魔法科高校の劣等生と優等生、加えて問題児   作:GanJin

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はいどうもです

遂にUAが一万を超えました!

読んでいただき、ありがとうございます!

これからも皆さんが楽しんでいただけるよう頑張っていこうと思います!

それではお楽しみください

2020/04/07:修正しました。


生徒会室での団欒と不穏な影

 校門前の騒動が一段落して少し後の頃、真由美と摩利は生徒会室へと戻っていた。

 

「それで摩利、禅君の対応を見ての感想は?」

 

 笑みを浮かべて真由美は摩利に尋ねる。それを見た摩利は溜息をついた。

 

「ま、ギリギリ合格と言ったところだな」

 

「あらあら、手厳しいわね」

 

「あれはあの兄妹の助力によるところもあったんだ。当然の結果だ。恐らくあの兄妹が手を出さなければ、彼はほぼ……いや、退学するようにあいつは動くしかなかっただろうな」

 

「なるほどね」

 

 摩利の言い分に真由美はやや納得する。しかし彼女の考えは摩利と違っていた。

 確かに嘗ての禅十郎ならば森崎を退学に追い込むように動いていたかもしれない。数年前の彼は破天荒な行動はしても規則を破ることだけはしなかった。規則を守ることにおいて彼は自他共にストイックなほどに厳しかった。

 しかし、それは過去の話であり、今の彼ならば別の道も模索していたと真由美は考えていた。変わっていなければ、司波兄妹の話に耳を傾けようとしなかっただろう。

 

「そもそも真由美はあいつに甘過ぎだ。あの人の奇天烈さに行動力が加わっているんだぞ。どう考えたって碌なことにならないというのに、そう甘やかすから変な噂が流れるんだ」

 

 思っているよりも大事にならないと考えている真由美の態度に摩利は溜息をついた。

 そのことを聞いて真由美はその話題を聞き忘れていたことを思い出した。

 

「そうそう、リンちゃんが言ってた噂が何なのか聞くの忘れてたわ」

 

 妙な噂が流れていることに真由美は興味津々である。そこそこ情報通である彼女でも知らないのだから、気になるのも当然である。

 

「本当に知らないんだな。真由美にしては珍しい……訳でもないか、これに関しては」

 

「じらさないでそろそろ教えてよ。どんな噂なの?」

 

「ほうほう、一体何の噂ですか?」

 

「「っ!?」」

 

 突然、後ろから第三者の声に真由美と摩利は驚いて飛び上がった。

 

「禅君、脅かさないでよ。心臓に悪いわ」

 

「どこから湧いて出たんだ、お前は」

 

「人をゴキブリみたいに言わんでください」

 

 二人の背後にはどこから湧いて出たのか、禅十郎が立っていた。

 

「禅君、昔も言ったけど気配を消して背後に廻るのは禁止」

 

「えー、ただ普通に歩いてただけなんですけど」

 

 本人は気配を消したつもりは一切ない。しかし、それはあくまでも彼の基準であり、普通の感性からすれば十分に気配を消しているのだ。

 

「それは自覚してないだけ」

 

「いやいや、本気で気配を消して背後に立つなら声を掛けないで悪戯しますよ」

 

「それって、何処かでやるつもりだったの?」

 

「勿論!」

 

 満面の笑みでサムズアップする禅十郎に真由美は絶句した。

 

「君と言う奴は……」

 

 摩利も呆れていた。

 それを見て禅十郎は軽快に笑ったが、ジト目でこちらを見つめる真由美と目が合った。どうやらそこそこ機嫌を悪くしたらしい。

 

「まぁ、驚かしてすんません」

 

 適当に謝る禅十郎に真由美はプイッとそっぽを向いた。

 

「心が籠ってないから許しません」

 

「えー……」

 

 機嫌を直さない真由美にどうしようかと禅十郎は悩む。本気で機嫌を悪くした真由美は冗談抜きで扱いが面倒になる為、今ならまだどうにかなるレベルなのである。

 

「申し訳ございませんでした」

 

 今度は頭を下げて謝罪する。

 それを一瞥した真由美は何かを思いつき笑みを浮かべた。

 

「うーん、どうしようかなぁ? あっ、そう言えば、学校の近くにおいしいケーキ屋さんがあったわよね」

 

