記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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最近ペスト弄りを考えるのが楽しいです。


束の間の休息

 

 

 

 

交渉の席から四日。ペスト率いる〝グリモワール・ハーメルン〟の面々は、以前絵錬が初めて騒動を起した展示会場に本拠を構えている。

今現在、彼らはゲーム再会までの時間をそこで消費している。

 

 

「ねえ、ペスト~。後どれくらいだっけ?」

 

「自分で考えれば」

 

「……ね、ねぇ?まだ、その……怒っていらっしゃる?」

 

「…………」

 

 

ペストはぶすっとした様子で絵錬から顔を逸らす。絵錬が言っているのは交渉の時に自分がふざけすぎた事だろう。

 

しかし、高校生ほどの少女が小学生ほどの少女に許しを請いてる図というのは、なんとも珍妙なものだ。

絵錬は普段と変わらない眠たげな半目をラッテンとウェーザーに向けるが、二人は我関せずといった感じに無視される。

 

 

「リーダ~…………お菓子でもあげますから機嫌直してよ~」

 

「馬鹿にしてるの?あと、キモイから止めてくれない、それ」

 

「………………」

 

 

絵錬は流石に自分でもどうかと思ったのか間延びした声を出すのを止める。

 

余談だが、絵錬は普段は寝て過ごしており、長い時では3日位は眠りこけることもある。だが、活動時は打って変わり思うが侭に行動をする。特に人をからかう事は影禍にも似た共通点なのである(影禍>>>絵錬>雪羽といった感じで積極的にいくタイプではないが)。

 

で、今ペストは絵錬に背中を向け話など聞かない!といった体勢となっている。

 

 

「………………(ニヤッ)」

 

 

絵錬は何かを思いついたのかその口元に笑みを浮かべる。位置の関係上それが見えたウェーザー、ラッテンはそれに溜め息をついて少しだけその場から遠ざかる。それを疑問に思ったペストは二人に尋ねる。

 

 

「ウェーザー、ラッテン?どうしッ!!?」

 

 

ペストは突然身を捩りだした……がすぐに固定されたように身体だけが動かなくなった。

 

 

「~~~~ッ!!?や、やめ……!!」

 

「?ペスト、どうしたの?」

 

「え、絵錬!!……あ、貴女がッ!?……!?」

 

「あ、笑いそう…………もうちょっと?」

 

「絵錬!!や、止めないと……本気でッ!?~~~~~!!?」

 

 

ペストは顔を赤くし何かに耐えるように歯を食いしばる。少し震えているものの、身体だけが動いてないという奇妙な絵柄がそこに出来ていた。

これは絵錬がやっている事なので、やっていることは単純────────擽っているのだ、後ろから。

何故こんな事をしているのかというと、

 

 

「ッ……ひぁッ……!?く……ふ……ふふ……ふふふふ……あははははははははは!!!」

 

「あ、やっと笑った~。天記が言ってた通り、擽りって効果的なんだね~」

 

 

ただペストを笑わせようとしただけだ。内心としては四割ほどの悪戯心だが……

 

で、実際に本人は遂に耐え切れなくなったのかその笑い声を展示会場に響かせた。

それを見た絵錬は擽りを止め拘束と解いた。

ペストは自分を縛っていたものが消えるや否や荒くなった呼吸を調わせ始めた。

 

 

「……はぁ……はぁ……っ……はぁ……」

 

「いや~良かった良かった」

 

 

何が良かったのかはさっぱりだが、絵錬はさもいい仕事をした風に額の汗を拭う仕草をする。

これで解決したと思ってるのだろうか…………いや、流石にそれは無いだろうと思われる。

 

 

「ふふ、偶には思いっきり笑った方が落ち着くってもんなんだよ~。で、どう?落ち着いた?」

 

 

ブチッ。 ペストの中で何かが切れた……様な気がする。

 

 

「……フフ……フフフ……ええ、ありがとう。大分冷静になれたわ……」

 

「リーダーが不機嫌だとコミュニティの指揮にも関わるからね~」

 

「そうね……。それより絵錬?躾の悪い部下はどう粛清すれば良いのかしらね?」

 

