記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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ちょっと、視点付けるのが辛くなってきたので、視点がない時は三人称で行こうと思います。



下衆の極み

「はぁー、こんなにいい夜空だってのに、出歩いてる奴が殆ど居ないな。俺の地元なら金くらい

は取れるぞ」

 

 

街道から夜空を見上げ十六夜は思ったことを呟く。それに続くように飛鳥もふと疑問を口にした。

 

 

「これだけハッキリ月が出ているのに、星の光が霞まない何ておかしくないかしら?」

 

「あぁ……箱庭の天幕はありのままを映すからな。だからこそ、こうやって星空も見えるし私も

昼間に活動できるのだ」

 

「ふーん。太陽は分かるけれど、星空は何故なの?」

 

「あ、それはですね」

 

「理由なんて要らないですよ。月と一緒にこの満天の星空が望める、これだけでも充分ですよ」

 

「そうだな。故に、お嬢様の質問は無粋ってもんだ」

 

「ふふ…そうね。そっちの方が浪漫があるわね」

 

「……そ、そうですね」

 

 

黒ウサギはそこで話を止めることにした。話も長くなるし、今は先にやるべき事があると判断したのだ。

 

彼らが何故このような会話をしてるかというと、サウザンドアイズの支店に行く為……厳密にはそこにいる白夜叉の会うためだ。

 

雪羽とレティシアが〝ゴーゴンの威光〟によって石化してしまった後、レティシアの身柄をペルセウスに確保されてしまったのだ。

で、その後一悶着が有り、彼らは事情に詳しそうな白夜叉の元へ向かうことになったのだ─────

 

 

 

──────なぜか連れて行かれたはずのレティシアと一緒に石化されたはずの雪羽も含めて。

 

 

なぜこの二人が無事なのかというと……これまた単純かつふざけた話で、近くの茂みから普通に姿を現したのだ。その時はあの十六夜でさえも目を見開いて驚いていた。

 

雪羽に事情を聞くところ、レティシアを庇うように抱き寄せたあと彼女の恩恵(ギフト)を使い自分達と全く同じ姿形の石像を創り、自分達は十六夜でも捉えられない速度で隠れたらしかった。

 

何気にここで初めて雪羽のギフトが明かされたのだが、状況が状況故に説明は後にしてサウザンドアイズの支店へ向かっている訳なのだ。

 

因みにメンバーは十六夜、飛鳥、雪羽、黒ウサギ、レティシアとなっている。

耀とジンは既に寝付いているということで置いてきたのだ。

 

 

「しかし……私はこのまま出向いても良いのか?おそらくだが、ペルセウスの頭首は既にこの事

は承知済みだろう?」

 

「それもそうですね……。どうしましょうか…」

 

「まあ、このまま行けば色々イチャモン付けられてこっちが不利になるだろうな」

 

「あ、それなら大丈夫ですよ?レティシアさんには隠れて聞いててもらいます」

 

「いや、しかし…どうやって……」

 

 

レティシア達の疑問をよそに雪羽は彼女に近づくと、その手をとって言った。

 

 

「こうやってです。少し驚くかもしれないですけど…そこは我慢してください」

 

 

すると、雪羽の身体が白く発光し、それに呼応する様にレティシアの身体も光りだした。

 

 

「え、ゆ、雪羽さん?一体何を…………え!?」

 

「な!?」

 

「っ……これは………!!」

 

 

黒ウサギたちは目の前で起こっている事に唖然とした。

それもそのはず。なんと、雪羽と共に光りだしたレティシアの姿が徐々に透けて行き、光の粒子となって雪羽に流れて行ったのだ。驚かない方が異常だろう。

 

黒ウサギは暫くフリーズしたがすぐにハッ!となると雪羽に詰め寄った。

 

 

「な、ななななな何をしたのですか雪羽さん!?」

 

「そ、そうよ!え、レティシアは!?雪羽ちゃん、本当に何を……!」

 

 

二人が雪羽に詰め寄るなか、彼女を纏っていた光は徐々に薄らぎ、閉じていた瞼をゆっくり開けた。

そして、飛鳥と黒ウサギはさらに驚く事となった。

 

 

「「……え?」」

 

 