「ケーキセットで良いですか?」

 

 すぐさま奢ることになりそうだと予想する禅十郎。

 

「あら、別にケーキが食べたいなんて一言も言ってないけど? あらあら、どうしたの禅君、お姉さんとお茶でもしたかった?」

 

 だが、真由美は自分は餌付け程度で機嫌が良くならないと言外に伝えた。

 

(ったく、相変わらずだな、この人は……)

 

 意地の悪い笑みを浮かべる真由美に禅十郎は苦笑を浮かべる。

 

「いえ、先日予習をしていて分からなかった所があったので、そこを教えてもらおうと思っていたんです。折角なので何処かでお茶でもしながら」

 

 真由美とお茶をする目的ではなく、後輩として勉学で聞きたいことがあり、そのお礼を兼ねてケーキを振る舞うという体裁であると禅十郎は口にした。

 禅十郎の返しに、真由美は少しだけ考え込む。正直、これ以上揶揄う手段が思いつかなかった。禅十郎の姉を使うことも考えたが、あまり面白いことにはならないだろうとここで譲歩することにした。

 

「そうねぇ……。じゃあ、今日の業務が終わったら行きましょうか」

 

「今日行くんですか?」

 

「分からないことは直ぐに解決した方が良いわよ」

 

「……了解です」

 

 ただし、真由美は最後の一手は決めさせてもらうつもりでいた。

 

「あ、そうそう、摩利とリンちゃんとあーちゃんも一緒だから、よろしくね」

 

「げっ!?」

 

 真由美の言葉に驚愕する禅十郎。

 

「別に私だけ誘ってくれたわけじゃないんでしょ? 男なんだからそれぐらいの甲斐性は無いとね」

 

「冗談ですよね?」

 

 尋ねてもにっこりと笑うことしかしない真由美に禅十郎は開いた口が塞がらなかった。

 

「……マジかぁ」

 

 真由美を相手にして、口で勝てるはずがないのは分かっていたが、ここまで損害がデカイとは考えてもみなかった。

 

「それじゃあ、禅君、風紀委員のお仕事頑張ってね」

 

 そう言って真由美は生徒会室へと足早に向かった。

 

「ちょっと、先輩!」

 

 禅十郎は彼女の後を追い、何度か交渉するが全て失敗し、自身の財布の中身を必死に確認すると言うなんとも情けないことをすることになるのだった。

 そんな真由美と禅十郎とのやり取りを見ていた摩利は少しばかり呆れていた。

 

「まったく、あんなのを見せつければ、あの噂が流れても仕方ないな」

 

 生徒会室に向かう真由美とその後ろを追う禅十郎を見てそう思った。

 幼い頃からの付き合いだからと言っても、ここまで仲の良い姿を見せつけられれば、例の噂が流れても仕方がないだろう。

 

(今更言うのも面倒だしな。それに、真由美はともかくあのバカはその程度の噂で取り乱すとも思えんしな)

 

 禅十郎の出現の所為でうやむやにされていた例の噂とは『真由美が禅十郎と付き合っているのではないか?』と言うことだった。

 勿論、そんなの嘘だが、目の前の二人の姿を見れば、その嘘が現実味を帯びてしまうのは間違いない。

 そしてその現実味のある嘘が現在新たな火種を産もうとしていることが今の摩利にとっての悩みの種となっていた。

 その悩みとは禅十郎のことを良く思っていない生徒(主に上級生達)が彼に何かしらの報復をしようと計画しているということだ。当然、それは噂話程度だが、摩利の情報網からすればほぼ確実でなのは間違いない。

 言わずもがな生徒会長である真由美は男女問わず人気がありファンクラブも作られている程だ。

 そして彼女と親密に接している禅十郎を見て、真由美のファンの半分近くが彼を敵視しているのだ。その証拠に真由美に好意がある服部もここ数日、顔には出してはいないが機嫌を悪くしている。仕事に差し障りはないようだが、鈴音が言うには何処か苛立っているとのことだ。

 

(それにそろそろ『あの時期』がやってくるしな、今期は少し荒れるかもしれないな……)

 

