Fate/trinity chalice -The Fourth Wizards- 作:琴浪新(水)
青年は剣を抜き鞘を床に伏せる。
黄金の輝きは炎の赤にも負けていない。
炎の中に伏せられた鞘はその形を保っている。
燃えずに輝きを増していっている。
続いて青年は右手の剣で左の掌を軽く切った。
紅い血が青年の掌に一筋の線を描き、小さな球を作り、所々で決壊して溢れていく。
青年は右手の人差し指で左手に溜まった血を取り、口紅の如く唇を紅く染める。
そして青年は左手を床に向かって振り下ろす。
血が青年の手から離れ、宙を舞って床に滴下する。
血が床に着いた時、床が微かに発光した。
炎の赤にかき消されない紅い輝きが……。
詠唱が始まる。
「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公、祖には我が盟友『トワイライトフィメイル』
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で
王国に至る三叉路は循環せよ」
炎は消えない。
詠唱は続く。
「
繰り返すつどに五度、ただ満たされる刻を破却する
----------
-------告げる
-----告げる
」
魔法陣が一際強く閃く。
赤く燃え盛る炎を塗りつぶすように白い輝きが部屋を覆う。
魔法陣からは風が吹き出し部屋に気が満ちていくのがわかる。
魔法陣はその色彩を一層、紅に染めていく。
そうして詠唱は最終段階へと進んで行く。
「汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば答えよ
誓いを此処に、我は常世総ての善となる者、我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ…………‼︎‼︎‼︎‼︎」
紅い魔法陣が迫り上がって来るような錯覚に囚われる中、純白の輝きは最高潮に達し、部屋に五感では知覚できない風が吹き荒れる。
そして、光が消え、風が止み、陣がその色を失った時、青年の前には人が立っていた。
青年の手からは剣が、足元からは鞘が消えている。
青年はその人の伝説とは似ているようで決定的に異なる姿に驚いたが、すぐに姿勢を改めて彼、いや、彼女に慇懃に礼をした。
灯りの消えた部屋にあって、その少女は圧倒的輝きを纏っている。
その輝きは彼女の持つ剣によるものではない。
彼女の持つ、英霊としての威厳が青年に光を見せているのだ。
やや幼くも美しいその顔は見るものから警戒心を根こそぎ奪っていくような魅力に溢れている。
顔の両脇で纏められている絹のような黒髪は彼女を中性的に見せている。
顔を上げて、その魅力に囚われた青年は、先ほどまでの顔付きが嘘のように惚けている。
そんな青年の様子に気づいていないのか少女は青年に問う。
「あなたが私のマスターか?」
召喚完了!