記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
「はい。では経過報告を聞きましょうかぁ?」
わーぱちぱちーとのんびり口調でそう言いまして、私は目下に正座させた白黒の妹────影禍と雪羽に目を合わせます。本来なら絵錬も呼ばねばならないのですけど……どうやらあの子は〝ノーネーム〟さんの本拠の方で短期睡眠中らしいのです。どうりでお人形さんの騒ぎの時に居なかった訳ですねぇ~……
「経過報告も何も、いつも通りよ……。勝手に周りから蒐集する、なんら変わらないわ」
「わ、私も……」
「ふむぅ……確かにそうですねぇ…………ところでぇ、」
私はその場にしゃがみ込みまして、少しばかし摯実に問いました。
「貴女達……この世界に来てからというもの大変ヤンチャしているみたいですねぇ?」
ビクッ、と方を揺らす二人。反応からして当たり……報告では枷を四つ外したらいいですねぇ。枷四つと言いますと…………頑張れば小惑星を消せるレベルでしたか?
「まぁ如何にしても、やりすぎは感心しません。特に雪羽。貴女は大人しい性格の割には直ぐに羽目を外すのだから気を付けなさい。何か問題を起してからでは襲いのですよ?」
「うっ……で、でもぉ……! ぁ、は、はい……ごめんなさい……」
「うん~。素直な妹は私、大事にしますよぉ~」
「…………ふんっ」
雪羽の謝辞はちゃんと聞きました。よってお仕お……折檻は免除してあげましょう。残るは……
「影禍、」
「……ふ、ふん。私が頭を下ろせと? 私は此処に来てからというもの三度も致命傷を負ったの、内二回は真面目に致死。それと元はと言えば雪羽と闇邪が、」
「影禍ぁ? 私は言い訳が聞きたい訳ではないのですよぉ……さ。お姉ちゃんに言う事は?」
「ッ!! ……な、何が言う事はよ! 砂羅姉さんだって人の事言えた義理じゃ無いじゃない!? 自分の事を棚に上げてよくもイケシャアシャアとそんな事g────」
……反省の色は無し、ですかぁ。……影禍はもう少し利口な子だと思っていたのですがねー(恍け)
これは、拷m…………コホン。折檻が必要ですねぇ~。
「え、影禍お姉ちゃん……!」
「あぁーもう、気分を害したわ……。早く帰りなさいよっ。もう用件は────」
「リンネ……一日。ご褒美は【自主規制】で」
「
「ッ!? なッ……や、止めなさッ、ひゃあッ!!? い、嫌っ……ご、ごめんなさい! 謝るからッ、許しt────(バクッ)」
私の呼び掛けに応じ、影禍の後ろの空間が裂けて、そこからリンネが無数の
あ、因みにですね。リンネは普段、別の空間で過ごしているんです。彼女は人に擬態している間は少しずつにですけどストレスが溜まってしまうので、別の空間で本来の姿に戻っている訳ですよぉ。
それと、一日というのは、一定のとある手加減付きで好きにして良いという事です~。勿論、力は一時的にとても弱体化させて……
「…………」
「さぁ雪羽。私はこのお祭りが終わるまで滞在する予定なのですけどぉ……生憎とこの世界については余り詳しくないので案内をお願いできますかぁ?」
「え? あ、う、うん…………え、と。影禍、お姉ちゃんは……?」
「ん~? 影禍って此処に来てましたっけぇ?」
「…………う、うぅん。何でもないや」
「そうですかぁ。じゃあ案内、宜しくお願いしますね雪羽」
「うんっ(影禍お姉ちゃん……頑張って)」
こうして私達は陽はまだ昇り始めたばかりにも関わらず大変賑わいを見せています、前夜祭最終日の街へと赴くのでした。
う~ん……。リンネには、折角ですし何か美味しいものでも恵んで上げましょうかぁ~……ふふふ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時はちょっと……数日程遡り、場所はノーネーム本拠。居残りの子供達とレティシア、ペストが収穫祭の為に色々と手伝いの準備をしている最中……
「……すー…すー…………」