 摩利の予想では数日後に始まる『新入部員勧誘週間』でそれが起こると睨んでいる。

 期間中、校内はCADの使用制限がほぼない完全な無法地帯となってしまう為、何をしても規則を破らなければ許されてしまうのだ。

 例年だと魔法による事件がこの期間で多発するのであるが、今年はさらに悪化してしまうだろう。禅十郎を敵視している輩がこの機会に襲撃してくるのだから、その未来は想像に難くない。

 だが、摩利が心配しているのは禅十郎の身が危うくなることではない。寧ろ、その逆である。

 

(問題は()()()()()()禅を相手に無事でいられるかだな。さて、面倒なことにならなければいいが…)

 

 今後のことを考えると頭が痛くなる摩利であった。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、達也と深雪はクラスメイト達と一緒に帰路についていた。

 あの騒動の後、深雪は雫とほのかも一緒に帰らないかと提案し、二人は達也達と一緒に帰っていた。

 

「それにしても驚きました。お兄様、篝君とお知り合いだったのですね」

 

 深雪は先程の達也と禅十郎のやり取りを見て驚いていた。

 

「ああ、一昨年に短期間だが一緒に師匠の下で稽古をつけてもらって、その時に知り合ったんだ。夏を過ぎてから会う機会は無かったが、時々師匠が雑談交じりに禅のことを話すこともあったし、禅も時々あそこに顔を出していたらしい」

 

「へぇ、世間は狭いとはよく言ったもんだな」

 

 二人の会話に交ざったのは達也と同じ二科生の男子生徒だ。彼は西城レオンハルト、達也のクラスメイトである。フランクな性格であり、周りからレオと呼ばれている。

 

「というより禅の顔が非常識に広いだけだと思う」

 

 レオにツッコんだのは雫だ。

 

「そうそう、あいつの家って他家とのパイプをたくさん持ってるから、いろんな所に顔が効くのよね」

 

 雫に同意したのは二科生の赤毛の女子生徒、千葉エリカだった。彼女は剣術で有名な『千葉家』の娘であり、レオ同様達也のクラスメイトである。

 

「エリカも篝君を知ってるの?」

 

 エリカの反応を見て、深雪は尋ねた。

 

「まぁね。家の関係で何度か顔を会わせることはあったけど、直接話したことはないわね。と言うか、うちの兄貴にしか興味がなかったみたいだし」

 

「エリカちゃんのお兄さん?」

 

 エリカに質問したのは眼鏡をかけた少女、柴田美月であった。今の時代に眼鏡をつけるのは珍しいが、彼女はとある体質によって眼鏡をかけているのだ。

 

「まぁ、兄貴は近接戦闘において有名人だからね。同じ近接戦闘を得意としてる者としては話ぐらいしてみたかったんじゃない?」

 

「エリカちゃんのお兄さんってそんな凄い人なんだ」

 

「禅って強い人に会ったら一度は話してみたいってよく言ってたから」

 

「随分積極的な人なんですね。ちょっと羨ましいです」

 

 感心した顔をする美月に雫は首を横に振った。

 

「アレは良くない。もはや病気の類」

 

「雫、それはさすがに言い過ぎじゃ……」

 

 禅十郎に当たりが強い雫に、ほのかは珍しいと感じた。

 雫とは長い付き合いだが、ここまで特定の人物に嫌悪感を出しているのを見たことがなかったからだ。

 

「昔の禅を知ってたら、ほのかも私と同じ気持ちになると思う」

 

「えっ……」

 

「だって初対面の人でも近接戦闘で強いって分かったら『あなた強そうですね、一つ試合をしませんか?』って尋ねるんだよ」

 

「……冗談だよね」

 

 雫の言葉にほのかは目を瞬かせる。

 

「いや、それは本当だ。俺も昔言われた」

 

 達也の言葉にほのかだけでなくここにいる全員が目を丸くしてドン引きする。

 

「じゃあ、アイツって結構ヤバい奴なのか?」

 

「性格面は知らないけど、その手の界隈では篝家の兄弟は有名よ。全国道場破りの長男に、数年前に引退した無血全勝の長女、そしてさっき会った武術の申し子の三男。若手の近接戦闘の使い手の中でも国内十指に入るわね」

 

 レオの問いにエリカがその異常さを口にする。

 

「まぁ、俺とエリカは怪しいが、それ以外は無縁だろうから気にしなくても大丈夫だろう」

 

