記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
「……耀さん、見付かりましたか……?」
「……駄目」
「そう、ですか……」
「「…………はぁ」」
時はすっかり宵の頃。雪羽達一行は未だに飛鳥と女性店員からの精霊捜索に駈られていた。後少しで開会式が開かれるためか、眼下の広場では収穫祭の為に集められた果実や肉などの料理、アルコール臭漂わせる酒が……詰まる所大変な盛り上がりを見せている。
それで、そんな盛況な広場を眺める雪羽と耀は深い溜め息を吐く。更に言うと、目の敵でも見るような恨めしい視線を送っている。
「ほら雪羽~、ちゃんと探してくださいよぉ? じゃないと………目の前でお肉を頂いちゃいますよ」
「お姉ちゃん!? 流石に嫌がらせが過ぎると思うんだけど!!」
「あむ………ん、ふぅ」
「お姉ちゃん!!?」
キュゥ…と雪羽の腹の虫が鳴る。次いで耀の腹の虫も。収穫祭の立食を楽しみにし、我慢している二人の前で何時買ったのか串焼きを食す砂羅。当に鬼のような所業だった。
二人の視線の恨めし度が五段階位上がった気がする……。そんな様子の二人に、抱えられている飛鳥と女性店員は、流石に余計な口を挟む気にはなれなかった。
「………耀さん。その……後は宜しk――――っ!?」
「逃がさない……! 一人だけなんてズルい」
手が唯一空いてるのを良いことに、雪羽は良心の呵責を感じながらも一人脱出しようとする。が、空腹に苛まれている耀は抜け駆けを許すなんて事はしない。死なば諸共とはよく言ったものか……
結局、五人は引き続き捜索を続けることに。この拷問とも言える時間は何時まで続くのか、二人は絶望感を纏いながら空を舞う。
すると、耀が不意に何かを感じ取ったのか下の、客席の法を向き――――固まった。それに気付いたのか、雪羽と砂羅もそちらを向く。雪羽は耀と同様に固まった。
「…………」
「――――飛鳥」
「何? 見付かった?」
「もうやだ。降りる」
「そう、ですね」
「「………は? ――――ッ!?」」
途端、一行は下方へと急降下する。目指すのは…………客席で賑わっている絵錬、ペスト、十六夜、リリの四人の元へ。……砂羅に抱えられていた女性店員が可哀想でならないと思える(只の巻き添え)
視点:雪羽
……はぁ、お腹空いた。彼此……一時間位かな? ずぅっと精霊さんを探してるんですけど、一向に見付かりませんでした。下からは良い臭いがフワフワ~て漂ってきてるのが辛いです……
そんな時に見付けた絵錬お姉ちゃん達。とっても楽しそうに美味しそうな物を食べてます………流石に限界でした。
「――はい。レティシア様曰く、『焼けた肉を食べる為の肉料理』らしいです。一度食べてみたくて」
「ほぇ~、そんな美味しそうなものが……。ねぇペスト、私達も行ってみよ?」
「……好きにすると良いわ」
「んじゃ、リリ達とは此処でいっt――――」
「「それ、私達も行く/行きます――――!!」」
四人の後ろに私達はこれ見よがしの勢いで着地しました。
三人だけ贅沢するなんて駄目です! その……理不尽です! リリちゃんとペストさんはまだしも絵錬お姉ちゃんは許しませんっ。
「何で!? 雪羽ちょっと最近私に冷たくないかなぁ!」
お姉ちゃんの文句は後で聞くだけはしてあげますので今はスルー。それより、
「リリちゃん……その料理、何処にありますか?」
「え………え? え、ええと、一つ上の断崖だと思いま、」
「行こう。飛鳥達が目を覚ます前に速やか早急にレッツ、立食!」
それから直ぐに、私達はリリちゃんを連れて噂の〝斬る!〟〝焼く!〟〝齧る!〟と考えるだけで美味しそうなお肉料理の出店場所に向かいました。前にレティシアさんから聞いてはいたのでもう、楽しみで仕方ありません! ……そうだ、気が向いたら闇邪と変わってあげよえかな? うん、今はまだ眠ってるみたいだけど、その時は起こしてあげよっ。
「……雪羽って、あんな感じだったか?」
「はい~。テンションが上がってくると何時もあんな感じです。そこは父親に似たのですかねぇ」
