マクロスF Formula   作:漆黒龍

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やはり遅れてしまった……。
お待たせして申し訳ない。

ではどうぞ。


スター・デイト?

入隊テストから数日経ったある日。

アルトは知らない内に居なくなり、ミシェルとルカも出かけて特にやることも無いゼノン。

考えた結果、せっかく異世界に来たのだからと丸一日フロンティアを楽しもうとしたのだった。

『マクロスの歩き方 フロンティア編』というよくある旅行本の存在を知り、

端末でもデジタル書籍で買えるのだがせっかくなので近くの書店で実本を買う。

本を手に取り、どの世界でも紙の質感はそう変わらないものだなと思いながら散策を開始。

各国の名所を再現した建物の数々を眺め、懐かしいと思いつつも宙に浮かぶディスプレイに元の世界との違いを感じながら巡り、

昼飯をオススメのファーストフード店で特選銀河バーガーなるものを堪能し、小さな公園で休憩をしていた。

ポケットの中の端末が震えたのは、そんな時だった。

 

「そういう訳だから頼んだぞ、ゼノン!!」

 

「ちょ!?せっかく『フロンティア一日散策』を楽しんでいたのに!!」

 

ゼノンのその悲痛な叫びにオズマは無慈悲に言葉を返した。

 

「だからお前に頼むんだよ!いいか、これは隊長命令だ。

それに俺は政府に呼ばれてこれからアイランド1に行かなければならん」

 

政府に呼ばれる。

この非常時に呼ばれるってことはバジュラ関連以外は考えられない。

 

「……バジュラ関連ですね?」

 

「……ああ」

 

やはり。

となると仕方が無い、か。

 

「わかりました、ランカちゃんの捜索は任せて下さい」

 

「悪い、頼んだぞ」

 

そこでオズマからの通信が切れる。

ゼノンは手に持った携帯を閉じるとポケットに押し込んだ。

一回の溜息。

 

「とは言ったものの……まだ完全に地理を把握できてないからどうやって探したものか」

 

フロンティア船団、もといこの世界に来てから一週間も経っていない。

それも初っ端から戦闘に介入し、S.M.Sに入隊して入隊テストをやって……。

やっと何も無い日が来たと思った矢先コレである。

 

「とりあえずは高い所に登るか」

 

歩いていた大通りから脇道に入り、誰も居ないことを確認すると三角跳びの要領で跳躍。

左右のビルを蹴り、その驚異的な脚力であっという間にビルの上に到着する。

そしてこっそりと下を見る。

そこには慌てふためいている黒服の男が三人。

 

「ハハッ、慌ててる慌ててる。

悪く思うなよ、流石に気持ち悪くなってきたからな」

 

S.M.Sを出たときから尾行。

何もしないんじゃ見逃すか、と最初は思ってはいたが……

二度目とは言え異世界の、それもマクロスの超長距離移民船団に来て始めての観光?なのだ。

いつまでも尾行なんか着いて来られたんじゃ気持ち悪い。

いつ撒こうかと思っていたので、オズマ隊長からの電話はタイミングが良かった。

そこはオズマ隊長に感謝だな。

そうどうでもいい考えを捨て去り、ゼノンは視線を街に移す。

 

「さて、どこから探すかな……と、ん?」

 

首だけを左右に動かし目的のランカを探していると見慣れた奴が目に入る。

 

「アルトじゃないか、それに隣にいるのは……シェリル・ノーム!?」

 

目に入ったのはアルトと仲良さげに並んで歩く銀河の妖精シェリル・ノームの姿。

そこにはステージで歌う銀河の妖精の姿は無く……

一人の、ごく普通の……デートを楽しむ笑顔の女の子の姿があった。

 

「へぇ、アルトの用事がまさかデートだったとは……しかもあのシェリル・ノームと、か」

 

しかしあの時助けた金髪美人が銀河の妖精だったのは少々驚いた。

やけに他の隊員が騒いでたから調べてみればこの通りである。

今やリン・ミンメイやFIRE BOMBERに並ぶ歌い手だったのだからそりゃビックリしたさ。

しかし、盗み見は良くないが、見つけてしまったので仕方が無い。

暫く見ていると二人はアイランド1行きの電車に乗って行った。

それを見送るとゼノンも行動を開始した。

 

「さて、俺の方も探すかな」

 

後でからかってやろうと思い、今はその考えを奥にしまう。

そう呟くと、ビルを飛び移りながらランカを探しに跳躍した。

 

 

 

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ランカ捜索の電話はゼノンは勿論のこと、ルカとミハエルにも伝えられていた。

ルカはナナセに乗せられて?一緒に捜索に出かけたのだが……

しかしミシェルは探す気などサラサラ無かった。

隊長命令とは言え、ハッキリ言えば面倒だった。

しかし、そう思っているとソレが目の前で起こったり、見つけたり……するものである。

 

「どこ行くの、ランカちゃん!」

 

「どこだっていいでしょ!」

 

まるで聞く耳持たぬ、といった感じか。

走っている車間の僅かな隙を見つけ反対の道路に走って渡るランカ。

ハァと短い溜息と軽い舌打ち。

 

