魔法科高校の劣等生と優等生、加えて問題児   作:GanJin

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はいどうも

またまた、更新しています

やっぱり、夏のセミの鳴き声はうるさいです

それではお楽しみください!

2020/04/07:修正しました。


新入部員勧誘週間 その4

 さて、雫の思惑で勧誘してくる上級生を寄せ付けない案山子(かかし)となっていることも知らず、禅十郎は美少女三人に囲まれているなんとも羨ましい状況に陥っていた。

 と言っても当の本人はこの状況に対して特に思うことはなかった。

 

「おーい、雫ちゃんよ。いつまでこうしてるんだ?」

 

「いいから黙って付いて来て」

 

 禅十郎の質問に答えずにスタスタと歩いて行く雫。

 その二人に付いて来るような形でほのかも英美も一緒に歩いていた。

 

「俺、今仕事中なんだけど……」

 

「事前に騒動を防ぐためになるから校門まで一緒に来て」

 

「えー、なんだそりゃー」

 

 全く雫の言い分を理解できずに、禅十郎は歩いて行く。

 この光景を見られて、禅十郎は更に面倒ごとに巻き込まれるのであるが、雫にはそんなこと知ったことではなかった。

 

「良い雰囲気だねぇ、御二人さん。もしかして、雫の彼氏さんかな?」

 

 そんな二人のやり取りを見ていた英美が面白半分で尋ねる。

 

「違う」

 

「いや、お前が即答するのかよ」

 

 即答する雫に禅十郎はツッコんだ。

 

「おやぁ? その反応だと、本当は雫のことが好きだったりするのかな?」

 

 興味を持った英美はさらに深く追求してきて、禅十郎は苦笑いを浮かべていた。。

 

「生憎、そう言う感情は持ち合わせてない。どっちかって言うと妹分みたいなもんだな」

 

「それが凄く迷惑」

 

 禅十郎の妹分発言に雫は少し不機嫌な顔をしていた。

 

「だったら、この手離した方が良いんじゃねぇか? 腕組んで歩くって、お前がガキの頃に夜中、イデデデデ……」

 

「ほのか達の前でその話はしないで」

 

 更に不機嫌になった雫に耳を引っ張られる禅十郎。

 

「なになに、それちょっと気になる」

 

 禅十郎が何を言おうとしていたのか、英美は凄く気になり、興味津々な顔をしていた。

 

「エイミィ」

 

「ごめん、雫。私も聞きたい」

 

「ほのかまで」

 

「女の子二人の期待に応えなきゃ、男が廃るよなぁ」

 

 英美とほのかに例の話をしようとニヤニヤと笑う禅十郎。

 

「お願いだから、それだけは止めて」

 

 華奢な腕の割にそこそこ強い力で禅十郎の腕を握るほど本気で懇願する雫。

 

「えー……。いいよ」

 

 禅十郎は友人を弄ることはあっても、完全に嫌がるような事はしない

 今回の話は言わないことにした。

 

「あーあ、残念」

 

 割と本気で残念がる英美にほのかは苦笑を浮かべる。

 

「あー、でも口が硬いって自信があるなら、今度教えてやるよ、ミス・ゴールディ」

 

「へっ……?」

 

 禅十郎の最後の言葉に、英美は固まった。

 まだ、自己紹介もしていないのに自分のことを知っていたことに驚きを隠せないでいる。

 英美の反応に禅十郎はにやりと笑い、雫はやれやれと呆れていた。

 

「篝君はエイミィのこと知ってるんですか?」

 

 ほのかの質問に禅十郎は頷いた。

 

「ま、ゴールディ家はイギリスの魔法師の家系では超名門だし、第一高校に入学してるって話は聞いてたからな。それに、あの婆さんと同じ髪の色してりゃ、嫌でも気付く」

 

「へー、グランマのこと知ってるんだ」

 

 婆さんと言われて、英美はそれが彼女の祖母であることを理解する。

 

「俺の爺さんの伝手でな。あの時は確か、テレビ電話で爺さんに説教してたっけか。その時に顔を見てな。あの爺さんが俺の婆ちゃん相手にする時と同じ反応するもんで爆笑ものだった」

