何とか終わりに近付けたいんです。
「鈴音ちゃん……」
「朱音さん。誰かを傷付けましたか?」
「へ?」
「傷付けましたか?」
「………部屋を壊した程度かな」
「そう。そうですか。なら良いです」
鈴音ちゃんが右手を上げる。中庭を囲うようにメイドが出てくる。全員、手に包丁を持っている。
「やっぱり、鈴音ちゃんの魔法だったんだね」
「えぇ。素晴らしいでしょう?
「そっか。つまり、全力でわたしを……」
「殺しますわ」
鈴音ちゃんが右手を振り下ろす。
「行きなさい
メイドたちが襲いかかってくる。
ジャンプ。一番前のメイドさんの肩に足を乗せ、頭を踏み、更に高く。鈴音ちゃんの元へ!
「鈴音ちゃん!」
「
鈴音ちゃんの両脇に泥人形が現れる。矢をつがえ、放たれる。空中じゃ避けられない。
右脇腹と左肩に当たる。吸収。
駄目だ、わたしは魔力しか吸えないから……衝撃と泥は残る。
そして衝撃は鈴音ちゃんからわたしを遠ざける方向にかかっている。
「うぐっ」
「 」
「あっぶなっ!」
落ちた瞬間に包丁が突き出された。転がって避ける。
「鈴音ちゃん! 裏切り者って何!」
「分からないなら分からないまま死んでくださる!?」
ぐぐ……メイドたちの攻撃が激しい。
分身、『無し無し結界』!
「……隠れて、逃げて。そればかり」
~~~ッ! メイドたちがやたらめったらに包丁を振り回すせいで鈴音ちゃんに近付けない!
なら!
「空へ跳ぶんでしょう? 弓兵」
……読まれてる。跳ぼうとした瞬間に弓が雨あられのように降ってきた。
「アハ、アハハ、ワタクシは、これほどまでに朱音さんの事を……なのに。何故裏切ったんですの?」
「裏切ってなんかない!」
「あぁ、もう答えすらしてくれないのですわね?」
『無し無し結界』の欠点だ。中から外への音を一切漏らさない……つまり、声が届いていない!
「ほら、もっと、もっと! ワタクシのレギオン!」
む、ぐぅっ! メイドが更に増えた。なのにフレンドリィファイアしない。的確にわたしだけを狙ってる……見えてないのに!
「アハハハハ! 消えて消えて消えて! 知ってますわよ、魔法以外は吸収出来ないことは! 知識も! 経験も! 能力も! ワタクシのホウがウエなんですわ!」
ヤバい、なんか鈴音ちゃんが壊れてきてる。
…よし……思い付いた……こうするしかない。
片方の『無し無し結界』を解く。
「あら……隠れるのは無しにしたんですの?」
「……」
メイドたちが邪魔で鈴音ちゃんの顔までは見えない。
メイドたちは、わたしに包丁を向けている。
「鈴音ちゃん……わたしの何が悪かったの? 教えて? 直すから……」
「朱音さん。本当に分からないんですの?」
「………」
分からない。何も鈴音ちゃんに悪いことはしてないし殴ったり無視したりもしてない。
そもそも……タイムリープした日から何日たったの?
