記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
ノーネーム本拠玄関前。
そこで、絵錬、十六夜、レティシアは一人の少女と向き合っていた。
「き、君は………………何者だ?」
「おい、レティシア。流石にそれはないだろ」
レティシア本人としては至って真面目だったのだが、どうやら伝わらなかったらしい。
それを見ている少女は口元に不敵な笑みを浮かべながら、
「どうも、十六夜君。久しぶりかしら?」
「久しぶりっていわれてもな…………俺の記憶にお前みたいな幼女は居ないんだが?」
「む?知り合いではないのか?」
「いいや?」
十六夜の否定の言葉にレティシアは先とは打って変わり、少女に警戒心を表した。すると少女は、それに応える様にレティシアにのみ強烈な殺気をぶつけた。
「ッ……く……ぁ……!!?」
「フフフ。そう警戒しないでよ。私からすれば、貴女の方が誰?って感じなんだから」
レティシアは苦しそうに顔を歪める。今彼女は殺気だけでこの状態に陥っている。永木に亘っ
てその実力を示していた〝箱庭の騎士〟、吸血鬼の彼女が、今は一人の異聞と同じほどの背丈の少女に身動きを封じられている。
レティシアの生存本能は先程から警告音を鳴らしている。少しでも動けば殺られる、と。
だが、その均衡は間の抜けた声によって破られる事になる。
「はいはい。そこまでそこまで~。此処で喧嘩なんてやめてよ~?」
絵錬はそう言いながら少女へと近づいていく。レティシアはそれを見て焦燥の念で叫んだ。
「え、絵錬!!それに近づいては駄目だ!!」
十六夜にも臨戦態勢をとらせない程殺気を、レティシア一点集中させている。つまり彼女以外の者は多少いぶかしんだり、怪しいとは思えど完全な応戦体勢にはなれないのだ。
「へ?どうして?」
「…………なるほど。これまた、ただの幼女じゃねえわけだな」
「十六夜君?さっきから幼女幼女って言われると流石に私も怒るわよ?」
殺気を継続して放ちながら普通に話しかけてくる少女。そして、その彼女に絵錬は到達し、そこで、
「ていっ」
少女の頭にデコピンをかます。その所業によりレティシアは殺気の呪縛から開放された。が、それよりも本人は驚いていた。
「痛っ。ちょ、ちょっと何するのよ絵錬!」
「何するもどうするもね~?これから朝ご飯なのに、その料理長を縛らないでよ。そろそろ本当でお腹空いてきたんだからさ~?」
「別に、それ私の責任では無いでしょ?あの子が先に警戒してきたんだから…………っていうか、あの子って…………吸血鬼?じゃあ、あの時の怪我はあの子のせいって事?ならおあいこね」
「いや、意味分からないよ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!え、その、何だ?絵錬はその者と知り合いなのか?」
此処で漸くレティシアは二人の会話に割り込む。多少の警戒心は残ってるが、絵錬が親しげに話してるのを見て、一端の安全を確認してのだ。
「知り合いも何も~…………姉さんだけど?」
「………………は?」
「いやだから、姉さん。お姉ちゃん。姐さん……ってこれは違うや」
「あ、姉?ほ、本当なのか?」
「何か今の言葉って、文字に起したら、意味が分かれそうね。まぁいいや。それで、私が姉と言うのは本当よ?十六夜君だって知っていると思うのだけど……?」
レティシアは絵錬に続き十六夜の方を見る。だが、十六夜は首を横に振る。
「あのなぁ。何度も言うが、俺はお前みたいな幼女に知り合いはいねえぞ。俺の知り合いを名乗るんなら名前くらい言ったらどうだ?」
「あら。それは、ごめんなさいね?すっかり懸念してたわ」
明らかにわざとだろと言った風に少女は上っ面の謝罪をする。
この時、十六夜の頭には一人だけ該当者が浮かんでいた。が、それだと
「それじゃ、あらためまして。私はこの子、絵錬。それと今は居ないみたいだけど、雪羽の姉、〝白結 影禍〟よ。話は雪羽から聞いてるでしょ、吸血鬼さん?」
「なっ…………!?」
レティシアは今度こそ本当の意味で驚愕する。今目の前に立つ少女が、あの時自身の身勝手で死んだはずの雪羽の姉と言うのだ。いや、それ以前にあれは兄だったはずなのだが、それを気にする余裕は彼女には無かった。