 

 愉快そうに笑う禅十郎に英美はぎこちない笑みを浮かべる。

 

「そ、そうなんだ……」

 

 一体、彼の祖父と自分の祖母に何があったのか気になったが、すぐにその好奇心を抑えた。

 本人に聞いてみることも出来なくないが、彼女の本能が危険信号を発していた。

 

「禅、自己紹介もしてないのに他人のことばかり話すのは不公平」

 

 自己紹介していないのに人の個人情報をべらべらと話す禅十郎を雫は咎めた。

 

「仕方ねぇだろ、情報収集は俺んとこの専売特許なんだ。てか、今日の放送を見て俺を知らない奴って少数だろ」

 

「自意識過剰」

 

「いや、学校内の全電子掲示板で放送されたんだけど!」

 

 しかもあの映像は職員室でも放送されていたらしい。

 廊下を歩いているときに、すれ違った教師から励まされるように肩を叩かれたり、憐みの目を向けられたりと禅十郎はまいっていた。

 昼の部活の放送で、なぜあんなに注目を浴びなければならないのか分からなかった。自分はただ為すべき仕事をしただけなのだが。

 因みに、昼の放送を後押ししたのが真由美と摩利の第一高校の二大トップなのだが、そんなことを禅十郎が知る筈もなかった。

 

「凄かったですね、あれは」

 

「私も見たよ。『待てやぁぁ!』って叫んでる時の顔、物凄かった。あと容赦のないラリアットも」

 

「頼むからその話は止めてくれ。しばらく思い出したくない」

 

「大丈夫、そう言うことは今に始まったことじゃない」

 

「フォローになってねぇ……」

 

 それから禅十郎は仕方なく雫達を校門前まで連れていくことにした。

 雫の思惑通り、すべての部活の勧誘者が禅十郎の所為で近づくことは無かった

 すると、途中でほのかがあることに気が付く。

 

「あれって、達也さん?」

 

「あっ?」

 

 ほのかが見ている方を見ていると、確かにそこには達也がいた。どうやら取っ組み合いをしている上級生達を止めようとしているようだ。

 達也が割って入った次の瞬間、雫は何かに気付いた。

 

空気弾(エア・ブリット)っ!?」

 

 達也の背後に向けて空気弾が放たれたことに雫達は驚き、ほのかも顔を青ざめた。

 だが、達也は紙一重で空気弾を避け、彼女達の心配は杞憂に終わった。

 ほのかがそれを見てほっとしていると、英美は達也の動きに驚いていた。

 

「うわ、アレを躱すんだ」

 

 だが、雫の反応は違っていた。

 

「禅、あれって……」

 

「ああ、間違いなくわざとだろうな」

 

 呆れ気味に言う禅十郎。

 

「じゃあ、あの風紀委員の男の子がわざと狙われたってこと?」

 

「まぁ、そうなるだろうな」

 

 達也が空気弾を放った犯人を追おうとしたが、取っ組み合いをしていた二人がなかなか達也を自由にしてくれない。

 

(あー、あいつらもグルだな)

 

 そう思っているとほのかが随分不安そうな顔をしていた。

 達也との関係はあまり知らないが、接点の少ない二科生である達也の身を案じるほのかの態度に禅十郎は眉を顰める。

 この間の件で達也が雫とも接点があるのは知っていたが、彼女よりもずっと心配しているのである。

 

(これはまさか……ほほう)

 

 禅十郎は何かを閃き心の中でニヤリと笑みをこぼす。

 

(あ、今物凄く良からぬことを考えてる)

 

 それを見て雫は達也の心配よりもほのかの様子を見て何かを察して面白そうな顔をしている禅十郎に呆れていた。

 

「禅、達也さんが心配じゃないの?」

 

「えっ、ないけど? 何で?」

 

 あっさりという禅十郎にほのかだけでなく英美も目を丸くした。むしろ禅十郎は何故達也を心配する必要があるのかと言いたげな顔である。

 

「だって、風紀委員だとしても一年だしあんな襲撃を受けたら」

 

