新次元ゲイムネプテューヌ 反響のリグレット【完結】   作:ジマリス

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10 みんなで

ダークメガミの大きな剣が、ネクストブラックへ振り下ろされる。

自らの剣で受け止めるネクストブラックの顔に余裕はない。いかに次世代の姿とはいえ、目の前の敵はそれよりも強大で、しかもいくらか力を奪われている。

金属のきしむいやな音。しかし先に音を上げたのは、地面のほうだった。

異常な圧に耐えきれず、足場が崩れる。そのおかげで、ネクストブラックは相手の攻撃を逸らして距離をとることができた。

だがダークメガミのリーチはそれ以上だ。エコーの船なみの大きさの巨体に、これまた馬鹿でかい武器。パープルシスターとオレンジハートを含めた六人でさえも、お互いを気にしてる暇がないほどだ。

あちらの攻撃の届かない範囲まで逃げるとなれば、当然こちらの攻撃も届かない。魔法などで遠距離からしかけたとしても、簡単に弾き返されてしまうだろう。

 

「ネクストフォームでもこんなに苦戦するなんて……」

 

単純な力。それが圧倒的であるほど苦戦を強いられる。

数では勝っていても、その差は埋まらない。

幾度も押され、地面に叩きつけられ、体力が削られていく。

ついにネプテューヌたちの女神化が解け、まとめて地面に倒れ伏してしまった。

 

「そんな……勝てないの?」

 

ノワールが息を切らしながら、ダークメガミをまじまじと見てしまう。

圧倒的な巨体と力を、自分と比べてしまう。

足が竦んで立てない。

 

「させません!」

 

襲い掛かる刃を食い止めたのはパープルシスターだ。

ネクストフォームももたない彼女が、たった一人で攻撃を受け止める。

全ての歯が折れそうなほど食いしばって、喉が潰れそうなほど叫ぶ。それでも、徐々に、徐々に彼女の身体は押されていく。

ぴしり。パープルシスターの銃剣にわずかなヒビが入る。

だが逃げられない。力の差がパープルシスターを追い詰める。

ぴきりぴきりとヒビが広がる。

もうこれ以上無理だ。砕けてしまう。そうなれば、一人、またひとりとやられてしまい……

 

「殲撃のデュエルエッジ!」

 

頭に響くほどの金属音が鳴り響き、旋風が巻き起こる。

女神たちを切り潰さんとしていた斧は押し返され、遠ざかっていった。

パープルシスターは前のめりに倒れそうになるが、何者かが女神化の解けてしまった彼女を支える。

 

「ユウさん……」

「遅くなって悪い。まだやれるか?」

 

崩れかけたネプギアを、ユウはぐいっと引っ張る。

休ませてやりたいのはやまやまだが、全員がいないと太刀打ちできない相手で。

肩で息をするネプギアに代わって、ネプテューヌが返事をする。

 

「当然! 巨大化した敵にはみんなで戦うのが……」

「それは前にも聞いた。とにかくまだまだ元気みたいでよかった」

「ですが思ったよりも強力ですわ。ユウが一緒でも勝てるか……」

「ユウだけじゃないわ」

 

ようやく追いついた私とヤマト、アイが並び立つ。

 

「みんなで、よ」

 

あっちが質ならこっちは数。

エコーのときとは逆だけれど、こっちはあんな有象無象じゃない。

 

「イヴ、戦えるのか?」

「それはこっちのセリフ。変身まで解けちゃってるじゃない」

 

見た目がぼろぼろなのは、私たちも女神たちも同じ。

心配するのは自分のことだけにしなさい。私はそんなに弱くないわ。

 

「でも、来てくれたのは嬉しいけど、ほんとに大丈夫? イヴも止めてくれたらよかったのに」

「言っても聞かなかったから」

 

ネプテューヌの問いに、私はユウを横目で見る。

 

「最後の戦いで、力が足りないなんてギャグにもならん」

 

当のユウは肩をすくめて、にっと笑った。

 

「逆の立場なら、お前もそう言っただろ」

 

ネプテューヌの頭を軽く叩き、剣を構える。

 

「作戦は?」

「全員で戦う」

「そりゃそうなんでしょうけど……」

 

私は驚きつつも呆れた。

いろいろと考えるヤマトが、そんな場当たり的なことを言ってくるなんて。しかも即答

ダークメガミがいきなり現れて、対策のしようがないのは仕方ないけれど。

 

「ま、いいんじゃないッスか? ウチらっぽくて」

 

屈伸しながら言うアイの表情は、なぜだか余裕そのものだった。

たしかに、敵を目の前に悠長に考えるわけにもいかない。今までもぶっつけ本番でどうにかなってきたし。

私は腹をくくって、腕輪を握る。

どうか、この戦いの間だけは保ってよね。

 

「よーっし、なら、みんなで合わせていくよっ!」

 

さあ、最終決戦よ。必ず勝利と平和だけは持って帰る。みんなの無事も併せて。

 

「変身!」

 

 

