マクロスF Formula   作:漆黒龍

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少々遅くなりました。
今回も少々量は少ないです。



再会と夜

S.M.Sに入隊してから次の日。

部屋決めや他の隊員との軽い挨拶、格納庫でのガンダムの置き場、

コールサインや施設説明やらなんやらを済ませた後の夕方。

ゼノンは前の戦闘での負傷者が多く居る病院のとある部屋の前まで来ていた。

 

「ここか…」

 

病院らしい白で統一された清楚な印象を受けるドア。

その横の表札にはヘンリー・ギリアムの文字。

4回のノック。

 

「どうぞ」

 

聞こえてきたのはギリアムの割りと元気な声。

最後に話したのは助けた時以来なので、それを聞いて自然と顔が緩む。

了承を確認すると、ドアを開ける。

 

「失礼しま……」

 

そこまで言いかけて止まってしまった。

何故かというと中にいるはずの無い人物が居たからである。

 

「早乙女……アルト?」

 

「あ、ゼノンさん。また会いましたね」

 

そう、あの時助けた青年早乙女アルトが居たのである。

 

「あ、あぁ。しかしどうしたんだ?」

 

「それは……」

 

アルトがその理由を話そうと口を開いた瞬間、背後から三者の声が重なる。

 

「それについては俺から話そう」

 

ドアの開く音と共に後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「オズマさん」

 

後ろを振り返りながらそう言うと軽く手を出して少し待て、の合図。

コツコツと規則正しい間隔で歩を進めゼノンの前を通り過ぎギリアムの前まで来る。

 

「元気そうだな、ギリアム」

 

慣れ親しんだ友同士特有の雰囲気の挨拶の中、ゼノンはオズマの揺れる瞳を見た。

安堵したような、悲しいような……そんな目でギリアムを見た気がした。

聞いた話では、オズマとギリアムはS.M.Sに入る前までは新統合軍で同じ部隊にいたそうだ。

S.M.Sでも古参らしい。

 

「ええ、腕はこんなんですが他は大丈夫です。

わざわざありがとうございます、隊長」

 

両腕にギブスを付け、天井から吊るされている腕に目配せしながらも、

二カッと歯を見せながら笑うギリアム。

 

「いいんだ。

それより、いいのか」

 

「はい、医師から完治してもバルキリーの操縦は、もう無理だと。

いい機会だと思っています。

隊長達と共に戦えないのは残念ですが、妻と子供のこともあります。

キチンと父親やって、あいつらを一番近くで守ってやりたいと思っています」

 

その話を聞き、ゼノンは嬉しいような悲しいような、微妙な気持ちになった。

確かにS.M.Sを辞めればごく普通の父親として生活できるだろう。

それにS.M.Sに勤めることは関係者以外には口外無用の守秘義務が課せられている。

さらに民間企業であるS.M.Sの被雇用者は軍人ではないため、戦闘行動中に殉職した場合も事故死の扱いとなり、

戦没者墓地への埋葬などの栄誉は与えられず、遺族にも詳細な事実が伝えられない。

家族がいるギリアムにとってそれは仕方ない事なのだが、家族から見れば意味不明だろう。

それにいざ戦いとなり家族を連れて逃げる傍ら、戦っている元同僚達を見て疼くだろう。

心苦しく、悔しい思いもイッパイになるだろう。

しかし、家族の為、子供の為。

 

「……そうか」

 

「それでなんですが、俺の機体をコイツに継いでもらいたいんですよ」

 

「なに!?」

 

顎をクイッと動かし、アルトを指す。

流石のオズマも驚いた声を上げ、ゼノンも目を見開いている。

しかしいち早く考えを巡らせたオズマは口を開く。

 

「いくらお前の頼みでもそれは無理だ。

確かにお前の後は決まってはいないが、コイツにそれができるとは思えん。

それに軍事機密を見た傍ら、コイツの……早乙女アルトの処分は我々S.M.Sがやることになっている」

 

「だからですよ、隊長だってランカちゃんを”裏”から逃がしたじゃないですか」

 

ニヤリ、と悪い笑みを浮かべるギリアム。

身内だからといって軍の最高機密を見たのだ、ただでは済まない筈なのだがそこは隊長権限。

 

「う……、だがそれとこれとは話が別だ」

 

効果音付けるならギクリ、と言ったところか。

そしてその時、ゼノンは見た。

ランカのことを言われた瞬間、オズマの汗の尋常じゃない出方を。

 

「そうでもないですぜ、隊長。

コイツと一緒に救出、保護されたシェリル・ノームだって何やかんやでお咎め無し。

ランカちゃんは隊長が裏から。

残っているのは、コイツだけ。

ちょっと理不尽じゃないですかい?」

 

