騎士王がロキファミリアに入るらしいですよ   作:ポジティブ太郎

9 / 32
今話は普段の2倍の文字数になってしまいました。



第八話 アルトリアvsフィン

夜がまだ明けきらない時刻にアルトリアは起床する。

顔を軽く洗い、髪を結い、身だしなみを整える。

衛宮邸での習慣であった早朝鍛錬のために『訓練場』へと足を進めていく。

『訓練場』は、筋力増強や団員たちの手合わせ、試合のために用いられる事が多い。

アルトリアも昔から、鍛錬を怠ることはなく、むしろ鍛錬によって感じられる

自身の成長がとても好きだった。

 

『訓練場』に来ては見たものの彼女以外はこの場にいなかった。

時間的に起きるには早過ぎる時間であるため仕方ない。

 

「......ふぅ」

アルトリアは一度深く深呼吸をする。鍛錬の前に心を落ち着かせるためだ。

次いで、膝を折り、正座の姿勢になり瞑目する。

精神統一。戦闘において不可欠な能力である集中力を養う鍛錬だ。

 

数分間、経った後、静かに立ち上がる。

訓練用の木剣を手に取り、素振りを始めようとするが、

横から一つの影が入ってきた。

 

「やぁ、アルトリア。こんな朝早くから鍛錬かい?」

鮮やかな金の髪を靡かせ、問うてくる小人族(パルゥム)

団長のフィンだ。

 

「はい。昔からの習慣ですので」

朗らかな笑みを浮かべて言う。

 

「それは.... 前の世界でのことかい?」

神妙な顔でフィンが聞いてくる。

 

「?? .... あっ、はい。そうです」

問いに対し、アルトリアも数瞬、怪訝な表情を浮かべたが相手の意を

理解し返答する。

 

その言葉を聞いたフィンもどこか納得した表情をしていた。

その後、鍛錬を一時休憩して、二人で他愛のない世間話をしていた。

そんなこんなしている内にフィンが話を切り出す。

 

「アルトリア。いきなりで申し訳ないが、今日の正午に僕と軽い手合わせ、

試合をしてくれないか?」

 

「ええ、ぜひお願いします」

アルトリアは二つ返事で承諾する。

 

「ありがとう。では、試合でまた会おうか」

そう告げるとフィンは踵を返し、訓練所から去っていった。

 

(まさか、フィンが私に試合を申し込むとは......

ですが、フィンの強さは直感ですが、

この世界で私が会った人たちの中で一番強い。

相当な修羅場をくぐり抜けて来たのでしょう。)

 

期待と興奮を瞳に宿すアルトリアであった。

 

 

「アイズから聞いた話が本当かどうか、この目で確かめさせてもらうよ。アルトリア」

アイズがあそこまで関心を寄せるアルトリアの実力を手合わせすることで

確かめようと画策するフィン。同時に彼の親指も疼いていた。

危険(・・)を知らせる親指。

この後起こる、異常事態への警鐘を鳴らすかのように。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ロキが朝食を知らせる鐘を鳴らし、団員たちが一斉に大食堂へと集結する。

 

「・・・・はぁ~、鍛錬の後に食べる朝食は格別ですね」

至福の時間を味わうアルトリア。彼女の隣には一緒に食事を取るようになった

アイズが無言でパンを齧っている。

 

「アルトリア、なんだか嬉しそうだ、ね」

アイズが朝食以外で何か嬉しいことがあったのではないか推測する。

 

「はい実は、フィンが・・・・」

アイズに今朝の出来事を話そうとした、その刹那....

 

「団長がなんですって~」

健康そうな褐色の肢体をさらけ出した衣装を着こなす

アマゾネスの少女ーーティオネ・ヒリュテが話に割り込んできた。

顔に満面の笑みを浮かべてはいるものの目だけは笑っていない。

全身から黒い瘴気のようなものが漂ってすらいる。

 

「「!?」」

アルトリアとアイズが異様なまでの彼女の圧力(プレッシャー)に肩を震わせる。

 

その時、

 

「ティオネやめなよ~。ごめんねアルトリア、ティオネはフィンにぞっこんだから

アルトリアとフィンの関係が気になってるみたい」

姉ティオネの暴走を抑えながら快活な笑みを浮かべる妹のティオネ。

事情を話せば、暴走も止まるかもと声をかける。

 

アルトリアもその言葉を了承し、事情を話した......

 

 

 

 

 

「..........というわけです」

朝、訓練所で鍛錬をしている際に偶然フィンに出くわし、彼から試合を

申し込まれたこと。一通りの事情を話す。

 

「えっ、嘘っ!。 団長が試合を....」

 

「信じられない!」

入団したばかりの彼女に団長であるフィン自ら試合を申し込んだという事実が

信じられず、ティオナとティオネは姉妹揃って驚嘆の声を上げる。

Lv.1とLv.6の圧倒的にかけ離れたレベル差。

レベルの差は絶対的だ。

普通に考えればアルトリアとフィンでは勝負にすらならない。

だが、アイズの考えは違った。

 

(ダンジョン一階層でのアルトリアの動きは、私より速かった。

スキルの力も凄かったけど、あの熟練された技と駆け引き.....)