「……ハッ! で、出遅れた……!? ペストっ、早く追いかけるよー!」
「貴女は何を競ってるのy――――ひゃっ!?」
「いってらしゃ~い」
視点OUT
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぁ……ぅあぁ……!」
どことなく艶かしい嬌声が名も知らぬ場所を伝う。
「ひぁっ!? ……あぐ……うぅ……!」
外気に晒された肌の上を撫でる感覚に意識が飛びそうになる。
「ハァ…ハァ………く、ぅぁ……」
その嘗める様な彼女の荒くなる息に呼応するかのように四肢へと、胴へと纏わり付き……
「………。エイカ、ダイジョウブ?」
「ひぅ……! ……し、心配、するくらい…なら……今すぐ解…放しなさい……!」
「…………サラガ、コワイカラ……ムリ」
「くッ……あの年増めェ……!! うひゃぁ……!?」
本来ある筈の服を剥がされた影禍の腹部をリンネの触手が軽く撫でる。これはリンネの意思が……というよりは最初に彼女が決めた指令通りに半自動で動かされている。まあ
砂羅が早朝に言い渡したお仕置きというのはこういう事で、彼女の言い分通りならば後数時間程生き地獄を味わうことになる。
……誤解無いように言っておくが、結して……結して! 艶い事ではない。確かに漏れだす声も光景も誤解を招かねないが、これは所謂拷問(甘口)なのだ。………うむ、あまりフォローにはなっていない。だが事実なのだから仕方がない。
因みに、リンネの白結での役割は専らこういった事だけなのだが、其処には触れてはいけない。
「………アト、シチジカン」
「! ぐ、ぐぅ……ぁぁあああッ! ………イッ!?」
七時間。リンネのこれからの地獄を告げる言葉に影禍は余力を使って抵抗を試みた。だが、拷問、拘束が十八番のリンネに気休めの抵抗など通用する筈がない。
這い寄ってくる影を触手壁で防ぐ。そして、今度はリンネの意思で数多の手を影禍の肢体へと這わせ……
「ッ!? ひ…ゃ……イッ……!? あ、あぁ…………アハハハハハハハハハハ、ハハハハハハハハッッ!? ちょ、ちょっと……ま、待ァっ……!!?」
リンネは影禍の脇を、腹を、足裏を、擽りに掛かった。言っておくと、今の影禍は神経毒モドキで色々と感度が酷い事になっている。常人なら正気を保っていられない程の言い知れぬ感覚が当人を襲っているだろう。それでも影禍がまだ制止を投げかけられる位の余裕があるのは、単に我慢強いだけなのか……それとも慣れなのか……
だがまぁ何にせよ、このままこの生地獄を受け続けて彼女は何処まで保つか。
と────その時だった、
「………。……、…………?」
「! ダ、ダレ……!?」
リンネの触手の塊が落とす影から、一人の少女がフラリと出てきた。そのままコテンと首を傾げ、目の前で息を荒げて身体を捩る
少女────レティは今一状況が掴めず声に表せない疑問の声を上げる。
「……、…………」
「ヒュー…ヒュー……レ、レテ、ィ……。た、助け………」
掠れた声でレティに助けを求める影禍。最早苛める側の彼女の強気は感じられなかった。
改めて場を確認してみよう。生々しい赤黒い空間(全てリンネの身体の一部)に、そこから伸びる触手に幼い肢体を蹂躙される影禍。それらを無表情に見上げるレティ…………
レティは影禍の救済指示に従い、近くの影から身の丈の二倍は誇る片刃の大剣を取り出した(素)。対するリンネはローブ下したから人間の胴に相当する程の触手を出す。しかし、それは捕獲用ではなく戦闘用なのか、尖端が鋭く螺旋を象っていた。
お互いに一触即発の空気を放つ。微動でもすれば直ぐ様相手を切り裂き、貫く……そんな緊張感が空間を支配していく。
「「…………」」
――――だが、忘れてはいけない。この空間は謂わばリンネそのもの。背水の陣など笑えてくるほど、逃げ場、安全地帯など在りはしない。
「っ……!」
レティは咄嗟に大剣で後方を凪ぎ払う。たった一度の闇色の閃きは、音もなく忍び寄ってきていた捕獲用の触手を細塵の如く細切れにした。
