記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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アンダーウッド

 

 

湯殿での一騒ぎを経て翌日の朝。

十六夜と絵錬、その他の子供達は屋敷の中をひっくり返す……は言いすぎかもしれないが、随分と慌しかった。

 

 

「十六夜~、もう諦めたら~?」

 

「そうしたいのは山々だがな…………けど、夜通し探してこれじゃあな……」

 

 

十六夜はそう言いながら頭を掻く。その頭には本来あるべきものが無かった。そう、十六夜が箱庭に来ていたときから付けていたヘッドホンが無いのだ。

朝から慌しい理由はそれで、十六夜は昨日の風呂から出た後に自分のヘッドホンが消えている事に気付き、今の今まで捜索していたのだ。

それには絵錬も駆り出されていた。正直彼女からしたら酒の後にゆっくりと寝てたかったのだが、

 

 

 

「っていうか、空間把握は私の十八番なんだよ~?最初から頼ってくれれば良いのに」

 

「いや、初耳だぞそれ。そんな便利機能付いてんなら、最初から使えよ」

 

「あはは……言われなかったからね~…………ほいっ」

 

 

絵錬は適当にごまかしながら十六夜にあるものを渡す。

 

 

「何だこれ……ヘアバンドか?」

 

「そ。だって十六夜、何か今は落ち着き無いじゃん?やっぱり頭が寂しいからなのかなーと」

 

「…………ありがとよ」

 

「あははっ、どういたしまして~。じゃ、とりあえず皆の見送りに行こっか~」

 

 

そう言うと、絵錬は十六夜と共にその場から前雪羽達の待つ玄関前に転移した。

 

 

「きゃっ!お、お姉ちゃん!いきなり出てこないで……よ…………(ボフンッ)」

 

 

絵錬が転移した目の前には雪羽が居た。その雪羽は突然現れた絵錬に抗議をしたが、隣に居た十六夜を見つけるや否や顔を真っ赤にして、神速の速さで黒ウサギの後ろに隠れた。

 

 

「ちょ、ちょっと雪羽さん?一体どうしたんですか、」

 

「黒ウサギ~、あまり気にしないであげな~?色々あったんだよ、色々と」

 

「は、はぁ…………?」

 

 

黒ウサギは訳が分からなかったが、出発の時間も迫ってきているので追求はしなかった。

 

 

「十六夜君。頭のそれ、どうしたの?」

 

「ああ、これか?まあ、あれだ。頭の上に何か無いと落ち着かなくてな。ま、それよりだな、」

 

 

十六夜は黒ウサギの後ろに隠れる雪羽を見る。雪羽はそれから逃れるように身を縮込ました。流石にそれには十六夜も苦笑するしかなかった。

 

 

「十六夜…………雪羽、どうしたの?」

 

「いや、まぁ……ちょっとな。だが…………これじゃ話しも出来ねえな」

 

「長いよ、十六夜。……えっとだね~、率直に言うと十六夜の代わりに雪羽が行ってきていいよぉ~、って事」

 

「え?貴方残るの?」

 

 

飛鳥は吃驚した眼差しで十六夜を見る。それは他の皆も同じだった。

 

 

「ああ。なんていうかな、アレがねえとどうにも髪の収まりが悪くてな。壊れたスクラップとはいえ、無いと困るんだよ……。てなわけで、俺と雪羽は交代するわけだ」

 

「そうそう。ほら雪羽、いつまでも引き摺らな、ぐふぁッ!!?」

 

「五月蝿いッ!!元々お姉ちゃんがあんなことしなければ…………!!」

 

「痛テテテ……。そ、そうは言ってもさ~、それは十六夜が、」

 

「おいおい、何責任転嫁してんだよ?結局の所、」

 

「はいはいっ!よく分かりませんけど、もう時間ですのでそこまでにしてください!」

 

 

話がややこしくなりそうだったので、黒ウサギは慌てて止める。

 