絵錬はただ一人、宛がわれた自室で眠りこけていた……と言うよりは。彼女、実はアンダーウッドのレティシアの一件が終息した二日後からずうーっと、凡そ二週間近くこの状態なのだ。
以前にもチラッと言ったが、絵錬は本格的に眠りに就くと最長で数ヶ月と起きない。今回は一体どこまで延びるのか……
「………。貴女……何時起きるのよ、全く。そろそろ私の手を煩わせないでほしいわね……」
そう言うのは、絵錬の意向で一応メイド家業を負わされてるペスト。
彼女は絵錬が眠りに就いてからというもの、彼女の世話をしている。とは言えやることなど様子を確認する程度だが……
「……相変わらず、見ててムカつく寝顔ね」
そう絵錬の寝顔を覗き込んで呟くペストではあるが、言葉とは裏腹にその表情は優しく微笑ましいものでも見ているかの様に緩んでいた。
「…………ん、んん…………すー……」
「…………」
ペストはチョンと、絵錬の頬をつついてみる。
「ん……んー…………すー…すー……」
もう一回つついてみる。
「んん~…………ぅみゅ……」
「…………」
―可愛い―
不覚にもそう思ってしまった。しかし、今此処には自分と絵錬しかいない。レティシアは支度をしているだろうし、子供達は態々絵錬のもとに来る用件もない。
ペストはそっとベッドの上に上がり、四つん這いの姿勢で絵錬の反応を見始めた。
普段の彼女なら絶対にしないであろう所業。だが、睡眠状態の絵錬の魔力にやられてしまった彼女はそれに気付く事なく、髪を梳き、頬をつつき、挙げ句のはてには顔を寄せて……と、更に絵錬が身動ぐ度に息が少々荒く…………もはや変質者だ。
――――と、
「――――……ペスト?」
ガチンッ……
不意に扉の方からもう聞き慣れた声が聞こえた。そしてその声に体を硬直させハッ! と我に返る。
彼女は思い出す。一応自分はメイド(と言っても絵錬限定)に身を置いている。で、メイドには非常に億劫な事だが、〝朝の挨拶〟なるものがある。
そして、レティシアはペストが毎日絵錬の様子を見に行く事は知っている……だから自室に居なかった所以、こうして当たりを付けて絵錬の部屋を訪れた。
その結果……言い逃れのできない醜態を晒してしまった。頬が徐々に朱を増していく……
「レ、レティシ…ア? こ、これは……」
「…………あぁ、いや、すまない。取り込み中だったか……」
そう言って静かにレティシアはドアを閉め――――
「ま、待ちなさいッ!!?」
――――ようとしたのだが、韋駄天もビックリの速さで阻止されてしまう。序でにそのまま部屋に引き入れた。
「だ、大丈夫だぞペスト。私は口が固いからな、そう易々と他人に告げ口などしないさ……うん。趣味嗜好は人それぞれだ、」
「だから勝手に自己完結するな! 私は別にそういった趣味なんて持ってない!! い、今のは……そ、そうよ! あの何時まで経っても起きないバカのせいなのよ!?」
何とも苦しい言い訳を試みるペストだが、如何せん目撃した本人にはキツすぎる。信じるななんて無理な話だ。
「だ、だが……しかしだなぁ……」
レティシアもペストがここまで言うのなら信じたい。だが、やはり無理があった。
一方、ペストはなんとしても誤解を解かねばならない。でなければ……人の口に戸は立てられない、その言葉通り何時どこで自身の醜態が漏洩するか分かったものじゃない。
特に、雪羽以外の異世界召喚組に伝わりでもしたら…………面倒じゃすまない、破滅だ。
ペストは火龍誕生祭の時と遜色無いほどにに頭をフルで働かせ、誤解を解く方法を……
「……ははっ。レティシア~、その辺にしていたら~?」
「――――ッ」
「む。絵錬……起きていたのか?」
うん、と頷きながらベッドから降り、絵錬は一度伸びをする。ペストはその横で硬直状態。
「うぅーーん……っとぉ。なんだか久しぶりだね~。どの位寝てたのかなぁ、私?」
「二週間近くだ。最初は二日三日は以前もあったから高を括っていたのだが……まさかそんなに眠りこけるとは私も予想外だったぞ?」
「あはは~。まぁまぁ、長い時は数ヶ月も寝てた私だかr――――」