しかし、その動作は大きな隙。彼女が後ろを振り向いた途端リンネは夥しい数の螺旋手を打ち出す。不規則な軌道を描きレティの四肢の関節を射止めようと迫る。
レティは大剣を振り切った勢いでリンネへとそれをブン投げた。そして、そのまま左手を下に付けその場から大きく跳躍。
リンネは迫る大剣を紙一重で躱し、空中に躍り出たレティをここぞ良い的とばかりに捕らえ貫こうと……
「っ!」
それは予期せぬ事であった。徐々に距離を詰める触手達を前に、レティは――――漆黒の球体を展開した。到達した触手達は、薄い影の壁に阻まれ、逆に弾かれた。
「…エイ、カ……?」
その姿はまるで影禍を彷彿とさせる。
言い知れぬ威圧感にリンネは半歩後退った。しかし、此処で退いて手痛い反撃を喰らってしまう。故に、彼女は捕獲用で影ごと捕縛し、外側から螺旋手を……尖端を高速回転させて突貫を試みる。
――だからだろうか、リンネは気付かなかった。自身の分体達が、落とす影が……怪しく蠢くのを……
「――――良いわよレティ。手加減はいらないわ」
「………ッ!?」
何故!? リンネは驚愕し後ろを振り向いた。其処には、何時ものゴスロリ調の外套をスカートを着装した影禍が、莫大な殺気を孕んだ影を漂わせていた。まだ感度は戻ってないのか頬は紅潮し、手握り締め耐えている様子は見せているが、そこは問題ではない。
リンネが呆然とする間に、レティは影の球体を爆発的に膨張させ周りの触手を全て呑み込んだ。そして中からは相変わらず無表情のレティが、両手に最強種を象徴とした武装・龍槍を携え憮然とリンネを睥睨する。
「ア………」
ワタシ、オワッタ……、そう思い至ったリンネ。どう足掻いても状況は前虎後狼。空間に広がる分体ごと懸かっていっても、この二人ではだから如何した? で片付けられる。
「ふふ。レティ、ありがとう。貴女が居てとても助かったわ」
「…………」
「全く……素直じゃないのね」
「……、…………? …………」
リンネに二人の会話は残念ながら理解できない。唯一理解できるのは………これから自分はそれはもう凄惨な目に遭う事だけであった。最早抵抗する事も諦めその場にヘタリ込む。
「さぁてと――――リンネ、」
「(ビクッ)…………ナ、ナニ……?」
「提案があるのだけど………貴女、今此処で消し炭になるのと……砂羅にシバかれるの覚悟で私達と一緒に来る、どちらが良い?」
「! ソ、ソンナノ……」
結果的にはどちらも同じ。影禍とレティに二人掛かりで嬲られるか、砂羅に死ぬより辛い(かもしれない)嬲り殺しを受けるか……
「………………ツイ、テク」
リンネは後者を選んだようだ。きっと頭の中では必死に逃げ道を探してる事だろう………無駄だと本能的に分かっていながら。
リンネの返事に影禍は満足そうに微笑んだ。
「そう、賢明な判断ね。なら……用意してた〝-ドキッ! 私、何かに目覚めちゃうかも!?-心身九つ地獄旅~♪〟はお預けかしら」
「「…………」」
リンネは愚かレティも、背筋に薄ら寒いものを感じた。背筋に氷山でも叩き込まれた様な感じだ。
とまぁ、話が落ち着いた為、一旦三人は収穫祭が始まって賑わっているであろうアンダーウッドへと戻ることにした。
「それじゃあ……あの馬鹿姉さんに一矢報いてあげようじゃない……!」
「………ワタシ、シラナイ……」
「………」
「?? ナンテ、イッテルノ……?」
「………。………、…………」
「???」
そんな調子で、一同は空間を裂きアンダーウッドの都市へと躍り出た。
「それで、戻ってきたわいいのだけれど…………これは如何いった状況?」
アンダーウッドの立食会場。〝六本傷〟の主催するその場に偶然ながらやってきた影禍達は、眼下の光景に推考する。
そこには、見慣れた顔ぶれが野次馬の中心に居た。それは――――呆然と立つ耀と、彼女を隻眼の優男の拳を受け止め、睨み返す雪羽だった。………あ。あと傍には変な幻獣が倒れていた。
影禍はもう一度呟く。しかし、今度は笑みを浮かべながら、
「………姉さんは後回しね。フフフ、とぉっても面白い事にナッテルジャナイ?」