新次元ゲイムネプテューヌ 反響のリグレット【完結】   作:ジマリス

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リーンボックス編2 魔王?

リーンボックスに辿り着いた俺たちは、早速教会に向かった。

ここに来るのは久しぶりだ。

ゴールドサァドに乗っ取られても、その外も中も変わっていない。

扉を開けると、並べられた椅子、その奥にはエスーシャが佇んでいた。

 

「邪魔するぞ」

 

「遅かったじゃないか、待ちくたびれてしまったよ」

 

ゆったりとこっちを見て、エスーシャが言う。

その顔には非難の意どころか、ちょっとした感情すら見えなかった。

 

「何千匹、らん豚を連れ帰ってきたと思っているんですの?」

 

「言うことを聞いてくれたのは助かったけどな」

 

とはいえ、らん豚は決まった言葉しか言わないから、意思疎通ができたとは思っていないが。

大きな小屋に閉じ込めておいたから、逃げ出すこともないだろう。

 

「話をしてくれるってことだが」

 

「ああ、君たちがこれからすべきことについて、話をしようと思ってね」

 

つかつかとこっちに近づいて、俺を見据える。

「君たち」と言っているが、現在のリーンボックスについて知ることが少ない俺のためだろう。

ある程度はベールから聞いているが、彼女が知っていることも限られている。というより、エスーシャが情報を出すのを渋っているのだ。

このタイミングで話そうとしているのは、どういう意図があるのか。

 

「あそこでらん豚が大量にいたことと関係があるのか」

 

「もちろん、そうだ」

 

「大勢のソルジャーを使って、何を企んでいるんだ」

 

「魔王を捕らえる」

 

「捕らえる?」

 

「討伐ではなく、捕らえるなんて、何故ですの?」

 

ベールが口を挟んだ。

人をらん豚にする呪い。その原因である魔王を倒すのではなく、捕らえるには理由があるはずだが、エスーシャは首を横に振った。

 

「君には関係ない。魔王の捕獲、それさえやってくれればいい。悪いが時間だ。情報が入り次第連絡を入れる」

 

文句を言う間もなく、エスーシャは奥に引っ込んでいってしまった。

残された俺たちは、しばらくあてどなく街中をさまようしかなくなった。

普通なら、女神を見かければ騒ぐ人々も、今ではなんでもないようにベールの横をすり抜ける。

 

「どう思う」

 

近くの喫茶店に入り、俺たちはこれからのことを話し合った。

だが、とにかく情報も人手も戦力も足りない。

一時間ほど話しても、進展はなかった。そこで、俺はエスーシャのことについて、ベールに聞いてみる。

 

「冷え切ってしまっている……といいますか、あまりにも国のことに関して興味がなさすぎるように思えますわ」

 

「国や国民のことに関してはな。その割には魔王のことにはご執心だ」

 

あれだけ冷めきった反応をしていても、やたらと魔王を気にしている。

しかも捕獲してこいとの命令だ。

そこには確実に目的があるが、それが何かわからない以上はどうしようもない。

 

「それにあのロボット、超次元にいなかったよな?」

 

「ええ、わたくしも見たことがありませんわ。しかもあれだけ大量にいるなんて……」

 

頭を抱えた。

機械軍団が魔王の手下でなければ、俺たちの敵は多すぎる。

 

「ただでさえ、世界改変にゴールドサァドとかいう問題が残ってるんだ。俺たちには必要なものが多すぎる」

 

「必要なものを手に入れるには、とりあえずエスーシャに従うしかありませんわね」

 

「ああ、そうだな……ネプギアがいてくれたら……」

 

「あら、再会してすぐ離れたから、寂しいんですの?」

 

ベールはふふっと笑って、俺を指差す。

 

「そんなんじゃない。別次元でも候補生たちと連絡がとれるあいつなら、この状況でも他と話し合いができるだろうって……そのにやけ顔をやめろ」

 

「そういうとこにしておきますわ」

 

そういうことってなんだよ。

この状況、他の国と意思疎通ができればどれだけ心強いか。

まあ、ただ単純に会いたいという気持ちも無きにしもあらずだが、それを言うと余計にからかわれそうだからやめておく。

 

「とにかく、魔王を捕らえるのが最優先事項だな」

 

逃げるようにそう言った瞬間、ベールの携帯端末が鳴った。

ソルジャーの連絡用として、エスーシャからもらったものらしい。

 

「エスーシャからですわ。外敵が見つかったと」

 

 

 

連絡をもらってすぐ、俺たちは外の森林へと足を運んだ。

魔剣がない俺は武器の調達を適当に済ませた。店で一番手ごろな剣を選んで、背中になおす。

普通の剣を使うのは……とにかくかなり久しぶりだ。

 

「さて、外敵はどんな姿なんだ? またあのロボットか?」

 

「あ、と……聞くのを忘れてましたわ」

 

