魔法科高校の劣等生と優等生、加えて問題児   作:GanJin

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どうもです。

今回から横浜騒乱編が始まります。

さてさて、次の章に行くまでに一体どれくらいかかることになるやら。

2020/10/25:文章を修正しました。


横浜騒乱編
新学期の始まり


 夏休みが開け、新学期が始まった。

 三年の真由美は生徒会長を引退し、投票の結果(立候補者は一人しかいなかったが)、新生徒会長は中条に決まった。

 随分あっさりとしているが、何の問題もなく事が終わったのかと言えば、完全にノーである。

 原因は言わずもがな禅十郎……ではなく深雪だった。

 中条の演説にて暴動が起こり、その中で深雪が看過できない言葉が飛んだことでその怒りで講堂が凍り付くことになる寸前にまで発展したのである。

 四年前の惨事が再び起こるかと思いきや、達也が抑えたお陰で人的被害はなかった。

 ただ、その時の深雪の態度によって生徒会長選挙の結果が愉快なことになり、『立候補していないのに投票数が最多になった生徒』という伝説が残ることになった。

 さてさて、表向きは司波兄妹が派手にやったのだが、禅十郎は何もしていなかったかと言えば当たり前だが嘘になる。今回は裏方で色々とやっていたのである。

 主に真由美の付き添いで生徒会長に立候補しようとしている者を懇切丁寧に説得していくのを手伝っていた。

 当初、真由美は一人で大丈夫だと言っていたのだが、彼女が提案した案件を通さない為に実力行使に出る過激派も少なくないからと禅十郎の説得と摩利や鈴音からの後押しによって、渋々了承した。

 裏工さ……ではなく、説得をしている時の真由美のやり口を見て、禅十郎は密かに彼女が『あの』弘一の娘なんだなと共感するところが幾つもあった。実際の所、彼女の妹である泉美の方が真由美よりも策略家に向いている気がするのだが、そんなことを口にして地雷原に飛び込む気はなかった。

 そうした彼女の謀りゃ……根回しのお陰で、生徒会長選挙は中条だけが立候補する形となった。

 余談だが、この一連の行動によって禅十郎は真由美のファンクラブから完全に敵と判定されることになり、ある日、その勢力と真正面からぶつかることになるのだが、それはまた別の話した。

 そんなこんなで夏休み明けの一か月間は平穏な学園生活を送り、新生徒会が発足して十月になった。

 新生徒会が本格的に活動して一週間程経ったある日、いつものメンバーで行きつけの店に立ち寄っていた。

 

「えっ? 達也、論文コンペの代表に選ばれたんだ?」

 

 幹比古が口にしたことに半数近くが目を丸くした。

 全国高校生魔法学論文コンペティション、通称『論文コンペ』は全国の高校生が魔法学、魔法工学の研究成果を大学、企業、研究機関などに向けて発表する場である。参加するには各校の推薦を受けた学生のみであり、その人数は僅か三人だ。優勝論文はイギリスの学術雑誌に載せられるほどで、二位でも学会誌に載ることもある。

 

「へぇー、そりゃまた突然だな。時間足りんのか?」

 

 そんな狭き門に達也が入ったことに興奮する友人達を横目に禅十郎は現実的なことを聞いてきた。

 

「正味九日だが、執筆自体は夏休み前から進められているから問題はないそうだ」

 

「ま、市原先輩なら当たり前だわな」

 

 禅十郎は今回の選考論文の執筆者が鈴音だと知っていた。九校戦でも千景とその話をしていたのを隣で聞いており、順調に進んでいるとのことで千景は彼女に激励を送っている。

 

「しかし、随分急なお話であることに変わりありません。何かトラブルがあったのでしょうか?」

 

 深雪がそう口にした瞬間、禅十郎の指がピクリと動いたのだが、その不自然な動きに気付く者は一人を除いていなかった。

 

「サブの上級生が体調を崩したらしい」

 

(やっぱりか……)

 

 禅十郎はサブの上級生についても知っていた。そして、彼女がどのような状態にあるのかも把握していた。

 

(割り切ってる、つもりだったんだけどな……)