「これだからお子様は……。

けど見つけちまったもんなぁ」

 

見捨てる訳にもいかず、ミシェルはランカを追いかけていった。

早足で、手は握り、肩は強張り……見てすぐに怒っていると分かる歩き方。

ズンズンという効果音が聞こえてきそうな感じである。

その様子を見て、ミシェルは再び溜息を漏らした。

 

 

 

--------------------

 

 

 

暫く時間が経った時だった。

ゼノンは纏わりつく複数の視線を感じ、歩みを止めていた。

あえて誘導する動きで人気の無い路地裏に入り、背後に声を掛けていた。

 

「薄気味悪い奴らだな、何の用か知らないが姿を見せたらどうだ?」

 

そう言うとゾロゾロと全員が同じ変なコートを着たグラサンが六人現れる。

暫くの沈黙の後、ゼノンが「何者だ」と言う前に一番前の男が、

 

「貴様は何者だ」

 

と言われてしまった。

今まさに同じ言葉を言おうとしていたゼノンはなんとも言えない気分になった。

しかしソレも一瞬。

体を、思考を切り替える。

 

「それはコッチの台詞だ、揃いも揃って同じ恰好しやがって」

 

「コチラの質問に答えてもらおう」

 

硬いなぁ。

けど……どうやら俺の問いには答える気は無いらしい。

まぁ、俺も答える気は無いが。

 

「嫌だ、と言ったら?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながらゼノンは言う。

 

「……不確定要素は排除する」

 

案の定、予想通りの答え。

その言葉と同時に、六人は一斉に動いた。

後方の四人が一斉に数歩退きながら懐から銃を取り出し、着地と同時にゼノンに向けて撃ってきた。

前方二人は両壁を走り、腕からナイフを出し高速で迫って来た。

瞬間、ゼノンは迫り来る銃弾を地を這うようにして避け、壁を走る二人を無視し、

銃弾に勝るとも劣らない速度で四人内の一人に接近。

 

「なんッ……!?」

 

一人が驚愕の声を上げようとするがそれは最後まで続かない。

その思いは全員が一緒だったのだろう、四人の動きが止まる。

その刹那の隙を、一瞬を見逃すゼノンではない。

殺しはしない威力で、とは言っても骨の二~三本は折れるであろう威力で手前の奴の肋骨辺りを殴る。

 

「グボぁ!?」

 

「「「!!」」」

 

殴られた相手は声を吐き出しながら後方に数メートルは吹っ飛んだ。

その他の奴らも驚愕の表情で吹き飛んだ奴を目で追う。

 

「ん?」

 

しかし、ゼノンは返ってきた感触に違和感を感じた。

 

「(なんだ……妙に硬い?

……だがコレは肉の硬さじゃない、コレは……金属の硬さ)」

 

その明らかな違いにゼノンはある推測を立て、吹き飛ばした相手を見る。

吹き飛ばした相手は何とも無く立ち上がるも、

ゼノンに殴られた腹の部分からは通常では出る筈の無いコードと煙が出ている。

それを見てゼノンは「やはりか」と呟く。

会った時から感じた妙な違和感、それと同時に殴られた瞬間こそ声を上げたものの、

腹からコードと煙を出しているにも関わらず、

無表情でコチラに歩いてくる奴を見てココに居る六人全員同じサイボーグだと確信する。

そして、これ以上追われぬ為に六人を破壊する覚悟をする。

 

「そうか、身も心も命令通りにしか動かない機械と成り果てちまったのか。

抵抗も抗いもせずに……ならば人として最後の情け、

僅かに残っている感情に免じて苦しまず……殺してやる」

 

そう言いながらゼノンは腰の革製のホルダーに入れてある、

F91のビームサーベルをそのまま人間が使えるサイズに縮めた物を右手に持つ。

そして意思を籠めるとソコから青い粒子の刃が煌く。

 

「「「!!」」」

 

ソレを見ると六人の刺客は驚愕するも、すぐさま戦闘体勢を取る。

ゼノンはビームサーベルを手首を回して一回転させ、

腰を少し沈め、右脚を前に出し体をやや前屈みにし、止まる。

一回の呼吸。

そして始まりの言葉を放った。

 

「いくぞ」

 

同時にゼノンは地を蹴った。僅かに遅れてその衝撃で地面が砕ける。

だが……この戦闘が彼らを通じて見られていることなど知りもしなかった。

ゼノンが感じた複数の視線、ソレをゼノンはこの六人”だけ”のものと思った。

しかし実際は違う。

本来なら、ゼノンのNT能力なら気づける筈の完全な悪意。

彼らの裏にある完全な悪意を気づけなかったのは、目の前で、自身にその命を次々と絶たれてゆく者達の、

僅かに残った渦巻く最後の感情を流すこと無く受け止めていたから……。

 

 

 

--------------------

 

 

 