「いやいや、それこそ有り得ねぇよ。あの程度の攻撃なら二年前の達也でも避けれるわ」

 

 二年前に九重寺で達也と共に修行していた禅十郎の言葉を雫は疑わなかった。

 

「つうか、作戦がザルだ。俺ならもっと五重に罠を張る。姉貴なら更にエグイ罠を張るな」

 

 その上、上級生が立てた作戦にさえダメ出しをするのだから、余程のことが無い限り達也に攻撃を当てるのは難しいのだろうと雫は理解した。

 だが、それはあくまでも禅十郎を良く知っている雫だからであり、ほのかは未だに不安の色がぬぐえなかった。

 

「そんなに不安なら証拠でも掴んで生徒会か風紀委員にでも報告すればいいんじゃねぇか?」

 

「え?」

 

「思い込んでも何かが好転するわけじゃない。だったら行動するのが一番だ。俺は面倒だから手伝わんがな」

 

「発案しておいて、無責任」

 

「だって俺は心配してないし。そもそも九重寺ってのは強者が多いんだぞ。そこで修行してる達也が学生に毛の生えた程度の実力でどうにかなるかよ」

 

 そんな禅十郎の発言から英美の発案で美少女探偵団が誕生するのだが、当の本人はそのことを一切知ることはなかった。

 それから禅十郎は雫達を学校の外まで送り届け、通常業務に戻ろうとすると青筋立てた摩利に見つかった。どうやらこれまでの行動は彼女に筒抜けになっており、仕事をさぼるなとめちゃくちゃ怒られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 四日目の昼休み。

 禅十郎は生徒会室で昼食をとっていた。

 ここに来たのは理由は真由美からの呼び出しである。理由は来たら話すとのことだ。

 生徒会室には真由美だけでなく、摩利、鈴音、中条、それに達也と深雪が揃っていた。

 

(つまり、大したことじゃないってわけか)

 

 大事な話であるなら、ここに中条だけでなく達也と深雪もいるはずがない。

 大方、学校として大事なことなのだろうと勝手に解釈し、席に着いた。

 昼食を食べつつ雑談をしていると、真由美が例の話をしてくれた。

 その内容に禅十郎は呆気にとられた。何故なら内容があまりにも愕然としたものだったからだ。

 

「七草先輩、今なんて言いました?」

 

「だからね、禅君は新入部員勧誘週間の間だけ昇降口から校門の間を巡回しないで欲しいの」

 

「何でですか?」

 

 唐突の活動範囲の制限、つまり学校の裏側だけを重点に巡回しろと言う話が出てきて禅十郎は理解が出来ずにポカーンと口を開けた。

 

「これは昨日の多数の部活からの苦情によるものです」

 

 禅十郎の活動範囲を制限する理由を口にしたのは鈴音だった。

 

「苦情?」

 

 何で部活からの苦情で俺の巡回ルートが変わらなきゃならんのだと眉間に皺を寄せる。

 文句を言われることなど何もしていないはずだというのが禅十郎の認識である。

 怪訝な顔をする禅十郎に対し、鈴音は冷静に話を続けた。

 

「昨日から篝君が校門付近に出現している間、部活の勧誘を避けている新入生が揃って学校を出ようとする傾向があり、部員確保が出来ない部活が急増し、その対処をして欲しいとのことです」

 

 なんじゃそりゃ、と禅十郎は訳の分からない理由に顔を歪ませる。

 

「それ、俺の所為なんですか?」

 

 そう言うと、三年生は揃って首を縦に振り、禅十郎は愕然とする。

 

「篝君。実は昨日から一年生の間である噂が流れてるんです」

 

 すると補足の為に深雪が禅十郎に説明し始めた。

 

「噂……?」

 

「その……篝君が近くにいれば無理な勧誘は絶対来ない、と言うことなんです」

 

「は……?」

 

 そんな噂どうやって流れたんだと禅十郎は眉間に皺を寄せる。

 それを聞いていた達也は面白そうに話を聞いている。

 

「いや達也、面白がってんじゃねぇよ!」

 

「いや、すまん。流石は問題児だと思ってな」

 

「うるせぇっ! その称号、俺は絶対認めねぇからな!」

 