 

 実際に話題出されるとまだ感情の整理がついていないのだと気付かされる。九校戦で引き起こされたあの悲劇は今でも禅十郎は忘れることはなかった。

 九校戦のミラージ・バット本戦にて、三年の小早川景子が競技中にCADが動作不良を起こし、事故にあった。それによって彼女は魔法技能を失い、魔法師としての未来を失うことになってしまった。

 当時、彼女のCADの調整をしていたのが、そのサブである三年の平河小春なのだ。自分の所為で彼女がドロップアウトしてしまった罪悪感に耐えられず、退学しようとしていたことも人伝で把握している。

 もっと上手く立ち回れれば、被害は少なかったかもしれない。三年生も気持ちよく九校戦に臨めたかもしれない。そう考えることも少なくなかった。

 だが、たかが一人で背負ったところで何が出来たんだと思えばそれでお終いだ。それに禅十郎はこの選択をしたことを悲しみはしたが、後悔はしていない。当時の思いつく選択肢の中で、最良の選択をしたつもりだ。

 その先に後悔することがあっても、精一杯考えた上での行動であるが故にこれ以上引きずる気はなかった。

 

「そう言えば、市原先輩から聞いたぞ」

 

 考え込んでいる間に話が進んでいたらしく、達也が自分に話しかけていたことに気付いた禅十郎は首を傾げた。

 

「聞いたって何をだよ?」

 

「『暴君』が色々とやっていたようだな」

 

 達也からその単語を聞いた瞬間、禅十郎は全てを吹っ切って声高らかに笑った。

 

「そうそう、あのバカ姉貴が色々やらかしてな。もし読みたいなら言ってくれ。姉貴も喜んであの論文を貸すぞ」

 

 達也と禅十郎だけが知っている話に全員が気になっていたのだが、明らかに真っ当な内容ではないと悟りその好奇心を無理矢理押しとどめることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、禅十郎は家ではなく結社にいた。

 本当なら家で夕食を食べる時間なのだが、帰宅した直後に緊急招集の連絡が届いたのである。

 

「おい、いきなり何だ。緊急招集の上に幹部会まで開くって」

 

「俺も大して情報を得ているわけではないが、どうやら国内によからぬ輩が侵入したとの情報が入った故の招集らしい」

 

 廊下を早足で移動しつつ、禅十郎の問いかけに大神が知りえている情報を提示する。

 

「まさかイリーガルMAPクラスのヤバい奴等でもやってきたか?」

 

「冗談でも止めろ。そんな大物の相手になったら俺の胃に穴が開くぞ」

 

「そりゃいい、大神の小言を聞かなくて済むな」

 

「殴るぞ、格闘バカが」

 

「俺に一度でも一本取れるならやってみな」

 

 軽口をたたいているうちに二人は会議室に到着して自身の席に座る。

 

(へぇ、全部署参加とは聞いてたけど、結構な数がいるんだな)

 

 実のところを言うと、禅十郎が把握している結社の全容はごく僅かであり、恐らく半分に行くか行かないくらいだ。結社と言っても部署によってその特徴は異なっており、彼が実際に把握している範囲だと、三名ほどの少数精鋭もあれば二十人以上で構成されている規模の大きい部署もある。

 

「今更だが、本当に数が多いんだな」

 

「総数は知られていないが、職員の数は間違いなく三桁は余裕で超えるそうだ。結社の全貌を把握しているのは社長を含めてごく一部だ。俺達の知らない部署があっても不思議ではない」

 

「おーおー、こえーこえー。何処に親父の息がかかった奴がいるのか分からねぇんじゃあ、たまったもんじゃねぇな」

 

 中には人前に顔を出そうとしない幹部もいるらしく、数少ない幹部会にも代理の者を出してくることもあるそうだ。

 

「全容が掴めないことも結社の強みでもあるからな」

 

