そんなに変わってないかな?
広大な宇宙、漆黒の海に輝く無数の星。
ココは地球から、太陽系から遥か遠く。
太陽系とは違う星系が連なる場所。
漂う一機のMS、その中で彼は目覚めた。
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世界は美しい。
今まさにそう感じる。
漆黒の宇宙に浮かぶ、地球を思わせる青い海の星、
火星のような赤い灼熱の星、土星のような輪が二つ付いた不思議な緑の星。
翔る彗星、流れ星。
視界いっぱいに映る、光る無限の星々。銀河の渦。
此処は何処だろうか。
なぜ、俺はこんな所にいるのだろうか。
腕を動かしてみる。
視界に映るのは何処かで見たことがある白亜の装甲に覆われた腕、黒い手、マニピュレーター。
視線を左に移す。
左肩には白亜の装甲に赤色で91の文字。右肩に視線を移せば同じく赤のFの文字。
さらに視線を動かす。
青い体、腰辺りから下は腕と同じく白亜の装甲、青いつま先。
まるで……、これではまるで、
ガ ン ダ ム じゃないか。
感覚が走る。ぼやけていた感覚と頭が急激にクリアーになる。
慌てふためきパニックになるかと思いきや、彼は至極冷静だった。
分かる。
というか、忘れかけていたモノを思い出す。
それはコイツの動かし方。……一先ず同調《リンク》解除。
一瞬の暗転、瞬きにも満たない時間で視界にはコックピットが映る。
すぐさまコックピットハッチオープン、生身のまま外に出る。
久々のこの感覚。
そのまま少し漂い、宇宙を感じる。寒い、けど……久々の宇宙は変わらず綺麗で、静かだった。
そして、今まで乗り込んでいたガンダムを見る。
白色の二対の角、ツインアイ、ガンダム特有の顔、スマートなボディ、両肩アーマーのF91の文字。
細部が若干違うが間違い無い、ガンダムF91だ。
見間違う訳が無い、俺の愛機……一番好きなガンダムだ。
だが何故だろう、ココに居ることとコイツに乗っていることに疑問を一切感じない。
不思議だ……。
と、ココで失敗に気づく。
ノーマルスーツもバックパックも無しに宇宙に出たもんだからF91に戻れない。
困った。生身AMBACで頑張るか?向こうから来てくれれば助かるのだが……。
と思うとF91のツインアイが青く光り、背部のメインスラスターから青い粒子を音も無く放ち、
手の届くところまでやって来た。
「マジか……」
宇宙空間で声を出せたのも聞こえたのもビックリだが、思っただけで動くのは衝撃だった。
そして疑問が生まれた。
スラスターから出た青い粒子のことだ。
そう思うや否や、再び乗り込み機体データを出す。
疑い半分だったが、やはり念じれば反応してくれた。
空中に数十個のデータが出てくる。
「動力は……G-DRIVE Ω?GNドライヴじゃなくて?それに永久機関だって!?
じゃあさっきの青い粒子は……Ω粒子?特性は……GN粒子とほぼ同じか。
なら、このF91の特性は?
……冗談だろ、フル・サイコフレームだって!?
それになんだこの装甲強度は!超合金Zじゃあるまいし……。
武装は……ん?ブレードファンネル?凄いな……ビームサーベルをファンネルにしたのか。
んで補助にバイオセンサーね。
大気圏内飛行も難なく可能、か。
……出力、センサー、変換効率……デタラメだ、それに……極めつけはコレか……」
次々とガンダムに対して念じ、現れるモニターを見ていく。
モニターに出る数値はどれもこれもデタラメな数値、凄まじいの一言。
そして最後に出た《UG細胞》の文字。
その意味は……
「完璧なメンテナンスフリー機ってことか」
損傷しても自動修復しさらに強固な物へと改修、エネルギーも自動回復。
理解した、外見こそガンダムF91だが中身は全くの別物。
「理解したはいいが……これからどうするかな。
位置を見る限り太陽系はどこだよ、って感じだしな……」
目の前の木星の7倍はある惑星の大きさに驚きながらデータを出しては消していく。
うーん、と唸っていると何かの声と意思が頭を駆ける。
「なんだ、今の……歌?
それに叫びと願いのようなのが走った?