 達也の言葉にやや安堵する面々。

 その後、達也達は話題を変えてCADについて盛り上がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の昼休み、達也と深雪は生徒会室の前まで来ていた。

 何故、二人がここにいるのかと言うと、それは登校している途中のことだ。

 登校している途中でエリカ、レオ、美月と出会い、一緒に校門まで来るとそこには真由美が達也達を待っていたのである。

 真由美が言うには深雪に生徒会の話をしたいということだった。

 それだけなら分からなくもないが、どういう訳かここにいた深雪以外にも生徒会室に来ないかと誘ってきたのである。

 その提案に、エリカがきっぱりと断ってしまい、達也は断りづらくなってしまった。その上、深雪も一緒に来て欲しいと言う目をしていたため、達也は渋々承諾することにしたのである。

 そして、現在に至る。

 

「失礼します」

 

 二人は生徒会室に入ると、そこには既に真由美、摩利、鈴音、中条の4人とおまけが1人いた。

 

「よっ。遅かったな、達也」

 

 最初に口を開いたのはおまけの1人だった。

 

「何でお前がここにいるんだ、禅」

 

そこにいたおまけとは禅十郎であり、達也の疑問に対して軽快に笑った。

 

「おう、俺も思ってたところだ」

 

 その後、真由美に言われるまま達也と深雪は席についた。

 簡単に挨拶をすると、話は食事をしながらと言うことで生徒会室の自動配膳機から料理を取り出した。

 達也、深雪、真由美、鈴音、中条は配膳機の料理であり、弁当を持ってきていたのは摩利と禅十郎の二人である。

 禅十郎は年頃の少年らしく大箱に入った弁当であり、摩利の弁当はかなり見た目とは打って変わって可愛らしいものであった。

 

「そのお弁当は、渡辺先輩がご自分でお作りになられたのですか?」

 

 深雪が摩利の弁当を見て尋ねた。

 

「そうだ。意外か?」

 

 意地の悪そうに言う摩利に、少しばかり深雪は困惑する。

 

「いえ、少しも」

 

 すると、間髪容れずに達也が言った。

 摩利の手を見れば、彼女がどの程度料理が出来るのか分かってしまう。それに気付いた摩利は、少し気恥しそうにしていた。

 

「達也、いくら何でも見過ぎじゃねぇか? 渡辺先輩の指がそこまで魅力的か?」

 

 禅十郎に注意されて、直ぐに達也は視線を彼に向けた。

 

「そういう訳じゃないが……。それより、禅、お前のその弁当は何だ?」

 

 達也が話題を禅十郎の弁当に変える。

 

「あっ? なんか問題でもあったか。中身は普通の弁当だろ。肉が多いと思うが」

 

 禅十郎の前に並んでいたのは、白いご飯におかず(かなり肉料理が多い)があるだけだ。何も問題ないはずだという顔を禅十郎はしていた。

 だが、達也が気にしていたのは弁当の量ではない。中身である。

 

「その異様に赤い料理はなんだ」

 

 達也が指摘したのは弁当箱の隅っこに血のように真っ赤になっている料理の事だった。

 

「鶏唐揚げのデスソース和え」

 

「デスソース……ですか」

 

「それってかなり辛いものだった気が……」

 

「禅君ったら相変わらす辛い物が好きね」

 

 鈴音、中条、真由美の反応に禅十郎は眉を顰める。

 

「旨いっすよ、これ。あっ、食べます?」

 

「食べられないわよ、そんな殺人料理」

 

「殺人……?」

 

 真由美の言葉に深雪が首を傾げる。

 

「昔あったのよ。それを食べてあまりの辛さに亡くなった人がね」

 

「そんなことがあったんですか」

 

 口にして死人が出るほど辛いソースの存在に深雪は大層驚いていた。

 

「ま、こいつはその事件よりもずっと辛いバージョンなんだけどな」

 

「君のお姉さんもよくそんなものを作れたな」

 

「唐揚げ作ると割とやりますよ。家族の半分近くはこれが好きですね」

 

「成程、君の一家は揃って味覚がぶっ壊れているんだな」

 

 摩利はこれ以上余計な追及はしないと心に決め、禅十郎の料理については話題を打ち切ることにした。

 そんな会話をしていると、何を思ったのか深雪が達也に提案した。

 