 結社の特徴は情報収集だけでなく全体像が全く掴めない機密性もある。彼等の存在を知っている者でも社長の隆禅や禅十郎、および一部の幹部、多くても約三十名ほどしか知られていない。嘘か本当か、結社に所属している者の中には公的機関で働いている者や企業の社長もいるらしく、他には一般家庭の主婦からコンビニの店員までいるなど噂が絶えない。件の『四葉』ほどではないが、組織としての力であれば、十師族以上ではないかと言われているほどだった。

 人が集まっていくにつれて部屋は徐々に物々しい空気に包まれていった。

 

「おやぁ? これはこれは最近幹部に昇進した御子息じゃないですか?」

 

 やってきた者達の一人が禅十郎に話しかけてきた。ちらりとその人物を見ると禅十郎は溜息をついた。

 

「……何だよ、笠崎のおっさんのとこの奴じゃねぇか。ってことは、おっさんは不参加か」

 

 まだそれほど寒くはないのだが、膝丈程度の黒いロングコートを身に纏った男、初ケ谷基哉(はつがやもとや)はにっこりと胡散臭そうな笑顔を浮かべていた。

 結社の幹部の中でも古株である笠崎の懐刀と呼ばれており、その実力は結社内でも高く評価されている魔法師だ。年は二十代前半であり、大神と同期に入ってきた期待の新人だ。

 

「そうなんだよ! 僕にぜーんぶ面倒なことを押し付けて、自分は優雅にディナーだってぇー。狡いよねー、僕だって美味しい料理食べたいのにー」

 

 物々しい空気には相応しくない明るい声で文句を言う基哉に禅十郎は苦笑を浮かべた。

 

「それには激しく同意するが、俺と一緒にいて良いのか? 笠崎派の奴等が良い顔しねぇだろ」

 

「僕はそう言う派閥抗争には興味ないからね。それに面白い人を近くで見るのが僕の楽しみなのだよ! 特に君達は本当に最高だ! 夏の一件もしかり、二人が組んでからは誰もが無視できないほどの実績を上げ続けているじゃないか! しかも何度も厄介ごとに巻き込まれている。狡いっ! 狡過ぎるよっ! そんな面白い現場に何度も立ち会っているのに、僕は未だに心躍る現場に行った試しがない!」

 

 不満を持って駄々をこねる子供の様に騒ぎ始め、夏の出来事を思い出してしまった大神は頭が痛くなった。

 

「こいつのお陰だというのは確かだが、面倒なことに関して言えば俺はただのとばっちりだ。何ならお前が俺の代わりにこいつの面倒を見るか?」

 

「おい、俺は何時からお前にお守されるようになった、大神」

 

「うーん、それはやぶさかじゃないねぇ。でも、恐らく碌なことにならないんじゃないかなぁ? 彼女も言っていたのだよ、僕と禅君が組んだら十中八九周囲の被害が甚大だって」

 

「……的確なアドバイスだな」

 

「無視すんな、お前ら!」

 

 若い者達が揃って騒がしくしている中、幹部が徐々に出揃い始め、後はトップを待つだけとなっていた。

 

「そう言えば、基哉は今回の招集について何か聞いてるか?」

 

「うーん、どうやら都内で発砲があったようだよ」

 

「おいおい、随分と思い切った行動する奴がいるじゃねぇか。だが、その程度なら緊急招集なんざする必要はねぇだろ。警察とかの仕事じゃねぇか」

 

 基哉はその言葉を待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 

「それがねぇ、どうやらその犯人捕まらなかったらしいよ? まぁ、誰かが処理したっていうなら兎も角、警察機関の動きが収束する気配がないとすれば、主犯はまだ捕まっていないんだろうねぇ」

 

「主犯ってことはそれなりに規模のある組織が動いてるって思ってるのか?」

 

「そうとは断言できないんだけど、今月の始め辺りから横浜と横須賀で密入国事件が相次いで起こってるようだよ。警察機関も頑張ってるようだど、未だに手掛かりなしだってさ」

 

「……そいつは厄介だな」

 

「関係があるかは分からないけど、ほぼ同じ時期にCADのトップメーカーの納入品が同じ時期に盗難にあったり、魔法研究に携わっている施設にいくつかハッキングされたんだってさ。もしこの事件に繋がりがあるとすれば、関係性がないとは言い切れないかなぁ?」