「?立場を分からせるってのが一番だと思うけど……?」

 

「そう……。ならッ!?」

 

 

怒りに肩を震わせるペストが言い切る前に絵錬は後ろからペストに抱きついた。心なしか普段より目が閉じている。

 

 

「そんな事より……ちょっと寝よ~?少し眠くなってきた……から……」

 

「こら!は、離しなさいっ!まだ話は────」

 

「ペストも一緒に寝よ~よ……大分……スッキリする…………から…………ZZZ~……」

 

 

絵錬は言い終わるやすぐ横になって眠りに就く。ペストは先ほどより顔を赤くして必死に抜け出そうとする──────────が魔王の力でも振り解けないほどの力で、抑え込まれたのでしだいに大人しくなっていき、そのまま一緒に眠りに就いてしまった。

 

本来のペストであればそんな事も無いのだろうが、今回は絵錬の毒気にやられたと思うのがいいだろう。

 

そして、それを眺めているウェーザーとラッテンは唯一言こう思った。

 

 

「「(平和だな…………)」」

 

 

本来ならペストが〝幻想魔道書群〟について聞いてる頃なのだが。それは数時間後に目を覚まし、絵錬を粛清した後の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

所、時変わって交渉から6日、〝サラマンドラ〟の運営本陣のとある個室。

雪羽はその部屋へ水の張った桶とタオルを持って向かっていた。

 

 

「春日部さん……大丈夫かな……」

 

 

彼女が向かう理由は、耀が心配だからだ。ペストが放った黒死病の病原菌は6日の内に次々と発症している。宮内ではすでに雑魚寝状態の者が続々と出てきてしまっているのだ。その中でも〝ノーネーム〟で唯一黒死病が発症したのが耀だったのだ。

 

本来、隔離された黒死病患者に近づくのはあまりよろしくは無いのだが、彼女はこっそりと抜け出しそこに向かっている。これがばれたら怒られるじゃ済まされないのだろうが、雪羽はそれでも自分の親友が苦しんでいるのをほっとく訳には行かなかったのだ。

 

 

「(もしこのまま、発病者が出ちゃったら…………その時は最終手段をとるしか)」

 

 

雪羽はそのあまり使いたくない手を考えながら耀が隔離されている部屋まで来た。

すると、中から

 

 

『…………ああクソッ!完全に騙されていたぜ〝黒死斑の魔王《ブラック・パーチャー》〟!!つまりお前達はグリム童話上の〝ハーメルンの笛吹き〟ではあっても、本物の〝ハーメルンの笛吹き〟じゃなかったって事か……………!!』

 

「え?この声……十六夜く、きゃ!」

 

 

雪羽が疑問に思いながらもドアを開けようとすると、内側からそのドアは勢いよく開かれた。

 

 

「ん?……雪羽か。どうしてここにいるんだ?」

 

「それはこっちの台詞だよぉ……。ここって来ちゃ駄目のはずだよね?」

 

「まぁ細かいことは気にすんな。っと、そうだ。春日部!サンキュウな!お前のおかげで謎が解けた!あとは任せて、枕高くして寝てな!」

 

「こほっ、こほっ……うん、頑張ってね」

 

 

十六夜はそう言うと黒ウサギが居る方へ走っていった。それを耀は見送ると今度は雪羽に目を向けた。

 

 

「雪羽?……どうしてここに?」

 

「え、あ、あの。容態が気になったので」

 

 

雪羽は耀の隣まで来ると持っていたタオルを濡らす。

 

 

「春日部さん、汗が凄いんで少し動かないで下さい」

 

「え……雪羽?」

 

 

耀が少し戸惑う中、雪羽は彼女の汗を拭き始めた。

本来体液からの感染には注意しなければいけない黒死病なのだが、雪羽はそんな事はお構い無しに作業を進める。

 

 

「ゆ、雪羽。気持ちは嬉しいんだけど……雪羽まで感染しちゃう……」

 

「気にしないで下さい。私、身体は強い方ですからっ」

 

「いや、そういうの関係無い……ん……」

 

「あとは…………」

 

 

雪羽は少し呟くと、手の平にに真っ白いお札のようなものを創った。

 

