ある自動車部員の物語   作:けんとん

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やっと戦車を動かせるまで話を進ませることができました。

※今回R-15要素はありません

※インターネットで話題になっている物事のネタが今回多いです

※戦車道の試合の描写がかなり特徴的なことになってます


第六話 フェラーリの最安価格は2450万円

「ふへぇ…だめだよ梓ぁ…そこは…」

「ねぇ、もう一発ぶん殴って目ぇ覚ます?この変態」

「すいません!許してください!何でもはしません!」

 

 

日曜日、午前8時。

なんとか全車両の整備も間に合い、全ての戦車たちがいつでも戦えるという状態に仕上がっていた。

 

ちなみに、燃料は自動車部の備品にあるガソリンーーしかもハイオクだーーを借用(請求時に少し吹っかけてやろう、と光先輩が企んでた)して動かし、

練習用の弾薬ーー 弱装弾、演習弾ともいうものは、秋山先輩と会長がその手から手配してきたものらしい。

 

そしてグラウンド前には、先日戦車を一緒に探していた18人ー

 

IV号に乗車する、4人。

 

八九式に乗車するーー おそらく勝負服なのだろう。バレーのユニフォームに身を包んだ4人。

 

38(t)に乗車する、3人。

 

三突に乗車する、4人ーー 今日も先日見たのと同じような恰好だーー と、

 

自分たちが整備した、M3Leeに乗車する、さっきまで変態をしばき抜いてきた、6人。

 

水差し野郎になっていた、今は体中をロープで縛りつけられている変態ーー でもちゃんと整備はしてくれていたーー牧人と、俺が整備した戦車が、

他の4台と共に並んでいた。

 

 

4日前まで埃をかぶり、泥にまみれ、さびついて、フンのにおいがした戦車が、

 

戦車道における戦闘に必要なチューンを施され、すぐにも動かせる状況で並んでいた。

 

 

それまで戦車を整備していた2人にとっては、圧巻の光景であった。

 

「しかし、改めてみると、俺達がんばったんだよな」

「ああ。でも、今からこれが本当に動くとなると、俺はもっとワクワクしてくるぜ!」

 

 

自分たちが、ほぼ1から整備した戦車が、目の前で息を吹き返し、動き出す。

その瞬間まであと少しであった。

 

 

 

「あれ~?わんちゃんは日本語喋っちゃいけないんですよぉ~」

「ワン!ワンワン!…流石に許してくれよ、もうすぐ自衛隊の人達来るんだし」

「仕方ないなぁ」

 

 

きょうのわんこ、明日もお楽しみに。

「もういいよ…さすがにこれは俺でもちょっと引くわ」

 

 

ちなみに今ここにいる整備担当者は4人しかいない。

流石の生徒会もそこまで鬼ではなかったのか、統括の2人を除いた10人は午後2時から集合、となっており大半のものが眠っていた。

研人と牧人はせっかくなので、そのまま残っている。

 

 

 

すると上空から、こちらに近づいてくる1機の輸送機が確認できた。

皆がその方向を向くとーー

 

 

 

戦車が、降下してきた。

 

 

パラシュートによって落下速度が落ちているとはいえ、戦車は戦車だ。かなりのスピードで突っ込んできたその戦車は駐車場に着地しーーー

 

 

学園長のフェラーリ…ではなく、隣に停車していた学園艦の所有物である社用車ーー トヨタ・サクシードバンに突っ込んだ。

10歳の少年が横綱に挑むような重量差があったので、当然サクシードバンは大破。

 

「あーあ」

 

「まぁ学園長の車に当たらなかった分、いいんじゃない?あの車高そうだし」

 

こんなのんきな会話をする牧人の一方で、それ以外の整備士3人は冷や汗ものだった。

 

 

 

このフェラーリのお値段なんと!新車価格で3000万円の所、特別セール価格を適用して…

 

なんと!

 

5000万円でのご提供となります!

 

 

プレミアもののフェラーリだった。

 

 

 

===

 

「あの自衛隊のお姉さん、きれいな人だけどちょっと怖いよな」

 

「確かに」

 

 

戦車に乗り込む子たちーー 乗員を前に、あいさつをしていた蝶野 亜美教官の話を、整備隊の4人はすこし離れたところで聞いていた。

 

どうやら生徒会長に「かっこいい人が来るよ」と聞いてだまされていたであろう武部先輩ーー 婚活戦士の異名で通っているーー 以外の乗員は、皆真剣に聞いていた。

 

 

「戦車道にはいろいろな流派があるの。たとえば、西住流とかー」

みほの顔が暗くなる。

 

 