「ああ、そう言えば。あの時私は男だったわね。少し困惑させてしまったわね。私、実は性別変えられるのよ?こんな風に」
そう言うや否や、影禍の足元の影が動き出し、彼女を包み込んだ。そして、すぐにそれは弾け、中からは十六夜の見なれた、レティシアのかつて確認した中性的な少年が立っていた。
「へえ。ホントに変わるもんなんだな。今こうしてみるまで合点がいかなかったが、いやはや。なるほどねぇ?ま、いいか。とりあえず久しぶりとでも言っとこうか?」
「ふふ、そうだね。なら、さらにあらためまして…………久しぶり十六夜君。言った通り、戻ってきたよ」
「おう。ちゃんと土産はあるんだろうな?」
「もちろん。楽しみにしてなよ。ささ、そこの……レティシアちゃんだっけ?早く朝食にしよ?」
「…………はっ!いやいや、待て待て!?これは一体どういう、」
「はいは~い、レティシア。質問は後にしてね~。お腹すいたから早めにね~?」
「ま、待て!下ろすんだ絵錬!!これは今聞かねばならないこt────」
色々混乱して騒ぐレティシアを絵錬は厨房に連れて行った。後に残った十六夜と影禍はそれを楽しそうに笑いながら見送り、積もる話をしながら食堂へと向かっていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「…………誰、その子」
「子ども扱い?君みたいなちみっちゃいのに言われたくは無いなぁ」
「へ、へえ…………私に喧嘩売ってるのかしら、それは?」
「いやいやどっちもどっちd────くはッ!?」
「何やってんだお前ら……」
時と場所が移って農園区。朝食を取った後、今度こそ話しを聞こうと思っていたレティシアを無理やり絵錬が片付けに行かせ、彼らは其処へ訪れていた。
で。今は、そこにいたペストと初対面の影禍が出会い、上の通りになっている。
「あ、十六夜様に絵錬様!……と、そちらは…………影禍様!?」
「やぁ、リリちゃんだっけ?覚えててくれたんだ」
「え?あ、はい……じゃなくて!本当に……影禍様で?い、生きています?」
「いや。僕、死んだように見える?ちゃんと生きてるからね?」
「で、でも……」
「まぁ、あの時は春日部が直に見たって話しだからな。雪羽は取り乱してなかったが、お嬢様たちも信じてなかったのが原因か」
事実、今でこそ忘れてこそいないが吹っ切れてる彼女達だが、未だに影禍が無事だとはあまり信じていなかったりする。これもそれも、雪羽の純粋さが逆効果を生み出しているからなのだが……
「ふん。つまりは死に損ないってことね」
「いやいや。今の話し聞いてどうしてそうなるのかな?えぇ?」
バチバチバチッと二人の間で火花が飛び散る。どうして何故か、この二人は相性が悪いようだ。そんな二人を置いていて十六夜はリリに農園の感想を述べる。
「それにしても……、話には聞いてたが、なかなか立派に仕上がってるじゃねえか」
「あ、はい!あとは種子と苗が届くのを待つばかりです!」
「じゃあ、黒ウサギが居ないうちにラビットイーターでも植えとく~?」
「お、いいなそれ」
「だ、駄目ですからね!?本当に駄目ですよ!?」
いつの間にか復活した絵錬の提案とそれに乗った十六夜を慌てて止めるリリ。それを見て絵錬と十六夜は楽しげに笑った。
「あはは~、冗談冗談。それにしても……空気を大分変わったね~……。気持ちよく寝れそうだよ~」
「お前の基準は其処なんだな。だが、確かにな……」
「はい。今この土地は生きているんだって、感じられます……」
三人は思い思いの言を呟く。これで後ろが騒がしくなかったら、それはいい場面に見えただろう。
「だいたい何、初対面の相手に対しての礼儀も知らないの?」
「ふふ、礼儀かー。少なくとも君よりは人一倍あるほうだと思うけど?ロリペ○」
「なッ……!?…………ふ、ふふふ……やるの?やろうっていうの?……いい度胸じゃない……!」
「度胸?こっちの台詞だよ、それ。君こそ格の違いってものを知った方がいいんじゃない?」
「っ……、言わせておけば……!!」
「何ならワンサイドで言い続けてあげようか?今なら安くしとくよ?」
「死になさいッ!!」