「お兄様、私達も今度からお弁当に致しましょうか」

 

「それはとても魅力的な話だが、二人っきりになって食べる場所がな」

 

 達也に言われてはっとする深雪。確かにこの学校では昼食が食べられる場所が限られている。彼の言う通り、二人っきりになれる場所を探すのは中々大変である。

 

「そうですね……。まずはそこから探さなければ」

 

 二人の会話は年頃の異性の肉親の会話とは思えないほどの親しさであった。

 

「まるで、恋人同士の会話ですね」

 

 それを見た鈴音がさらりと爆弾を投下した。

 

「そうですか? まぁ確かに考えてことはあります。血の繋がりさえなければ恋人にしたいと……」

 

 達也の爆弾発言によって、鈴音の爆弾は不発どころか暴発し、女性陣が揃って赤面し固まってしまった。

 

(わーお)

 

 それを聞いていた禅十郎は達也のシスコン発言に笑いを堪えつつ、お茶をすする。

 

「勿論冗談ですよ」

 

「「えっ!?」」

 

(あん?)

 

 中条が驚いた声を上げたのは分かる。しかし、もう一人、彼女と同じタイミングで声を上げていた人がいたことに禅十郎は眉間に皺を寄せた。

 その声の主が禅十郎から見て達也の背後から聞こえてきた気がしたため、ちらっと彼の後ろを見てみるとそこには少しばかり、いやかなり残念そうな顔をしている深雪がいた。

 それを見た禅十郎は目を丸くする。

 

(おいおい、司波さんはブラコンだったのか……)

 

 予想外の事実に禅十郎は呆気にとられるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、生徒会室の外では不穏な輩が生徒会室を監視していた。

 

「はい、先ほど生徒会室に入ったのは主席入学した司波深雪とその兄である司波達也です」

 

 その人物は電話である人物と連絡を取り合っていた。

 

「そうか……。分かった、そのまま監視を続けろ」

 

「分かりました。それともう一つ」

 

「何だ?」

 

「二人が入る前に、篝禅十郎が生徒会室に」

 

「なんだと!? ……いや、何でもない。気にせずに監視を続けろ。何か情報が入ったらまた連絡してくれ」

 

 一瞬だけ声に焦りが出たことに監視をしている者は訝しんだが、気にしないことにした。

 

「分かりました」

 

 その人物は言われた通り、生徒会室の監視を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、とある建物の部屋。そこには先ほど第一高校で電話をしていた相手が椅子に座っていた。

 その人物の名は司一(つかさはじめ)。反魔法国際政治団体『ブランシュ』の日本支部リーダーを務めている男である。

 第一高校に仕向けた刺客からの連絡を聞いて、怪訝な顔をしていた。

 

「なぜこのタイミングで、奴らが第一高校に……。篝家の三男は『第三高校』に進学する予定ではなかったのか?」

 

 予想していたことと全く異なる情報に少しばかり焦りを覚えていた。

 

「くそっ‼」

 

 机を強く叩き、苛立つ心を晴らそうとした。

 少しばかり気持ちが落ち着くと、司一はすぐさま連絡を入れた。

 

「私だ。ああ、そうだ、篝家は第一高校に息子を進学させたらしい」

 

 司一はある目的のため、第一高校に長い時間をかけて準備を進めてきた。そして、今年が最大のチャンスでもあるのだ。これを逃せば、次の機会はほぼないと言わざるを得ない。故に、誰が第一高校に進学してこようとも、今回の作戦は何としてもやり遂げなければならない。

 例え、どんな手段を使ったとしてもだ。

 

「篝禅十郎を何としても始末しろ。手段は選ばなくていい」

 

 そう言うと司一は椅子にもたれ掛かって肩の力を抜き、軽く息を吐いた。

 

「五年前は失敗したが、今回は邪魔はさせんぞ。『鬼の眷属』いや……」

 

 司一が最後に呟いた言葉は、連絡のアラームが鳴ったことで聞こえることは無かった。




いかがでした?

今回はあまりスポットが当たらない人物について書いてみました

まぁ、こんな感じに禅十郎と達也達が関わっていくことになります

ちょっとばかり脱線することもあるかもしれませんが、原作に沿って頑張っていきます!

それでは今回はこれにて

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