の、一歩手前のお話。というか閑話。
ちゃんと最終回の形は出来てます。後は書き出すだけ。
どこまで描写出来るか不安です。出来る限り細かくしたいけどそうすると文字数が……うぎぎぎ。
まあ。とにかく。彼は彼でしっかり終わらせましょう。
それでは、どうぞ。
気付くと、真っ白な空間に居た。よく分からないが、取り敢えず床はあるし重力もある。
歩こうとして、ずっこける。
見ると、体が自分の物になっていた。
自分の……本庄蒼太の物に。
「ってことは、何だ。おれはまた死んだのか?」
……有り得る。普通に有り得る。なんせ正位置のワルプルギスの夜に掴まってたんだ。触手で包み込んだ筈だが、振り落とされたか潰されたか。
「とはいえおれが居なくなったら、朱音はどうなるんだ? っていうか……いや、まずはここから出るか」
或いは神に会う。死んでたら神に、生きてたら外に。
ゆっくり歩き出す。まだ体が馴染んで無い。たまに転びそうになる。
「っててて……」
てか転んだ。手足が長すぎるな。と、自分の足を見たんだが。
その奥、つまりおれの後ろに何かがある。
「……逆方向かよ。危うく本当に迷子になるとこだったぞ?」
立ち上がりそちらへ歩く。
どうにもそれは鉄の壁のようだった。いや、塀か? 囲いか? へー、かっこいー。
―――高さは俺が手を伸ばして届くぐらい。冷たい。寒い。
巨大な
ふむ、これは……上から見たらどう見えるかと言うと……歯車。
出入り口を見付けるために一周してみる。この空間、有るのは本当におれとこれだけみたいだ。
真っ白で、見続けたらきっと狂う。だって地平線すら無いんだから。一寸先は白。
闇ならば何かあるが、白には何もない……ってね。
「無い、か?」
実を言うと一周したかどうか分からない。目印なんて無いから。
しかしこれでやることは無くなった。寝るかな?
「なんて。じゃあ登るかな」
歯車っていうのは、真ん中に嵌め込むための穴がある。そこに何かあるかもしれない。
「……登れるかな」
実を言うと運動神経なんて無い。
手をかけ、体を持ち上げてみる。無理だ。
手をかけ、歯車の歯の部分に足を付け、どうにかしてみる。お、今度は少し上手く行った。登れて無いけど。
手をかけ、足を使い、もう一度。肘を使って、体重かけて、今度こそ……!
「ふぅ~。疲れた」
コツはどうにか肘を上に乗せること、掛かる力を真下へ向けること。じゃないと滑る。
さて、案外見晴らしが良い。案外ってほどでも無いか。そして案の定中心に穴がある。こっちは案外でかい。
覗き込む。あ、誰か居る。金髪で、なんか薄汚い服を着ている。髪が長いから女の子か?
「やあ」
こう言うときは声を掛けるに限る。他にやることも無いし。
彼(彼女?)はビクリと肩を震わせてこちらを見上げる。あー、多分女の子かな。そして顔には赤の刺青。
……何となく分かってきたぞ。
「君は誰かな?」
「……」
「おれは本庄蒼太。まあ、見ての通りおじさんだよ」
「……」
「そこに行っても良いのかな?」
「……」
駄目だ、会話が成り立たない。言葉が分からないのか、話したくないのか。後は、話し方を忘れたとか。
「じゃあ、降りるよ?」
飛び降りる。幸い、着地は成功した。他人の目の前でこけるほど恥ずかしいのは無い。ごめん嘘。もっと恥ずかしいのは沢山ある。
「さて……名前、教えてくれるかな?」
「……」
灰色の壁の中、その少女はぼんやりとした顔でおれを見る。
「やっぱり駄目か……プリーズテルミーユァネーム?」
「……ヘンなの」
「喋れるのかよ!?」
くそ、てっきり英語じゃないと喋れないのかと思ってひやひやしてたのに……。
「あなたはどうやってココに?」
「さあ? 君の名前は?」
「あなたはナニモノ?」
「人間……かな。君は何て言うの?」
「ふぅん、ヘンなの」
「君に言われたくないんだけど、『ワルプルギスの夜』になった魔法少女ちゃん」
「……へぇ」
推察は当たりみたいだ。多分ここはワルプルギスの夜の中。そしてこの子は魔法少女。
理由はこの歯車。ここまで巨大な歯車はそう無い上に、ワルプルギスの夜の本体は歯車だからな。
「ザンネン、ワたしはワルプルギスのヨルじゃない」
「何だよ」