数刻前から襲ってくるモンスターの大群。

有機物無機物関係なく、それらは砂煙を上げながら

その中で四人、奮闘する影があった。

ユニとラム、ロム、それに神次元のマジェコンヌ。先ほどまでいがみ合っていた者たちが、それどころではないと飛び回る。

飛び交う銃弾、魔法。手を休めることなく攻撃は繰り返されど、敵の数が減ったようには見えない。

 

「もう! 多すぎる!」

 

ブラックシスターが毒づくのも無理はない。

際限なく襲い掛かってくる大群に終わりが感じられない。終わりの見えないマラソンほど、精神を削られるものはない。

ただでさえ、こちらは連戦続きで疲労とダメージが溜まっているのだ。

たとえ女神化していようとも、この状況をひっくり返すのは絶望的だ。

 

ブラックシスターはがむしゃらに撃つ。これだけの数ならば、どこに撃っても当たる。それは同時に、どこに撃てば正解かわからないということでもある。

じりじりと追い詰められていき、退がる以上に進軍してくる。

モンスターの波が押しよせてきた。

ついにあと少しで、犬かロボットか、敵の爪が彼女を切り裂こうと……

 

「発射ー!」

 

どこからか放たれた二発の砲弾が着弾、爆発し、大量の敵を吹き飛ばす。

敵前線の一部が削がれ、唖然とした女神候補生たちは振り返った。

 

「ヴァトリ? それにゴールドサァドのみんなも……」

 

その通り、いざという時のために超次元に残っていた五人が集結していた。

黄金の四人を連れてきたヴァトリが、マジェコンヌの横に立つ。

 

「悩んでるばっかりじゃいけないと思ってね。ゴールドサァドもついでに連れてきたんだけど……どうやらベストタイミングだったみたいだ」

「もっと早く来れば褒めてやったがな」

 

マジェコンヌは彼の頭をぱしんと叩き、無遠慮に揺すった。

 

「やあマジェコンヌ。君まで来るとはね」

「ふん、レイが心配性なせいだ」

「とか言って、君もヤマトとアイを心配してたんだろ?」

 

肘でつつくヴァトリに、そっぽを向くマジェコンヌ。

とても大勢の敵を目の前にしているとは思えないのは豪胆なのか、神次元特有の余裕なのか。

 

「それで現状は……よくわからないけど、モンスターを倒せばいいんだな?」

「ええ。超次元は大丈夫なの?」

「アイエフがいる」

 

それに、とヴァトリは思う。

超次元には他にもたくさんの仲間がいる。プラネテューヌには女神に仕える兵士、ルウィーにはギルドの面々。

そこに住む人々だって、女神の力がなくとも世界を守る気持ちがある。

それを信じて託さずにいてどうする。

 

「わー! こんなに多いなんて聞いてないよー!」

 

向こう側からさらに迫りくるモンスターの群れ。その先頭には、モンスターに追い立てられるように……というか、実際追いかけられている女性がいた。

 

「あれは……ネプテューヌ?」

「別の次元の、らしい」

「話聞いても頭がこんがらがりそうだな。味方か?」

「らしいぞ。私にとっては不愉快だがな」

 

思ったよりややこしい。

ヴァトリのように、これまで別次元とは無縁だった人間にとって、超次元だけでも精一杯なのに、ここ心次元も。

まあ、そんなことは二の次。

 

「とにかく今は集中だ。モンスター相手でも大丈夫か、ビーシャ?」

「大丈夫だよ。ヴァトリと一緒なら!」

 

 

「シェアリングフィールドてんか~い!」

 

オレンジハートの声にあわせて、フィールドが作り替えられる。

といっても、心次元とシェアリングフィールドはあまり違いがない。

もとあった浮く足場が、いくつか追加されたくらいの話。

 

さて、ダークメガミは大幅に弱体化。こちらのほとんどは強化。

問題は、相手と私たちの差がどこまで縮められたか、だ。

シェアリングフィールドは、犯罪神の力を持つユウを、スーツを着た私なみに弱らせた。

ネクストフォームを圧倒するダークメガミをどこまで弱体化できたか……

 

激しい風を伴う太刀の一閃を、飛んでかわす。

でかい図体に似合わず、ダークメガミの動きは素早い。

さっきの攻撃も、あと少し対応が遅れていたら真っ二つになっていたところだった。

一撃で致命傷どころか、即死につながる。しかも一撃一撃に付随する衝撃波も馬鹿にできない威力。

何もかもが規格外。

 

「防御するので精一杯だな」

「どうにかして本体に近づかないと……」

 

近づいたとして、どうしたらいいかも考えないといけない。

ちまちまとした攻撃は意味がない。やるなら効果の大きい一発。

 

「も~、このままじゃらちが明かないよ!」

 

オレンジハートが叫ぶ。

らちが明かないどころか、ダメージを与えられていない。このままではやられてしまうだけだ。

もう、超次元の命運はここにいる者たちにかかっているというのに。

 

どうにか、どうにかしないと……

私は頭をフル回転させる。

力で勝てないなら、何か別の方法を……

 