 

先日の戦闘の回想にふけるアイズ。そして、彼女自身が目にした

アルトリアの紛れも無い実力。彼女の実力は、自分達ーー第一級冒険者と同等

もしくはそれ以上であるとアイズは確信する。

 

「まぁ、とにかく団長に手は出していないのよね。

団長は私のものなんだから....」

と一人考えこむアイズを他所に先ほどの誤解が解けたティオネが

フィンへの愛を語り始める。

その様子にアルトリアとティオナの二人は苦笑する。

 

 

食事を済ませたアルトリアは、自身の前にそびえ立つ食器の塔を片付け、

フィンとの試合の準備をしようと大食堂を後にしようとしたが、

アイズに肩を叩かれ引き止められる。

 

 

「アルトリア。緊張しないで、フィンは入団したばかりのアルトリアには、

手加減(・・・)してくれるはずだから」

緊張を解そうと発せられた言葉。

だが、

 

「本気で言っているのですか、アイズ。

勝負の最中に手を抜くなど無礼ではないですか!」

アイズの言葉に対し、先ほどの柔らかな雰囲気とは異なり、

鋭い視線をアイズへと向ける。

負けず嫌いであり、また真剣勝負を好むアルトリアにとって

相手は誰であり手を抜く、抜かれるなど論外だ。

騎士たる彼女にとっては最大の屈辱である。

 

「っ!」

その言葉を聞き、アイズは目を見開き、驚愕する。

同時に彼女の誇り高き姿に感服する。

先ほどの言葉に少しの後悔を覚えた。

 

「ごめん、ね。 アルトリア。私はただアルトリアが緊張していると思って

さっきは言ったの。 フィンとの試合がんばって、ね」

先ほどの言葉の謝罪と訂正、そして試合へと臨む彼女へ応援の言葉を送る。

 

「ありがとうございます、アイズ。

先程は私も言いすぎてしまいました。すみません。

では、行ってきます」

声援を送る彼女への礼と先程は自分にも非があったと謝罪する。

 

そして、少女ーーアルトリア・ペンドラゴンは、【ロキ・ファミリア】団長

フィン・ディムナとの試合に臨む.......

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やぁ、来たねアルトリア。では、始めようか。」

フィンが木製の槍を構える。木製であるのは、試合とはいえ

刃が付いていれば当たれば大怪我や死に直結するからだ。

 

「はい、はじめましょう。」

アルトリアは、自身の後ろを一瞥する。

そこには、主神であるロキやアイズや幹部たちを含めたファミリアの団員達が

見物に来ていた。

団長自ら試合をする、ましてその相手が新入団員ともなれば気になるのは当然だ。

 

 

ロキの「萌え萌えパワーやアルトリアた~ん」という声援?は聞こえていないふりを

しながら、アイズ達の声援にのみ応え、アルトリアも木剣を構える。

そして、互いに指定の位置につく.......

 

ロキが試合開始の合図を出した。

瞬間、フィンが自身の俊敏を最大限に活かした突きがアルトリアの腹部を狙う。

レベル差を無視した一切手加減のない一撃。誰もが勝負の決着が着いたと思われたが....

アルトリアは一切ダメージを負ってはいなかった。

アイズを除く、周りの者達は何が起こったのか分からず呆然とする。

フィンは、瞠目する。

アルトリアは突きを受ける間際、木剣でフィンの槍を横から叩きつけ受け流したのだ。

その恐ろしき反応速度と技にフィンは予想以上だ、と戦慄する。

 

再びフィンが仕掛ける。上段突きと下段突きを織り混ぜた連続突き。

全てを見切って防ぐのは至難の業だ。

だが、全ての突きを寸分狂わぬ位置で防ぎ弾き返す。

そして、反撃とばかりにフィンの体に強烈な蹴りを叩き込む。

 

 

「~~~~っ!」

フィンは決河の勢いで吹き飛んでいく.....

 

観戦した者達は目を疑った。

入団したてのLv.1のアルトリアに団長であるLv.6のフィンが歯が立たない光景に。

 

フィンは立ち上がり、再び槍を構える。だがその表情には、試合前の

余裕の色は消えつつあった。

 

お互いに最後の一撃の機会を伺う。

アルトリア、フィン両者同時に動き出す。

フィンは最初に加えようとした腹部への突きを繰り出さんとする。

アルトリアも読んでいる、とばかりに防御態勢に入ろうとした。

だが、フィンは地面に向けて槍を突いた。

そして、曲がった槍の反動で宙に浮く。

アルトリアも予想できないであろう動きをすることで勝機を見出そうとするフィン。

完全にアルトリアの背後をとった。

反応できるタイミングではない。

だが、フィンがアルトリアの背中に一突き入れる前にフィンの脇腹に一閃。

アルトリアの木剣がフィンを捉えた。

 

 

無防備な箇所に痛烈な一撃をもらったフィンは立ち上がれない。

この瞬間、アルトリアの勝利が決定した。

 

フィンは、悔しそうな表情を見せるが、それよりも気になることがあると

アルトリアに詰め寄る。

「いい試合だった。ありがとうアルトリア。

ところで、一つ聞きたいんだがアルトリア、君は最後の攻撃を読んでいたのかい?」

フィンは腑に落ちない点をアルトリア質問する。

 

「はい。 フィン、あなたは最後の一撃、私の腹部を狙った一撃だと見せかけようと

しましたが、あなたの槍の突きは最初のときと比べて、突きを出すタイミングが

少しだけ早かった。」

 

その言葉を聞いたフィンは、どこか納得した表情になる。

自身の技と駆け引きには長年の戦闘経験ゆえそれなりの自身を持っていたが、

さらにそれを上回る人物がいるということに久々の興奮を覚えた。

 

「アルトリア。君の実力は本物だ。そこで一つ頼みがある。」

 

「はい。何ですか?」

突然のフィンからの頼みにアルトリアは少し戸惑う。

 

「今、計画中のダンジョン50階層の遠征に君も同行してくれないか?」

 

 

フィンの頼みとは、前例のないLv.1団員であるアルトリアのダンジョン『深層』

遠征への参加であった......。

 




何話か後にダンジョン遠征編が始まる予定です!
皆様の応援のおかげでUA45000突破と450人の方にお気に入り登録
させていただけました。
今後とも応援していただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。