先程から口論をしていた影禍とペストはとうとうぶつかり合った。因みにちゃんと地上に被害を出さないように、空中で。
「随分とまあ、派手にやるな……」
「そだね~。ペストも駄目だな~、あんな反応しちゃ。影禍のいい
「十六夜様も絵錬様も、止めましょうよ!?」
「大丈夫だ。ほら、来たぞ」
十六夜が言うと同時に雑木林の方から禍々しい光を纏ったランスが空中で交戦していた二人に向かって飛んで行った。
それに気付いた二人はすぐにそれを避けようとする…………が、ペストは服の中から這い出てきた影に身体を縛られてしまう。
「なっ!?これは…………!?」
そこへランスが盛大にぶち当たり、軽い爆音を立てて爆ぜた。リリはそれを見て顔を真っ青にして絵錬と十六夜を見るが、二人は特に慌てた様子は無い。
暫くして煙が晴れると、中からは軽く満身創痍になったペストが現れる。だが、飛んでいる気力が無くなったのか、その場から落ちてしまう。だが、それを雑木林から飛び出してきたレティシアが上手い具合にキャッチした。
「わお。ナイスキャッチ」
「しかし、最後のはエグイな。影禍のギフトが影を操る系統なのは分かったが、あれじゃ逃げられないぞ、普通」
「まぁ、影って服の中とかにも出来るからね~。影禍はその影を固定して操れるんだよ。だから、掌握後に其処に光が当たっても影は影禍が手放すまでそのままなんだよね」
「お、お二人とも!それよりペストさんが!!」
ゆっくり、冷静に影禍のギフトを見定める十六夜とそれに受け応える絵錬。そして、さっきから慌てっぱなしのリリ。そんな三人の許に影禍とペストを連れたレティシアは戻ってきた。
「全く、茶請けを届けに来たというのに、何をしているんだ……。主殿達も見ていないで止めようとは思わなかったのか?」
「ははっ!いや、な?こいつの実力を見ておきたくてな」
「ん?見たいんだったら、話が終わった後手合わせでもする?」
「お、まじか?じゃ、後ですっか」
「…………はぁあ……」
レティシアは十六夜と影禍の態度に溜め息をつくしかなかった。因みにペストはあの一撃が結構利いたのか、目を回している。
この後、レティシアが持ってきたお茶と、茶請けで休憩をしつつ、リリの一族についてと十六夜の過去についての話があった。
リリの話は十六夜と影禍の発想により、希望が見えた。だが、十六夜の話は明るい空気を、特にレティシアはその話を聞くにつれ、表にこそ出さなかったが悲痛な思いを抱いていた。
そして、それを理解出来たのは、影禍たった一人であった。
「
「──────────……っと、俺の昔話は此処までだ。……レティシア、どうかしたか?」
「っ……いや、何でもない。…………すまない、少々辛い話をさせてしまったな……」
「ははっ、何言ってんだ。実に面白え話しだろ?
「うん。なかなか聞けない話だったね。……さてと、それじゃあ僕の土産話と決闘といこうか」
「しゃッ!で、最初は決闘か?それとも、」
「決闘でいこう。ルールは…………相手に一発でも利くもの入れたら、でどう?」
「ハッ、後悔してもしらねえぞ」
「そっちもね。絵錬、お願い」
「はいよ~」
パチンッ!
絵錬が指を鳴らすと、そこに広がっていたのは夜天の世界に白を織り成した、白夜を移す水面の上だった。何処までも続く透明の水と白の世界。そこへ彼らはやってきていた。
「へえ……。これまた随分殺風景な所だな」
「でも、その分味はあるでしょ?」
「だな」
『影禍~。ちゃんとルールに沿って創っといたから、お互い全力でやっていいよ~』
二人だけの世界に絵錬の声が響く。どうやら先程の農園から様子は見えているようだ。
そして、その言葉の後、世界に静寂が訪れる。二人とも言葉は交わさなず、これから本気でやりあう相手を静かに見据えていた。
そして、二人の向かい合う丁度のその真ん中に、空から一滴の雫が落ちてきた。それが水面にあたり、波紋を生み出した瞬間。
──二人の本気はぶつかり合い、世界に音と波動を轟かせるのだった──
影禍と十六夜の勝敗については書きません。ただ、後でそれが分かる事は書くかもしれません。
ま、どちらが勝つのかは各々で想像してみてください。
誤字脱字・感想等有りましたらよろしくお願いします。ではっ、