「質問です!教官ってモテるんですか!?」

みほをとっさにかばったいい言葉だ。

 

 

大半の者が、武部さんらしい質問だなぁと聞いていたがー

 

「ーーどうやら、あの西住先輩、何か過去がありそうな感じですねぇ」

牧人は少しだけ異質な雰囲気を、感じ取っていた。

 

 

「じゃあ、早速戦車に乗ってもらうわ」

 

 

 

というわけで、まずは戦車を動かすところからだ。

 

 

…といっても、実際に乗るのは女子だ。運転技術どころかクラッチの存在すら理解していないだろう。

 

そこでー

 

 

 

「んで、クラッチを離すときは、速度が出てる時に話すこと。あと、なるべくふんわりと離すようにね」『はーい』「あいー」

 

自動車の運転経験のある研人と達也部長、それにナカジマとみほが、マニュアル車ーーもとい、クラッチ付戦車の駆動方法について簡単に教えていた。

 

 

(ちなみにだが、もし希望があればここを"楽しいマニュアル車の運転のしかた"として、教習部分を番外編として投稿してみようかと思う。)

 

 

「左右の旋回だけど、これは戦車によって運転方法が異なるみたいだから、その辺は実際に運転して慣れてもらわないとな」

 

一通りの動かし方は教えた。とりあえずこれだけやっておけばいいだろう。あとは何人が実際に動かせるかーー

 

 

 

ブロロロロ…「わー動いた!すごい!」「ヒャッホウ!最the高だぜぇ!」

 

 

ガコン!「きゃっ!」

 

続けてガコン!「うわっ…ぜよ」

 

 

 

 

遅れてブロロ…ブロロ…ブロロロロ…「おー小山、やるねぇ」

 

…少し遅れてガコン!「あいっ!?」

そしてドン!ガタガタン…

 

「おいゴラァ!かりな!お前免許持ってんのか!」

「(もって)ないー」

 

konozama 段ボール(中身は空)殉職

 

 

 

エンストなしで一発で発進できたのは、IV号と38tのみだった。

ま、まぁ初めての教習だし、多少はね?

 

 

 

 

 

1時間後。

 

あれから実際に運転してみたいものと逐一交代しながら、グラウンドをオーバルに走る練習をした結果、どの戦車もとりあえずエンストを起こさずに走れるようになっていた。

皆、なかなか吸収は早いようだ。

 

 

 

高所からその様子を見ていた教官から、達也の無線機に通信が入る。

「グッジョブ!はじめてでこれだけ動かせれば上出来ね!」

どうやら教官も、成長の速さを十分に把握したようだ。

 

 

 

これには研人と達也も

「皆さんすごいですね。短時間でちゃんとオーバルに走れてますよ」

「おっ、そうだな。戦車のクラッチなんかは乗用車と比べて荒削りだってのにな」

「そうだよ(便乗)」

 

牧人も含めて、少し彼女たちに感心していた。

 

 

 

 

 

===

お昼休憩を挟んだのち、10人ほど増えた大洗学園の戦車同関係者の前で蝶野教官がこう宣言した。

 

「それじゃあ早速だけど、いまから実戦形式でドンパチやってもらうわ」

…唇の端っこにはちみつのカスが残ってなければ決まったセリフだった。

 

 

口いっぱいにはちみつレモンーー 梓お手製のもので、たくさん作ってきてくれたので先の昼休みの時に他の乗員の皆や教官にもふるまい大好評だったが、まだ余っていたそれを含みながら、牧人が研人に

「ーー問おう、あなたが、私のマスターか」

「ちげーよ、それは聖杯戦争だろ」

「はいはい…何が始まるんです?」

「第三次大戦だ」

 

テンポの良いやりとりをしていた。

 

 

 

 

かくして、第三次大戦もとい模擬戦が幕を開けた。

ルールは戦車個人の殲滅戦と、シンプルなものだった。最後まで生き残れば勝ち。

 

戦闘エリアは、蝶野教官と整備士12人がいる高台から600m半径。

泥沼あり、山岳あり、橋ありと狭いながらも起伏に富んだ戦場だ。

 

ただ、今回は模擬戦。急きょ決まったことであるので、試合の様子を伝える上空カメラなんてものはない。そこでーー

 

 

「おい、ノエル野郎」「墜落させんじゃねーぞ」「させねーよ」

 

 

代わりに昴の私物のドローンを飛ばし、15秒に1枚のペースで空撮写真を送信し、パソコンに接続したディスプレイに表示してもらうことにした。

これなら、大体何が起こっているか、ぐらいの情報は分かる。

 

 

 

