『―――! ―――イ!』
もう自分が自分であることすら認識できなくなってしまったのだろうか?
自分を呼ぶ声に応えることも、その声を聞くことも満足に叶わなくなってしまった
いずれ残滓と果てるだろう自身の肉体に微熱が触れる
主の名を呼ぼうとするが既に喉笛からは息が漏れ、吐き出す音は血の滴りだけ
主がキズに触れた、それが彼の最期の記憶
―――――
「夢か・・・」
胸のキズに触れる
またキズが開いていた
その熱っぽさに、さきほどまで主が触れていたような錯覚に囚われてしまう
それほどまでにこの夢はリアルで
「またあの時か・・・」
夢ではなかった
―――――
「挑戦者?」
素っ頓狂な声をあげたのは相良だった
「久しぶりでもう忘れちゃった?」
入谷が小首を傾げてこちらを見る
禁断に取りつかれた相良とその被害で運営はひどく混乱していた
代表戦再開の目処が立たずにいたが、どうやら再建できたようだ
「それで結局代表戦って何をするんだ?」
相良の腑抜けた質問に思わずコケてしまいそうになる入谷だったがなんとか堪える
「私たち各文明は何のために戦ってるか覚えてる?」
「文明同士の占有権がどう、とか」
「そう。でも“ココ”には彼らの場所はない。それじゃあ何を奪い合うのか」
「そういえばそうだな」
相良は考えた事もなかった
ただ負ければ他の文明に馬車馬のようにこき使われる、と
目の前の少女が誰かにいいようにされるのは嫌だったから
そう思えたから自分はここにいるのだった
「代表戦の優勝者、もとい優勝した文明には力が与えられるの」
「力?」
「具体的なことはわからないんだ。でも大概のクリーチャーたちは他の文明を従える権利だと思ってるみたい」
「従える・・・ねえ」
『他のヤツらにへいこらされたって気分なんかよくならねえけどなぁ』
『しかしこれを頼りにしている軍勢が多勢なのも事実。実際に優勝した文明に力が傾いたこともあったはず』
アラシのぼやきにゲンジがそう返す
どうやらクリーチャーたちは本気にしているようだ
「まあお願いが叶うってとこかなー」
「そんな抽象的なもんなのかよ」
夢たっぷりに語る入谷に若干呆れる相良
「抹茶パフェをお腹いっぱい食べたいなー」
『サムライ一族再興の話はどこへ行った!? チカ!?』
「えー、覚えてないなー。ねーケンイチくーん抹茶パフェのほうがいいよねー?」
『チカー!?』
ゲンジがかわいそうだなぁと思いつつ考える
願いごと、か・・・
昔の自分なら、強くなりたい、と願ったんだろうか、と
「ちょっとー! ケンイチくん聞いてる? 無視はよくないよー!!」
むくれる入谷をファミレスに連れて行ってあげた
パフェを奢ると満足そうにしていたのでなんとか宥めることができた
そんなこんなで願いについて相良が考えるのはもう少しあとになる
続く