サブタイトルから大体分かるよね? 無粋なことは言わぬが花。
それでは、どうぞ。
彼女は戻った
気付くと机の前に座っていた。
な、何を言っているか分からないと思うけどわたしにも分からない。超スピードとか瞬間移動とか、そんなチャチなもんじゃない。もっと恐ろしい何かの片鱗を……いや、まあ、うん。
「……ん、日記?」
机に乗せていた手の下。いつも書いている日記が置いてあった。
なんとなしに見てみる。
4/23(水)
魔女狩りは順調に進んでるよ。一日一匹倒してるから、グリーフシードは合計六個。20と21で魔女狩りに行けなかったのがなぁ。仕方無いけど。
4/24(木)
何となく日記を見返してたら書いた記憶の無い言葉が書かれていた。何なんだろうか。どことなく、わたしにとって嫌なことを書こうとしたんだろうって気がする。
4/25(金)
魔女……見付からなくなっちゃったな。本当は喜ぶべき事なんだけどなぁ。
「…………んん? あれれ?」
その先は無い。書いたはずの日記が書かれていない。……これは、つまり。
「タイムリープが、起こった、の?」
なんと。となるとほむらちゃんが魔法少女になったのかな。でも、なんで記憶が………………鈴音ちゃん……。
「……んん? あれ? ん…………れれ?」
色々違和感が。例えば、鈴音ちゃんが殺された後の記憶が
ピンポーン
「朱音~。鈴音ちゃんよ~」
……そうか。今日はあの日か。あの日のことはしっかり覚えてる。
「今行く!」
なるべく一回目と同じにしないと。幸い、おれが中にいるせいか知らないけど、記憶力だけは超抜群だから完璧に再現できる。
さて、パジャマから着替えてっと。
~○~○~○~○~○~
「はいはいはいはい、待った?」「外で待ってるわよ。中で待っててって言ったんだけど、断られちゃったわ」「分かった」
~○~○~○~○~○~
「おはようございますわ」「おはよう。…『ございます』に『わ』は合わないと思うよ」「良いのですわよ。さ、こっちに来てくださいまし」「あ、うん。行ってきます!」
家に向かって怒鳴る。
~○~○~○~○~○~
「腕を掴まなくても良いんだよ?」「良いから」「何処に向かってるの」「……本当に、本っ当に嫌々ですし、心苦しいですわ」「え?」「だから、先に謝っておきますわ。わたしの両親がすみませんでしたわ」「は、はい?」
着いた先は、鈴音ちゃんの家。
~○~○~○~○~○~
「御父様、御母様、朱音さんをお連れいたしましたわ」「えーっと、はじめまして。本庄 朱音と言います」「朱音ちゃん、かね? いやすまない、少々耳が遠くてね。私は、小崎 竜一。こちらが、妻の純香だ」「……わたくしの娘と遊んでくださり、ありがとうございますわ」「いえ、えっと、どういたしまし…て」「さてさて、折角うちに来たんだ。鈴音のお友達をもてなさせてもらおうか。お前たち」
「「「「「はい!」」」」」
「美味しいクッキーと紅茶を用意してくれ」「「「「「はい!」」」」」
~○~○~○~○~○~
鈴音ちゃんの部屋。
「まあ、つまり、『朱音ちゃん、あーそーぼっ』って事で良いのかな?」
「むしろ、『娘に彼女!? 一大事だ!』の方が近いですわ」
「あー、成る程。よくそんな言葉知ってるね?」
「えぇ、まぁ」
どうしよう。あんまり一回目と変えたくないけど……。
「まぁ、それなら遊ぼうか」
「…………あの、その、ですね」
「うん?」
「私、夢を見たんですの。怖い、不思議な、夢を」
……え? そんなの一回目には無かった。それとも一回目では言わなかっただけ?
「どんなの?」
「えぇとですね。不吉なんですけど……私が殺される夢です」
「!?」
「そして、そのせいで朱音さんが壊れる夢……です」
「…………」
そ れ は 、 一 回 目 の 夢 で は ?
「朱音、さん? すごい顔してますわよ?」
「あ、う、ううん。もう少し詳しく教えてくれる? わたしが壊れるなんて物騒だし」
「えぇ。えっと始めは今日みたく朱音さんの家に向かっていましたわ」
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けど。
「え、居ない?」
「ええ。確か、見滝原市の先輩に会いに行くって言ってたわ」
「そうですか。分かりましたわ」
それで、歩きで見滝原市まで行くんですわ。
見滝原市までは意外と遠くて夕方にやっと着きましたわ。
そこで、以前『友達』だった人たちに襲われたんですの。
…………悔しいことに、全然敵わなくて。逃げようとしても狙撃されて。
思わず、朱音さんに助けを求めたのですが、それを聴いた三人は私を囮に朱音さんを『助ける』、と。
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「それでわたしは助けに?」
本当は聞くまでもない。
「えぇ。夢のように思いましたわ。実際、夢でしたけど」
夢じゃないよ。
そう、言えるわけもなく。
「ふふ、さぞかし格好いい登場だったんだろうね、夢の中のわたしは」
代わりにからかいの言葉が出てきた。
「えぇ、凄く格好良かったですわ。あの三人を次々に倒してしまうんですもの」
分身使ったズルだけどね。と言ったら何で知ってるのかって追及されるから言わない。
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それで、結局私はソウルジェムを撃ち抜かれて死ぬんですわ。
……朱音さんのせいじゃ無かった、とだけ言っておきます。
けど、夢の中の朱音さんは凄く気に病んで、三人を殺しましたわ。…………泣きながら笑いながら。
それで私は、死んだはずなのに朱音さんの側に浮かんでて、ずっと朱音さんを見守るんですけど、朱音さんの様子が全然変なんですわ。
家に帰らず、学校にも行かず、魔女だろうと魔法少女だろうと倒して殺していましたわ。―――狂ったように笑いながら、泣きながら。ずっとずっとずっと。
ナイフを振って身を隠して魔力を吸って。
………………まるで、魔女のようでしたわ。
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鈴音ちゃんの話が終わったんだと気付くまで、少しかかった。
「…………それは……酷い夢だね…」
ようやっと、それだけを呟く。頭の中はろくなことになってない。
魔女……わたしが? でも、今はほら、この通り、人間だよ?
震える自分の身体を抱き締める。
あ、あはは。ね、ほら。自分の華奢な腕だよ。女の子らしい細い腕だよ。そんなにきつく抱くと壊れちゃうよ、わたし。ほら、でも大丈夫。わたしは強いから、この程度じゃ壊れないよ。あは、あははは。
「…………ねさん? ……朱音さん?」
「ぁ…………うん。ごめん。ちょっと寒く感じただけだよ」
「そう、ですか? メイドさん、タオルケットを一枚くださる? 朱音さんが寒いんですって」
鈴音ちゃんがメイドさんに何かを言ってる。
そして、わたしを心配そうに見てくる。
だめだ、身体の震えが止まらない。
「ほ、ほら、夢の話ですし、そこまで真に受けなくても良いんですよ、朱音さん?」
「う、うん、分かってる……」
分かってない。それは、
と、身体にタオルが掛けられる。
「鈴音」
「っ、御母様!?」
鈴音ちゃんのお母さん、純香さんだ。
朱音の固有魔法は『魔力吸収』と『魔法無効化』の二つ。他人にも多少とはいえ影響を及ぼすようですね。
朱音がほむほむと出会う時はいつになるのやら……