Fate/trinity chalice -The Fourth Wizards-   作:琴浪新(水)

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アサシンの正体は!?
因みにハサン縛りは消えてます。


マンハッタンに集いし英霊たち 暗殺者

 嵐の海の瞳の男はガーデンを出た後、公園までやってきていた。

 緑の多いマジソンスクエアパークの中は夜とはいえ人で溢れていた。

 男の瞳にはすれ違う人々が映っていない。

 その藍色の瞳は公園の景色を全く映してはいなかった。

 が、一瞬だけ彼の瞳に人が映る。

 大学生ほどに見えるなんて事はない三人の男女だった。

 この公園において違和感があるとすれば、そのうちの一人が東洋人であることだろうか。

 他の二人も生粋のアメリカ人といった顔立ちではない。

 と言っても外国人も多いこの公園、この街では別段不思議なことではないのだが……。

 しかし、男は立ちどまって彼らの動きを見ていた。

 彼らはそんな男に気づいた風もなく公園の中へと歩いていく。

 そして男と三人組がすれ違った瞬間、東洋人の男の目が彼を捉えた。

 その瞳に映るものは何もない。

 完全な虚無だった。

 普通の人間には感知できないが、その男からは光が射しており、その体は神々しく見える。

 それでいて、その東洋人の心の中は空だった。

 一面の灰色。

 燃え尽きた街の跡。

 東洋人の男の心に輝きはない。

 彼の者の心に光などない。

 ただ、純然たる理想のみがそこにはあった。

 思わず見とれていた男だったが、彼を注視する三人の視線を受けて再び歩き出した。

 男の瞳には再び嵐の海が広がる。

 

 

 

 

「シャーレイ、さっきの男は危険だな。

 魔術師である、というのはもちろんだが、あの男には何かが欠けている気がする。

 それでいて、僕、アサシンの迷彩を破るくらいだから、魔術師としてなかなかに強い。

 マンハッタン(ここ)を根城としているヤツでもない限り、いやそうであってもマスター最有力候補だ。

 監視を付けておいたから大戦が始まるまではヤツの動きは注視しておいたほうがいい」

「あのねぇ、ケリィ。

 私だって魔術師の端くれなんだからそれぐらいわかってるって……。

 あと、ケリィの迷彩が破られたのは、さっきの男のレベルが高いからじゃないくて、ケリィがランタンみたいにピカピカ光ってるからだよ……。

 アサシンとして、それはどうなのよ……」

 公園を歩きながら話している三人組の中の東洋人の男が傍の浅黒い肌の女性に話している。

 普通の大学生にしては不思議な会話である。

「そうだなぁ……。

 目くらましにしてその間に敵をこうズバッと……」

「じゃあそのギターケースの中のライフルは二度と使わないわけね」

 シャーレイからの武器取り上げの宣告に、アサシンを名乗るケリィと呼ばれた東洋人の男は両手を挙げて降参の意を示す。

 周囲から誤解の視線を向けられてもおかしくない行為ではあるが、魔術師とサーヴァント以外には彼の気配遮断スキルが効いているのだろう。

 一応、腐ってもアサシンというわけだ。

 尤も、他のマスターやサーヴァントに通用しない時点でほぼ無駄であるが……。

「ケリィ、そんなに物騒な者を持ち歩く必要が合うのか?

 お前、日本人だろう?

 流石にこの国でも、対物ライフル(ソレ)は見逃してもらえないんじゃないのか?」

「チッチッチ、勉強不足だな、マスター。

 アメリカでは対物ライフルの所持が許可されている州もある。

 携行も許可があればOKだ。

 あと、僕が日本で過ごした時間は十年にも満たないから、日本人の血ではあるけど銃刀法違反という言葉には疎いんだ」

 分解された対物ライフルを偽装ギターケースの中に収める、おおよそ英霊とは思えないサーヴァントはマスターと呼ぶ、シャーレイと同じような肌の男性に米国の法律を説く。

 ますますもって英霊っぽさが無い。

「へぇ〜……。

 許可なんて取ってないというのはさておき、アメリカじゃ普通なのか……。」

「まぁ、発砲音がバカでかいので暗殺には向かないし、コレクションの域を出ないという考えなんだろうな。

 僕も暗殺に対物ライフルを使うような人間がいたら即返り討ちにできる自信がある」

 そのサーヴァント、ケリィは自慢げに自信の持つ武装を否定していく。

 マスターもさすがに呆れ気味である。

「なるほどなるほどってオイ、アサシンがそれでいいのかよ……」

「僕は上手くやるから大丈夫さ」

「そうかよ。

 じゃあ、いいんだけどさ」

 それでも流石は英霊の現し身だけあって、その自信は揺らぐこと無いものだった。

 彼は自信の腕に疑問を抱いてなどいない。

 ただ、それでも救いきれなかったものがあっただけなのだ。

 だからこそ、彼は英霊となってでもこの戦いに挑み続ける。

 一度は敗れた夢でも、それは決して間違いなどでは無いはずだと信じているが故に……。

「それにしても聖杯大戦、か。

 アサシンとしては肩身の狭い戦いになりそうだよ。

 なにせ、七対七対七のチーム戦なんて、きっと騎士風情が僕の参加を許したりし無いだろうにな……」

 若い頃の姿で限界した英霊はほぼ同年の二人に自重気味に笑いかける。

 彼の頭をよぎったのは目に涙を浮かべて消えていった金髪の英霊か、それとも夢を託した聖杯に裏着られた時に後悔してしまった自分自身か。

 英霊と二人の吸血鬼は夜の公園を談笑しながら歩き続ける。

 




アサシンです。
思いっきり真名一歩手間で呼ばれていますが、その正体は自明の理。
マスターはともかくもう一人の女性もバレバレですね……。
あと、毎話出てきますが嵐の瞳の男は主人公ではありません。
マスターでも無いです。
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