新次元ゲイムネプテューヌ 反響のリグレット【完結】   作:ジマリス

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プラネテューヌ編2 改変された世界

ぼくたちは情報収集をしながら教会へ向かった。街の景色は神次元と同じで、道行く人の顔も見覚えがある。

しかし妙なのは、ネプテューヌのことを知っている人間がいないということだった。

彼女の話では、『ネプテューヌ』の姿や名前、性格は広く慕われているらしく、みんながみんな知っているはずだと。

だがすれ違う人に聞いても、反応が鈍い。

さすがに堪えたのか、ネプテューヌは明らかに落ち込みながらぼくたちの後ろをついてくる。

 

「ヤマト、どう思う?」

 

「ここが超次元ってことは間違いないだろうから、現状、相当やばいってことくらいしかわからないね」

 

首を横に振ったヤマト。

この国で得られる情報には限りがある。届かないぶんは、アイの報告を待つしかない。

 

「……はぁ。どうして、誰もわたしのこと覚えてないんだろう?」

 

「いまが異常なのはわかってるんだ。原因を突き止めれば、きっともとに戻るよ」

 

快活な印象を受けたが、やはり自分のことが忘れられるというのはきついはずだ。

しかも、友達であるアイエフからの記憶からも消えてるとなれば、ひとしおだろう。

 

教会についたぼくたちはすぐさま扉を開けた。

神次元のプラネテューヌ教会と大体の部分は同じだが、装飾や細かいところで違う箇所がある。

見渡しているぼくたちに寄ってきたのは、ゆったりとした雰囲気をまとった教会員だ。

 

「ここはビーシャ様の教会です。なにかご用でしょうか?」

 

「イストワールっていう人に会いに来たんだけど……」

 

「イストワール様ですね。少々お待ちください」

 

ぼくたちに疑問も持たずに、教会員は奥へと引っ込んでいった。

女神が忘れられていることを考えれば、イストワールにもなんらかの影響があるかと思ったが、異変が起きてもイストワールは存在しているようだ。

 

「ずいぶんあっさり会わせてくれるみたいだな」

 

「それにしても、ビーシャって名前……」

 

教会員の言葉に、ヤマトは眉をひそめていた。

聞きなれない名前。しかもどうやらそいつがこの教会の象徴のようだ。

 

「街でも聞いた名前だ。知ってる?」

 

「ううん。ここはわたしの教会のはずなのに」

 

「女神が忘れられてて、代わりに誰かが上に立ってるのか。しかもそれを国民が受け入れてる」

 

ぽつり、とヤマトが言う。

正直、ぼくには理解ができない。それは当事者であるネプテューヌも同じみたいで、頭を抱えてはうなっている。

 

「イストワールです。私になにかご用とか……ってネプテューヌさんではありませんか!?」

 

悩むぼくたちの前に、教会員の代わりに現れたのは、開いた本の上に乗った小さな少女だ。

イストワール。だが、ぼくの知っているのよりもいくぶんか成長したような姿だった。

彼女から漂う『できる』雰囲気に少し驚いた。こっちのイストワールは少しスペックが足りない感じのところあるからな。仕事しないプルルートも悪いんだけれど。

 

そんなことはさておきもっと驚いたのは……

 

「いーすん!?いーすんはわたしのこと忘れてないの?」

 

そう、イストワールがネプテューヌのことを覚えていることだ。

街の人々、アイエフでさえ忘れているこの状況においてこれは心強い。

ネプテューヌもほっとしたようで、自然と笑みがこぼれていた。

 

「誰がネプテューヌさんを忘れるものですか。ああ……まさか、またネプテューヌさんに会える日が来るだなんて……」

 

「わたしもだよ、いーすん。あいちゃんも街の人も、みーんなわたしのこと覚えてないから寂しかったよ」

 

「おや、そちらの方々は……」

 

イストワールがこちらを向く。

ヤマトは手をひらひらさせて応えた。

 

「久しぶりだね、イストワール。覚えてるかな、ヤマトだよ」

 

「はい、覚えています。お久しぶりですね。その節はお世話になりました」

 

三年前、キセイジョウ・レイ=古代の女神の力によって、ネプテューヌが神次元に来たことがきっかけに起きた二次元間での戦い。

それの概略は資料で読んだが、事件収拾のために次元を越えたヤマトやアイも超次元にいたのはほんの少しの間だったらしい。

ヤマトが話したことのあるのはネプテューヌ、その妹のネプギア、そして次元を越えるのに協力してくれたイストワールくらいだそうだ。

 

ぼくもイストワールと軽くあいさつを交わし、奥に通される。

ゲームやら漫画やらが散乱している、言ってしまえばだらしない部屋だった。いまこの部屋の主が誰にせよ、プルルートと似たようなもんだな。

 

「正直に言いますと、詳しいことはわかりません」

 

世界の現状についてヤマトが聞くと、返ってきたのはそんな言葉だった。

ぼくは肩を下ろした。歴史を観察するイストワールですらこの状況がわからないとすると、本当にお手上げになってしまう。

 

