大筋は、良いんですけど、なんか想像と違う。
……しかも『こいし』ちゃんについての説明も出来なかったし。
後恒例のこれ、前回忘れてた。直さないけど。それでは、どうぞ。
目の前に朱音さんが倒れている。
今なら。今なら、何の苦労もなく朱音さんを――裏切り者を――殺せる。
でも、それで良いの? せっかくの親友なのに?
いや、でも、こいつは私との友情を裏切った。
ならば殺すべき――
『わたしと、よく、話し合って、ね?』
……なんで、なんで。
『喧嘩は、駄目だよ…』
言葉が頭から離れない。演技なのに。自作自演の癖に。
「う……く…」
手の中の包丁が、重くなる。違う、重く感じているだけだ。刺した感触は忘れられない……でも、慣れている。
今更、何を躊躇うのか。いままで、何人の相手を殺してきたのか。
私を見てくれないおじいちゃんを殺した。
トンッと軽く押した、それだけで車にひかれた。
私を馬鹿にした男の子を殺した。
物陰に呼んで首を絞めた、泡を吐いていた。
褒めてくれない先生を殺した。
飲み物に洗剤を混ぜた、味も匂いも完璧だった筈だ。
沢山の魔法少女を殺した。
幼いからと襲いかかってきたから、ランスで串刺しにした。
私を愛してくれない両親を殺した。
魔法を初めて試した相手だった。
そう。私の手は血に染まっている。刺した感触、絞めた触感、押した感覚、全て残っている。
その点、戦刃 無霧は分をわきまえていた。私のライバルとなり、いつでも奇襲を警戒し、挙げ句には本気で殺そうとしてきた。
………あれ? 始めに殺そうとしてたのは私だったかしら。殺されまいとしていたのはあちらだったのかしら。
まあいい。私を殺そうとしているのは事実なのだから。その時はやり返せばいい。
そんな私が、他人を殺すのを躊躇っている?
他にはお母様を殺していない?
今のお母様は私を嫌っている。そもそもあまり面と向かってくれないから、殺しにくいから、生かしておいている。
対して朱音さんは、生かしておく理由が無い。
そうだ。このまま朱音さんを殺してしまうのは勿体無い。お母様の目の前で殺して、その後お母様も殺しましょう。
成る程、この考えに至るまで体が止めていてくれたのね。流石は私。確かに普通に殺すのはつまらない。
「そうと決まれば。そこの、朱音さんを持ち上げて」
近くのメイドを使い、朱音さんを持ち上げてもらう。
流石に小学五年生の女の子では中学生の体は持てない。
「ふふ、フフフ、お母様はどんな顔をするのかしらね」
急がなくては。
すぐに辿り着く。当然だ、私を邪魔する者は居ない。
「お母様? 起きてくださる?」
「…………」
「お母様、お母様!」
「……ん……すず…ね……?」
少し睡眠薬を飲ませ過ぎたかしら。いや、これくらいが丁度良いのか。
「お母様!」
「何ですか……珍しい……」
「朱音さんを助けてくださる?」
…………あら?
「はい?」
「あ、えっと、違くて……」
「朱音さん? 遊びに来てくれていたのですか? 大変、私ったらグッスリ寝てしまってましたわ!?」
何で、『助けてくださる?』なんて……
「お母様」
「あ……鈴音? 何で泣いているのかしら」
「泣いて……?」
顔に手をやる。水が手に着く。
…………。
「っ、包丁なんて危ない物を……あ、ら? 朱音さん?」
「……やっと気付いたんですの?」
「ッ! 何が起きたんですか! メイド、朱音さんをこちらに!」
メイドは反応しない。当然だ、まだ私の魔法は続いている。
「メイド? 速くしなさい」
「いつも」
「?」
「いつもお母様は」
「……」
え……私は、何を言おうとしている、の?
「…その……」
「…………。鈴音、お母様は聞きます。ですから――言ってごらんなさい」
「………」
良いや。何だか良く分からなくなってきた。朱音さんの事も、自分の事も、お母様の事も、何もかも。
話してしまえ、心のままに。
「私の事を蔑ろにする」
「……!」
「私は、ただ愛されたいだけなのに。うぅん、楽しく遊びたいだけなのに、楽しく生きていきたいだけなのに、なんで、なんで……私は……殺して、しまうの……ッ!」
「鈴音……」
「本当は殺したくなんかなかった! もっと私を見てほしかっただけなのに! 私は、何を間違っているの!? 何を、何が、どうして!」
急に抱き締められる。
……あの恐ろしい夢を見たときも、柄になく泣いて、お母様は抱き締めてくれた。
「きっと鈴音は、他の人より、少しだけ、愛情を多く持っているだけ」
「……」
「愛して欲しくて、愛を足りなく感じてしまってるだけ。間違っていません。それが貴女の……長所です」
「……違う」
「短所なのですか? 私はそう思いませんけど」
「……違うの。長所なら、なんで、なんで殺してしまうの……?」
「あら。確かに」
……え?
「となると私が間違えましたわ。えぇ。言い間違い」
「…お母様」
「……間違いは、誰にでもあるのですよ鈴音」
お母様の体を押して、抱き締めてくる腕から逃れる。
そして、睨み付ける。
「私は真剣に……真剣に…………」
真剣に、何をしてた?
「だから、私は鈴音、貴女への接し方を直しますわ」
「……はい?」
話が繋がらないし頭はこんがらがってるしで何がどうなってこうなっているのか分からない。
「待って。確か私はお母様の目の前で朱音さんを殺して、その後お母様も殺す筈だったんですけど……何処で狂ったんですの……?」
「……ねぇ、鈴音? 今までは、貴女のそれが怖くて距離を置いていました」
話を聞かないで、朱音さんを殺せば良いのか。
……でも、何で。顔が後ろを向いてくれない。お母様から目を離せない。
「だけど。今は朱音さんが居ます。貴女への接し方を間違っていると思って、それでも『それが正しい』と言ってしまう、少し変な女の子が」
「朱音さんを変と言わないで」
「はいはい。……良いですか? 人は誰でも間違うものです。貴女でも、私でも、きっと朱音さんでも」
「……」
「けど、間違えたなら正していけば良いのです。私にはその勇気が無かった。けれど、朱音さんから勇気を貰いました」
「………何が言いたいの?」
「遅いですけど、それでも、貴女への接し方を変えます。貴女が嫌がるほどに愛してあげますわ」
自信満々に笑うお母様。私と同じ喋り方。
……私
「……私は、お母様を、殺す、と、言ったのですけど。それでも?」
「殺してみます? 今の私に怖いものは無いですわよ? そうね……強いて言うなら、貴女が私を『嫌い』と言うのは、少し怖いですけど」
「嫌い」
「それは貴女の気のせいだと思いますわ」
…………こういうの、なんて言うんでしたっけ。
確か、そう、『興が削がれた』。
「もう良いですわ」
魔法を解除。変身も解く。包丁を放り投げる。
「殺すのはやめです。朱音さんが気絶したので、どうにかしてあげてください、お母様。私は部屋で……考えをまとめてきますわ」
「あら忘れてましたわ。メイド、メイド! 朱音さんを介抱してあげて!」
「え? あ、は、はい!」
疲れた。ソウルジェムもかなり穢れている。
……あれ? 徐々に綺麗になっていってる気が。
いや、有り得ないか。見間違いに違いない。
~○~○~○~○~○~
…最後の……お仕事……完了…………それじゃあ……バイバイ……わたしたち。
……楽しかったよ。