騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ 作:ポジティブ太郎
これで一章の区切りとさせていただきます。次話以降2章のダンジョン遠征編に入っていきます。
朝日が差し込む早朝。黄昏の館では団員達が、遠征準備に勤しんでいた。
明日は、ついに遠征当日だからだ。
下位、中位団員達が館中を忙しなく行き行き交っている。
「ラウル。この箱はここでいいんですか?」
アルトリアが、一人の青年に声を掛けた。
ラウル・ノールド Lv.4の冒険者。
ロキファミリアの中では、比較的常識人であり真面目と言う印象が強い。
貧乏くじをよく引かされ、何かと苦労している節もある。
「いいっすよ。あとは、僕がやりますから大丈夫っす!」
アルトリアの運んでいる箱を数段受け取って、走り去っていくラウル。
こうまで新人団員であるアルトリアを気遣うのは、入団直後にフィンとの一騎打ちに勝利したという噂による所が大きい。ラウルは、そんなアルトリアに畏怖と尊敬の念を抱いていた。
「どうしましょうか。手持ち無沙汰になってしまいました」
ラウルに仕事を引き受けてもらったことで、アルトリアは暇を持て余してしまう。
ふらふらと屋敷を歩きまわるが、依然としてやることを見つけられない。
ふと、とある一室の前で立ち止まる。人がいるのだろうか。
ドアをノックして入るアルトリア。
「はぁー。これから暫く酒が飲めんのかぁ~。寂しいのぉ……って、あ、アルトリア!?」
ガレスが、一人隠れながら酒を飲んでいた。自身のジョッキに注がれた安酒エールを悲しげに見つめている。
「ガレス。それは、お酒……ですか?」
「そうじゃが……た、頼む!! リヴェリアには、内緒にしてくれんか……!」
「え、ええ。分かりました」
必死に告げ口はしないでくれ、とガレスは請う。
話を聞いてみれば、遠征では常に危険が付きまとうため酒を呑むことが出来ないらしい。
また、幹部としての立場があるため下級団員達に示しがつかなくなってしまうためでもあるらしい。
だから、遠征前に飲み納めを、とこっそり飲んでいた。
エルフの王女として、一滴も酒を嗜まないリヴェリアに今の状況がバレたら非常にマズイという。
酒豪であるガレスとは正反対だ。
「大丈夫です。ガレス酒瓶を取ってくれませんか?」
ガレスが怪訝そうな顔で酒瓶を手渡す。
アルトリアは、酒をグラスに注ぎ口へと運んだ。
そして、ガレスへと笑いかける。
「これで私も共犯です。怒られる時は、一緒に怒られましょう」
「…………アルトリア……」
感動に包まれ、ガレスは瞳に微かな涙を浮かべる。
そのまま、二人は酒を飲みながら談笑する。
話始めて暫く経ったころ、ガレスがアルトリアに提案を持ちかけた。
「アルトリア。今から、儂と酒飲み勝負でもせんか?」
「勝負ですか? おもしろい、受けて立ちましょう!」
酒が少し体に回り、気持ちが浮ついてたのかもしれない。
明日が遠征日なのだという事をすっかり忘れている。
二人は酒瓶に手を伸ばし、酒を口の中に流し込んだ。
「ガレスぅ。私の勝ちのようれすね~」
「ヒック。アルトリアお主……酒豪じゃったか」
二人の目の前には、大量の空になった酒瓶が連なっている。
一本差でアルトリアよりもガレスの方が先に酔いつぶれてしまった。
勝負事になると発揮されるアルトリアの恐るべき執念による勝利だ。
上気した顔で限界とばかりにテーブルに突っ伏すアルトリアとガレス。
「……ガレス。少し、眠たくなってきました……」
「儂も‥‥限界じゃ……」
バタリ、と二人が倒れ込む。
そのまま夢の世界に誘われ、眠ること数時間‥‥。
リヴェリアの雷が落ちて、二人は土下座で謝り倒したのであった。
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日は移り変わって、遠征日当日。ロキファミリアの面々は、白亜の巨塔――バベルの前に集結していた。
団長のフィンが、先頭に立ち声を上げる。
「皆、今回の遠征の目標は未到達階層59階層への進出。だが、その前に一つ『冒険者依頼』クエストをこなしておきたい。51階層での『カドモスの泉』から取れる泉水の回収だ。今回もロキファミリアとしての矜持を持って励んで欲しい」
フィンが言い終わり、サポーター達がせっせと荷物を背負いながら準備を始める。
アルトリアも遠征での自分の立ち位置についてフィンに確認を取ろうとしていたが。
「アルトリア‥‥‥ちょっと、いいか?」
一人の青年が手招きをする。
見覚えのある青年だ。確か、団員たちの食事を作っていた料理人コックだ。
「確かあなたは、料理を作っていた‥‥。どうしたんです?」
「一応言っておく‥‥。食事の事なんだが、あんたメチャ食べるだろ。俺達が汗水かいて作った料理をほんの数分で。だけど、遠征では食事の量は一人あたり決まってるんだ。悪いが少し我慢してくれ」
料理人がアルトリアに忠告する。お前に食わせる飯は無いからな、と。
多少の私怨が混ざってるのは気のせいだろうか‥‥‥?
その言葉に対し、アルトリアは大丈夫です、と言い切る。
「心配は無用です! お腹が減ったらモンスターを食せばいいのです」
「‥‥‥‥‥‥あんた、今なんて言った?」
「え? モンスターを食べればいいじゃないですか、と」
「‥‥‥‥‥‥‥‥はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
仰天し、開いた口が塞がらない料理人コック。
モンスターを食すなど考えている人間は、都市中を探してもいないだろう。
だがアルトリアは、自身が王だった時の戦での糧食不足は、動物を狩りによって殺し、食べることで飢えを凌いでいた。その考えで今回も動くつもりなのだろう。
戦慄し、体を震わせているコックに、アルトリアは一言告げる。
「ですので、私が倒したモンスターの調理はお願いしますね! 美味しい料理期待してます」
「うわあああああああ!! 勘弁してくれーーーー!」
キラキラと目を輝かせながら、懇願するアルトリア。
瞬間コックの悲痛な慟哭が響き渡った。
まるで、日頃からの自身への不幸を心底恨んでいるかのように。
「よしッ! 皆、準備はいいか。遠征開始だ!!」
フィンの一言で団員たちから、気合のこもった叫声が一斉に上がった。
ダンジョン遠征という未知の領域に入る実感が湧いてくるアルトリア。
その顔には、期待と緊張が入り混じった笑みが浮かんでいた。
【ロキファミリア】ダンジョン遠征開始。
これにて一章完結です。次回以降、戦闘メインの話に切り替わっていくと思います。
次話は、ヤンデレエルフ様が登場する(予定)です。
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