ゼノンがアイランド1に入ったのはソレから暫く経った時。

何かと気分が楽しくなる、シェリル・ノームとはまた違った生気に満ちた歌につられて。

それと同時にココ、ゼントラーディのショッピングモールの巨大さに目と心を奪われる。

食品、衣類、食器、家庭用品、電気製品、目に入る物全てが巨大。

ズシンズシンと地響きを起こしながら歩いているゼントラーディの人々を眺めながら、

人々の意思が集まっている所に歩を進める。

歌が聞こえる。

 

『---♪~♪~♪---』

 

「あれは……ランカちゃん?」

 

歌の主を見れば、本日探していたランカ・リーではないか。

思わず声が漏れる。

 

「お、ゼノンか」

 

その声を聞き、思わぬ人物がから声がかかる。

 

「ミシェルか」

 

まさかミシェルがいるとは。

一番居なさそうな奴が居るとはちょっと意外だな。

そう思っていると、自称気味にミシェルが呟く。

 

「まったく、お子様だと思っていたが……

俺の言葉はランカちゃんの背中を押しただけだったぜ」

 

「ん?なんの話だ?」

 

「気にすんな、只の独り言だ」

 

「けどまぁ……」

 

「ん?」

 

『---♪~♪~♪---』

 

「良い顔じゃないか、ランカちゃんは」

 

「……ああ」

 

自然と周りも笑顔になる。

そんな力が聴いていて湧いてくる。

ランカ・リーの歌にはそんなモノが籠められているような気がする。

FIRE BOMBERの熱気バサラの熱さとは違う。

銀河の妖精シェリル・ノームとも違う。

非常に女の子らしい、キラキラという言葉が似合っている。

そんな気がする。

そんな事を考えていると、陽は傾き、空は茜に染まる。

ランカちゃんの歌は終わり、聞き入っていた人々も去っていた。

ゼノンはランカちゃんに近づき、声をかける。

 

「やあ、ランカちゃん。久々」

 

片手を挙げ、挨拶。

 

「あ、ゼノン……さん」

 

「硬くならないでいいよ、歳も大して違わないんだしさ」

 

表面上は、だけど。

 

「あ、じゃあ……ゼノン、君」

 

”君”と言われた瞬間、ゼノンの背中がゾクッと震える。

 

「君付けか……背中がムズムズする」

 

そうボソッと呟くとそれが聞こえたのか、ランカが心配そうな顔で尋ねる。

 

「あ、あの……嫌でしたか?」

 

その表情を見てゼノンは内心若干慌てるも、冷静に返す。

 

「違う違う、君付けで呼ばれたのが久々だったんでね。

どうもむず痒くて……」

 

「え、そうなんですか?

でも私男の子は皆君付けで呼んでるし……どうしよう」

 

そう言いながらランカは顔を伏せる。

 

「ああ、そんな真剣に悩むようなことじゃないって。

別に君付けでも大丈夫だって、その内慣れるから……多分」

 

そう言い終わると同時にランカは伏せていた顔を風切り音が聞こえる程勢い良く上げ、

 

「ほんとっ?

じゃあこれかよろしくね、ゼノン君っ」

 

さっきまでの雰囲気が嘘のようにニコニコしながらゼノンに向けて言った。

 

「あ、ああ。

(あれ?ハメられた?)」

 

何か言おうとしたが、ゼノンはランカの笑顔の前に変な威圧感を感じ、何も言えなかった。

 

「それはそうとランカちゃん、良い声だね」

 

「ほんとっ!?」

 

「ああ、気持ちも篭ってて。

何より歌っているランカちゃんはなんて言うかこう……キラキラしてた」

 

ゼノンがそう感想を述べると、若干恥ずかしいそうにしながらも極上の笑みを浮かべ、

ゼノンにお礼を言った。

 

「嬉しい……ありがとう、ゼノン君!」

 

そこから他愛の無い会話を広げている途中、

少し離れた所で会話をするアルトとシェリルを見つける。

否、見つけてしまった。

アルトの頬にキスをするシェリルの姿を。

 

「ッ!!」

 

息を飲む音が聞こえ、ゼノンは目だけを動かし隣を見る。

隣ではランカが顔を赤くして驚いている。

ゼノンはちょっぴり刺激的だったかな?と思うがランカを見てその考えを即座に捨てる。

 

「(違う、これは……恋をしている、アルトに。

それと……ライバル出現で覚悟を決めた、って顔だな)」

 

このゼノンの考えは”ほぼ”合っている。

だが、コレばかしは本人の心の奥で考えているモノなので分かる筈がない。

ランカの揺れ動く心。

アルトだけに傾いていた心は突然現れたもう異世界の旅人との間でゆらゆらと揺れる。

ゆらゆらグラグラ。

揺れ始める。

再び巡り会ったその瞬間から。

そしてそれは、別のところでも既に起こっていた。

言うなれば、運命の出会い。

会うべくして会い、起こるべくして起こる。

これはそういうモノなのかもしれない。

 

その後、ゼノンはランカと再び会う約束を交わし別れた。

 

そんなこんなで、この日は終わりを迎えたのであった。





あと二話くらいは日常的な話の予定です。

ではまた次回。
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