……この星の裏側……あっちか」
木星っぽい目の前にあるデカイ星、今いる位置から丁度反対側で何か感じる。
ダイレクト・リンク。モーションも完璧、各機能オールグリーン。
一瞬の暗転、視点がF91のモノになる。
「よし、F91……発進」
F91はメインスラスターから青い粒子が噴出し、凄まじいスピードで宇宙を駆けていった。
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僅か30秒で意思の固まった所に到着、戦闘の光りが見えた。
「光りが見えた!
え?あれは……マクロス?」
全貌が見える位置で停止。
先ほどの声を頼りに来てみれば見えたのは戦闘の光りと、巨大なドーム状の大型都市船に、
それに連なる形で数十個の長方形の環境艦が連結している巨大な宇宙船。
その周りには護衛の戦艦が陣取っている。
「間違い無い、マクロスに出てくる超長距離移民船団の船だ。
だが……知らない、もしかしてマクロスFか?
ちぃ!よりにもよって見てないヤツか……」
7までしか見てないからな……、こんな事態になるんだったら見ておくべきだった。
と後悔しても時既に遅し。
だが、黙って見過ごす訳にもいかない。
それに、このガンダムだったら……バルキリーの機動に余裕で着いていける。
「近いな、三機の小隊が何かに追われている……?
狙えるか?いや、当ててみせる。このガンダムなら」
人の気配、それも尋常じゃない位に焦りと恐怖を感じる。
その後方、三人を追う複数の生物から弱いが意思のようなモノを感じる。
ビームライフルを構える。
少し間を空け、そこから銃身を僅かに下にずらし、トリガー。
独特の発射音と共に、青いビームが発射される。
一つ。
すぐさま小隊の元へと向かいながら再び構え、今度は右に少しずらしトリガー。
二つ。
そのまま左へずらし、三発目。
三つ。
ざらつく感覚が走る。
あの虫みたいなのの残留思念か?だが、なんだ?怒りに似たような感じが……。
そう思いながらも一旦考えるのを止め、周りに気を張らせながら小隊に並びオープンで通信を繋ぐ。
「そこの新統合軍のナイトメア、聞こえるか?
こちらガンダムF91、無事か!?」
「き、聞こえる!!貴官か?さっきのビームは!?」
聞こえてきたのは自分とそう年は変わらないであろう若い男の声。
震える声から焦りと恐怖、安堵が渦巻いているのがよく分かる。
「そうだ、俺が狙撃した。
いいか、お前達は下がれ。ココは引き継ぐ。
そんな状態じゃまともに操縦すらできんぞ」
「りょ、了解。感謝する!!」
「ありがとうございます!!」
「助かりました!!」
隊長機に続き、後続の二機からも声。
同じく男が一人、もう一人は女性、これも若い。後退を促すと涙声で即答。
すぐさま反転し、母艦がいるであろう方向へと後退していった。
えらい動きが荒かったな、新兵……か?
いや、今はそんなことより……この虫みたいな奴らをどうにかしないとな。
一瞬だけ青い光りが身を包む。
サイコフレームを通して感覚がさらに広がる。
「そんなに数は多くない、この程度なら……」
機体を走らせ、ビームライフルを再び虫に向け一発、僅かに遅らせ二発目。
一発目のビームを虫は高速で回避、しかし二発目が回避した場所で命中。
それを確認することも無く既に二匹目、三匹目と仕留めてすぐ。
二機の見たことのないバルキリーが目に止まる。
「あの二機、相当の腕前だな。
それに……追加装備が付いているな」
と、見ていて白い方が狙われているのに気がつく。
だが傍から見れば……
「無防備すぎる」
その言葉と同時に、ビームが虫に命中し爆散する。
それに気づいたのか、白いバルキリーがガウォーク形態で寄って来る。
「すまない、助かった。礼を言う」
男の声、なかなかに覇気のある気配漂う気がした。
「いえ、何せ丁度良い的だったんでね」
「ハハハッ!そりゃそうか、あんな所で棒立ちだもんな。
……S.M.S所属ヘンリー・ギリアム大尉だ」
ガラス越し、ギリアムが敬礼したのでこちらも名乗りながら機体の敬礼で返す。
「俺はゼノン・グレイブ……所属と階級は無い、コイツはガンダムF91」