「ですが、この世界……ゲイムギョウ界から、女神の存在が消し去られてしまったのは確かです」

 

「でもイストワールは覚えてるんだよな?」

 

ぼくの疑問にイストワールは頷いた。

 

「特殊な存在だから……ってのが一番しっくりくるかな。なんにしても、偶然こんなことが起きたってことは考えにくいな」

 

神次元での事件、超次元での異変。

確定とは言っていないが、ヤマトは同一人物の犯行とみているようだ。

 

「はい、何者かによる攻撃といってもいいかもしれません。そのせいで、女神ではなく、ゴールドサァドが治めるゲイムギョウ界へと変わってしまったのではないかと……」

 

『ゴールドサァド』。さっきネプテューヌが言っていたゴールドなんとかの正式名称だ。

そのゴールドサァドがこの事態を引き起こしたのか? あの金の塔は勝利の証とでもいうのだろうか。

 

「んで、そのゴールドサァドってどこにいるの?」

 

「それがなんの因果かネプテューヌさんのようにいつも遊んでばかりで、今日も朝から外に出かけているんです。どうして、プラネテューヌばかり、こう仕事をしない人がトップになるんでしょうか」

 

イストワールはため息をついて、頭を抱えた。

ヤマトはまあまあ、となだめて続きを促す。

 

「ほかに気になったところは?」

 

「そうですね……いまはいろいろアイエフさんに調べてもらっていますが、一番気になるのは人型のロボットの話ですね」

 

「ロボット?」

 

「はい、今のところ事件を起こしているわけでもないのですが、以前と比べて、明らかにロボットの目撃情報が多すぎるんです。どこが造ったのかわからないロボットが」

 

ぼくとヤマトは顔を見合わせた。

人型のロボット。神次元でヤマトが相手した敵だ。

神次元でも超次元でも誰が造ったのかわからないロボット。これはますます怪しいにおいがしてきた。

 

「アイエフに話を聞くか」

 

「そうだね。ビーシャも探さなきゃいけないし、外でいろいろ調べたいこともあるし……案内はネプテューヌにお願いするよ」

 

自分のことを知っている人にようやく会えて、すっかり元気になったネプテューヌが親指を立てた。

 

「まっかせて!」

 

 

 

といっても、プラネテューヌは広い。

神次元より少し発展しているようで、ぼくの知るプラネテューヌよりごちゃごちゃしていた。

こんな中で目当ての人物を探すのは難しいかも。

 

ぼくたちは手分けして探すことにした。

ヤマトとネプテューヌは街を回りながら、ほかの女神とどうにかして通信できないか試すようだ。

 

ぼくはアイエフを探すと同時に、イストワールにもらった写真をもとにビーシャも探す。

進展があったら連絡するようにして、二手に分かれた。

 

黄金の塔の周辺を歩きながら、ぼくはもやもやとした感情に囚われていた。

ヤマトといると、学ぶことがたくさんある。だけど同時に、自分の力不足を感じてしまう。

手助けになるために鍛えて、戦ってきた。それでもヤマトを超えることはできないし、経験も浅い。

助けられることはあっても、助けになったことはあっただろうか。

 

どこまでも続く高い塔を見上げ、ぼくは腕を組んだ。すると、視界の隅に同じく塔を見上げる人影をとらえた。

ゆっくりとそちらを向くと、驚いたことに目当ての人物だった。

 

「アイエフ!」

 

「あら、あんたはさっきの……変な子と一緒にいた……」

 

思わず声をかけてしまい、警戒させてしまったみたいだ。

アイエフは疑いの目を隠そうともせずにこちらを見る。

 

「ヴァトリだ。よろしく」

 

「よろしく……で、あたしに何の用?」

 

「イストワールに、協力してあげてくれって言われてね」

 

ぶっきらぼうに言うアイエフに、ぼくは身振り手振りでできるだけ敵意がないことを見せた。

協力が必要なのに、敵と思われたら面倒なことになる。

 

「じゃああなたも諜報員かしら?」

 

「そんなもんかな。なんならイストワールに確認してもらってもいい」

 

アイエフは数秒考え、口を開いた。

 

「……まあいいわ。いまから目撃情報が入ったから、はやく行かなきゃいけないのよ」

 

「目撃情報?」

 

「怪しいやつの通報があったの。前からよくロボットと一緒にいるだの、恰好からして危ないやつだの言われてたやつなんだけど」

 

ロボット……どうやら繋がりそうだ。

ぼくは連絡を取ろうと思い端末を取り出したが……懐にしまった。

 

「ついていく」

 

情報をつかんでからでも、ヤマトたちに連絡するのは遅くないだろう。

それに、危険があろうとも切り抜けられることを証明する機会でもある。

 

「…………」

 

疑念の目を解かずにぼくを見ていたアイエフはようやく背中を見せた。

 

「それじゃ、こっちよ」

 

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