「絵錬……貴女、何時頃から目を覚ましてたの……?」
まるで幽鬼の如くユラリと振り向いたペストは絵錬にそう問うた。その瞳は、レティシアでさえ一瞬怖気が走るほど……濁り光っていた。
「えっ? え、あー……え、と、ね? ぺ、ペストが最初に私の頬をつついた時ぐら――――ッ!!?」
憐れ絵錬。ペストは体を震わせ、黒の風(非殺傷)を纏った……
それから間もなく、ノーネームの本拠に怒号と悲鳴と爆音が響き渡る事となったのは……言うまでもないだろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「あぅわぁ~……寝起きで災難な目に遭ったなぁ……」
「自業自得よ。…………もし言いふらしたりしようものなら、分かってるわよね?」
「え~。だって私が本気出したらペストなんて、気付いた時には数年経っちゃってるよぉ?」
「……いいわ。この際よ、お互い白黒きっちり着けようじゃないッ……!!」
「うひゃ~ペストこわーい(棒)…………出来るものならやってみなよ? えぇ? マスター?」
「え? あ、ちょ、ちょっと? 絵錬様!? ペスト様も!?」
レティシアが年長組へ役割分担と、収穫祭への招待の件について話終わって直ぐの事。ペストと絵錬は、一旦落ち着いたというのにまた喧嘩をおっ始めようとしていた。
しかも、今度は絵錬もやや本気だ。この二人が本気なんて出そうものなら…………数ヶ月前のノーネームの惨状に逆戻りしてしまう。リリが慌てて呼び掛けるも聞いちゃいない。
故に、レティシアは止めに入った。マジで止めに入った。
「絵錬ッ、ペストッ!! 止めないか二人とも! ここら一帯を更地にする気か!?」
「む、私が本気出したら更地なんてチャチイ程度じゃ済まないよ~!! 精々宇宙が滅びるレベルー!!」
「なお悪いわッ!! と言うかそこまで規格外なのか君は!?」
「レティシア、退きなさい! そいつ殺せない!!」
「殺すなッ、てペスト!! 風を撒き散らすな! 子供達が触れでもしたらどうする気だ?!」
「その時は貴女が何とかしなさいッ!!」
「無茶を言うな!?」
ぜぇ…ぜぇ…と、叫びすぎで息を切らすレティシア。だが、二人は口角を引き上げお互いを睨み付ける。死の風の奔流が螺旋を描き、一方では空間に亀裂が入る。屋内でないにしろ、この規模は本格的に洒落にならなくなってきた……。
「え、絵錬様! ペスト様も、落ち着いてくだ――――キャッ!」
「リリッ、下がってなさい!」
レティシアはリリを巻き込まないように襟首を掴んで無理矢理後ろへ下がらせる。その間にも、二人の力は勢いを増していく。最早レティシアでも迂闊に入り込めないほど……まだ回りにそれほど被害が出ていないのが唯一の救いだろう。
「フフ。今日という今日、漸く貴女の泣き顔を拝めそうだわ……!」
「ふんーだ! 私から借りた力で何をいきがるんだか~! 負けたら裸に引ん剥いて私のペットセットを(強制的に)プレゼントしてあげるよぉ!!」
「な……ふ、ふん! 上等じゃない! もし貴女が負けた時が楽しみねッ!!」
二次的被害を無意識の内にか圧縮していく。例え被害は最小限でもその威力はけたちがい。
そして、二つの力場は最高潮にたっし――――
――音もなく二人諸共姿を消し去った。
「「――――……えっ?」」
レティシアとリリは思わず目を丸くした。今さっきまで目の前にあった魔王クラスの痴話喧嘩が、急に姿を消したのだ。それは驚いて当然だ。
実際は絵錬が次元をずらして場所を移しただけなのだが、今の二人には分かるはずもない。
こうして、密かにノーネームを襲っていた危機は、絵錬の少なからずの良心によって難を逃れたのだった。これがただの痴話喧嘩だと言うのだから……箱庭は本当に面白き場所だ。
因みに、およそ十分後に目を回したペストを抱えて帰ってきた絵錬を、レディースの一喝と挙骨とサンジカンノ説教が待っていたのは完全な余談である。
ちゃっかり負けてるペスト……