「アレはくろめが操ってる。くろめが中に入ることで」

 

いわば、私のバトルスーツと同じようなものだ。

操縦者がいるからこそ、あのダークメガミは真価を発揮する。自律起動させて十分なら、くろめはあの中へ入っていないはずだ。

 

「彼女と同じうずめなら……」

「中に入れる?」

 

保証はできない。

だが、うずめがくろめの一部だというなら、十分に可能性はある……はず。

 

「やるしかないわ。行くわよ、うずめ」

「うん! というわけで、そこまでの道は開けといてね、みんな!」

「簡単に言ってくれる」

 

言いながら、ユウは上に飛び上がって、ダークメガミの目にわざと留まるようにした。

ひゅんひゅんと飛びながら、注意を集めて私たちから目を逸らさせる。

 

「まずは武器を壊すぞ。同時にやれば、あっちも混乱するだろう」

 

ヤマトの言葉に、それぞれが頷く。

やることが決まり、星のように駆けるみんなの動きに、数舜、ダークメガミの動きが固まる。

そのわずかな隙が、この場では命とりだ。

 

ネクストパープルとネクストブラックが、動きの止まった巨剣の上に立ち、目にもとまらぬ速さで剣を渡りながら、その刀身を切り刻んでいこうとする。

縦横無尽に駆け巡り、敵の武器に深く、多く、切れ目を入れる。

あっという間に、切られていないところを見つけるほうが大変なほど、ダークメガミの刀は傷ついた。

なまくらになったそれを、パープルシスターは逃しはしない。特大のビームを放って、破片へと変える。

 

 

「チューニング・フォール!」

 

逆の方向では、ローズハートが黄金の超重量プロセッサを足に纏い、斧をなんとか受けていた。

 

「ぐっ……くそ、ブラン! はよはよ! もうもたねえぞ!」

 

さすがの彼女といえども、ダークメガミの攻撃を一人では受け止めきれない。

軸にした足が、その重さで沈みつつ、がりがりと地面を削りながら押されていく。

ローズハートの額から冷や汗が垂れる、が、それは即座に冷え固まった。

 

「凍れ!」

 

ネクストホワイトの振るう武器が空気を凍らせ、伝い、ダークメガミの武器へと届く。

もう少しでローズハートのプロセッサを砕かんとしていた斧は、氷塊となって動きを止めた。

ダークメガミもその重さには耐えきれなかったか、ずどんと地鳴りを起こして地面に落ちた斧を持ち上げられない。

 

「ナイス! でっかいの一発いくぜ、ヤマト!」

「ああ!」

 

ヤマトが歯を食いしばり、全身を震わせる。力を溜め、両腕から雷を放ち、ローズハートへ、その黄金の足へ纏わせる。

ローズハートが醸し出していた紅いオーラに、緑の閃光が混じる。

バチバチと弾ける激しい電撃とともに、紅の女神は思いきり足を振りぬいた。

 

「合わせて、サンダーボルト・アマリリス!」

 

ローズハートが全力で氷を足で叩く。

たった一人の蹴りが生み出したとは思えない衝撃波が、花開くように八方へ広がる。

さらにその衝撃波が生きているようにうねり、尖り、氷を穿つ、穿つ、穿つ。

覆っている氷ごと、ダークメガミの斧は砕けていく。

 

それらに見向きをする暇もなく、私たちはダークメガミの懐へ潜りこむ。

あと、もう少し。あとほんの少しで胸元に到達できる。

 

「あぶないっ!」

 

焦る私を、オレンジハートは引っ張る。次の瞬間、足元から大槍が突き上げてきた。

ダークメガミは、しっかりと私たちのことを警戒していた。

そのまま突っ込んでいれば、私の身体は潰されていたか、真っ二つか、大きな穴が空いていたか、とにかく死んでいただろう。

 

「お任せを!」

 

ネクストグリーンが華麗に手を回す。すると、はるか上空で大量の魔法陣が敵の槍を囲んだ。

そこから現れた無数の槍が飛び交う。ダークメガミの槍が幾重にも突き刺され、亀裂が入る。しかし、壊れずにネクストグリーンへ向かう。

その先には、さらに私とオレンジハートもいる。

 

「危ない!」

「尖撃のシレット・スピアー!」

 

こちらを貫こうとしていた槍が、突然現れた巨大な魔槍とぶつかる。

ダークメガミの槍は割れ……はしなかったけど、軌道が逸れたおかげで敵の攻撃は私たちの横をすり抜けた。

地面に突き刺さったそれはついに限界を迎え、ばらばらと崩れていった。

 

「行け!」

 

槍を放ったユウが、こちらを見て促す。

私たちは急いで、ダークメガミの胸元へ手を伸ばす。

お願い。届いて。

 

私の祈りが届いたのか。それともうずめと同時に触れたからか。

ダークメガミの体表は大きく波打ち、私たちを取り込もうとする。

本当にこれで正解なのか、考え直す暇もなく、私とうずめはダークメガミの中へ引き込まれていった。

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