「ん……あれ?」
違和感を持った。今は体育の時間。
「どしたん、朱音」
「……さっき何か聞こえた?」
「んー? 気のせいじゃないの? それともお化けとか」
「そうかな……」
なんだろう。なんか、見覚えがあるような……聞き覚えのあるような。うーん?
「明子さんの言う通り気のせいですわよ」
「うーん。そっか、そうだよね」
この間のワルプルギスの夜との戦いで疲れてるんだろうね。
「ふぅー、んで後二週ぅ? めんどいめんどいめんどーい!」
「明子ちゃん、荒れないでよ」
~●~●~●~●~●~
放課後。久々に見滝原へと行ってみた。
いつもの公園でベンチに座わり、砂場で遊ぶ男の子を眺める。
「あら本庄さん久しぶりね」
「あ、マミさん。お久しぶりです」
ぼんやりしていたらマミさんが来た。
「珍しいですね、マミさんが一人だなんて」
「そうかしら? そう言う本庄さんはまた一人で来たのね」
「またってなんですかまたっ……て……」
……あ、え? わたしは……いつも……一人……?
「朱音さん!」
いや……そっか。一人だったね。始めっから、ずっと。
「えぇと、本庄さん?」
「……もー、酷いなぁマミさんは。わたしだって友達くらい居ますよ?」
「あ……そういうつもりじゃなくって。勘違いさせたらごめんなさいね?」
「どーしよっかなー」
「今度うちに来たときに美味しい御菓子あげるから、ね?」
「それで手を打ちましょう」
男の子は迎えにきた父親と共に帰っていった。
「で、まどかちゃんとほむらちゃんは何してるんですか?」
「家で宿題よ。特に暁美さんが苦労してるみたいよ」
「えぇっ!? 嘘だぁ~! ほむらちゃんって頭良いイメージなのに!」
「時間操作の魔法に頼りきってた反動で、勉強をしない姿勢が出来ちゃったらしいのよ」
「うわ。それはツラいですね」
買い物の途中だったらしく、その後少し世間話をしてからマミさんは帰った。
「んっん~」
大きく背伸びをする。じゃ、わたしも帰ろうかな。
―――違和感。
なんか、何かがおかしい。おかしいのに分からない。
何がおかしいの? どうしておかしいの? いつからおかしいの?
分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。
―――――分からないなら、いっか。
閑静な見滝原市を自転車で駆け抜ける。
あれ、そう言えば何で
~●~●~⚫~⚫~⚪~
暗い。
凄く、暗い。
私は、眠い、けど。
私は、寝て、ない、から。
水の、中に、漂う、私は、
ねぇ、目を、開け、てよ。
一人、嫌い、なの。
ねぇ、早く。
朱音。
―――。
なんで起きないのよ起きてよちゃんと見てよ目を反らさないでしっかり見なさいよ逃げてばっかりで一回もこっちの言葉を聞かないで他人は二の次でやりたいことしかやらない癖に他の人にいい顔ばっかりして私の事を見てよ話してよ撫でてよ抱き締めてよ悲しいよ辛いよ無視しないでよ押し付けないでよねぇねぇねぇってば!
―――。
遠くから音が聴こえる。どれだけの時間が経ったの?
私は、わたしへ、声を伝えられない。
わたしは、私を、認識出来ない。
私は、わたしの中に居る。
わたしは、私の外に居る。
わたしは。生きている。
私は。……生きてない。
―――!
わたしは、私を、産んだ。
私は自分が何の為に産まれたのか知っている。
それはある意味それなりに幸福な事なのかもしれない。
だけど。
そんな幸せならいらない。
普通になりたいよ。
普通に生きていたいよ。
―――!
私はわたし。わたしは私。私はわたしは私はわたし。
私はわたしは私はわたしは私はわたしは私はわたしは私はわたしは私はわたしは私はわたし。
混じって、溶け合って、
私は、そろそろ………自我、を……保てなく…な……るから、早く…誰か…………助けて……!
~⚫~⚪~⚪~○~○~
「はぁっ、はあっ!」
少女が息を切らしつつ、その場に倒れる。
「鈴音ちゃんっ!」
「まどか、近付いちゃダメ!」
倒れた鈴音の周りに、泥で出来た槍が沢山刺さっている。鈴音の切り傷から血が流れ出ている。
「お、おいおい! こっちは朱音の為におめぇの手伝いしてんだぞ!? 倒れんなよ、ちぃっ!」
京子が槍を振り、泥人形の攻撃をいなす。
「キリが無い……!」
この泥人形たちは倒れている少女の魔法によって産み出された。少女は泥人形を使い、中に取り込まれている少女を助けようとしたのだ。
―――しかし、黒い球体に触れた泥人形たちは侵食され、魔法の使用者へと反逆してきた。
「っ……!」
「まどか!」
「ま、まどか! 危ないってば!」
まどかは鈴音を助けようとするがほむらとさやかに止められる。
まどかは魔法少女ではなく一般人。泥人形に対する防御手段を持たない。
「でもっ! あのままじゃ鈴音ちゃんが死んじゃう!」
「だけどあなたが死んだら意味が無いでしょう!」
「京子とマミさんに任せなってば! 私たちじゃ何も出来ないんだから!」
『勿論、ボクと契約すれば別だけどね』
インキュベーターが声をかけるが、直後に飛んできた泥人形の腕に掴まれ地面に沈んでいった。
「鈴音ちゃん!」
「…ふ……」
鈴音が、
「くふ……」
笑う。
「くふふふふふぅぁあははははははは!」
そして鈴音が手を振ると、黒く侵食された泥人形たちは崩れる。
「うおっ!? と、と」
「泥人形たちが消えた……? っ、鈴音さんは!?」
「やった、やったやったやってあげましたわぁ朱音さん! 起きて、起きてくださいまし!」
立ち上がり両手を広げて叫ぶ。その姿は神の降臨を迎える信者のようだ。
「朱音さん!
そう叫ぶと、鈴音はばったりと倒れてしまった。
「鈴音ちゃん!?」
「お、おい!」
……少女たちは鈴音の方を見ていたから気付けなかった。黒い球体から伸びる影に―――。
キョウキ、