 そんなやり取りを見て、摩利は軽く咳払いをして話を戻した。

 

「禅、一昨日に新入生三人を校門まで連れていっただろう?」

 

「あの後、先輩にボコボコにされましたね」

 

 アレのおかげで摩利に物凄く叱られたのである(物理的制裁も含めて)。

 

「実は一昨日の放送で上級生達が禅が近くにいる所為で、普段通りの勧誘が出来なかったとのことだ。無茶な勧誘をしたと思われて意識が飛びかけるなんて御免だとな」

 

「アレは無理矢理勧誘する方が悪いっすよ。俺は注意をしようとしただけなのに逃げ出したから捕まえただけですし」

 

 毅然とした態度でいる禅十郎に真由美は苦笑を浮かべた。

 

「でもね、禅君、ラリアットはないと思うんだけど」

 

 それは勧誘日初日に起こった出来事である。OGの事件が片付いた直後、無理矢理勧誘しようとしている三人組の上級生を発見し、注意をしようとしたら逃げ出したため、禅十郎が全員捕らえたのである。

 一人は当身、一人は鳩尾、そして最後はラリアットである。

 当然、そのシーンも放送部に撮られており、次の日にはばっちり映像として流れた。

 

「俺は基本そうやって止められたんで。あと、あの程度で意識が飛びかけるとか鍛え方が足りません」

 

「あの……全部急所ですよね?」

 

「中条さん、彼を基準にしたら一般的な感覚が麻痺しますので、無視して構いませんよ」

 

 おずおずとする中条に、禅十郎が異常であると前提した方が楽だと鈴音が助言する。

 

「一昨日、君が近くにいると勧誘されないことを証明したから、情報を知った新入生が揃って真似をし始めたのが昨日のことだ」

 

「で、新入部員の確保が出来ない部活が急増した為の処置としてそうなったと?」

 

「ま、そう言うことだ。それ以外は普通に巡回して構わない。今後も頑張ってくれ」

 

 何処か後ろめたい顔をしている摩利。

 実際、この噂を流すきっかけの後押しをしてしまったのは自分であることに負い目を感じているのである。

 因みに噂を流す後押しをした共犯者はと言うと、素知らぬ顔をしていた。

 

「いっそ、俺を解雇するって言うのは……」

 

 そう言うと真由美はにっこり笑みを浮かべた。

 

「勿論却下よ。禅君がいるだけで今期の犯罪件数は去年より減少してるんだもの。今後も学校の平和のために尽力してね」

 

 その笑顔の裏に何を隠しているのか分からなかったがどうせ碌でもないことを考えているのは明白だった。

 

「へーい」

 

 それでも禅十郎は了承するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、真由美達の言う通りに学校の裏側をメインに巡回することになった禅十郎は暇を持て余していた。理由は単純、誰も近くで違反行為をしないのである。

 事件があっても場所は禅十郎の位置から随分と離れており、全速力で向かっても既に事態は収束していたのが既に二件。

 噂通り、誰も自分の周りでバカをやろうとはしないのである。

 

「退屈だー!」

 

 結局、ダラダラと歩き回るしかすることがなくなってしまった禅十郎は何処かで休憩でも取ろうかと考えていた。

 そんなことを考えていると、近くで物音が聞こえてきた。

 

(誰かが走ってくる……? これは魔法で移動速度を上げてるのか)

 

 即座に木陰に隠れると、近くから魔法を解除してゆっくりと歩き始めている男子生徒を見つける。男子生徒を観察していると彼は何かを呟いていた。

 

「間違いな……、アレは……すと……んぐだ」

 

(何だ?)

