遺言だけを聞いたエクシアがアルケーの頭を踏み砕く。アルケーの腕は力を失い情けなく垂れ、間もなくポリゴンの粒子となって全てが消えた。唯一の、たった一人の同胞が死に行く様を目の当たりにし、憎しみを帯びた激情が腹の底からぐつぐつとこみ上げてくる。
「……ヤッタな………ッ!!」
ゼロを強引に押しのけ、溜まっていた必殺技ゲージを全て使い、<NT-D>を発動する。アバターの内に抱えきれなくなった憎しみが溢れ出すがごとく、黒い装甲が解き放たれ、輝きを帯びた黄金の<サイコ・フレーム>があらわになる。
「足が止まったな」
隙を見つけたゼロが俺の頭部目掛けて突きを放ってくる。<NT-D>発動状態のバンシィ・ノルンに、この程度の攻撃を避けさせることぐらい雑作も無い。横にステップを踏み、すかさず鉤爪状の形態となった<アームド・アームズVN>でゼロの胴体を鷲掴みにし、強く握りしめる。
「…くそ……!」
ゼロの青い装甲に亀裂が入り、悲鳴を上げる。<NT-D>の活動限界時間は短い。早い所止めを刺すため、<ビーム・マグナム>をゼロの頭部にゼロ距離射撃をする。彼の頭が吹き飛んだのを確認し、『いつのまにか』懐に潜り込んでいたエクシアに投げつける。
「チッ………」
惜しい所で避けられた。
彼が体制を立て直すのを待たずに<アームド・アームズVN>で飛びかかる。間一髪で避けられるものの、<ビーム・マグナム>で追撃をする。<NT-D>の補助により、腕力が格段に上がっている。片手でも……今度は外さない………!
「……逃がさないッ!」
「…さっきよりはましになったみたいだが、まだまだ俺を捉えるには考えが浅いな」
エクシアが少しの跳躍とともに腰裏に装着してある短剣、<ビーム・ダガー>を投げつけてくる。それが吸い込まれる様に<ビーム・マグナム>に刺さり、誘爆する。使えなくなった銃を投げ捨て、力任せにエクシアに飛びかかる。<NT-D>の稼動時間はあと五秒。早々に決着を付けなければこちらが負けてしまう。多少強引だが、このまま馬乗りになってタコ殴りにしてやる!
……妙な浮遊感。おかしい。地面に衝突する衝撃が身体に伝わらない。
「…お、落ちてる!?……なんで………!?」
どうやら走り回っているうちにマンションの隅っこに来ていたみたいだ。そして、俺の急な突進によって二人とも大空に投げ出されたと………。
「…いいから離せ!」
「…ぐ…………っ!」
手が緩んだ隙にエクシアに真下へと蹴り飛ばされる。このままでは俺が先に墜落してゲームセット。勝利はヤツに下ることになる。
「……やらせるかよ!」
最後の足掻き。右腕を前に突き出す。折り畳まれていた<ビーム・スマートガン>が展開される。残っていた必殺技ゲージが全て消費される。最後の希望を込めたエネルギーが強化外装の中心に集まる。
……負けられない!!……あの青い悪魔に……卑怯者に……ロリコンに……アニオタに……絶対に……負けられない!俺のプライドと、……そして、死に行ったあいつの為にもッ!!
「<アームド・アームズBS>!!」
展開した二枚の板状の<サイコ・フレーム>から<NT-D>の補助によりパワーアップした収束ビームが照射される。あいつも……勿論俺も今は空中のど真中。この必殺技を避けるのは容易ではないハズ………。
「バンシィ、ヤツに憎しみを流し込めッ!!」
「………クソッ……まずった…………!」
気持ちだけでも、とエクシアが腕を交差するがもう遅い。そのような淡い防御でこの必殺技が防げるものか!
一瞬、アルケーの最後の断末魔が頭をよぎった。
『…それでも…それでも僕は…………前より成長できたと信じている』
………ああ、アルケー。同じだよ俺も。実感できていなかっただけなんだ……。俺は、ここまで来れていたんだな……。
嫌になるほどのスローモーションの世界で、収束する光線がエクシアの胴体を貫く。……勝ったのか……?
ほどなく鈍い衝撃と痛みが身体を駆け巡り、視界が暗転する。地面に衝突したのだろう。
視界が現実の物へと戻る。ヒメジマ以外の男子全員(俺も含め)、何処となく疲れ切った表情をしている。
開口一番、ハタケヤマが口を開いた。
「……はああぁあぁ…………。…俺としたことが……、ニュービーに負けるなんて……」
「同感。親が子に負けるなんて、目も向けられねぇよ……」
あっ、俺、勝ったんだ………。さっきはつい、熱くなって力任せにウイング・ゼロとアヴァランチ・エクシアをぼこったけど……。………え……………俺が、………二人を……ぼこった…………?
「まさか、実感できてないの?あなたがこの五人のトップなのよ?」
「………トップ……?…マジで言ってんの?」
コメント、感想、MSの要望などがあったらよろしく御願しますm(_ _)m