光が治まった後の雪羽の外見は所々変化していた。

背格好こそそのままだが、雪の様に白く透き通っていた髪はレティシアのプラチナブロンドを含んだかのように所々染まり、シアンブルーの瞳は右目が紅というオッドアイ状態に。

 

服装も少し変わり、元々変わった刺繍の入ったノースリーブ、腿の裏までの長さがあった薄手のフード付き外套。下は膝下5cm程のスカート、といった格好だったものが所々、これまたレティシアの服装に見られた特徴が合わさった感じとなっている。

 

比率的には雪羽:レティシアとすると、7:3といったところだ。

 

 

『ふぅ……あれ!?く、黒ウサギさん!?飛鳥さんも!どうしたんですか!?』

 

「いや、お前のせいだろ」

 

 

十六夜が冷静に突っ込む。心なしか薄い笑みが浮かんでいる気もするが、今は置いておくとしよう。

 

 

「にしても…それは一体なんだ?レティシアの特徴がちらほら出てるが…」

 

『あ、これですか?これは、その…正式な名称は無いんですが、私達は同調(リンク)と呼ん

 でます』

 

 

十六夜の問いに少し躊躇いがちに答える。その声音はレティシアの声帯も混じっているのか少し違和感がある。

 

 

「同調?」

 

『は、はい。簡単に言うとですね、他者を自分に取り入れて、または私が相手に取り込まれ

 て、本来持つ力などを共有するものですね。どちらが取り込むかによって外見的特長も変わ

 るもので、今は私がやったのでレティシアさんの特徴が現れてます』

 

「へえ~…変わってるな。じゃあ、取り込まれた奴はどうなるんだ?」

 

『ちゃんと居ますよ?意識的に精神を交代できますし、待機してるほうも外を近く出来ま

 す。人によっては念話等で中にいながらも会話できますけど……一旦代わった方が分かりや

 すいですね』

 

 

雪羽はそういうと一旦目を閉じすぐに再び開けた。

 

 

『……十六夜か』

 

「よっ。気分はどんな感じなんだ?」

 

『私自身驚くほど不思議な感覚だ。このような感覚は今まで感じたこともない。…ん?そうな

 のか?……分かった』

 

「雪羽か?何だって?」

 

『直に慣れますよ、らしい。……しかし…この力は……』

 

 

雪羽《レティシア》は身体の底に眠る力を認識して、静かに呟く。

 

 

「……まっ、今はこん位でいいか。それより急ごうぜ。後で色々聞かせてもらうからな。ほ

ら、黒ウサギにお嬢様も、何時までもつっ立ってないで行くぞ」

 

「「ハッ!………え?」」

 

『ふふ…黒ウサギ、いつまで呆けているのだ?』

 

「れ、レティシア様?レティシア様なので?」

 

『他に誰がいるのだ……っと、今は雪羽の姿だったな。安心しろ、私は無事だ』

 

「レティシア?雪羽ちゃんは?」

 

『おお、そうだったな。今から赴くのに私が出ていてはまずいな』

 

 

彼女はそういうとさっき同じ要領で目を閉じる。そして直に開ける。

 

 

『ふぅ…。お騒がせしてすいません黒ウサギさん、飛鳥さん』

 

「ゆ、雪羽ちゃん?これってどういう────」

 

「おい、何してんだ!俺一人で行っちまうぞ!」

 

 

一人先に進んでいた大声で呼ぶ。雪羽は少し申し訳ないような顔で飛鳥に言った。

 

 

『まあ…その……色々気になるとは思いますけど、今は急ぎませんか?』

 

「…………分かったわ。だけど、帰ったらしっかり聞かせてもらうからね。黒ウサギもそれでい

いわよね?」

 

「え?あ、はい…。と、とりあえず行きましょう。十六夜さん一人では何をするか分かったもの

じゃないですから」

 

『ハ、ハハハハ……』

 

 

少し一悶着はあったが、それよりも優先すべき事があるので彼女らはサウザンドアイズの支店へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

~サウザンドアイズ二一〇五三八〇外門支店~

 

 

ノーネーム御一行は昨日会った店員に奥へ案内ている。その店員は相変わらず無愛想で辛らつではあったが、今回は事情を聞き及んでるのかすんなり通してくれていた。

 