今日は水曜日……あの日を入れて五日たった。
そんな短い間に、何が出来るの? しかも鈴音ちゃんと会ったのはあの日と、今日だけ。
「……滑稽ですわね。自分のしたことも分からないだなんて」
「…………」
「分かってますわよ。そろそろ、分身が私の近くに来るんでしょう? それまでの時間稼ぎなんでしょう?」
ぐ……ばれてる。っていうかもう真後ろまで来てる。
抱き着こうとした瞬間にこの台詞だよ。
「つまり。私が何を言っても直すつもりは無いんでしょう?」
「違う! わたしは、本気で」
「嘘つき。……そうね、教えてあげますわよお馬鹿の朱音さん」
「…………」
「お母様に、何を吹き込まれたんですの?」
「え?」
あ……そうか……忘れてたけど、純香さん、鈴音ちゃんの事を嫌ってる振りをしてた……
「無霧に何を頷いたんですの?」
「……見てたんだ」
無霧……大剣ちゃんとの、話し合い。あそこに鈴音ちゃんも居たなんて。
「その、ね? どっちからも鈴音ちゃんをお願いって頼まれたの。貴女は鈴音にとって初めての、えぇと、死んでないお友達だからって」
「……」
メイドたちが下がる。鈴音ちゃんとわたしの間に道が出来る。
そこを鈴音ちゃんはゆっくり歩いてくる。
そして、わたしの前で止まる。俯いてて表情は読めない。
隠れてるわたしは、そっと後ろから着いていく。
「ね? だから多分これは鈴音ちゃんの勘違いだよ。大丈夫、わたしはいつまでも鈴音ちゃんの友だ」
ドスッ
「……え?」
「ワタクシが包丁を持たないと思ってたんですの?」
腹を、鈴音ちゃんが持つ包丁が突き刺した。
「鈴音……ちゃ」
「うるさい。うるさいうるさいうるさい。その口を閉じなさい裏切り者。無霧がワタクシの事を殺そうと画策していたのは知っているんですわ。ワタクシをコロそうとするアイテが、ワタクシのコトを
体から力が抜ける。だめだ、立っていられない。
崩れ落ちる。
痛い。痛いよ。血が……止まらない……。
~○~○~○~○~○~
……うぅん?……血が止まらないのは……
~○~○~○~○~○~
っ!?
「ねぇ。どんな気分です? 痛いんですか?」
「『こいし』ちゃんっ!?」
「え?」
『無し無し結界』を解き、倒れているわたし……いや、『こいし』ちゃんに駆け寄る。
「『こいし』ちゃんっ『こいし』ちゃん! 何で……何で!」
「アハハ……だって私はコピーだし。皆を繋ぐのが私の役目だし……良いかなってね」
「そんな……」
「……はい? まさか、一人二役の演技ですの?」
「鈴音ちゃんは黙ってて!」
「!?」
それどころじゃないんだから!
「『こいし』ちゃん……」
「駄目だよわたし。友達は大切にしなきゃ……ガフッ」
『こいし』ちゃんが血を吐く。
「血、血が……こ、『こいし』ちゃん、病院、病院に行かないと……!」
「遅いよ。もう遅い。だから……ちゃんと聞いて」
「でも……」
『こいし』ちゃんがわたしの顔で、わたしの眼で、わたしを見てくる。死にかけてるのに……強い、眼。
「………うん…聞くよ……」
「良かった。まずは……これ」
『こいし』ちゃんの、わたしの体に着いている緑色のケーブル。『こいし』ちゃんのそれが、動き、鈴音ちゃんを縛り、近寄せる。
「ちょ、ちょっと……」
「これは動かせるの。こんな風に」
「……うん」
「後、おれ。わたしの……本庄 朱音の、過去をしっかり見てあげて」
「……あぁ」
「鈴音ちゃん……ガフッ」
また、『こいし』ちゃんが血を吐く。駄目……喋らないで……死んじゃう……!
「ひっ……な、何……ですの……?」
「許してあげる。……はぁ、はぁ、わたしと、よく、話し合って、ね? ……はぁ、んぐっ、え……と……喧嘩は、駄目だよ……」
「…………」
なぁ、わたし。分かるだろ。もう、『こいし』の限界だ。
「『こいし』ちゃん……」
「名前。……あったんだね」
「……うん、うん……!」
「……名前は、ちゃんと…おし、え……て、ガフッゲホッゴボッ………あげ…………てね……」
「うん、分かった、分かったよ……!」
「…………」
スウッと。『こいし』ちゃんの身体が消える。
それは、分身を解いた時のようにあっさりで、だけど、確かにわたしの中の一人が消えた。
「う……うぅ……『こいし』……ちゃん……」
「………ねぇ。朱音さん。何がなんなんですの? 今のは? 朱音さんじゃ無いのですか?」
「グスッ………『こいし』ちゃん。……わたしの、中の、無意識ちゃん……」
「はい?」
「あの……子……」
次の言葉を出そうとして、意識を失った。
『こいし』ちゃんとは、一体、古明地なんなんだ……。
と、突然の東方要素ですけど……ちゃんとタグに付いてますからね。