一瞬、前の階級を言おうと思ったがこの世界では意味は無いと思い何も言わずに答えた。
「なんだ?傭兵かなんかか?」
「あー、まぁそんなもんだ」
「なるほど、しかし始めて見る機体だな」
「ワンオフってヤツさ」
「へぇ~、っと!!」
虫の発射した赤いビームが通り過ぎる。
悠長に話していたので案の定、狙われた。
続けて砲撃が迫る。
即座に回避、二機で虫に向かう。
「戦場なのに悠長に話し過ぎたみたいだな!」
「そのようで……、援護する」
「了解!!」
ギリアム機は弾幕を高速で避けながら虫へ突撃。
F91はその場から上昇しながら虫へ向け三発。
同時にヴェスバーをそのまま後方に発射し、迫っていた虫二匹に命中させる。
「オオオオッ!!」
ギリアムが吼える。
高速で接近しながらミサイルで撃ち漏らした虫をバトロイドに変形し、
ガンポットで撃破、即座にファイターに戻り縦横無尽に宇宙を駆ける。
「凄いな、あのガンダムって機体。変形機構も無いのにバルキリーの機動に余裕で付いていってる。
それにあの射撃の正確さ、恐れ入るね。負けていられねぇなあ!!」
バトロイドに即座に変形、無数の虫をロックオンしミサイルを一斉発射。
「ギリアム!」
「オズマ隊長!」
全弾命中を確認すると、離れていた別の重装備の灰色のバルキリーがギリアム機に並ぶ。
「あの白いのは!?」
「味方です。あの機体はガンダムと言うらしいです、先ほど助けて貰いました。
あと乗っているのは傭兵らしいです」
その白い機体の戦闘を見て、オズマは思わず声を漏らす。
「……凄まじいな」
「ええ、射撃の正確さは正に百発百中って感じですね」
ここで二人の目に映ったのは青く光る剣で虫、バジュラを斬り裂く姿。
「なっ!?」
「光りの剣!?ピンポイントバリアサーベルか?
いや、収束の仕方が違う……まさかビームサーベル!?」
「……何者なんだ、一体……」
爆発音が響く。
それで二人は我に返り、戦闘を再び開始した。
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戦闘が始まってからどれほど経っただろうか。
確実に数は減っているものの、減っている気がしない。
虫っぽい外見の所為もあるのだろう、どうしても数が無限に湧いているようにしか感じない。
「クソッ、抜けられた!!」
ギリアムは思わず叫ぶ。
撃ち漏らした大型が二体、中心都市への侵入を許してしまう。
「やらせねぇぞ!!」
即座にバトロイドからファイターに変形、
大気圏内ではデットウェイトになるスーパ-パックをパージし、空いた穴より都市に入る。
少し離れた所で、ゼノンに人々の意思が走る。
「何?抜けられたのかッ!?」
大型を真っ二つにし、都市の方を向く。
そこへ灰色の重装備のバルキリーが並ぶ。
「S.M.S所属オズマ・リーよりガンダムのゼノン・グレイブへ。応答されたし」
「こちらゼノン・グレイブ、何か」
通信機越しに聞こえたゼノンの声を聞き、オズマは疑問を持つ。
「(若い、ミシェルと同い年位か?)
俺はギリアムの上官だ、先ほどはギリアムを助けてくれたそうだな。感謝する」
「当然、それよりギリアムさん一人で都市に入っていったのを感じた。援護に向かいたい」
「なにッ?抜けられたのか!?
了解した、ココは引き継ぐから頼む!!」
「了解」
そう言うや否や、二機はそれぞれの戦場に向かった。
「ん?アイツ……なんて言った?感じたといったのか?」
オズマはそう疑問に思うも、赤い軌跡を残して迫るバジュラを前にそんな意識は薄れていった。
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都市船の中に入り、マクロスの広さを改めて実感する。
「やっぱ思った以上にデカイし広いな……」
その建物の中に見慣れた物もあるのに気づく。
渋谷の109、どこかで見たような中華街、アメリカを思わせる町並み、
オーストラリアのオペラ・ハウスそっくりの建物などなど。
ゼノンを圧巻させるには十分だった。
「凄い……。
ギリアムさん?」
観賞に浸っている場合ではなかった。
ゼノンはギリアムの極度の焦りを感じた。
「取り付かれたのか!?