彼らは中庭を抜けて離れに着いた時、そこにはいつもの違いやや不機嫌気味の白夜叉とペルセウスのリーダー、ルイオスがいた。

そして、黒ウサギを見るや否や歓声を上げる。

 

 

「うわぉ、ウサギじゃん!うわー実物始めて見た!噂には聞いていたけど、本当に居るとは思わ

なかった!つーかミニスカにガーターソックスとか随分えろいな!ねー君、家のとこに来い

よ。今なら三食首輪付きで可愛がってやるぜ?」

 

「これはまた……分かりやすい外道ね。予めに断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

 

「そうですそうです!黒ウサギの脚は…って違いますよ飛鳥さん!!」

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のもんだ」

 

「そうですそうですこの美脚はもう黙らっしゃい!!」

 

「よかろう!ならば言い値で売ってや────」

 

「────りません!白夜叉様もいい加減にしてください!!今は真面目な話をするときですよ!?

そろそろ本気で黒ウサギも怒りますよ!!」

 

「ハハ!馬鹿だな、怒らせてんだよ黒ウサギ」

 

「この御馬鹿ああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

スパァァァァァン!!!

黒ウサギのもはや定番となったハリセンの音が響いた。

 

 

『((………………はぁ))』

 

 

そんなこんな時まで平常運転な面子に雪羽とレティシアは心の中で深い溜め息を着いた

 

 

「く、あっははははははは!!え、な、何?君達ノーネームって芸人コミュニティかなんかな

の?もしそうならうちに来いって、割とマジで。道楽には好きなだけ金をかける性分でね。生

涯面倒見てあげるよ?まっ、勿論黒ウサギの美脚は僕のベッドで毎晩好きなだけ開かせてもら

うけど」

 

 

で、そんな漫才に置いてかれたていたルイオスはそれが終わると途端に笑い出し、そりゃもう大胆なセクハラ発言を再度した。

 

そして、その手の話には滅法弱い雪羽は叫びこそしなかったもののその顔は沸騰したかのように赤くなっている。もはや軽く飛びそうだ。

 

 

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らない殿方に肌を見せるつもりは有りません」

 

「へえ?俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

 

「な!?ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好

を常備すれば賃金3割ましと言われたからで…………」

 

 

黒ウサギのいう事はノーネームの現状から考えても正しいのだが、知らぬ人からすれば痴女もいいところだと思える。

 

 

「ふぅん?なんだ、嫌々そんな服を着せられてたのかよ…………おい白夜叉」

 

「何だ小僧?」

 

 

十六夜は白夜叉を睨み、そして、

 

 

「超グッジョブ」

 

「うむ」

 

 

もう逆に清々しい程の顔で親指をビシッ!と立てた。

 

 

『~~~~!!だからそういう事はやめてくださいぃぃぃぃぃ!!!!』

 

 

どっくぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!

 

 

同時に雪羽の歯止めが聞かなくなり何所から取り出したのかハリセンで二人の頭を思いっきり叩いた。

大よそハリセンからなってはいけない様な音ではあるが、そこは気にしてはいけない。

 

一方黒ウサギはというとその場にガクリと項垂れ、案内の店員に慰められていた。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

所変わって、白夜叉の私室。そこで、黒ウサギは白夜叉に事の事情を説明した。

 

 

「────────以上が、ペルセウスがノーネームに働いた無礼の内容です。ご理解いただけました

でしょうか?」

 

「う、うむ。ペルセウスの所有物・ヴァンパイアが身勝手にノーネームの敷地に踏み込み荒らし

た事。それらを捕獲する為に数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

 

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけではすみません」

 

 

黒ウサギはいつになくマジトーンで言葉を紡ぐ。

 

 

『(レティシアさん。貴女まで責任を取るような雰囲気なのですが……)』

 

『(いいや、黒ウサギが正しい。既に言ったが私は今現在ペルセウスの所有物だ。いくら身内

  とは言え例外は認められないだろう)』

 

『(そ、そうなのですか…?)』

 

『(そういうものなのだ。そもそも、今こうして私自身がこちら側に居る事自体ただ事では済

  まないのだが……)』

 

『(だ、大丈夫です!私が何としても隠します!)』

 

『(あ、いや………意気込むところが違うのだが…)』

 