いざ試合が始まり、砲撃の音がひとたび大洗の学園艦内にこだますると…

 

「おおお!すげー音だ!」「確かに、これは音圧半端ないですね」「エンジンの音もいいけど、砲撃の音もなかなかだな」「いけー!ぶっ潰してやれ!」

 

12人の生徒たちは、皆テンションが上がっていた。

 

 

 

しかしその試合中、思わぬハプニングが起こる。

「ちょっ…!その画像でストップして!」

「どうしたんですか蝶野教官」

「人!戦闘エリア内に人がいるわ!」

 

突如、緊張感が一帯を包む。

 

 

人は車にはねられるとけがをする。

人は戦車にはねられるとーー考えたくもない。

 

 

15秒後、位置を維持していたドローンから送られてきた画像にはー

「…いない!?」

 

「嘘だろ!そんなことが…」

 

更に15秒後、IV号戦車をとらえる。画像には…

 

「あっ、さっきの子だわ。戦車に乗せてもらってるわね」

「無事だったんですね。よかったー」

「いやーびっくりしたよ。まさかあんなところで生徒がー」

 

 

次の画像が来る。

 

「えっ、IV号戦車が橋の上をはしってるよ!?」

「ツチヤさん…無意識なのかな」

 

 

そして次の画像がやや引きぎみに。

 

橋の前後に、八九式と三突が、38tとLeeが固まって前後を確保し、IV号を包囲していた。

 

「あらら、囲まれちゃってるね」

「俺たちの整備を無駄にすんなよー!IV号!」

 

IV号の整備担当者が、声を荒げる。

 

「いけー!」「やっちまえー!」「根性見せろー!」

 

それ以外の戦車の担当が、嬉しそうに言う。

 

 

 

ーー皆が皆、自分が整備した戦車に愛着が湧いたのか、気が付けばひいきの戦車を応援していた。

 

 

…と、ここで。

 

 

ブルースクリーンが表示された。

 

 

『…は?』

 

「あっ!ごめん!マシントラブルだ!サーバー落ちちゃったよー復旧に3分はかかるかなー」

 

 

新鮮な画像の供給が一時的に止まる。刹那、

「何やってんだよ!スバル!早く直せよ!」「ふざけんな!(半ギレ)」「あーもう滅茶苦茶だよ」「あーめう」「ちくわ大明神」「誰だ今の」「わたしです」「お前だったのか」

「暇を持て余した」

「整備隊の」

『怒り』

観客のボルテージが怒りに変わる。

 

 

「ちょっと待ってよー、俺だって趣味で運営してるんだからさー」

 

 

…3分後。ようやくサーバーが復旧し、送られてきた画像は衝撃的だった。

 

 

なんとIV号とM3Leeを除いて、他の3両から白い旗が上がってーー撃破されていたのだ。

 

「えっ、これって…」

「見た感じ、IV号が全部撃破したみたいだけど…やっちまえー!」

 

「あっ、最後にタイマンじゃん!漁夫の利だー!行けー、Lee!」

「おうよ!決めてやれ、あゆみ!」

 

 

 

15秒後。

 

そこには見るも無残に泥に片方の履帯がハマリ、エンジンブローを起こして黒い煙を吹いたM3が映っていた。

 

「ねぇ、これって…」

「ああ、自爆だな」

 

「なぁーにぃ!やっちまったなー!」

「やっちまったなー!」

「エンジン整備と」

「エンジン整備と」

「履帯修復で」

「履帯修復で」

「2時間コース入りまぁす!」

「入りまーす!」

『…はぁ』

 

 

 

 

「撃破判定、三突、八九式、38t」

 

「自殺判定、M3Lee」

 

「よって、IV号の勝利です。皆、お疲れ様!」

 

 

その後、10人の整備士たちが戦車の帰還に立ち会っていた頃、1年の2人は部車のトラックに整備用品を乗せ、Leeが自爆したポイントまで回収に向かっていた。

 

 

 

 

===

 

「それにしても、あのやられ方はちょっとなー。せめて後ろからあのにっくき生徒会どもをドーンと不意打ちしてやれば勝機があったかもしれないのに…」

「ちょっと言い過ぎ!そんなに言うなら牧人がやればいいじゃない!」

「まぁまぁ。初めてなんだし、仕方ないよ」

「そうだよ!仕方ないよね」

 

ーー珍しく冷めた様子の牧人が放ったグチに突っかかったあやを、研人とあゆみがなだめながらエンジンの点検をしていた。

ちなみに吹いた煙をみんなモロに喰らってしまったらしく、乗員の6人のところどころに煤がついていて…

 