「それは……そうだが……」

お、揺れているな。

俺もせっかくアルト青年を助けられたのに不相応な処分を受けたんじゃ俺も気分が悪い。

ここは俺も加わってもう一押し、ってところか。

 

「……なら、入隊テストをやってみたらどうです?」

 

「本気か、ギリアム!?こんな素人に……」

 

「オズマさん」

 

スッと会話の最中にゼノンが割り込む。

ゼノンが沈黙を貫くと思っていたのか、全員の視線がゼノンに向く。

 

「いいんじゃないですか?入隊テスト」

 

「ゼノン、お前まで……」

 

「元はと言えば俺の所為もあります。

あそこで保護せず近くのシェルターに連れて行かなかったのは俺の判断ミスです」

 

「それは……」

 

そう、重症のギリアムと共に居たのだが無理にS.M.Sを目指さなくても良かった筈。

軍人は市民を守るのが第一。ギリアムは軍人である。それだけで説明が付く。

近くのシェルターで三人を降ろし、そこからS.M.Sに向かっても良かった筈だ。

考え込むオズマ、その隙にギリアムはアルトに目配せをする。

そこでハッとしたのか、アルトは勢い良く立ち上がり声を出す。

 

「俺からも、お願いします!!」

 

そう言うと同時に頭を下げる。

その様子をオズマは厳しい視線で見る。

 

「……理由を聞こうか」

 

「俺は……目の前でギリアムさんが苦しんでいるのに叫ぶこともできなかった。

EX-ギアを着けていて飛べるのに、恐怖で何もできなかった……。

それが悔しかった。

あいつを助ける時は飛べたんだ、必死だったけど飛べて助けられたんだ。なのに……!!」

 

拳を握り締める音が室内に響く。

その様子を見たオズマは静かに口を開く。

 

「……いいだろう、早乙女アルト。ギリアムとゼノンの頼みだ。

手続きもある、明後日……二日後の午前7時にS.M.Sの前に来い」

 

「は、はいッ!!」

 

それを聞いたアルトは勢い良く返事をし、頭を下げた。

その様子を見たゼノンとギリアムはニヤリと笑い合った。

はてさて、どうなることやら。

 

その後アルトは帰り、ゼノンはオズマとギリアムと少し話し、

途中から来た奥さんと娘にお礼を言われ、なんだかむず痒い思いをした。

 

帰りの道を歩く中、ゼノンはアルトに見たイメージを思い返していた。

アルトに見たイメージは青い空。

なんでかやたらと飛ぶことが似合う奴だと思った。

何の因果か、飛ぶための翼を手に入れたがソレが戦場の空になるなんてな……。

 

不思議とゼノンはアルトと共に飛ぶイメージは明確に想像できた。

何でだろうか。

まだ入隊も決まっていないのに、変な確信めいた予感があった。

 

妙なワクワク感を潜ませながら、ゼノンは明日を待つのであった。

 

 

 

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夜になり、街の光りも少なくなった頃。

ゼノンは街を眺められるグリフィスパークという場所に来ていた。

 

「異世界か……」

 

そう呟きながら草を踏む独特の感触と音を楽しみながら歩く。

眺めの良いベンチを見つけたので珈琲を横に置き、座り街を眺める。

ゆっくりと深呼吸。

視線を街から上に向ける。

 

「見たこと無い星ばかりだな……

お、あれは鯛焼きに見えるな……」

 

そう呟き、改めて自分が異世界に来たのだということを実感する。

一度目は同じ異世界でも地球圏を出ることは無かった。

しかし今度は地球からは遥か遠くの宇宙。

そう思うと心に妙な寂しさが通り過ぎた。

暫く星を眺め、時たま吹き抜ける風の心地良さと揺れる草木の音を聞く。

 

「こういうところは違わないんだな」

 

地球の風と寸分変わらない自然の起こり。

僅かな違和感はあるがその技術に関心しながらも、星を見ていて何か物足りなさを感じる。

なんだろうか?と暫く考えていると、

 

「あ」

 

と自分でも面白い位な間抜けな声を出して、気がつく。

地球に居れば毎夜でもないが、必ず見ていたモノ。

夜の暗闇を照らしていてくれた優しい光。

魔の光。

 

「そうか……そうだったな。

ココには月がないんだったな」

 

妙に寂しい気持ちになりながらも、ゼノンは夜を過ごした。

 




次回は入隊テスト。
それなりに量は多くしたいと思っています。

ではまた次回。
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