 

「っと、そうか。じゃあまあ、お前ら、ちゃんと俺の分まで頑張ってくれよ?特に春日部。アンダーウッドってのは幻獣の宝庫らしいからな。友達100人作る勢いで確りと頑張れよ」

 

「うん、分かった。十六夜の分も頑張ってくるよ」

 

「おう。雪羽も、俺の代わりに行くんだ。それなりに期待してるぜ?」

 

「………………………うん」

 

「雪羽~、お土産よろしkぐはぁっ!!」

 

 

絵錬は雪羽に吹っ飛ばされた。……余計な事を言うからだ。

 

その後、ジン、黒ウサギ、雪羽、飛鳥、耀、三毛猫の一行は境界門のある噴水広場に行く為その場を後にした。

今現在本拠に残っている主力は十六夜、レティシア、絵錬。今は農園区のほうに居るペストだけとなった。

 

 

「しかし十六夜。本当に良かったのか?外門利権所を手に入れて勝ち取った順番を、こんなあっさりと手放して……。君のヘッドホンなら私達でも、」

 

「レティシア、それ、意味無いよ~?」

 

「?どういうことだ?」

 

「だって、もうこの館全体にスキャンを掛けたからね~。結論、ここからはどれだけ探しても出てこないよ…………十六夜も分かってるよね?」

 

「ああ。屋敷の中に無いならこのただっ広い敷地のどこかに隠したか……その当人が今も隠し持ってるか、だろうしな」

 

「十六夜がヘッドフォンを外してたのって昨日の風呂の時だよね……。多分その時だよ。事実、雪羽が来る前に何か来てたしね~」

 

「気付いてて言わなかったのか、絵錬は?」

 

「いや~……ね?誰もヘッドフォン隠すなんて思わないじゃん?だからスルーしたの」

 

 

どうやら絵錬はあの時、誰かが居たのは気付いていたようだった。ただ、目的が分からなかっただけで。

 

 

「……絵錬、それが誰かは分からないのか?」

 

「う~ん……まぁ目星はついてるけど…………。十六夜はいざこざをお望みになるかい?」

 

「いんや。俺はあちらからの出頭でも待つさ」

 

「ふふ……そっか~。……十六夜は優しいね~」

 

「うるせっ。だいたい、皆大袈裟なんだよ。あんなの、所詮は素人が作った代物だ。一銭の価値もありゃしない」

 

「……素人が作った?知人が作ったものなのか?」

 

 

レティシアは昨日の会話を思い出していた。十六夜に誤魔化されたのと雪羽が来た事によって曖昧になった、十六夜の身の上話を。

 

 

「…………故郷の話、聞きたいか?」

 

「ああ。是非聞きたいな」

 

「あ、私も私も~。なんなら私も話そうか?私の出生とか色々と」

 

「ハハッ、そりゃ興味あるな。……ま、それより先に朝食だ。どうにも腹が減ってテンションが上がらねえ」

 

 

レティシアは十六夜の言わんとしてる事を理解し、スカートの裾をつまみ、一礼しながら、

 

 

「ふふ。承りましたマイマスター。不肖この私めが、腕に縒りをかけて作らせて貰います」

 

「……ふ。そうか…………じゃあ、頼んだぞ」

 

「御意に」

 

 

レティシアは仰々しく受け答えをする。その姿は元魔王とは思えなくも、気品に溢れたものであった。

 

 

「……幼いメイドに高圧的な主…………。ペストでやってみようかな~……」

 

 

それを横で見ていた絵錬はそんな事を呟く。同時刻、ペストは言い知れぬ寒気を感じていたが、それが何なのかは分からずにいた。

 

そんなこんなで、十六夜は食堂に、レティシアは厨房に、絵錬はペストを連れてくる(捕獲する)為に農園区へ各々向かうので────

 

 