場所は……あっちか!!」
最大加速、すぐに目視。
そこには大型に機体が捕まり、もがいている姿が目に映る。
同時に近くに人の反応。
男の荒い息遣い、女二人の恐怖の感情が走る。
「逃げ遅れたのがいる!?」
先に救出しようか一瞬迷うも再び視線を戻すと、このままではやられると判断したのか、
パワードスーツの様なものを着たギリアムはコックピットから出て銃を乱射している。
「ッ!?それは無謀過ぎる!!」
ゼノンは思わず叫ぶ。
咄嗟にビームライフルを構えようとするがある事を思い出し、ビームサーベルを手にする。
宇宙船《こういう》中でビームは駄目だ、接近戦でカタを付ける。
そして大型は銃を乱射しているギリアムをその手で掴む。
「棒立ちで乱射なんかしてるからッ!!」
思わず、苛立ちが言葉に出る。
ライフルを誰もいないであろう所に放り投げスラスターを噴かし一気に接近。
大型は気づくもこのF91のスピードの前では、もう遅い。
ギリアムを掴んでいる腕を斬り落とし、空いている方の手でキャッチ。
間髪入れずそのまま返す刃で高速で横一閃。
再びざらつく感情が頭を駆ける。
先ほども思ったのだが、この虫はほぼ同じ感情だった。
思考をしないのか?それともそういう生物なんだようか……いや、でも感情はちゃんとある……。
「またこの感じ……?
けど、今は!!」
すぐさまギリアムを拘束している手を剥がし安否を確認するため、
コックピットから降り、ギリアムの元へと向かう。
「ギリアムさん!無事ですか!?」
「う……ぁ、ゼノ、ンか。ハハ……また、助けられちまったな」
両腕は在らぬ方向に曲がり、口から血を垂らしながらも息絶え絶えでゼノンに話しかける。
「そう、ですね……。
(両腕の骨が完全に折れている、足は……一様無事だが激痛で立てるかどうか。)
おい、そこの三人!!安全な所まで行くからコッチに来い!!」
「あ、あぁ……」
ギリアムと似たようなパワードスーツのような物を着ている美男子一人、
緑の髪の小柄の女の子、ブロンドの美人が寄って来る。
さっき感じた三人か。
「ギリアムさん、S.M.Sの場所は何処です?」
「データを……渡す、すまん……少し眠、る」
データチップらしき物を受け取るとギリアムは激痛故に意識を手放す。
とは言っても、このデータチップは俺の機体には合わないのでどうしたものか。
「君、S.M.Sっていう所の場所を知っているか?」
「あ、あぁ分かるぞ」
「そうか、案内を頼む、F91の掌に乗ってくれ。君達も」
「……はい」
「え、ええ」
F91に念じ、右掌をを降ろさせる。
そこにギリアムを青年と共にゆっくりと乗せ、
他の者も全員乗ったのを確認するとコックピットに再び乗り込む。
F91の手に四人は少し窮屈だろうが少しの間だ、我慢してもらおう。
同調《リンク》し、F91を立たせS.M.Sに向かおうとしたその時、
自分に向けての明らかな敵意を感じた。
「上かッ!?」
右掌に乗っている四人に被害が出ぬよう優しく指を閉じて包むと同時に、
左腕のビームシールドを即座に展開し迫っていた攻撃を難なく防ぐ。
攻撃の元を見ると大型が迫るのが見える。
「ビームライフルを取りに行っていたんじゃ間に合わない……」
横目でチラリと道路の上に横たわっているビームライフルを見る。
というか、そもそもビームは使えない。
接近戦はもっと駄目だ、四人に負荷が掛かり過ぎる。
なら……
青い粒子が一瞬輝く。
「ファンネルッ!」
腰よりビームサーベルが二基飛び出し、不規則な機動で大型に高速で迫る。
大型はファンネルを落とそうとするもその機動に付いていけず、戸惑っている。
隙を見せた大型を上と下から貫く。
そのまま間髪入れず回転させ、大型を縦に真っ二つにする。
「す、すげぇ……」
指の間から戦闘を見ていた青年は、その凄まじさに思わず声に出してしまった。
「他は……いないか、よし。
君、S.M.Sまでの案内を頼む」
コントロールでブレードファンネルを腰部に戻し、周りに気配を感じないことを確認すると、
掌でコチラを見ている青年に声を掛ける。
「あぁ、S.M.Sはココからそう遠くは無い、あっちに向かってくれ」
と青年は北西の方角を指差す。
「わかった、しっかり掴まっていてくれ」
そう声をかけると、ゼノンはF91を北西の方角に向かわせた。
F91の手のひらに乗る民間人の三人。彼らに妙な感覚を感じながら異世界を進んだ。
更新ペースは一~二週間に一回を予定しています。
進行具合によっては色々と変わるかもしれません。