「…あい?」

 

操縦手のかりなだけ、なぜか髪型がボンバーアフロになっていた。

それを発見した牧人が、

「ボンバアアアアアア!!!」元気なシャウトだ。

ー確かに脳筋っぽいところあるよな、うちのかりなも、売出し中のスポーツっ子アイドルの、日野茜も。

 

「…でも、みっともない負け方、しちゃったかな…」

梓が少し悲しそうに言う、

「…いや、みんなよく頑張ってたと思うよ、少なくとも俺と牧人はそう思ってるよ」

「まぁねー。皆、初めてにしてはすごく上手に運用してた、っていうのが僕の正直な感想」

 

戦いを終えた戦車と6人の乗員を称えるように、すらすらと言葉を紡ぐ、専属の整備士。

 

 

 

「それに、これは模擬戦だよ。しかも初陣。これからますます強くなっていくだろうし、最高のチームになっていくだろうから、これから頑張っていこうよ!」

 

 

 

 

『うんっ!』「…うん」

 

 

 

「よし、牧人!ちゃっちゃとやって早くLeeでみんなのところに戻るぞ!」「がってん承知の助よ!」

 

 

 

 

 

 

ーー再び気合を取り戻した2人の整備士の手腕と、それを応援する6人の妖精によって、たった30分でLeeが自走可能な状態まで修復し、予想以上に早く、倉庫の前まで戻ってくることができた。

 

 

 

 

 

 

ちなみに整備終了後、牧人が6人乗りのLeeに飛び乗って

「俺も乗ってみたくなった!一緒に乗せてくれ!ついでにハーレムだ!」と最後の一言が完全に蛇足な発言をしてしまったせいでー

 

牧人は戦車の前方装甲に貼り付けられ、かりなが全力でぶっ飛ばし、研人が軽トラで横から煽って帰る、というリアルマッドマックスごっこをやりながら帰るハメになった。

 

「そのまんま献血センターでもいって輸血してもっとリアルにしてみる?」

「いくら俺が変態でも俺はおもちゃじゃないんだ勘弁してくれ」

「お前は発言をもう少し慎めよB型Rh-」

 

 

===

 

 

「グッジョブベリーナイスよ!これからも精進してね!」

 

『ありがとうございました!』

 

日が傾き、すこしオレンジ色に染まった空を背景に、蝶野教官に乗員全員がお礼をしていた。

 

 

「…それと、この戦車をここまで整備していたのは誰かしら?」

恐らく興味本位で聞いたのだろう。

「はい。私達自動車部員…じゃなくて、専属戦車整備士が直しました!」元気にナカジマが返す。

 

 

「どの戦車もよく動いていたけど、この戦車、整備するのにどれだけ時間かけたの?」

達也は正直に答えた。

「ええと…僕達のIV号は、整備し初めたのが水曜日の午後4時で、完成したのが土曜日の午後11時ですかね」

 

「えっ」

蝶野教官の顔が驚きの表情に変わる。

「そうですね。実作業時間にしてだいたい50時間ぐらいでしょうか。ほとんど1からレストアして、戦車用のパーツを付けたししたので、これぐらいでしょうかね」

 

 

長い沈黙の後。

「あなたたち!スーパーウルトラグレートベリーナイスよ!」と、多分全力で褒めているんだろう、と想像できるであろうアツいルー語で返答をした。

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園の戦車が、動き出した。




<タイトル>
実際の車体価格だそうです。筆者も乗ってみたいなー、フェラーリ。

<INM語録>
日常会話で使える汎用性の高いホモビ語録…これもうわかんねぇなぁ

<きょうのわんこ>
おう、3回だよ3回

<サクシードバン大破>
これはこれでいい車なのですがね…どノーマルの割に車体が軽いのでそこそこ加速性能に優れてるので。

<自動車部withみほが送る 楽しいマニュアル車運転講座>
筆者はMT免許と普通自動二輪免許持ちです。

<エンスト>
様子を表現するのが大変だった(小並感)

<聖杯戦争と第三次世界大戦>
コマンドーがお好き?結構、ではますます好きになりますよ。
某所で拝見したコマンドーとガルパンのクロスSSがとても大好きです。

<ドローン少年>
迷惑行為は犯罪です。真似をしないように。

<戦闘描写>
研人たちからの視点で描いてみました。

<BSOD>
win98とかの時代はしょっちゅう表示されてましたねぇ…

<パッションアイドル>
筆者はみくにゃんと奥山さんが好きです。

<怒りのデスロード>
劇場版公開当初、このようにガルパンが例えられてました。



<次回予告>

お風呂シーンがあります。
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