「あ、そうそう。レティシア~」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「朝食なんだけど。レティシア自身も含めて()()()用意してね~」

 

「?どうしてだ?」

 

「どうしてって、それは────、」

 

「私も戴くからよ」

 

 

レティシアと十六夜は突然聞こえた第三者の声に振り向いた。絵錬は「おぉ、お帰り~」と言ってその声の主に軽く手を振る。

 

三人の視界の先、そこにいたのは────

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「わ、…………!」

 

「きゃ、…………!」

 

「っ…………!」

 

 

雪羽たち一行は突然拭きつけた冷たい風に驚き、そして目の前の光景に息を呑んだ。そこにあったのは巨大な水樹。そして、その樹の根が織り成す地価都市。さらに其処から流れる圧倒的水量をほこる大瀑布だった。

 

彼女達が居るのは七七五九一七五外門〝アンダーウッドの大瀑布〟フィル・ボルクの丘陵。噴水広場から境界門を抜けてここまでやってきたのだ。

そして、この巨大な水樹が魅せる都市群で今回の収穫祭は行われる。

 

 

「す、凄いです…………凄いですね、黒ウサギさん!」

 

 

雪羽は目の前の景観に思わず目を輝かせ、声を上げる。それには黒ウサギも少し苦笑気味だ。だが、彼女も初めて来た時はこのような反応だったのも事実なのだろう、その気持ちを理解している。

 

 

「ねえ、黒ウサギ。あれ何だか知ってる?」

 

「え?あれ……、ですか……」

 

 

普段は見せないようなはしゃぎを見せた耀は上空を舞う鳥のような群れの事を黒ウサギに聞いた。黒ウサギは言われたままにそれを見たが、少し困ったように反応した。

すると、そんな一同の前に、聞き覚えのある声がかけらる。

 

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそ我が故郷へ』

 

「あ、グリフォンさん。お久しぶりですね」

 

「久しぶり。此処、君の故郷だったんだ」

 

 

現れたのは〝サウザンドアイズ〟のグリフォンだった。雪羽は久しぶりの再開に挨拶を、耀は喉仏を撫でながら応える。

 

 

『ああ。収穫祭で行われるバザーには〝サウザンドアイズ〟も参加するらしい。私も護衛の戦車(チャリオット)を引いてやってきたのだ』

 

 

彼の言う通りにその背には依然見たときよりも立派な鞍と手綱が装備されていた。おそらく契約主も此処にきているのだろう。

 

 

『〝箱庭の貴族〟と友の友よ。お前達も久しいな』

 

「Yes!お久しぶりなのです!」

 

「お、お久しぶり…………でいいのかしら、ジン君?」

 

「き、きっと合ってますよ」

 

「大丈夫ですよ。合ってます」

 

 

グリフォンは黒ウサギたちにも声をかけるが、飛鳥とジンは彼と話す術を持っていないので、少し曖昧になってしまった。それを雪羽は少し苦笑して肯定してあげる。それに二人は少しホッとする。やっぱり相手とコミュニケーションができないと言うのは多少の不安は孕んでしまうものなのだ。

 

グリフォンはその場で足を屈め、

 

 

『此処から街までは些か距離がある。南側には野生区画と言うものが設けられてるからな。道中は東や北よりも気を付けねばならん。もし良ければ、私の背で送っていこう』

 

「本当ですか!?」

 

 

黒ウサギはその申し出に喜び、言葉の分からないジンと飛鳥は雪羽からそれを聞き、慌てて礼を言った。

 

 

「ありがとう。……そうだ。よかったら、名前を聞いてもいい?」

 

『無論だ。私は騎手より〝グリー〟と呼ばれている。是非友もそう呼んでくれ』

 

「うん。後、私は耀でいいよ」

 

「あ、私も雪羽でいいですよ?それと、こちらの二人は飛鳥さんとジン君です」

 

『分かった。友は耀と雪羽。その友は飛鳥とジンだな。今度よりそう呼ばせてもらう』

 