森の中を歩きながら、不思議に思う。モンスターの姿が見えない。

いつもなら、なにかしらの生物がいるはずなのだが、不気味なくらい静かだ。

これも世界改変の影響か。何か怪しいものがいれば、それが外敵ということでいいだろうか。

 

『ベール、目的地に着いたみたいだね』

 

どうしたものかと考えていると、再びエスーシャから連絡が来た。

今度は文だけでなく、通話だ。

 

「エスーシャ、ちょうどよかったですわ。今回の外敵は、どのようなものなのか聞いていませんでした」

 

『ああ、そうだね。今回の相手は一人の人間だ』

 

「人間?」

 

人間。それすらも外敵に存在なのか。知らなければ、見逃すところだった。

 

『すでに行われた戦闘では、大勢のソルジャーが圧倒されている』

 

「わかった。それで、わざわざ通話してきた理由は?」

 

『魔王の場所が分かった。今の任務と併せて、調査をしてきてくれ』

 

「俺たちだけでか?」

 

『まともに動けるのが君たちだけだからね。いつ魔王が動き出すかわからない。早めに調査を頼む』

 

指定された場所は、ここから近いとは言えない。

それにも関わらず仕事を頼んでくるのは、俺たちが一番近いのか。それとも……

通話は一方的に切られて、実際はどうなのかは聞けない。

無駄話をせずに、さっさと仕事をこなせということか。

 

「人使いが荒いですわね」

 

「あの感じだと、残ったソルジャーは少ないようだからな。もしかしたら、俺たちだけってのもあり得るかもしれん」

 

そう、すでにあれだけ大量のソルジャーがらん豚に変えられているのだ。

他の場所で任務に就いている者が同じようになっていても不思議じゃない。

 

「それにしても、外敵が人間だなんて……」

 

「ますます正体がわからんくなったな」

 

機械の軍団ならともかく、そこに人間も混ざってきたとなると、いよいよ魔王とはどんな存在か、推測しづらくなってきた。

先に待ち受ける「人間」とはどんな奴か、警戒しながら進んでいくと、先にある木の陰に何者かの気配を感じた。

外敵か? いや、そいつから感じる力の種類には、覚えがある。

抜きかけた剣を収め、それに近づいていく。

意を決して、ばっと姿を確認する。

 

「誰だ」

 

「ひゃうっ!?」

 

可愛らしい悲鳴を上げたのは、あの闘技場以来離れ離れになってしまっていた少女だ。

女神だということはわかっていたから、できるだけ落ち着いた声で話したのだが、いきなり現れたために驚かせてしまった。

 

「ネプギア?」

 

「な、な、な……」

 

座ったまま驚きで固まってしまっているのは、プラネテューヌの女神候補生、ネプギア。

 

「ネプギアちゃんがなんでここに?」

 

「よかったぁ……やっと会えた……」

 

涙目で深い安堵の息をついたネプギアを立たせる。

 

「よかったです。無事で」

 

「来てくれたんだな」

 

「はい、ベールさんは独りだろうからって、お姉ちゃんに言われて。来る途中、攻撃されて大変でした」

 

ネプテューヌも辛いだろうに、ネプギアを寄越してくれたのか。

妹がいないベールは一人では苦戦するから、この判断はナイスだと言わざるを得ない。

それにしても、ネプギアの話とエスーシャの話を合わせると……

 

「ということは……」

 

「誤解ですわね」

 

俺はベールと顔を見合わせる。

彼女もどうやら同じ結論に達したようだ。

 

「へ? どういうことですか?」

 

ソルジャーが攻撃したのは、間違いだったのだ。

女神化して空を渡ってきたネプギアを外敵と勘違いして、襲撃してしまったのだ。

女神を忘れている人間からしてみれば、空を飛ぶ人なんてのは珍しいものに映る。

特に、リーンボックスはいま敵にビクビクしているから、致し方ないといえばその通りだ。

リーンボックスの現状を、ネプギアに一通り話すと、彼女は胸をなでおろした。

 

「そういうことだったんですね」

 

「わたくしに任せなさいな。誤解はすぐに解いて差し上げますから」

 

「ありがとうございます」

 

「可愛い可愛い妹のためですもの。これくらいお安い御用ですわ」

 

ベールは遠慮なくネプギアに抱き着く。

息苦しいだろうに、これまでの寂しさからかさほど抵抗しないネプギア。

しかし、ネプギアはベールの妹じゃないんだが。

今回のことも相まって、ベールは余計に妹が欲しくなってしまうことだろう。

しばらくしてやっと離されたネプギアから、プラネテューヌの現状もある程度聞く。

やはり、おかしくなった世界の中で動けるのは、俺たちくらいのものらしい。

再会の魔王の足取りを追おうと歩みを始めたベールたちだったが、俺は止まって考える。

あまりにも情報が少なすぎるうえに、エスーシャの真意も見えないこの状況が気持ち悪すぎる。

 

「ユウ、行かないんですの?」

 

「いや、いったん戻ろう」

 

「え?」

 

「取引の材料にする」

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