恥ずかしいな、まったく。偉そうに『~だからな(キリッ』とかやっちまったよ。
「でも、ワルプルギスかもしれない」
「うん? どっちなんだ?」
「わからない。分からない、解らない判らないワカラナイ」
「そ、そうか」
ちょっと目のハイライトが薄くなったよな? こえぇ……。
「じゃあ何が分かるんだ?」
「……ココはこころ。ダレかのココロ」
「ふぅん……誰かの、心か」
誰の心なのかによるな。ワルプルギスの夜の心か、朱音の心か。或いは……。
「……あなたはソータ」
「そうだな。蒼太だけど」
「…………ソータ」
「そうた」
「ソータ」
「そ、う、た」
「そ、う、だ」
「蒼太だよそうだじゃねぇよ」
「……ソータ」
「それで良いよもう」
何か、この子と喋ってると気が抜ける。小難しい事は考えなくて良いさ、のんびり構えよう。
多分それじゃ駄目だけどさ。おれは切り替えが出来る男だ。
「で、おれは何をすれば良いんだ?」
「……さあ」
「そりゃ、知らないよな」
やることが無い。やれることが分からない。どうしろと言うのか。
「私の力があればどうにか出来るけど」
「なら良いんだけどな……って誰だ!?」
「私!」
「なんだお前か!」
「「あっはっはっ」」
笑い合うおれたちを少女は見つめる。そういや、この子はずっと無表情だな。
…………はい現実逃避終わり。
「『こいし』ちゃん……死んだんじゃなかったのか?」
「ううん。だって私は偽物だし。オリジナルみたいに無意識を泳ぐ事なんて出来ない」
「そうか」
『こいし』ちゃん。不安定な朱音の調整役として産み出された存在。二週目の時に朱音の身代わりとして死んだ……と思ってた。
「ちなみにさっきの、微妙に理由になってないからな」
「えー。じゃあ、私は無意識そのものだからそう簡単には消えない、って感じで」
「ふーん。……で、どうやってここから出れるんだ?」
本題を切り出す。
「んっとねぇ。私が行きたい方に行けば良いの」
「ふぅん」
「だけど、着いてこれるのは一人だけ。私は死神じゃないからね」
……つまり『こいし』ちゃんに着いていけば成仏出来るか、或いは神に会えるって訳か。
「よし、じゃあこの子を連れてってくれ」
そう言って少女を指差す。少女は不思議そうにこっちを見てくる。
「……良いの? 多分、もう私はここに来れないよ?」
「だからだ。この子は恐らくずっとここに居たんだから、もう良いだろ」
少女の頭を撫でてやる。
「それに、おれは一度生き返ってるからな。三回も要らない」
「……それで良いなら、良いけど。後悔は無い? これから永遠に一人ぼっちになるよ?」
「夢のネタはもう十分にある。『こいし』ちゃんに、朱音のお陰でな」
もはや立ってる理由も無いから、座る。これはおれの意思表示みたいなものだ。ここから動くつもりは無い。
「…………オリジナルみたいに、無意識で行動出来たらなぁって、初めて思ったよ。行こう、ワルプルギスの夜の魔法少女ちゃん」
「……バイバイ」
『こいし』ちゃんが少女の手を掴むと、二人はスウッと消えた。てか、やっぱりワルプルギスの夜だったのか。
もうどうでも良いことだけどな。寝っ転がる。
「…………あ、両手使って貰えば良かったんじゃね?」
別に良いか。真っ白な空を見上げる。
ここはワルプルギスの夜の中。核心部分。
そこに居た少女は居なくなり、代わりにおれが寝ている。
『こいし』ちゃんとあの少女は何処へ辿り着いたんだろうか?
てか少女が居なくなってワルプルギスの夜はどうなってるんだ?
ここは誰かの心って言ってたけど、ならばこの空間は何なんだ?
疑問は沢山。けど、考察するための時間は無限。
飢え死にしないことを願いつつ、ま、これからはのんびりさせてもらうかな。
流石に三十路過ぎのおじさんに女子中学生のフォローは辛かったんだ。
「朱音、後は皆で頑張れよ。……ふわぁ」
まずは寝るかな。
というわけで『おれ』こと本庄蒼太さん、お疲れ様でした。
ちょいちょい出てきてはネタ役として使いやすいキャラになってて、その上シリアスも出来る万能キャラでした。
惜しむらくは、本来彼が主人公となれた筈なのに主人公になれなかった所。書きやすいのになぁ。
さて、では次回、最終回。まどマギらしい