 

で、そんな中雪羽とレティシアはちょっとした問答を繰り返していた。雪羽は少しずれてるが………。

 

 

「ですから、ペルセウスに受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着を付けるべきかと。

それで、サウザンドアイズにはその仲介役をお願いしたくて参りました。もしペルセウスが拒むようであれば主催者権限(ホストマスター)の名の下に──」

 

「いやだ」

 

 

それは唐突だった。ルイオスが黒ウサギの言葉を遮るようにきっぱりと拒否したのだ。

 

 

「…………はい?」

 

「いやだね。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠でもあんの?」

 

「………でしたら、彼女の石化を解いてもらえば」

 

「駄目だね。あいつは一度逃げ出したんだ。出荷するまで石化は解けない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?え、元お仲間さん?」

 

『(……言いたい放題ですね。………怒ってもいいですか?)』

 

『(いや、やめてくれ。奴の物言いは確かに嫌味しかないが、言っている事はどれも事実だ)』

 

 

レティシアもこうは言っているが、全く憤ってない訳ではない。それでも、それを表に出さないのは流石と言ったところだろうか……

 

 

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないか?」

 

「な、何を根拠にそんな事────!!」

 

「事実だろ?実際にお前達のところに居たんだからさ?」

 

『(…………………)』

 

『(お、落ち着くんだ雪羽。此処で事を構えれば取り返しがつかなくなる)』

 

『(………………分かってます)』

 

 

雪羽の堪忍袋もそろそろ限界なのだろう。幸い部屋に居る面々には感づかれていないが、身体を同調しているレティシアには、普段の雪羽からは想像出来ないほどの怒気が直に感じられる為、宥めるのに精一杯となってしまっている。

 

 

「まあ?どうしてもって言うならちゃんと捜査をしないとね。……もっとも、ちゃんと捜査をされて一番困るのは全く別の人だろうけど」

 

「そ、それは……」

 

「ふ~ん。じゃ、もういいだろ。僕はさっさと帰ってあの吸血鬼を売り払う事にするよ。愛想がない女って嫌いなんだよね、僕って。特にアイツときたら体も殆ど子供だしねえ……」

 

『(………あれ、なんででしょう?怒りと言うよりあの人が哀れに見えてきたのですが……)』

 

『(それは、彼の言う吸血鬼の本物が此処にいるからでは?)』

 

『(あ、そうですか……。それに、さっきから静かですけど十六夜君もいますからね~)』

 

『(?それがどうかしたのか?)』

 

『(多分見てればそのうち分かると思いますよ?)』

 

『(……?)』

 

 

ルイオス……言っちゃ何だが可哀相な奴である。石化したレティシアじゃなく本物の石像を持って踏ん反り返るその姿はもはや可哀相ではなく哀れと言っても良いのかもしれない。

因みにだが、ルイオスがレティシアの売買の話をした時、十六夜は笑いを噛み殺していた。

 

 

「それでもまあ?見た目は可愛いから、その手の愛好家には堪らないだろ?気の強い女を裸体の

まま鎖でつなぎ組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴も居るし?こう、太陽という名の牢獄に囚

われて永遠に玩具になる美少女ってさ…なかなかエロくない?」

 

 

そんな事も露知らずルイオスは挑発を続ける。しかし、これを直に本人が聞いてるのだから可笑しくてしょうがない。滑稽だ。

 

 

「はぁ……でもさあ?アイツも可哀相な奴だよねぇ?箱庭から売られるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもんの」

 

「…………!」

 

「どういう事よ…それ……」

 

 

飛鳥が声を上げる。黒ウサギも動揺したのか、一瞬だが雪羽(レティシア)の方を一瞥した。

 

 

『(………レティシアさん?』

 

『(…………)』

 

「ハハッ…全く……報われない奴だよ。恩恵(ギフト)はこの世界で生きていくには必要不可欠

な生命線、魂の一部だってのにさ?」

 

「(レティシア様……まさか……)」

 

 

黒ウサギは今も進行形で話を聞いているレティシアが何の覚悟を持って自分達の元に来たのか理解した。今回の報告はレティシアも了承済み、だから黒ウサギはあそこまで言えたのだ。だが、肝心な事、何故この東側地区に居るのか、彼女のギフトがなぜああも落ちてしまったのか、それを一言も言っていなかった。