 

「こほっ……こほっ……雪羽、それは?」

 

「あ、これはお守りの一種です。さっきまで宮殿内の人たちにも渡してきました。一応、対呪の力を宿してはいますけど……強すぎると逆に毒なので完治までの力は備えてません……」

 

「え?雪羽……これを、創ったの?参加者全員分」

 

「は、はい。持ってるだけでも少しは症状も落ち着きますから」

 

 

耀は純粋に驚いていた。雪羽のギフトが十六夜に引けを取らない位の物とは聞いていたが、此処まで多様性且生産性のある物だという事は今初めて知ったのだ。

 

 

「雪羽って、凄いんだね。私よりもまだ小さいのに、皆の役に立ててる。それに比べて、私は……」

 

「そ、そんな事ないですよ!春日部さんだって皆の為に必死で頑張ってるじゃないですか!そんなに自分を卑下した駄目です!」

 

「でも……」

 

「でもも何もないです!」

 

 

雪羽は少し厳しい表情で耀に詰め寄る。

 

 

「春日部さんはもっと自分を見てあげてください!毎回自分を周りと比較してちゃ限がないですから……。もっと、自分に自信を持ってくださいよ……」

 

「……うん……ごめんね、雪羽。それと……そろそろ退いてくれると助かる、かな?」

 

「へ?……………………ッ!!?」

 

 

雪羽はボンッ!と林檎の様に顔を赤くした。今の体勢だが、耀の上に雪羽がやや四つん這い状態で耀に顔を近づけているという、なんとも誤解を生みそうな構図になっていた。

雪羽は決して狙って訳ではなく、全て無意識の産物である。

 

 

「す、すすすすすすみません!?」

 

「え、あ、いや…………?」

 

 

雪羽が自分の体勢を見返しすぐに退く中、耀は何故雪羽は赤くなったのか首を傾げていた。

これに至っては、雪羽の頭の中がアレだったとしかいえないのだが、それを耀が分かるはずもない。

だが、とりあえずそれっぽい流れに乗ってみた。

 

 

「雪羽……今のは何?」

 

「い、いい今のって!?」

 

 

耀は少し面白いとクスリと笑い、次の言葉を選ぶ。

 

 

「雪羽、私の上に乗ってきたよね?」

 

「そ、そそそれはその…………(ボンッ!)ち、違うんですよーーーーーーーーーー!!!」

 

「あ」

 

 

雪羽は割りとあっさり負けた。そして、その場から黒ウサギにも負けない勢いで部屋から出て行ってしまう。

 

 

「何だったんだろ、結局……」

 

 

後に残った耀はただただ疑問に思うしかなかった。

そして、心なしか体調がさっきよりも楽になっている事に気付いたのはその後すぐの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『上手いくらいにからかわれてたね』

 

「う、五月蝿いです!うぅ…………」

 

『ま、結局は雪羽、君の頭の中がアレなだけだよね?天記の目を盗んでいつもあんな物────』

 

「それは言わないでよ!?もぅ、やだぁ……」

 

『アハハ!それにしても、久しぶりに起きてみたけど随分楽しそうな事になってるじゃん』

 

「楽観的に言わないで下さい!今回のは、だって……」

 

『姉さんを殺さなきゃいけない、でしょ?』

 

「(コクリ)」

 

『別にいいじゃん。普段はあまり動かない姉さんにあそこまでおちょくられたんだからさ?それに、どうせ死なない(・・・・)んだから』

 

「そうだとしても……!」

 

『ま、どうしてもって時は変わってよ。久しぶりに外をちゃんと見てみたい』

 

「…………分かった。でも、これだけは約束して。私の友達には手を出さな…保障は出来ないけど、まぁ努力はしてみる』

 

「お願いだから……」

 

『ほいほいっと。じゃ、暫くは中で見させてもらうね。今の雪羽がどこまで情を棄てられるか、ね』

 

「棄てる心算は無いです。私は私です。そして、」

 

『ワタシはワタシって事?ふふ、そうかい……。…………最後に言っとく、危なくなったらすぐにでもでるから』

 

「…………うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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