 

 すると基哉は何かを思い出したようにはっとした顔をすると、懐から一枚の写真を取り出した。

 

「そうそう。これ、まだ誰にも見せてないんだけど、発砲した直後の現場の写真だよ。裏にその住所も書いてある」

 

 それを目にして禅十郎は眉間に皺を寄せる。そんな貴重なものをいの一番に見せてくることを奇妙に感じたが、得られる情報は得ておこうとその写真を禅十郎は受け取った。

 

「ボケ過ぎだな。何があったかあんまり分からねぇぞ?」

 

 だがその写真はややボケており、人らしきシルエットが複数人あるのが分かる程度だ。よく見れば、形状と色からしてコミューターと黒い車、そしてバイクが一台ずつ道路にあるのが分かった。他には銀色の銃らしきものを携えた人物が車に乗った者達と戦闘行為をしているくらいだ。

 

「それがねぇ、どういう訳か、発砲された時間の前後の数分間、その付近の防犯カメラのデータが消去されたか、改変されているんだよねぇ。いやぁ、これだけでも手に入れられて良かったよ」

 

 そんな写真を良く手に入れられたものだと内心思ったが、この男であればその程度の困難はどうってことは無い。結社の中で禅十郎が最も警戒している笠崎が認めた人物が普通であるはずがないのだ。

 

「よくやる」

 

「君の同僚に負けず劣らず優秀な人材が多いからねぇ」

 

「それを帳消しにする程に癖の強いヤツばっかだけどな」

 

「ハハハ、まったくだよ。中には僕を襲撃する人もいるからね」

 

「他部署から狙われてないだけマシじゃねぇのか」

 

 禅十郎が隆禅の後継者であることは社内でも幹部とその補佐しか知らないことなのだが、一部の平社員に漏れており、禅十郎を処分しようと動いている者も少なくはないのだ。

 実際に実行した者もいたが、禅十郎に瞬殺されて現在九州の道場で再教育中である。

 

「ほほう、中々面白いねぇ。是非とも混ぜて欲しいよ」

 

「混ざらないでくれ、俺の心労が絶えん」

 

「よし、基哉、是非ともやってくれ!」

 

「合点承知!」

 

「やめんか!」

 

 漫才を始めた禅十郎に大神は拳で彼の頭をぶっ叩いた。なおダメージは大神の拳の方が大きかった。

 

「いってーな。で、さっきの件だが、別の部署に解析が得意な奴がいたが、そいつに頼むか?」

 

 先程の話に戻し、調査を本格的に行うか提案するが、基哉は首を横に振った。

 

「うーん、その必要はないかなぁ? どの道、そこからじゃ、事件の全容はつかめないと思うしね。関連データは殆ど消されたから、地道に調べるのも面倒だし。ま、それは君にあげるよ。その写真は君が持っていた方が良い気がする」

 

「……お前がそう言うなら貰っておくが、あまり期待はするなよ?」

 

 禅十郎はそう答えるが、基哉はそうは思っていないようだ。

 僅かな情報さえあれば彼は何かに辿り着く。これまでの結果がそれを証明している故に彼はそれを禅十郎に持たせたのである。

 基哉は禅十郎と共に行動したいと口では言うが、本音はただ傍観していたいだけなのだ。彼にとって禅十郎は何をしても飽きることが無い玩具箱のような存在だ。想像を超える事をし続けるが故に余計な干渉はしない。不純物が混ざらないように徹底に行動する。

 

(君には期待しているよ。どんな事をするのか、君が周囲にどんな影響を与えるのかをね)

 

「さてさて、我らが社長のご登場だ。今回は一体どんな話を聞かせてくれるのやら」

 

 基哉の言う通り、ようやく隆禅とその秘書である天宮が現れ、幹部会が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 幹部会が終わった直後、禅十郎は基哉が渡してきた写真を眺めていた。

 

「密入国騒ぎに、盗難、加えてハッキングか……」

 