 

そして、当の本人はただ沈黙をするしかなかった。

しかし、そんな事をお構い無しにルイオスは話を続ける。

 

 

「それを馬鹿な無能共の無茶を止める為に捨てて、ようやく手に入れた自由も所詮は仮初のもの。

他人の所有物なんて極め付けの屈辱にまで耐えて駆けつけたってのに、その仲間はあっさり自

分を見捨てやがる!目を覚ましたアイツは一体どう思うんだろうね」

 

『………………レティシアさん』

 

 

雪羽は内で会話する事も忘れ自然と共に居る当事者に呟気程度の声量で聞いた。その声音にはどこか悲痛なものが感じられる。

 

そして、レティシアはただ一言、

 

 

『(………………すまない)』

 

 

そう返すだけだった。

 

 

「…ねえ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として儀が立

たないよね?」

 

「………どういうことですか?」

 

「取引をしようよ。吸血鬼をノーネームに返してやる。その代わりにさ─────僕は君が欲しい。

君は生涯隷属するんだ」

 

「なっ」

 

 

ルイオスのいう事は至極単純な事、レティシアと交換で黒ウサギを手に入れるということだ。

だが、ルイオスの性格からしてそんな上手い話などありえないのだが…

 

 

「一種の一目ぼれ、かな?それに箱庭の貴族ってのもおs────」

 

「ふざけないで!…外道とは思っていたけどここまでだなんて私も予想外よ…!!黒ウサギ!こ

んな奴なんて放っといて行くわよ!だいたい私達にはもう──」

 

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

 

ルイオスが喋りきる前に飛鳥はとうとう耐えられなくなったのか怒鳴り声を上げて黒ウサギを連れて行こうとした。しかし、それは黒ウサギの制止によって止められる。

 

その様子を見てルイオスは厭らしく笑みを浮かべて言う。

 

 

「ほらほら、君は月のウサギなんだろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれる事でさえ本望だろ?君達

にとって、自己犠牲は本能同然だもんなぁ?」

 

「………っ」

 

 

黒ウサギは言い返せない。そして、それはものが事実と言う事を証明している。

そして、ルイオスは追い討ちをかけるように言葉をつらつらと吐き出す。

 

 

「ねえ…どうしたよ?ウサギってのは義理とか人情とかそういったもんが好きなんだろ?その安

っぽい命をさぁ、安っぽい自己犠牲ヨロシクッて帝釈天に売り込んだんだろ!?箱庭に招かれ

た理由が献身なら、その馬鹿な本能に従って(やっす)い喧嘩を安く買っちまうってのが

筋だよな!?ほらほらどうしたよ!?どうなんだよ黒ウサg────」

 

黙りなさい(・・・・・)!」

 

「っ………!?…………!?」

 

「もう我慢できない……!!見てて不快だわ。そのまま地に伏せなさい(・・・・・・・)!」

 

 

飛鳥は混乱するルイオスを尻目に威光のギフトを言い放った。

しかし、ルイオスはどれほど腐っていようと五桁に本拠を置くペルセウスのリーダーだ。

つまり────

 

 

「おい……、女ぁ…。そんなのが、通じるのはな、─────格下だけだ、馬鹿が!!」

 

 

────飛鳥ではまだ完全に抑えるなど不可能だ。

 

飛鳥の行動に激昂したルイオスは懐からギフトカードを取り出し、そこから曲線を描く刃を持つ鎌。ギリシャ神話において登場する武具、ハルパーを取り出して飛鳥に振り下ろす。

 

が、それの刃は飛鳥には届かなかった。それを止めたのは────

 

 

「な!?なんだよお前は……」

 

『誰?そんな事は今はいいですよね?………私の親友に何しようとしてるのですか…』

 

 

────雪羽だった。それもハルパーの刃にすら触れず、その刃は雪羽の顔の目の前数cmのところで停止していた。まるで見えない壁にでも阻まれたように。ルイオスが必死に力を入れてるようだがビクともしない。

そんな中、ずっと静観していた十六夜はヤレヤレといった感じで言った。

 

 