 

 男子生徒はまるで世紀の大発見となるものを見つけて、それに驚愕している様子であった。そっと木陰から男子生徒の顔を見て、禅十郎は眉間に皺を寄せる。

 

(あいつは……)

 

 そこにいた男子生徒が上級生であることを禅十郎はすぐに理解した。何度も資料でその顔を見ている為、間違えるはずがなかった。

 

(三年の司甲か……。剣道部主将がこんなところで何を……)

 

 怪しいことをしているのは目に見えていた。何せ、彼は『ブランシュ』のリーダー司一の義理の弟なのだ。

 第一高校を調べるために、司一が用意した傀儡の一人である司甲には注視していた。

 入学二日目の風紀委員の巡回時にも剣道部をちらっと観察しており、剣道部が下校する時にも少しだけ様子を見ていた。

 大半の剣道部メンバーの腕に揃ってある特徴があったことも確認している。彼等が腕に付けているリストバンドだ。普通の人から見れば、部活内で同じウインドブレーカーを着ているようなものだが、アレはそんな意味合いのモノではない。

 彼らの身に付けている赤と青で縁取られた白いリストバンドは『ブランシュ』の下部組織『エガリテ』のシンボルマークなのだ。

 司甲が去った後、禅十郎は木に寄りかかり腕を組んで考え込んでいた。

 

(やはりだいぶ汚染されてるか……)

 

 禅十郎の中では剣道部は既にエガリテに侵食されているのだろうと断定していた。勿論、それには根拠があった。理由は剣道部のほとんどが二科生で構成されていること。

 

(てかさぁ、魔法科高校に通ってるのに、何で反魔法国際政治団体に組みするのかねぇ……)

 

 このような状況を禅十郎はあまり良く思っていない。

 都合の悪いことは考えず、直視せず、自分達が主張していることだけが正しいと思っているような奴らに魔法科高校の生徒が加担するのは何故か。そんなことは既に聞かされていたし、理解していた。

 人は絶対に平等ではない。肉体だけでもそれが理解できるだろう。性別が違うだけで、体の構造が全く違うし、体質も違う。

 才能だって同じだ。体を動かすことが得意な者、頭を使うことが得意な者、様々な才能を各々が持っている。

 だが、違いがあるからこそ、人は自分の持っていないモノを持っている人に嫉妬する。

 才能が劣っている者は、劣っているという事実から目を背けたがる。

 『ブランシュ』はそんな弱い心に漬け込んで、魔法科高校の生徒を洗脳しているのだ。

 

(くだらない)

 

 理屈は理解できる。だが、納得は出来ない。

 勿論、自分の考えなど『持っている者からの視点』であるのは理解している。

 類稀なる高い身体能力を持ち、その上、一科生になれるほどの魔法の才能と一般家庭と比べて裕福であるからそんな考えが出来るのだと禅十郎は分かっていた。

 それでも禅十郎は納得できない。

 自分の才能はこれまでだと勝手に決め付け、自分から道を閉ざし、現実から逃げても何も変わりはしない。ただ、虚しさと絶望だけしかその者には残らない。

 自らの道を閉ざした者の末路を彼は良く知っていた。

 それ故に自分が同じ才能で相手より劣っているだけで諦めてほしくない。自分が出来ることを理解し、それを磨くことで他人とは違う才能を持っているのだと自覚して欲しい。

 

『逆境に折れない強い心を持ち、己を律し正しきを為す』

 

 それが禅十郎の理想であり、行動理念だ。

 そんなことは無理な話であるのも理解している。自分の考えなど所詮は理想論に過ぎず、綺麗ごとだ。弱者のことを全く考えていない言葉だ。弱い人間を蹴り落とすような考え方だ。

 こんな理想、圧し折ることなど簡単だし、諦めることだってあっさりできてしまう。

 だが彼がそうしていられるのも理由があった。

 

「諦める気にはならないな」

 

 その理想を貫いているからこそ、今の自分があるのだ。それを教えてくれた人の為にも、自分が折れてはいけない。

 誰もがその理想を貫けないから諦めるのは間違っている。どんなに辛くても、誰にも理解されなくても、それでもその理想を貫くことを諦めない。

 

「さてと……姐さんに怒られないように仕事に戻りますかねぇ」

 

 そんな理想を人知れず掲げて、禅十郎は今日も前を向き続けるのである。




はい、いかがでしたか

最後の方は禅十郎と言う人間について書いてみました

勧誘週間関係ないよね?と言うツッコミはなしでお願いします

忙しいのに、更新してる頻度高くない?と思っている人

それもツッコミは無しで!

そ、それでは、今回はこれにて

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