Fate/trinity chalice -The Fourth Wizards- 作:琴浪新(水)
設定を二週間ほど考えまして、まず登場させたい英霊が多すぎることに気づきました。
そこで7人に絞るのをやめたあたりから暴走が始まり、現在ルートが7つあるという事態に……。
とりあえず少しづつ書いていきます。
これが第二ルート、「The Fourth Wizards」「全なる者」です。
prologue 二人の約束
十年前
夕暮れ時、小さな公園のブランコに少年と少女が並んで座っている。
漕いではいない。
二人はただ夕焼けの空を見ながらブランコに座っていた。
それはよくある光景。
どんな町でも見られる日常の風景だった。
ただ一点を除いては……。
少年と話す少女は存在感が果てしなく薄かった。
隣の少年と比べると存在していないも同然だった。
透けけているわけでもなければ、ただ、影がうすいだけというわけでもない。
ただただ、存在感が薄かった。
そんな少女は少年に話しかける。
「やっぱり君には才能があるよ」
「? ありがと」
いきなりの少女のほめ言葉に少年は訝しむように礼を返す。
いつも夕暮れの公園で話す仲の二人だが、少年は今までこんな風に少女に褒められたことはなかった。
消えてしまいそうな少女は少しがっかりしたようだった。
「心がこもってないなぁ……」
「んー……。魔法使いの才能があるって言われてもピンとこないんだけど……。それってやっぱりすごいの?」
イマイチ少女の言葉を理解できていない少年は彼女にたずねる。
「ハァ、もちろんすごいに決まってるじゃない! 普通の魔術師なんかとは格が違うんだから! 魔法使いっていうのはすごいすっごい存在なんだよ! 世界に数人しかいないし」
少女は胸を張って言う。
もうすぐそこに到達する自分を褒めろ、と言わんばかりに。
しかし、少年にとっては魔法使いも魔術師も等しくかっこいい、雲の上の存在だった。
少年は魔法に憧れていたわけではなかった。
どんなに小さくても神秘を操るその姿に憧れていたのだ。
少年にとって魔術も魔法も同じくらい羨ましいものだったのだ。
「なんかすごそう! ……でも、ぼくはふつうの魔術師でもなりたいんだけど……」
「うーん。それは難しいかもね」
けれども、少女は少し困った顔で少年の望みを否定した。
少年には魔術師の才能はないのではないか、と。
「どうして?」
少年は尋ねる。
少女は彼の疑問に言葉に詰まりながら答えた。
それは、魔術にものすごく詳しい彼女にしては珍しいことだった。
「君は……なんていうかな…………そう、歪なんだよ。変な方向に凄いっていうかな……。その方向には凄い才能を持ってるんだけど、それは普通にはあんまり向かないんだよ」
他人にはよくわからない返事だっただろうが毎日、少女に話を聞いていた少年にはその言葉で十分伝わった。
そう、彼には魔術師の才能は無い。
「そっかー。全とのゆうごう、だっけ?」
少年は確認する。
それは、確認するまでもなく聞かされ続けた言葉だったが、それでも少年にとって魔術はそう簡単に諦められるものではなかったのだ。
必死な少年を見てすこし哀れむように少女は答えた。
「そうそう、正確にはそれに至る力だね。君の特殊な才能は魔法に到達するには最適なものだからこそ逆に普通の魔術には向かないものなんだ」
少年は思ったより自分の中に落胆の感情が無いことに気づいた。
少年の魔術への憧れはそう簡単なものではなかったが、少女の言う魔法の才能も捨てものではないかもしれない、と思い始めていたのだ。
「魔法使いと魔術師ってそんなに違うものなの?」
再び少年は尋ねる。
「それはもう……。ティラノサウルスとカナヘビ、フェニックスと雀くらい違うよ」
少女はその問いに真顔で答えた。
彼女の目を見てその言葉に嘘や誇張が無いと理解した時、少年は歓喜した。
より高度な神秘を操ることができると言われたからだ。
少女にその喜びを悟られないようにできるだけ平静を装って少年はつぶやく。
少女に子供っぽいと思われたくなかったからだ。
「……けっこう違うんだね……」
「君はね、雀やカナヘビには向かないけど、その代わりにティラノサウルスやフェニックスにはなれる」
少年の呟きに少女は肯定を返す。
この時、少年の中で彼の夢は確立した。
「本当? じゃあぼくがんばろうかな!」
「君の場合生きているだけで到達してしまうかもしれないけどね〜」
羨ましそうに、けど嬉しそうに少女は肯定を重ねる。
「? でも確か、完成したらみんなから忘れられちゃうんだよね?」
そこで少年は彼の中では些細なひっかかりを思い出した。
それは二人の目指す魔法の欠点、否、代償である。
普段から常に自信満々の少女もこの話しをする時だけは少し表情に影が指すのだ。
しかし、今日の少女は笑顔のままだった。
「うん。そうだよ」
笑顔のまま少女は頷く。
少年は少女の笑顔を不思議に思いながらも問う。
「それってさみしくない?」
少女はそれに嬉しそうに答えた。
「君が私と同じものになってくれるなら寂しくなんかないよ。君も私と同じ魔法を目指すんでしょ? ならもう大丈夫!」
消えてしまいそうな、儚い笑顔で少女は言った。
少年は答える。
「うん。約束するよ。僕は必ずそこまで行く! だから心配し無いでいいよ。だから、それまで待ってて!」
その言葉を聞いて少女は満足げにブランコから降りた。
少女はもう、少年には見え無い。
公園には彼しかいなかった。
そして、十数年、彼は約束の一歩手前まで進み続けた。
それは、魔術師としてはあまりに異常で、異端の力だった。
これは魔法使いを目指す少年の最後の戦いの物語。
総合主人公の
第二ルートです!
と言っても他のルートとの平行で書き進めているのですが……。
prologueから全然違うという……。
頑張ります……。
中身は似ている予定なので……。