 今回の緊急招集は、やはり今月始め辺りで起きた密入国事件に関することだった。

 国内で不審な動きをしている者達がいるとの情報を得た為、その者達が良からぬことをする前に情報を集め、公安に協力して叩くことが決まった。

 しかし、今の禅十郎に出来ることは基哉からもらった写真をただひたすら眺めるだけだった。

 

「なんだい、戻ってくるなりソファに寝転がって。実験台になりたいって意思表示なら歓迎だけどさ」

 

 関連する単語を呟いていると、猪瀬がコーヒーを飲みながらそんな軽口をたたいた。いや軽口ではなさそうだ。完全に目が本気である。

 

「あー、それは勘弁。大怪我したら付き合ってやるから、今は無駄に患者を増やすんじゃねぇぞ」

 

「つまんないねぇ。普通の練習じゃあもう出来ないところまで来ちまったんだ。そろそろ良い感じの実験動物が欲しいんだけど」

 

「せめて被験者って言えや。それよか、例の術式はいつでも出来るようになってるのか?」

 

 禅十郎の問いかけに猪瀬は頷いて見せた。

 

「まぁね、何時でもやれるようにするのがあたしの役割でもあるからね。前回は軽めだったから使わなかったけど、今回の件はアレが必要なことになりそうなのかい?」

 

 彼女の問いに禅十郎は難しい顔をするが、首を横に振った。

 

「分からねぇ。でも、何度も横浜で密入国が起こってるのにこの国の警察に尻尾を掴ませないほどの隠蔽能力があるとすれば戦力も高いはずだ。そんな奴等とやり合って無事で済むか怪しいだろ。何時でも出来るように準備はしておいてくれ」

 

「了解。横浜と言えば、今回のコンペはそこだったわね。こんな時に物騒なことが起こるなんてタイミングの悪い。もう一か月もないでしょ」

 

「まーな。ったく、今年に限って魔法科高校の催しに何かが起こりやがる。本当にやってらんないな」

 

 入学直後然り、九校戦然り、今年は碌なことばかりだ。偶には半年以上くらい平穏な時間を過ごしたいものだ。

 

「ま、あんたも気を付けな。横浜と言ったらヤツが絡んでる可能性もゼロじゃないしね」

 

「分かってる。つうか、そろそろ反故にしてもいいだろ。どうせ知られて困るような情報じゃねぇしな」

 

 もうすることが無くなった禅十郎は帰宅する用意をし始めた。

 

「猪瀬さん、帰りにラーメンでも食って帰る?」

 

「おっ、良いねぇ。近場の行きつけで限定メニューが出てきたんだ。折角だから、他の奴等も誘ってみるかい?」

 

「じゃ、適当に誘ってさっさと帰りますか」

 

 それから禅十郎達は夕食を食べに結社を後にする。取り敢えず、色々考えなければならないようだが、空腹を満たさないとこれ以上は頭が動かなそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アレって……」

 

 禅十郎は食事を終えた時にふとあることを思い出す。

 基哉から渡された写真に写っていた銀色の銃のような物体に見覚えがあったのだが、夕食を食べるまでそれが何だったのか思い出せなかった。

 それを思い出したのは代金を払う際、懐を除いた時に見えた同系色物体が目に映ったのが切欠だった。

 

「シルバー・ホーンか」

 

 写真に写っていた銃らしきものは手に入れてまだ二、三か月しか経っていない新品の特化型CADと形状が同じであった。

 そして、写真の裏にあった住所付近にいる魔法師の中で同じCADを使い、厄介ごとに巻き込まれやすい友人が一人浮上する。しかもその人物も写真の人物と同じバイクの免許持ちだ。

 ここまで来て別の地域の者であればそこで終了だが、確かめてみる価値はある。

 

「はぁ、あいつの言う通りになるのはなんか癪だなぁ」

 

 そう思いながら、禅十郎は帰路へとつくのだった。




如何でしたか?

オリキャラは時折、増やしていきますが、過剰になり過ぎないようにしようと思います。

一時期、こいつどんな奴だっけと思う時があったので(笑)。

夏休み編は気分が乗ったら時折書こうかと思いますので気長にお待ちください。

では、今回はこれにて。

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