「……はぁ、おいおい雪羽。俺の分を盗んないでくれよ。せっかく大人しくしてたってのによ」

 

 

……口ぶりからして、飛び出すき満々だったのだろう。

 

 

『知りませよ。私より早く動けば良かったのでは?』

 

「へえ………言ってくれるじゃねえか。この天然雪兎」

 

『て、天然雪兎って………』

 

「おい、お前ら!!僕を無視するなんて────」

 

「ええい、やめんか戯け共!これ以上やるなら門外に放り出すぞ!」

 

 

剣呑?と化した場を収めたのは白夜叉だった。出来ればもっと早く言って欲しかったのだが。

 

 

「………。ちっ。けど、その女が先に手を出したんだけどね?」

 

『手は出してませんよ?手は、』

 

「っ、この餓鬼が…!…………全く、揚げ足を取るのはやめて欲しいね。で、結局どうするの?」

 

 

雪羽の分かりやすい挑発に乗りそうになったルイオスだが、それ以上やると本当に追い出しをくらいかねないので、なんとか冷静に返した。殺気は未だに顕在だが…

 

 

 

「……ええ、分かってます。これで今日の一件はお互いに不問としましょう。…………後、先ほ

どの話ですが…………少しだけ、時間をください」

 

「く、黒ウサギ!?待ちなさいよ!?貴女、この男の物になってもいいと言うの!?」

 

「…………仲間に相談する為にも、どうぞお時間を」

 

「ハハッ、OKOK。そうだなあ………こっちの取引ぎりぎりの、一週間だけ待ってやるよ」

 

 

そう言って、ルイオスは部屋を後にしようとする。

 

 

「ったく、白夜叉は恵まれてるな。気難しい友人と下衆の部下に挟まれるなんてそうそう経験で

きないぞ?」

 

「全くだの。そんなに羨ましがるなら変わってやらん事もないが…」

 

「いや、今いいや。………ところでさ、ペルセウスのリーダーってのはお前でいいんだよな?」

 

 

十六夜は退出しかけてるルイオスに言う。ルイオスはそれに対し訝しげに返す。

 

 

「あぁ?そうだけど……今更君何言ってんの?」

 

 

しかし、十六夜は最後まで聞かないうちにルイオスに近づき、マジマジと観察をした末、がっくりと肩を落として戻ってきた。

さながらその様子は欲しかった玩具が予想以上につまらなかった子供のような反応だった。

 

 

「……おい、ちょっと待てよ。何その反応?」

 

「名前負けしすぎ。期待した俺が馬鹿だった。────そういう意味さ」

 

「はっ。今なら安い喧嘩でも安く買うぜ?」

 

「いや、いいよ……」

 

「ふん、そうかい。…………たかが人間が頭に乗るなよ」

 

 

ルイオスは最後にそう言い、今度こそその場を後にした。

十六夜はそんな彼の背中を見る事もしなかった。その目に興味と言うものは完全に失われている。

 

 

「……はぁ。おい、俺達も用は済んだんだ。帰るぞ」

 

 

十六夜の言葉を受けノーネーム一行はルイオスにつづき、その場を後にする事にした。

 

しかし、一行が部屋を出て行く中最後に雪羽が行こうとした時、彼女を白夜叉が呼び止める。

 

 

「雪羽よ」

 

『?何ですか?』

 

「今更だが…………お主、兄の事は」

 

『白夜叉さんまでそれを聞きますか?一言だけいいます──────大丈夫ですよ』

 

「……そうか。……あともう一つ、おんし……その装いはどうした?」

 

『これですか?ふふ……企業秘密、ですよ』

 

「!そうか……まあ、今はそれで納得する事にするかの」

 

『それでは白夜叉さん、今日はありがとうございました』

 

「うむ…………」

 

 

最後に礼を述べ雪羽をその場を立ち去る。後に残ったのは白夜叉だけ。ただ、その双眸は細められ、去っていく彼女の背中を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 




いやぁ……三人称?って辛いですね。会話文が途端に少なくなって、地の分があまりにも多くなりました。そのせいもあり、まさかの9000文字越えです。
もしここまで読んでくださった方には感謝と謝罪も込めていいます、

すいませんでしたm(__)m


P,S

誤字脱字等何か間違いが有りましたらご指摘ください。
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