 

少し遅れ気味な自己紹介を終えると、飛鳥達飛べない組は三毛猫を含めて背に跨った。耀と雪羽は自力で飛べる為その場に残る。

 

 

「ところでグリー。あの鹿の角が生えた鳥も、やっぱり幻獣?」

 

「あ。耀さん、あれは……」

 

『鹿の角の生えた幻獣?まさか、ペリュドンの奴らか?』

 

「ペリュドンって言うの?」

 

 

グリフォン────グリーはその視線を空に向け、耀の言ったペリュドンの群れを見つけるや低く唸り声を上げた。

 

 

『彼奴らめ……収穫祭中はあれほど近づくなと警告をしたもを。よほど人間を殺したいと見える』

 

「……?食人種なの?」

 

「いえ。たしかペリュドンは……殺人の種、でしたよね?」

 

 

雪羽の言葉に黒ウサギとグリーは肯定を示す。

ペリュドンというのは今は伝説とされるアトランティス大陸に存在したといわれる種で、その身には子々孫々と先天的に呪いを掛けられているのだ。そして、その解呪方法が人の殺害。故に殺人を犯す種、通称〝殺人種〟なわけだ。

 

 

─閑話休題─

 

 

ペリュドンの話から変わり、グリーは雪羽へと尋ねた。

 

 

『雪羽。そなたは乗らんでも良いのか?』

 

「え、あ、はい。私は自力で飛べますから」

 

『ふむ。あの時は確認できなかったが……飛行系統のギフトでも持っているのか?』

 

「あ、いえ。飛行は唯の技術ですよ?皆が走ったり、喋ったりする事と変わりありません」

 

「「「「え?」」」」

 

『そ、そうなのか?』

 

 

皆は一様に驚いた。雪羽が飛んでいる事はギフトでは無いと言ったからだ。それまでは一同、飛行はギフトによるものだと思っていたのだろう。

 

 

「え、ちょっと、雪羽ちゃん?あれってギフトじゃなかったの?」

 

「は、はい。簡単に言うなら鍛練次第で向上する剣術とかと思ってくれれば……」

 

「そ、そうなのですか……」

 

『ま、まあ世の中にはそのような人も居るのでは無いか?それより、耀、雪羽。そろそろ行くぞっ』

 

 

グリーはそう言うと、翼をはためかせると共に旋風を巻き、思いっきり大地をけり空へと乗り出した。それに慌てて耀と雪羽は追いかけ併走する。

その速さは一級もので、外門は見る見るうちに離れていってしまった。

 

 

「わ、わわ、」

 

「耀さん、大丈夫ですか?」

 

「な、何とか」

 

『やるな。まだ全力の半分ほどしか出していないが、二ヶ月足らずで私に付いてくるとは』

 

「う、うん。黒ウサギが飛行補助のギフトをくれたから」

 

「Yes!耀さんのブーツには補助の為に、風天のサンスクリットが刻まれております!それにしても。雪羽さん、よく付いて来れてますね?」

 

『本当に見事なものだ』

 

「…………何かちょっと悔しい」

 

「あ、あはは……。まぁ、私は慣れてますので……。今はこの速度ですけど、もっとスピードは出せますよ?」

 

『それは……!是非とも競いたいものだな』

 

 

雪羽の言葉にグリーはそう答える。が、それは後ろの黒ウサギを除く騎乗組みの悲痛な叫びによって何とか止められ、少し減速する事で収束した。あのまま、放っておいたら後ろの飛鳥達は、風圧に耐え切れずに吹き飛ばされていただろう。

 

とまぁそんなこんなで、雪羽達は目的地の宿舎へと無事安全に辿り着くのだった。

 

 

 

 

 




今回は此処できります。次はまた、居残り組みの方に戻ります。そして、とうとう彼女が帰ってきます。
…………え、彼?さて、何のことやら……
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